居宅介護とは?利用できる支援内容と対象者を解説

障害を持つ方が、住み慣れたご自宅で、可能な限り自立した日常生活を送るために、最も基本的な生活支援となるのが**「居宅介護(きょたくかいご)」**サービスです。このサービスは、訪問介護(ホームヘルプ)とも呼ばれ、ヘルパー(介護職員)が利用者の自宅を訪問し、身体の介護や家事援助など、日常生活全般のサポートを提供します。
居宅介護は、「障害者総合支援法」に基づくサービスの中でも、利用者の生活を根幹から支える重要な役割を担っています。しかし、「どこまでの支援が受けられるのか」「誰が対象なのか」「費用はいくらかかるのか」といった具体的な情報が不明確なために、必要な支援を受けられていない方も少なくありません。
このガイド記事では、居宅介護について、「サービスの種類と具体的な支援内容」「利用できる対象者と手続き」「費用負担の仕組み」という3つの柱から、制度のすべてを徹底的にわかりやすく解説します。
この情報が、居宅介護サービスを「知る」だけでなく、「活用する」ための一歩となり、ご自宅での安心で快適な生活を実現するための一助となることを願っています。
パート1:居宅介護(ホームヘルプ)の基礎と目的
1.居宅介護とは?
居宅介護は、身体に障害を持つ方や、知的・精神障害を持つ方が、自宅で日常生活を円滑に送れるよう、介護福祉士やヘルパーなどの資格を持った職員が訪問して支援を行うサービスです。
- 根拠法:障害者総合支援法(介護給付)に基づいています。
- 目的:利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援すること、また、利用者の心身の状況や生活環境に合わせた適切な支援を提供することです。
2.居宅介護の対象となる人
居宅介護は、以下の要件を満たす方が対象となります。
- 障害種別:身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、そして難病等(政令で定められた 369疾病)を持つ方。
- 年齢:原則として18歳以上の方。(18歳未満の児童は居宅訪問型児童発達支援など、別のサービスが適用されることが多いですが、居宅介護が適用される場合もあります。)
- 障害支援区分:原則として、障害支援区分1以上の認定を受けた方。
⚠️ 65歳以上の方の注意点(介護保険との優先)
居宅介護サービスは、65歳以上になると原則として利用できません。65歳以上の方は、介護保険法に基づく「訪問介護」が優先的に適用されます。ただし、介護保険の対象外となる支援内容(例:重度の行動障害者への支援など)については、引き続き居宅介護サービスを利用できる場合があります。
パート2:居宅介護で受けられる3つの支援内容
居宅介護のサービス内容は、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「通院等介助」の3つに分類されます。特に「生活援助」は、家族の援助は対象外となるなど、明確なルールがあるため注意が必要です。
1.身体介護(直接利用者の体に触れる支援)
利用者の身体に直接触れて行う介護や、日常生活動作能力(ADL)の維持・向上を図るための支援です。
- 食事の介助:食事摂取の介助、流動食の準備、見守りなど。
- 入浴の介助:全身浴やシャワー浴の介助、清拭(体を拭くこと)。
- 排泄の介助:トイレ誘導、おむつ交換、ポータブルトイレの介助。
- 更衣の介助:着替えのサポート。
- 体位変換・移動の介助:ベッド上での体位変換、車いすへの移乗、居室内での移動のサポート。
✅ 身体介護の目的
単に介助するだけでなく、利用者が自分でできる能力を活かし、自立を促すための支援であることが重要です。過剰な介助は、逆に機能低下を招く恐れがあるため、サービス等利用計画に基づいて行われます。
2.生活援助(利用者の生活のための家事代行)
利用者が日常生活を円滑に送るために、ホームヘルパーが代行して行う家事の支援です。利用者の単身世帯、または同居家族が障害や病気などで家事が困難な場合に限られます。
- 掃除:利用者が主に利用する居室やトイレ、浴室などの日常的な清掃。
- 洗濯:利用者の衣類などの洗濯、乾燥、収納。
- 調理:利用者のための食事の用意、後片付け。(作り置きは原則不可)
- 買い物:日常的な食料品や生活必需品の買い物代行。
- 薬の受け取り:医師の処方箋に基づく薬の受け取り。(服薬管理自体は不可)
⚠️ 生活援助の対象外となること
以下の行為は、生活援助の対象外です。
- 利用者本人以外のための行為:同居家族の部屋の掃除や家族の食事作り。
- 日常的な家事の範囲を超える行為:庭の手入れ、ペットの世話、自家用車の洗車、大掃除、来客の対応など。
3.通院等介助(身体介護が伴う通院支援)
居宅での介護に加えて、病院などへの通院や官公署などでの手続きに必要な移動の介助や、それに伴う身体介護(乗降介助、待合室での移動介助など)を行います。
- 支援内容:自宅と目的地間の移動のサポート、目的地での移動、受付、薬の受け取りなどの手続きの代行や介助。
- 注意点:あくまで「身体介護を伴う」ことが前提です。単に目的地までの送迎のみが必要な場合は、移動支援事業(地域生活支援事業)が適用されることがあります。
パート3:利用開始までの流れと支給量の決定
居宅介護サービスは、他の障害福祉サービスと同様に、市町村への申請とサービス等利用計画に基づいて利用が決定されます。
1.居宅介護の利用開始ステップ
- 相談・申請:お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、居宅介護の利用希望を伝えます。
- 障害支援区分の認定:訪問調査や医師の意見書に基づき、区分1以上の認定を受けます。(すでに認定を受けている場合は不要)
- サービス等利用計画の作成:指定特定相談支援事業所の相談支援専門員に依頼し、必要な支援内容、頻度、時間を盛り込んだ計画案を作成してもらいます。
- 支給決定と受給者証の交付:市町村が計画案を承認し、「受給者証」を交付します。受給者証に、利用できる居宅介護の「支給量(月間の時間数)」が記載されます。
- 事業者との契約:居宅介護サービスを提供してくれる事業所を選び、契約後にサービス利用開始となります。
2.支給量の決定基準
居宅介護で最も重要となるのが、「月に何時間サービスを利用できるか」という支給量です。これは、以下の要素を総合的に考慮して決定されます。
- 障害支援区分:区分が高いほど(支援の必要性が高いほど)、支給量が多くなる傾向があります。
- 障害の状況:身体・精神・知的の障害の程度や、行動障害の有無、医療的ケアの必要性など。
- 家族の介護状況:同居家族がいるか、その家族が病気や就労などにより十分な介護を提供できる状況にあるか。
- サービス等利用計画:相談支援専門員が作成した計画の妥当性。
✅ 支給量決定の鍵
支給量を多く確保するためには、相談支援専門員に対し、日常生活で家族が提供している援助内容や、家族の介護負担の状況を具体的に伝えることが不可欠です。
パート4:居宅介護の費用負担とその他の関連サービス
居宅介護は公的なサービスですが、費用負担や他のサービスとの兼ね合いについて理解しておく必要があります。
1.居宅介護の費用負担の仕組み
居宅介護の費用は、「障害者総合支援法」の仕組みに基づき、以下の通りに決定されます。
- 自己負担の原則:サービス費用の1割が自己負担となります。
- 利用者負担上限月額:自己負担が1割でも、所得によっては高額になるため、1ヶ月に支払う上限額が設定されています(応能負担)。
- 低所得世帯(市町村民税非課税):上限0円(実質無料)。
- 一般世帯: 9,300円または 37,200円が上限。
- 実費負担:サービス費用以外に、食材費、おむつ代、交通費など、日常生活でかかる費用は別途実費負担となります。
2.居宅介護と他のサービスとの使い分け
居宅介護でカバーできないニーズには、他のサービスを組み合わせて利用します。
- 訪問看護:医療的ケア(点滴、褥瘡処置、喀痰吸引など)が必要な場合は、居宅介護ではなく訪問看護サービス(医療保険・介護保険適用)の利用が必要となります。(ただし、重度訪問介護では、研修を修了したヘルパーが特定の医療的ケアを行える場合があります。)
- 短期入所(ショートステイ):ヘルパーを呼ぶのではなく、ご家族が介護から離れて休息したい場合に、施設に短期間宿泊するサービスを利用します。
- 就労支援・日中活動:日中の活動の場や就労の訓練が必要な場合は、生活介護、就労移行支援、就労継続支援などの通所系サービスを組み合わせて利用します。
⚠️ サービス提供事業所の選び方
居宅介護は、ヘルパーの質が生活の質に直結します。事業所の評判、ヘルパーの専門性(特に精神障害や行動障害への対応経験)、緊急時の対応体制などを、契約前に必ず確認し、相談支援専門員に相談して適切な事業所を選ぶことが重要です。
パート5:精神障害・知的障害における居宅介護の活用
居宅介護は身体介護のイメージが強いですが、精神障害や知的障害を持つ方の支援においても、非常に重要な役割を果たします。
1.精神・知的障害における支援のポイント
これらの障害を持つ方への支援は、身体介護よりも「見守り」「生活管理」「社会適応」に重点が置かれます。
- 服薬管理の支援:服薬時間のアラート、服薬の見守り(ただし、本人が拒否している薬を無理やり飲ませることは不可)。
- 金銭管理の支援:金銭トラブルを避けるための管理方法の助言、買い物での金銭のやり取りの補助。
- 清潔の保持・環境整備:生活リズムの乱れからくる入浴拒否やゴミの放置などに対し、声かけや指導、生活環境の整備の援助。
- 対人関係の支援:通所や外出の際の声かけ、同行など、社会参加を促す支援。
2.重度の行動障害がある場合
知的障害や精神障害に伴う自傷行為、他害行為、著しい多動などの行動障害があり、常時の見守りや危険回避の支援が必要な場合は、居宅介護ではなく「行動援護」や「重度訪問介護」の利用が検討されます。
- 行動援護:行動障害への専門的な支援に特化しており、ヘルパーは行動援護従事者養成研修を修了している必要があります。
居宅介護を利用する場合でも、事業者に対し、利用者の行動特性やパニック時の具体的な対応方法を正確に伝え、適切な支援計画を立ててもらうことが、安全かつ効果的なサービス利用の鍵となります。
まとめ:居宅介護は地域生活の「土台」
居宅介護サービスは、障害を持つ方がご自宅で自立した生活を送るための「土台」となる、最も基本的な福祉サービスです。
- 対象:障害支援区分1以上の認定を受けた、身体・知的・精神障害、難病を持つ方。(65歳未満が原則)
- 支援内容:身体介護、生活援助、通院等介助の3つがあり、生活援助は家族の援助は対象外となる点に注意。
- 費用:所得に応じた上限月額(低所得者は実質無料)があり、費用の心配なく利用できる。
- 重要性:サービス等利用計画に基づいて支給量が決まるため、相談支援専門員との連携が不可欠。
このガイドを参考に、ご自身のニーズに合った居宅介護サービスを適切に選択し、安心と自立が両立する地域生活を実現してください。
✅ 次のアクション
ご自宅でどのような支援が必要か(入浴、食事、家事など)を具体的にリストアップし、「身体介護」「生活援助」「通院等介助」のどのサービスに該当するかを自己チェックしてみましょう。その後、市区町村の障害福祉担当窓口に相談しましょう。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





