精神障がいのある方の外出不安を減らす方法と支援サービス

精神障がいのある方が自信を持って外へ
外出不安を減らす方法と活用できる支援サービス
精神障がいのある方々にとって、「外出」は回復や社会参加、日常生活の維持に欠かせない活動ですが、同時に強い不安や恐怖、パニックの発作といった大きなハードルを伴うことがあります。特に、広場恐怖症や社会不安などにより、人混みや公共交通機関の利用を避けてしまう方も少なくありません。
「外出したい気持ちはあるけれど、不安に負けてしまう」「家族や支援者が同行するたびに大きな負担を感じている」といった悩みは、多くの当事者やご家族が抱える共通の課題です。このブログ記事では、そのような外出への不安を段階的に減らし、自信を持って外へ一歩踏み出すための心理的な準備方法や、具体的な環境調整のコツ、そして利用可能な公的支援サービスを詳しくご紹介します。
この記事を通じて、読者の皆さまが外出への意欲を取り戻し、ご自身のペースで活動範囲を広げていくための、具体的かつ温かい道筋を見つけていただければ幸いです。
外出への不安を理解し、準備を始める
精神障がいのある方の外出不安は、単なる「気が進まない」というレベルではなく、身体症状を伴う強い恐怖や不安として現れることが多くあります。まずはその不安のメカニズムを理解し、無理なく準備を進めることが大切です。
「不安のサイン」を事前に把握する
外出中にパニックや強い不安が起こる前に、ご自身の体や心に現れる「不安のサイン」を事前に把握しておくことが、適切な対処への第一歩です。サインは人それぞれですが、例えば以下のような症状が挙げられます。
- 身体的なサイン: 動悸、息苦しさ、手の震え、急な発汗、めまい。
- 精神的なサイン: 強い焦燥感、恐怖、思考がまとまらない、非現実感。
- 行動的なサイン: その場から逃げ出したい衝動、立ち止まる、何度も確認する。
これらのサインが出たときに、「これは不安が始まった合図だ」と認識できるだけでも、パニックへの移行を防ぐことができます。日頃から記録をつけるなどして、ご自身のサインを明確にしましょう。
スモールステップで「慣らし外出」を計画する
不安が強い場合、いきなり遠方や人混みの場所へ出かけるのは禁物です。不安を克服するための最も効果的な方法は、心理療法でも用いられる「段階的曝露(ばくろ)」、つまり不安の少ない状況から徐々に慣れていく方法です。
まずは、自宅の庭や玄関先に出ることから始め、慣れてきたら近所のコンビニまで歩く、次に一駅だけ電車に乗ってみる、といったように、不安のレベルに応じて目標を細分化します。この「スモールステップ」で成功体験を積み重ねることが、外出への自信を育みます。
✅ 成功のコツ
外出の目標を立てる際、不安レベルを10段階で評価する(例:自宅周辺=2点、ラッシュ時の電車=10点)など、客観的な指標を用いると、無理のない計画を立てやすくなります。不安度が5点以下の目標から始めることが推奨されます。
パニックや不安発作への「対処キット」の準備
外出中に不安やパニック発作が発生した際に、すぐに使える「対処キット(安全グッズ)」を携帯しておきましょう。このキットは、不安を軽減したり、現実に戻るためのサポートをしてくれたりするアイテムを集めたものです。
具体的なキットの中身の例としては、以下のようなものがあります。
- 頓服薬: 医師から処方された緊急時の頓服薬と、服用方法のメモ。
- 五感を刺激するアイテム: 強い香りのアロマオイル(嗅覚)、冷たい水や氷(触覚)、好きな音楽(聴覚)。
- グラウンディングのためのメモ: 「5-4-3-2-1」などのグラウンディングテクニックを記載したカード。
- 連絡先カード: 緊急連絡先と、必要な支援内容を記載したヘルプカード。
このキットがバッグに入っているという事実自体が、精神的な安心感につながります。
外出時の心理的・環境的な調整テクニック
準備が整ったら、実際の外出時に不安を最小限に抑え、快適に過ごすための具体的なテクニックと環境調整について考えていきましょう。
「ヘルプマーク」「精神障害者保健福祉手帳」の活用
外見からは分かりにくい精神障がいをお持ちの方が、外出先で周囲に配慮や支援を求めやすくするために、ヘルプマークを積極的に活用しましょう。ヘルプマークは、周囲に支援が必要であることを示す大切なサインです。
また、精神障害者保健福祉手帳は、公的な運賃割引の証明になるだけでなく、緊急時に警察官や駅員に自身の状況を理解してもらうための重要な情報源となります。手帳を提示することで、運賃割引を受けながら、外出への不安を軽減できます。
💡 ポイント
ヘルプマークは、単に身につけるだけでなく、裏面に緊急時の連絡先や、「パニックになったら静かに見守ってほしい」といった具体的なメッセージを記載しておくと、周囲の人が適切に対応しやすくなります。
時間帯とルートの戦略的選択
不安を誘発する要因の一つは、人混みや騒音です。外出する際は、混雑する時間帯(ラッシュアワーなど)を避けるように計画しましょう。平日の午前10時から午後3時の間や、土日祝日の早朝などは、比較的落ち着いて移動できることが多いです。
また、移動ルートを選ぶ際も、できる限り静かで人通りの少ない道や、乗り換え回数が少なく、休憩できる場所(公園、カフェ、駅の待合室など)が多いルートを選ぶようにします。経路検索アプリなどで、事前にルート上の「逃げ場」を確認しておくことが、安心感につながります。
グラウンディングとリラクゼーションの応用
強い不安やパニックの兆候が現れたら、すぐにその場でグラウンディング(接地)テクニックを試みましょう。これは、意識を「今、ここ」の現実に戻すための手法です。
具体的なグラウンディングの方法や、深呼吸法(例:4秒吸って、4秒止めて、6秒で吐く)を、外出中にいつでも実践できるように繰り返し練習しておくことが大切です。また、不安レベルが高まってきたら、一時的に人目につかない場所で休憩を取り、音楽を聴いたり、持参したリラックスアイテム(アロマなど)を使ったりして、意識的に緊張を解きましょう。
利用できる公的支援サービスとその活用法
精神障がいのある方の外出をサポートするための公的な支援サービスは複数存在します。これらのサービスを理解し、活用することで、単独での外出が可能になり、ご家族や支援者の負担を軽減できます。
移動支援(ガイドヘルプ)の活用
移動支援は、障害のある方の社会生活上必要な外出や、余暇活動、社会参加のための外出を、ガイドヘルパーが同行して支援するサービスです。精神障がいのある方も、自治体の認定があれば利用することができます。
移動支援を活用することで、以下のような外出が可能になります。
- 通院や役所手続き: 一人では不安な場所への付き添い。
- 社会参加・余暇: 映画鑑賞、買い物、趣味の活動への同行。
- 外出訓練: 不安の少ない場所から徐々に慣れていく練習の付き添い。
ヘルパーに付き添ってもらうことで、パニック時の緊急対応や、周囲への状況説明などのサポートを受けられるため、外出への不安を大きく軽減できます。
✅ 成功のコツ
移動支援を利用する際は、ヘルパーに対し、ご自身の「不安のトリガー(例:地下鉄、特定の音)」と「落ち着くための対処法(例:手を握る、静かに見守る)」を事前に明確に伝えておきましょう。これにより、より質の高い支援を受けられます。
自立訓練(生活訓練)による外出訓練プログラム
自立訓練(生活訓練)は、地域で自立した生活を送るためのスキルを身につけるためのサービスです。このプログラムの中には、集団または個別での「外出訓練」が含まれていることが多くあります。
ここでは、専門のスタッフの指導のもと、公共交通機関の利用、買い物、金銭管理といった、日常生活に必要な外出スキルを、安全な環境で段階的に学ぶことができます。特に、同じ課題を持つ仲間と一緒に取り組むことで、心理的な安心感が得られやすいというメリットもあります。
地域活動支援センター(地域移行支援)との連携
地域活動支援センター(地活センター)は、地域住民との交流を深めたり、創作活動や生産活動を行ったりする場です。地活センターが実施するグループでの外出活動に参加することで、楽しみながら、かつ集団の中での安心感を持って外出に慣れることができます。
また、入院中や施設入所中の方が地域で生活を始めるための「地域移行支援」サービスでは、退院・退所後の生活を見据えた外出訓練や、地域社会との繋がり作りをサポートしてくれます。
ご家族・支援者の方へ:寄り添うための心がけ
精神障がいのある方の外出をサポートするご家族や支援者の方々は、当事者の不安に寄り添い、適切に対応するための知識と心の準備が必要です。無理のない範囲で、当事者の自立を促すサポートを心がけましょう。
本人の「意思」と「ペース」を尊重する
外出を促すことは大切ですが、本人の「行きたい」という意思と、その日の体調、不安のレベルを何よりも尊重することが重要です。「今日は気分が乗らない」「この場所は無理」といったサインを見逃さず、無理強いは絶対に避けましょう。
不安を乗り越えるためには成功体験の積み重ねが必要ですが、無理をして失敗体験を重ねてしまうと、かえって外出への意欲が損なわれてしまいます。「今日はここまででOK」という柔軟な姿勢と、小さな成功を一緒に喜ぶ姿勢が、長期的な回復につながります。
「妻は私に『大丈夫?』と何度も聞くのではなく、『少し休んでみる?』と選択肢をくれることが一番助かると言っていました。介入しすぎない見守りが大切だと学びました。」
— 精神障がいのある配偶者を持つ夫 Hさんの体験談
「言葉」と「態度」で安心感を与える
当事者が不安を感じているとき、ご家族や支援者の言葉遣いや態度は、当事者の安心感に大きく影響します。不安を否定したり、責めたりするような言葉は避け、共感を示すことが大切です。
「不安だよね、ここにいるよ」「大丈夫、ゆっくりでいいよ」といった、肯定的で短い言葉で安心感を与えましょう。また、急な動きや大きな声も不安を増幅させる原因となるため、常に落ち着いたトーンで接し、物理的な接触(例:手を握る、肩に触れる)がお子さまにとって安心材料になるかどうかを事前に確認しておくことも重要です。
⚠️ 注意
支援者やご家族自身のストレス管理も非常に重要です。常に当事者の不安に引きずられて疲弊してしまうと、質の高い支援は続けられません。レスパイトケアの利用や、支援者自身の相談窓口(例:家族会、精神保健福祉センター)を活用しましょう。
「病識」と「支援情報」の共有
同行する支援者やご家族は、当事者の精神障がいに対する正しい病識(病気についての知識と理解)と、服用している薬、緊急時の対処法についての情報を共有しておく必要があります。特に、外出先での急な症状変化に際して、冷静に医療機関や警察、救急隊員に状況を説明できるように準備しておきましょう。
また、移動支援や自立訓練など、利用可能な福祉サービスについての最新情報を共有し、当事者が自分で選択できるようにサポートすることも、自立を促す上で非常に大切です。
「よくある質問」と相談窓口
精神障がいのある方の外出不安に関して、よく寄せられる質問と、困った時の相談窓口をご紹介します。
Q. 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるメリットは何ですか?
A. 精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットは多岐にわたりますが、外出支援においては、主に公共交通機関の運賃割引(例:JR、私鉄、バス、タクシーなどの運賃割引)、そして公的な身分証明としての役割があります。手帳を提示することで、運賃の経済的負担が軽減され、外出への心理的なハードルも下がります。
Q. 不安発作が起きた時、周囲の人にどう説明すれば良いですか?
A. 周囲の人に説明する際は、簡潔かつ具体的に伝えることが重要です。ヘルプカードを提示した上で、「持病で急に不安になってしまいました」「大丈夫なので、静かに見守っていただけますか」といった短い言葉で依頼しましょう。詳細な説明は、落ち着いてからで大丈夫です。
Q. 医療機関への通院も移動支援でサポートしてもらえますか?
A. はい、医療機関への通院も、移動支援サービスの主要な利用目的の一つとして認められています。一人での通院が難しい場合や、通院途中に不安が高まりやすい場合は、相談支援事業所を通じて移動支援の申請を行いましょう。ただし、単に付き添うだけでなく、通院に必要な移動や手続きのサポートが含まれます。
相談窓口と参考リンク
外出への不安や支援サービス利用について迷ったときは、以下の専門窓口へ相談しましょう。
- 精神保健福祉センター: 精神的な健康相談、外出への不安に対する心理的なアドバイス、地域の資源(自助グループなど)の紹介。
- 相談支援事業所: 移動支援や自立訓練など、福祉サービスの利用計画(サービス等利用計画)作成と申請のサポート。
- かかりつけの医療機関(主治医・看護師): 症状の変化や、頓服薬の使用タイミングなど、医学的な観点からのアドバイス。
専門家と連携し、無理のないペースで外出を再開・継続するための計画を立てましょう。
まとめ
精神障がいのある方の外出不安を減らし、活動範囲を広げるためには、不安のサインの早期把握と、スモールステップでの計画が不可欠です。ヘルプマークの活用や、頓服薬、対処キットの携帯は、外出中の安心感を高めるための物理的な支えとなります。
また、移動支援や自立訓練といった公的サービスを積極的に活用することで、専門的なサポートを受けながら、安全かつ着実に外出に慣れることができます。ご家族や支援者は、当事者の意思とペースを尊重し、穏やかな態度で寄り添うことが大切です。一つずつ不安を乗り越え、ご自身の「行きたい」を叶えていきましょう。
- ポイント1: スモールステップの段階的曝露を基本とし、無理のない目標設定で成功体験を積む。
- ポイント2: ヘルプマークと対処キットを携帯し、緊急時の安心材料を確保する。
- ポイント3: 移動支援や自立訓練といった公的サービスを積極的に利用し、専門家のサポートを得る。

原田 彩
(はらだ あや)35歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。
大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
街歩き、写真撮影
🔍 最近気になっているテーマ
インクルーシブな街づくり、ユニバーサルデザイン





