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視覚障害のある私が見つけた“やさしい街角”

📖 約22✍️ 原田 彩
視覚障害のある私が見つけた“やさしい街角”
視覚障害者にとっての「やさしい街角」とは、インフラ整備に加え、「心のバリアフリー」が根付いた街です。その特徴は、途切れない点字ブロックと音響信号の連携、商売道具が歩道のバリアにならない商店街、そして適切な距離感での声かけです。体験談として、名前を覚えて適切な配慮をしてくれるコンビニ店員や、通勤路の障害物を毎日教えてくれるボランティアのエピソードを紹介。視覚障害者が本当に求める支援は、意思を尊重した声かけ、継続的な情報提供、そして「善意のネットワーク」の可視化であり、この小さな優しさが、不安のない地域生活を支えています。

視覚に障害がある者にとって、日常生活における移動は、常に「危険と隣り合わせの挑戦」です。整備された歩道、点字ブロック、信号機の音響など、インフラの整備はもちろん重要ですが、それ以上に私たちの安全と安心を支えてくれるのは、「街角での人々の優しさ」です。

「やさしい街角」とは、高価な設備が揃っている街だけを指すのではありません。それは、困っている時に、適切なタイミングで、適切な方法で声をかけてくれる人がいる街、そして、私たちの存在を自然に受け入れてくれる「心のバリアフリー」が根付いた街のことです。

この記事では、私自身が視覚障害者として長年地域で暮らす中で、特に「この街は優しいな」と感じた具体的なエピソードや、安全な移動を支えてくれる「やさしい街角」の要素について、当事者の視点から深く掘り下げてお話しします。

この体験談を通じて、視覚障害者が本当に求めている支援とは何か、そして、地域住民の方々が日々の生活の中でできる「ちょっとした優しさ」の具体的な行動について、ご理解いただければ幸いです。

この情報が、視覚障害のある方の新しい生活の場選びのヒントとなり、また、地域社会全体の「心のバリアフリー」を推進する一助となることを願っています。


当事者が語る:安心できる「やさしい街角」の3つの特徴

私が「この街は移動しやすい、そして住みやすい」と感じる街には、共通する3つの特徴があります。これらは、インフラと人々の意識が調和して初めて生まれるものです。

特徴1:途切れない「音響と点字ブロックの連携」

視覚障害者にとって、点字ブロックと音響信号機は移動の生命線です。しかし、「やさしい街角」では、単に設備があるだけでなく、それらが途切れることなく、スムーズに連携していることが重要です。

  • 信号機の音響:主要な交差点だけでなく、交通量の多い横断歩道にも音響信号機が設置され、音量が周囲の騒音レベルに応じて適切に調整されていること。
  • 点字ブロックの連続性:駅の出口からバス停、そして主要な病院や役所まで、点字ブロックが寸断されずに続いていること。
  • 誘導の明確さ:点字ブロックの誘導ルートが、柱や看板などの障害物を避けて、最短距離で安全なルートを示していること。

以前住んでいた街では、銀行のATMまで点字ブロックが途中で切れていて、結局人に頼らざるを得ませんでした。しかし、今の街では、「安心して一人で目的地までたどり着ける」という信頼感があります。これは、行政が当事者の意見を反映させて、設計した結果だと感じています。

特徴2:商売道具が「バリア」にならない街

「歩きにくい街」の最も一般的な問題は、商店街や店舗が歩道に置いている商品や看板などの「放置物」です。これらは私たちにとって、予期せぬ衝突や転倒の原因となります。

「以前、点字ブロックの上に店の看板が置いてあり、白杖で気づかずにぶつかり、持っていた杖を折ってしまったことがあります。お店の方に悪気がないのは分かりますが、視覚障害者の『命綱』である点字ブロックを塞ぐ行為は、本当に危険です。」

— 視覚障害のある利用者Aさん(50代)

一方、「やさしい街角」では、商店街全体でルールが徹底されています。歩道の真ん中や点字ブロックの上には、絶対に物を置かないという意識が住民や店主の間で共有されています。これは、行政の指導というよりも、地域コミュニティの自発的な優しさの表れだと感じます。

特徴3:適切な距離感での「声かけ」

最も重要なのは、インフラを超えた人々の優しさです。それは、特別な支援ではなく、「困っている人への自然な気遣い」として現れます。

  • 声かけのタイミング:こちらが明らかに立ち止まっていたり、道に迷っている様子を見せた時に、声をかけてくれること。
  • 声かけの内容:後ろから突然体を触るのではなく、「何かお困りですか?お手伝いしましょうか?」と、正面から声をかけてくれること。
  • リードの仕方:手伝いを頼んだ場合、突然腕を掴むのではなく、自分の肘や肩に軽く触れて誘導を促し、こちらが手を取れるようにしてくれること。

「やさしい街角」の住民は、私たちに対して適切な距離感を保ちながら、私たち自身の意思を尊重してくれます。「心のバリアフリー」が、日々の行動に落とし込まれている証拠です。

💡 声かけのポイント

視覚障害者に声をかける際は、「どこに行きたいですか?」「右側、少し段差がありますよ」など、具体的で明確な情報を伝えるように心がけてください。「そっちじゃない」といった抽象的な表現は、かえって混乱を招きます。


「やさしい街角」で起こった感動のエピソード

日々の暮らしの中には、私たちの心を温かくしてくれる「小さな優しさ」がたくさん溢れています。ここでは、私が実際に体験した、地域住民の温かいサポートのエピソードを紹介します。

エピソード1:名前を覚えてくれたコンビニ店員さん

私が毎朝利用する近所のコンビニエンスストアでの話です。ある日、いつものようにコーヒーを買おうとレジに並ぶと、店員さんが私に話しかけてきました。

「〇〇さん(私の名前)!今日はホットコーヒーのLサイズですね。いつもありがとうございます。」

私はその店員さんに、自分の名前を教えたことはありませんでした。しかし、彼は、私が白杖を持参し、いつも決まったコーヒーを買う様子から、私のことを覚えてくれていたのです。

それ以来、彼がいるときは、私がレジに近づくと、彼は「〇〇さん、コーヒーですね、お待たせしました」と、先に声をかけてくれ、商品の位置を確認する手間が省けました。さらに、お釣りの硬貨の種類を必ず一つひとつ読み上げて渡してくれます。

この店員さんは、私を「視覚障害者」として特別扱いするのではなく、「常連客の一人」として、私の特性に合わせた自然な配慮をしてくれました。この小さな配慮が、私の日常のストレスを大きく軽減し、「この街のコンビニは、私にとってのオアシスだ」と感じさせてくれました。

エピソード2:地域猫ボランティアのおばあちゃんの誘導

私の住む地域には、地域猫のボランティアをしている高齢の女性がいます。その方は、私が通勤ルートでいつも通る狭い路地に、毎日同じ時間帯に餌をあげています。

私が白杖で歩いていると、彼女は必ず、「〇〇さん、おはよう!猫の餌の皿が左の隅にあるから、気をつけてね」と声をかけてくれます。私が彼女に言われるまで、餌の皿の存在には気づきませんでした。

彼女にとって、猫の餌やりは日課ですが、その日課が、私にとっては予期せぬ障害物となってしまうことを、彼女は理解してくれていました。彼女の「声かけ」は、単なる挨拶ではなく、私の安全を守るための情報提供だったのです。

福祉制度に基づく支援ではない、地域住民の目線から生まれた、この細やかで継続的な優しさに、私は深く感動しました。

⚠️ 地域の資源

福祉サービス以外の「インフォーマルな地域の目」は、私たちの安全を守る上で非常に重要です。この目に見えないネットワークこそが、「やさしい街角」の真の力です。


視覚障害者が本当に求めている支援とは?

これらの体験から、視覚障害者が地域に求めているのは、過剰な介入や特別な施設だけではないことがわかります。本当に求めているのは、「共生」という理念に基づいた、以下の3つの支援です。

支援1:当事者の「自己決定権」の尊重

困っている時に手伝いを申し出てくれるのは大変ありがたいことです。しかし、最も困るのは、私たちの意思を確認せずに、いきなり腕を掴んで誘導されることです。

  • 私たちは、「助けが必要かどうか」「どのルートで行きたいか」を自分で決めたいと思っています。
  • 支援の際は、「右腕をどうぞ」「私が案内しましょうか?」など、選択肢を与え、私たちの意思を尊重してください。

私たちの移動をサポートするのではなく、私たちの移動の「自己決定」をサポートするという姿勢が、真の支援です。

支援2:継続的な「情報提供」

道案内をお願いするだけでなく、日々の生活の中で、私たちには「今、この瞬間に何が起こっているか」という情報が絶えず必要です。

  • 街の最新情報:「この先に工事があります」「〇〇店は今日から休業です」など、地域の変化を、行政や町内会が視覚障害者向けに継続的に発信すること。
  • 店内での情報:スーパーや薬局などで、商品の配置が変わった場合や、特売品の位置など、私たちにとっての環境の変化を知らせてくれること。

情報が途切れない街は、予測可能性が高く、不安なく生活できる「やさしい街角」です。

支援3:見守りネットワークの「可視化」

地域には、エピソードで紹介したコンビニ店員さんやボランティアの方々のような、無意識にサポートしてくれている人々がいます。この「善意のネットワーク」を可視化することが、私たちの安心感を高めます。

  • 例:サポートを積極的に行う店舗に「声かけサポーター店」のようなステッカーを貼る。
  • 例:地域住民に対し、簡単な「視覚障害者の安全な誘導方法」の研修機会を提供する。

これにより、私たちは「あのステッカーがある店なら安心して入れる」と判断でき、地域全体が協力して見守ってくれているという安心感を持つことができます。


まとめ

この記事では、視覚障害のある当事者の視点から、「やさしい街角」の特徴と、地域住民の温かい優しさがもたらす感動のエピソードをご紹介しました。

  • 「やさしい街角」は、点字ブロックと音響信号の完璧な連携というインフラ、歩道上の放置物がないという環境管理、そして適切な距離感での声かけという人々の意識で成り立っています。
  • 私たちが本当に求めているのは、自己決定権の尊重、継続的な情報提供、そして「善意のネットワーク」の可視化です。

「やさしさ」は、特別なスキルや制度ではなく、日々の暮らしの中の「ちょっとした気遣い」から生まれます。この小さな優しさが積み重なることで、視覚障害者が安心して、笑顔で社会に参加できる「やさしい街角」が、日本中のどこにでも生まれることを願っています。

✅ 次のアクション

今日、あなたが通る道で、点字ブロックの上に物が置かれていないかを確認してみましょう。もし見つけたら、そっと脇に寄せる、あるいは店主に声をかけることから、「やさしい街角」づくりを始めてみませんか。

原田 彩

原田 彩

はらだ あや35
担当📚 実務経験 10
🎯 地域情報🎯 バリアフリー

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。

大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

街歩き、写真撮影

🔍 最近気になっているテーマ

インクルーシブな街づくり、ユニバーサルデザイン

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