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自治体ごとにこんなに違う!障害福祉サービスの基礎知識

📖 約27✍️ 金子 匠
自治体ごとにこんなに違う!障害福祉サービスの基礎知識
障害福祉サービスは国制度が中心ですが、その支給量や内容は自治体(市区町村)ごとに大きく異なります。主な要因は、市町村が持つ支給決定の「裁量権」と、独自の「地域生活支援事業」の実施状況、そして財政力の差です。特に居宅介護や移動支援の支給時間、日中一時支援の利用制限、独自の経済的支援(手当・助成)の有無などに顕著な差が出ます。最適な支援を受けるためには、自治体の情報公開の積極性や利用者負担の軽減策を見極め、サービス等利用計画の作成に積極的に関与することが重要です。地域の支援者や相談支援事業所と連携し、能動的に情報を取得・活用しましょう。

「障害福祉サービスは全国一律の制度だと思っていたのに、隣の市に引っ越したら、受けられるサービスの内容が変わってしまった」

このような経験をされた方や、異なる自治体で支援を受けている方から話を聞いたことがある方もいるかもしれません。障害福祉サービスは、国の法律(障害者総合支援法など)に基づいて提供される「国制度」が中心ですが、その運用や、実際に受けられるサービスの質・量には、自治体(市区町村)ごとに大きな違いがあるのが実情です。

この違いを知らずにいると、本来受けられたはずのサービスを見落としたり、適切な支援を受けられずに困ってしまったりする可能性があります。特に、転居を検討しているご家族や、複数の自治体で支援を行う支援者の方にとっては、この違いを理解することが非常に重要です。

この記事では、障害福祉サービスが自治体ごとに異なる理由と、具体的にどのような点に違いが生じるのかを、その基礎知識からわかりやすく解説します。また、最適な支援を受けるために、自治体の違いをどのように見極めるべきかについても探っていきます。

この情報が、あなたやご家族、そして利用者が、地域に合った質の高い支援を受けるための羅針盤となることを願っています。


なぜ自治体によって福祉サービスに違いが出るのか?

障害福祉サービスの根拠となる法律は全国共通です。しかし、最終的な「サービスの支給決定」「地域生活支援事業」の実施主体は、お住まいの市区町村と定められています。この構造が、自治体間のサービス格差を生む主な要因となっています。

理由1:市町村の「裁量権」と「財政力」

障害福祉サービスには、市町村がサービスの必要性を判断し、利用時間や利用日数を決定する「裁量権」が認められています。特に、居宅介護(ホームヘルプ)や移動支援などの時間支給が必要なサービスでは、この裁量権が大きな影響を与えます。

  • 支給決定の基準:ある市では週10時間の移動支援が認められる障害状態でも、別の市では週5時間しか認められない、といった判断の差が生じることがあります。これは、各市町村が独自に定めている「支給決定基準」が異なるためです。
  • 財政力の差:国制度の上乗せや、独自の「地域生活支援事業」(後述)を充実させるためには、自治体の財政力が必要です。財政に余裕がある自治体ほど、手厚い独自の支援を提供できる傾向にあります。

理由2:地域生活支援事業(市町村独自のサービス)

障害者総合支援法には、国制度(介護給付・訓練等給付)とは別に、市町村が地域の特性やニーズに応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」が定められています。

  • 事業の例:日中一時支援(一時預かり)、移動支援、地域活動支援センター事業など。
  • サービスの内容:これらの事業は、実施するかどうか、どのような内容にするか、どれくらいの予算を割くかなど、ほぼ全てが自治体の判断に委ねられています。

例えば、ある市では移動支援の対象を「障害者手帳を持つ全年齢」としているのに対し、隣の市では「重度の身体障害者のみ」と限定している、といった具体的な違いが生じます。

理由3:事業所(サービス提供者)の「量」と「質」

サービスの支給決定が手厚くても、実際にサービスを提供する事業所(ヘルパーや施設)が地域に少なければ、利用者が必要なサービスを受けられないという問題が生じます。

  • 事業所の偏在:都市部には多くの事業所がある一方、地方や過疎地域では事業所が少なく、特に専門的な支援(医療的ケアなど)を提供できる事業所が見つからないという課題があります。
  • サービスの「質」:自治体が事業所の質の向上を促すための施策(研修、助成など)に力を入れているかどうかで、提供されるサービスの「質」にも差が出ることがあります。

💡 ポイント

サービスに違いが出る主な要因は、「国制度の支給決定基準の差」と「独自の地域生活支援事業の有無」の2点であると理解しておきましょう。特に後者は、自治体の福祉への熱意を示すバロメーターとなります。

【具体例】自治体ごとの違いが生じやすいサービス

特に自治体間の違いが顕著に表れやすく、利用者やご家族の生活に直結するサービスには、いくつかの共通点があります。

1.居宅介護・移動支援の支給時間

訪問系のサービスである居宅介護(ホームヘルプ)や、外出支援を行う移動支援は、市町村の「支給決定の基準」が最も影響しやすい分野です。

  • 移動支援の制限:多くの自治体で、移動支援は「社会生活上必要不可欠な外出」に限定されますが、その解釈は異なります。ある市では「趣味やレジャーの外出」にも一部利用が認められるのに対し、別の市では「通院や官公署への手続き」に厳しく限定される、といった違いがあります。
  • 時間単価の差:自治体によっては、ヘルパーの確保が困難な夜間や早朝のサービスに対し、独自の加算を設け、事業所への報酬を上乗せしている場合があります。これは、サービス提供者を増やし、利用者が時間帯に関わらず安定してサービスを受けられるようにするための施策です。

2.日中一時支援(預かりサービス)の実施内容

日中一時支援は、家族の負担軽減やレスパイト(休息)を目的とした地域生活支援事業の一つであり、自治体によって実施状況や利用条件が大きく異なります。

  • 利用対象年齢:ある自治体では「障害児のみ」を対象としているのに対し、別の自治体では「成人を含む全年齢」を対象としている場合があります。
  • 利用制限:利用できる時間数や、連続利用日数に制限を設けているかどうかも、自治体によって差が出ます。特に利用ニーズが高いサービスであるため、財政力や事業所の数に直結しやすい分野です。

3.独自の経済的支援(手当・助成)の有無

国制度の障害年金や特別障害者手当とは別に、自治体が独自に給付する手当や助成金の有無は、地域の経済的支援の手厚さを測る上で非常に重要です。

  • 例:心身障害者福祉手当、重度心身障害者医療費助成の所得制限緩和、特定疾病患者への見舞金など。

前回の記事でも触れましたが、特に福祉への意識が高い自治体は、生活費の足しとなる独自の手当を設けていることが多く、これは大きな判断材料となります。

⚠️ 注意

最も差が出やすいのは、障害児向けのサービスです。「放課後等デイサービス」は国制度ですが、その空き状況や、日中一時支援など付随する地域のサービスの有無は、自治体によって大きく異なります。子育て世代のご家庭は特に注意が必要です。

自治体の福祉サービスを見極める3つの視点

転居を検討している場合や、現在受けている支援が適切かどうかを確認したい場合、自治体の福祉サービスをどのように見極めればよいでしょうか。以下の3つの視点から比較検討しましょう。

視点1:公的な情報公開の積極性

福祉への積極性がある自治体は、サービスの情報を分かりやすく、かつ詳細に公開している傾向があります。情報公開は、利用者が制度を使いこなすための第一歩です。

  • 情報公開のチェックポイント:
    • 自治体のウェブサイトに、「障害福祉サービスの支給決定基準」が公開されているか。
    • 独自の「地域生活支援事業」の一覧が、利用条件や利用料金とともに詳細に記載されているか。
    • 広報誌などで、障害者向けの福祉情報が定期的に特集されているか。

情報が断片的で、窓口に行かなければ何もわからないような自治体は、利用者への情報提供の意識が低い可能性があると判断できます。

視点2:利用者負担の軽減策と相談体制

財政力がある自治体は、国制度の基準を超えて、利用者の経済的な負担を軽減するための施策を講じている場合があります。

  • 軽減策の例:
    • 世帯の所得に応じて決まる「利用者負担上限月額」を、さらに独自に軽減する制度。
    • 食費や光熱費など、サービス利用時に生じる実費負担分に対し、独自の補助金を出す制度。
  • 相談体制:単に制度があるだけでなく、相談支援事業所の数、または市役所内の専門相談員の配置が手厚いかどうかも重要です。複雑な制度を使いこなすためには、質の高い相談体制が不可欠です。

視点3:地域連携とインフォーマルサービスの充実度

質の高い支援は、行政サービスだけで成り立っているわけではありません。地域のNPOやボランティア団体、民生委員などとの連携(インフォーマルサービス)が活発かどうかも、生活の質に大きく影響します。

  • チェックポイント:地域の障害者団体の活動、ボランティアの育成状況、地域活動支援センターの多様性など。

行政が積極的にこれらの活動を支援し、行政サービスとインフォーマルサービスが一体となった「重層的な支援体制」が築かれている自治体は、生活困窮時や緊急時に強いと言えます。

最適な支援を受けるためのアクションプラン

自治体によるサービスの違いを理解した上で、あなたやご家族が最適な支援を受けるためには、具体的な行動が必要です。

アクション1:サービス等利用計画作成の徹底

障害福祉サービスの支給決定を受ける際、相談支援専門員が作成する「サービス等利用計画」は、自治体の判断を左右する重要な書類です。この計画作成に、利用者やご家族も積極的に関わりましょう。

  • 計画に盛り込むべきこと:単なる「週〇時間のヘルプが欲しい」ではなく、「なぜその時間数が必要なのか」「サービスがないとどのような生活上の困難が生じるか」を具体的に、かつ説得力をもって記載してもらう必要があります。

相談支援専門員と密に連携し、現在の生活状況と目標を詳細に伝え、最も適切なサービス量を勝ち取りましょう。

アクション2:市町村の障害福祉課との対話

支給決定に不満がある場合や、独自の制度について詳細に知りたい場合は、遠慮せずに市町村の障害福祉課の窓口と対話しましょう。

  • 重要な質問:「なぜこの時間数しか認められないのか、その根拠となる基準は何か?」「隣の市と比べて、どのような独自の支援があるか?」といった質問を具体的に投げかけてみましょう。

対話を通じて、職員が個別のニーズを深く理解してくれることもあります。また、もし不服がある場合は、不服審査請求という公的な手続きも存在することを覚えておきましょう。

アクション3:地域の支援者ネットワークの活用

地域の相談支援事業所やNPO、障害者団体は、その自治体の福祉サービスの実情(裏情報)を最もよく知っています。「どの事業所が人気か」「この市でよく利用できる独自の制度は何か」といった情報は、現場の支援者ネットワークから得られることが多いです。

地域の障害者交流会や、支援者向けの研修会などに参加し、情報交換を行うことも、質の高い支援を得るための重要な活動となります。

✅ 成功のコツ

自治体のサービスは、受動的に待っているだけでは十分な支援を得られないことがあります。制度を「知り」、窓口に「伝え」、計画に「反映させる」という、能動的な姿勢が、最適な支援を受けるための成功の鍵です。

まとめ

この記事では、障害福祉サービスに自治体ごとの違いが生じる理由と、その具体例、そして最適な支援を受けるための見極め方を解説しました。

  • サービスに違いが出る主な理由は、市町村の支給決定基準の裁量権と、地域生活支援事業の実施状況にあります。
  • 特に、移動支援の時間数や、独自の経済的支援の有無は、自治体の福祉レベルを測るバロメーターとなります。
  • 最適な支援を受けるには、情報公開の積極性や利用者負担の軽減策をチェックし、サービス等利用計画の作成に積極的に関わることが大切です。

制度が複雑だからこそ、まずは基礎知識をしっかり押さえ、地域の専門家と連携することが重要です。この情報が、あなたの福祉サービスに対する理解を深め、より良い生活を送るためのサポートとなることを願っています。

✅ 次のアクション

現在お住まいの自治体の「障害福祉サービスの支給決定基準」について、ウェブサイトで公開されているかを確認するか、相談支援事業所にご相談ください。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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