外出をサポートする民間サービスと自治体サービスの違い

安心・快適な外出を実現!
民間サービスと自治体サービスの賢い使い分けガイド
外出支援サービスは、障害のある方やそのご家族にとって、社会参加や生活の質(QOL)を向上させるために不可欠なものです。しかし、一言で「外出支援」と言っても、国が定める公的なサービス(同行援護、行動援護など)と、民間企業やNPOが提供する自費サービス、さらに市町村独自のサービス(移動支援)があり、その違いや使い分けに戸惑う方は少なくありません。
「この活動は公的サービスでまかなえるのか?」「長時間の旅行は自費で頼むしかないのか?」といった疑問は、多くの方が抱える共通の悩みです。支援の種類によって、利用できる活動範囲、費用の負担、ヘルパーの専門性などが大きく異なるため、それぞれの特徴を理解することが、最適な支援を受けるための第一歩となります。
本記事では、外出をサポートするサービスを「公的(自治体)サービス」と「民間サービス」に分け、それぞれのメリット・デメリット、利用できる具体的な活動、そして費用負担を抑えながらニーズを満たす賢い組み合わせ方について詳しく解説します。この記事を参考に、ご自身の生活スタイルにぴったりの支援を見つけ、安心で快適な外出を実現しましょう。
公的(自治体)サービスの役割と制限
公的サービスは、障害者総合支援法や地域生活支援事業に基づき提供され、生活の土台を支える役割を果たします。費用負担が少なく専門性が保証されていますが、利用目的や時間に制限があるのが特徴です。
国制度サービス:同行援護・行動援護の特徴
同行援護(主に視覚障害者向け)と行動援護(主に知的・精神障害者向け)は、全国統一の基準で提供されるサービスです。これらの支給量は、障害支援区分や個別のニーズに基づき市町村によって決定されます。
- 目的: 生活上、または社会生活を送る上で不可欠な外出を支援すること。これには、通院、役所での手続き、生活必需品の買い物などが含まれます。
- 専門性: サービスを提供するヘルパー(ガイドヘルパー)は、各サービスに必要な専門研修(同行援護従業者養成研修など)を修了していることが義務付けられています。
- 費用: 原則として費用の9割が公費で賄われ、利用者は1割の自己負担(所得に応じた上限あり)で利用できます。
このサービスの最大のメリットは、経済的な負担が非常に少ない点と、専門的なスキルを持ったヘルパーが支援してくれるという安心感です。
地域サービス:移動支援(ガイドヘルプ)の特徴
移動支援は、市町村が独自の判断と財源で実施する地域生活支援事業です。これは、国制度サービスでは対象外となる、社会参加や余暇活動といった「生活を豊かにする外出」を支援するために設けられています。
- 目的: 映画鑑賞、美術館訪問、友人との会食、地域のイベント参加など、社会的な活動を目的とした外出。
- 支給量の違い: 支給される時間数(例:月15時間まで)や、対象となる活動の範囲は、自治体によって大きく異なります。旅行や長時間の趣味活動は対象外とされることが多いです。
- 費用: 国制度サービスと同様に、原則1割の自己負担ですが、自治体によっては全額助成(無料)としている場合もあります。
移動支援は、柔軟性が高い反面、支給量の上限が厳しく設定されていることが多く、長時間・長距離の活動には対応しきれないという制限があります。
⚠️ 注意
公的サービスは、原則として「通勤・通学、および経済活動を目的とした外出」や「ヘルパーが担う必要のない純粋な観光旅行」には利用できません。これらの活動には、後述の民間サービスや、雇用主からの合理的配慮を活用する必要があります。
民間サービス(自費サービス)のメリットと活用法
公的サービスでカバーできない「活動内容」「時間」「距離」の壁を越えるために、民間企業やNPOが提供する自費サービスは非常に有効です。特に柔軟性と自由度が高い点が大きなメリットです。
民間サービスの大きなメリット:自由度と柔軟性
民間サービス、または自費の訪問介護・付き添いサービスは、利用者が費用を全額負担する代わりに、利用目的や時間帯、サービス内容に制限がほとんどありません。
- 旅行・観光: 国内外の旅行への付き添い、長時間の観光地巡りなど、公的サービスでは対象外の活動に対応できます。
- 時間外の利用: 深夜や早朝といった、公的サービスではヘルパー確保が難しい時間帯の付き添いも依頼しやすいです。
- 特定のスキル: 介護だけでなく、特定の趣味や活動(例:スポーツの付き添い、アート鑑賞の解説補助)に精通したヘルパーを指名できる場合があります。
この自由度の高さから、「人生をより豊かにする特別な活動」を実現するためのツールとして、民間サービスは不可欠な存在となっています。
福祉タクシー・介護タクシーの積極的な活用
移動手段に特化した民間サービスとして、福祉タクシーと介護タクシーがあります。これらは、車いすのまま乗降できたり、寝たきりの方でも利用できたりする車両とサービスを提供します。
| サービスの種類 | 提供内容 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 福祉タクシー | 車いすのまま乗降可能な車両提供。運賃は一般タクシーとほぼ同等。 | 通院、近隣の買い物、友人宅への訪問など。 |
| 介護タクシー | 運転手が介護資格を持ち、移乗や移動の介助も行う。運賃に加え介助料が発生。 | 病院内への付き添い、重度介助が必要な長距離移動など。 |
多くの自治体では、障害者手帳を持つ方に対してタクシー利用料金の助成券を交付しており、民間サービスであっても費用の一部を公的に支援してもらうことが可能です。この助成制度を積極的に活用しましょう。
公的サービスと民間サービスの徹底比較
公的サービスと民間サービスは、それぞれ一長一短があります。ご自身のニーズに合わせて最適なサービスを選べるよう、主要な項目を比較します。
費用の負担と安定性の比較
最も大きな違いは、費用負担とサービスの安定性です。公的サービスは財源が公費であり、自己負担は1割(上限あり)と安定的ですが、時間数に上限があります。
「月々の通院や日用品の買い物は、費用が安い公的サービスの同行援護でまかないます。年に一度の家族旅行や、趣味の長時間のイベントには、費用はかかっても融通が利く自費のヘルパーさんを依頼するように、予算を分けています。」
— ご家族様の声
一方、民間サービスは全額自費ですが、予約の確実性や時間延長の柔軟性が高く、突発的なニーズや、特別な活動に対応しやすいというメリットがあります。
活動目的と利用時間の制限の比較
公的サービスは「社会生活の維持」を目的とするため、活動範囲が狭いです。特に、以下のような活動は公的サービスでは困難なことが多いです。
- 長時間の旅行や宿泊: 移動支援では基本的に対象外。
- 特定個人との交流: 友人や親族との私的な交流を目的とした活動は、個別の判断が必要。
- ヘルパーの専門外の業務: 料理や特定の専門知識を要する案内など。
民間サービスは、これら「余暇・趣味・交流」に関する活動にも柔軟に対応できるため、活動の幅を広げたい方には必須の選択肢となります。
💡 ポイント
民間サービスの利用を検討する際は、サービス提供事業者が介護保険法や障害者総合支援法に基づく指定を受けているかどうかを確認しましょう。指定事業者は、サービス提供に関する一定の基準を満たしており、信頼性が高いです。
費用を抑えながら活用する「ハイブリッド支援」戦略
公的サービスの低負担と民間サービスの柔軟性、それぞれの良さを最大限に引き出すためには、両者を組み合わせる「ハイブリッド支援」戦略が最も効果的です。
戦略1:役割分担の明確化
ご自身の生活に必要な外出をリストアップし、公的サービスでまかなう部分と、民間サービスで補う部分を明確に役割分担します。
- 公的サービス担当(例:月20時間): 週1回の通院、週1回のスーパーでの買い物、月1回の役所手続き。
- 民間サービス担当(例:年間予算設定): 季節ごとの日帰り旅行、年末年始の遠方への帰省。
この戦略を立てることで、公的サービスの支給時間を無駄遣いせず、本当に必要な活動に集中して利用でき、全体の費用対効果を高めることができます。
戦略2:自費サービス事業者と福祉事業所の連携
公的サービスを提供する福祉事業所と、民間サービスを提供する自費サービス事業者が連携している場合もあります。これにより、公的サービスの支給時間を超えた際に、スムーズに自費サービスに切り替えることが可能です。
また、重度な介助を必要とする場合、重度訪問介護のヘルパーがそのまま自費で付き添ってくれることで、介助方法が変わらず、利用者の安心感に繋がります。まずは、現在利用している福祉事業所に、自費サービスへの対応が可能か尋ねてみましょう。
「自費サービスを使うことで、公的サービスでは断られていた旅行に行けるようになりました。いつものヘルパーさんが来てくれるので、旅行先での不安もなく、本当に助かっています。公費では難しい部分を、柔軟に補ってくれるのが民間サービスの魅力です。」
— 家族・支援者様の声
「よくある質問」と相談窓口
外出サポートに関する、公的・民間サービスの使い分けについて、よくある質問と、相談窓口をご紹介します。
Q. 民間サービスの費用はどれくらいが目安ですか?
A. 民間サービスの料金体系は、事業者や地域によって大きく異なりますが、一般的な自費の訪問介護や付き添いサービスの場合、時給換算で2,500円~4,000円程度が目安となります。これに加えて、深夜早朝の割増料金や、長距離移動の交通費実費が加算されます。必ず事前に詳細な見積もりを取り、サービス内容と料金体系を納得した上で契約しましょう。
Q. 公的サービスの上限時間を増やしてもらいたいのですが、どうすればいいですか?
A. 公的サービスの支給量は、市町村の障害福祉担当窓口が決定します。支給量を増やすためには、担当の相談支援専門員を通じて、以下の点を市町村に再度主張する必要があります。
- 現在の支給量では、生活上不可欠な活動(通院など)に支障が出ている具体的な事実。
- 家族の介護力の低下(仕事や病気など)により、自宅での支援が困難になっていること。
これらの根拠を裏付ける書類(診断書、勤務証明書など)を添えて、サービス等利用計画の見直しを依頼しましょう。
Q. 遠方への旅行で福祉タクシーを利用したい場合、自治体の助成は使えますか?
A. 自治体が発行するタクシー助成券は、原則として、その券を発行した自治体内の移動、または近隣地域との往復に限定されることが多いです。遠方への旅行先で、現地の福祉タクシーを利用する際には、その現地の自治体が発行する助成券は使えません。ただし、有料道路の障害者割引は、長距離移動でも全国的に利用できますので、忘れずに手続きをしておきましょう。
相談窓口と参考リンク
公的・民間サービスの利用や費用に関する相談は、以下の窓口へ行いましょう。
- 地域の相談支援事業所: 公的サービスの支給量、利用計画、公的と民間サービスの連携に関する専門的な相談。
- 市町村の障害福祉担当窓口: 移動支援のローカルルール、タクシー助成券、各種助成制度の詳細確認。
- 地域のNPO法人や自立生活センター: 民間サービス事業者に関する情報、自費サービスの利用に関する当事者の声。
これらの専門家と連携し、ご自身の生活に最適な支援体制を構築しましょう。
まとめ
外出サポートは、費用の安い公的サービス(同行援護、移動支援)を「生活の土台」として最大限活用し、時間や活動内容に制約のない民間サービスを「生活の質の向上」のために柔軟に活用するハイブリッド戦略が有効です。公的サービスでは、専門性の高いヘルパーによる支援が低負担で受けられますが、支給量には上限があります。
長時間の活動や旅行、夜間の付き添いなど、公的サービスではカバーできない部分は、福祉タクシーや自費の付き添いサービスといった民間サービスを組み合わせることで、費用を抑えつつ活動の幅を広げることが可能です。それぞれのサービスの特徴と制限を理解し、ご自身のニーズに合った最適な支援体制を築きましょう。
- ポイント1: 公的サービス(同行援護・移動支援)は、費用負担が少ないため、生活必需の外出に集中して活用する。
- ポイント2: 民間サービス(自費ヘルパー、福祉タクシー)は、旅行や夜間など、公的サービスが使えない部分の柔軟なサポートに活用する。
- ポイント3: 自治体のタクシー助成券や有料道路割引など、民間サービスでも費用を抑えられる公的支援を漏れなく利用する。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
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読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





