自分に向いた働き方を見つける「自己分析」の方法

自分に向いた働き方を見つける「自己分析」の方法
「頑張っているのになぜか疲れてしまう」「職場の環境が合わず、すぐに体調を崩してしまう」—。従来の就労環境では、自分の特性に合わない働き方を強いられ、能力を発揮できないと感じている障害のある方は少なくありません。しかし、その「働きづらさ」の原因を知り、環境を自分でデザインできれば、あなたの特性は「替えの利かない独自の強み」へと変わります。
自分らしい働き方、特に起業やフリーランスといった自由度の高い道を選ぶための最初の、そして最も重要なステップが「徹底した自己分析」です。この記事では、あなたの「特性」を仕事のヒントに変えるための、具体的な自己分析フレームワークを、4つのステップに分けて詳しく解説します。この分析を通じて、長く続けられる働き方、そしてあなただけの「適職」を見つけるための確固たる土台を作りましょう。
ステップ1:過去の経験から「苦痛」と「喜び」を抽出
自分に向いた働き方を見つけるヒントは、あなたがこれまでに経験した仕事や趣味の中に隠されています。まずは過去の経験を振り返り、感情の起伏が激しかった出来事を洗い出しましょう。
ストレスと疲労の原因を特定する
過去の職務経験やアルバイト、あるいは学校生活など、あなたが「強いストレス」や「極端な疲労」を感じた状況を具体的に書き出します。重要なのは、「何」にストレスを感じたのかという具体的なトリガー(引き金)を特定することです。
- 対人関係:大人数でのミーティング、雑談、上司からの曖昧な指示など。
- 環境要因:騒音、強い光、頻繁な電話応対、暑さ・寒さなど。
- 業務要因:マルチタスクの要求、突発的なタスク変更、長時間の単純作業など。
これらの「苦痛の原因」を特定することで、「避けるべき仕事環境や業務内容」が明確になり、起業後の合理的配慮のリストとなります。
時間を忘れるほど夢中になった瞬間を記録
次に、ストレスとは真逆の、「時間や労力を惜しまず没頭できたこと」や「人から褒められたこと」をリストアップします。これらがあなたの「特異な才能」であり、ビジネスの核となる可能性を秘めています。
- 没頭体験:趣味での情報収集、複雑なパズルの完成、特定のデータの整理、文章の作成など。
- 得意意識:「君の作ったマニュアルはわかりやすい」「この企画は斬新だね」など、他者から評価された能力。
- 自己肯定感:その作業をしている時に、最も「自分らしい」「満たされている」と感じた瞬間。
特に、発達障害のある方に見られる「過集中」や、特定の分野への「こだわり」は、一般的には「苦手」とされますが、起業やフリーランスにおいては「圧倒的な専門性」という強力な武器になり得ます。
ステップ2:特性を「強み」に転換するフレームワーク
洗い出した「苦痛」と「喜び」の情報を基に、あなたの特性を具体的なビジネススキルへと転換していきます。
特性と強みの対比分析
特性の裏には必ず強みが隠れています。それを意識的に見つけ出し、仕事として定義し直します。
| 「苦手」な特性の側面(ペイン) | 「強み」への転換 | 適した仕事の方向性 |
|---|---|---|
| 聴覚・視覚の過敏さ | 集中力の高さ、静かな環境での作業能力 | データ入力、翻訳、プログラミング(在宅・静音環境) |
| 臨機応変な対応が苦手 | 計画性、高い正確性、マニュアル順守能力 | 校正・校閲、マニュアル作成、ルールベースの業務 |
| 対人コミュニケーションが苦手 | 客観性、冷静な情報分析、文章での高い表現力 | Webライティング、リサーチ代行、チャットサポート業務 |
あなたが苦痛だと感じてきたことは、他の人には難しい「特別な能力」である可能性が高いです。この対比分析により、あなたの才能の輪郭がはっきりしてきます。
「時間・場所・方法」の合理的配慮を設計
自分に向いた働き方とは、単に仕事内容だけでなく、「どのように働くか」という環境設計によって決まります。フリーランスや起業は、この環境を自分で設定できるのが最大のメリットです。
あなたの特性が最も発揮される「時間・場所・方法」を明確に言語化しましょう。
- 時間:(例:午前中は集中できるが、午後は疲労がたまるため)作業は午前9時〜12時の3時間のみに限定。
- 場所:(例:感覚過敏があるため)自宅の防音スペースでのみ作業し、オンライン会議も極力避ける。
- 方法:(例:ADHDで注意が逸れやすい)タスクは一つずつ、タイマーを使って区切りながら行う。
これは、後にクライアントや協力者に伝える「業務上のルール」となります。
ステップ3:現実的な「収益の柱」を検討
自己分析で才能と環境が明確になったら、それを「お金を稼げる仕事」として成立させるための具体的な収益モデルを検討します。
才能を収益に繋げる3つの視点
あなたの「強み」と「環境設計」を活かして、どのように収益を得るかを考えます。
- タスク代行型:あなたの強みを活かした作業を、必要な人に代わって行う。(例:Webデザイン、データ入力)
- ノウハウ販売型:あなたが長年の経験で培った知識や解決法を、情報として提供する。(例:特性を活かしたマニュアル作成、オンライン講座)
- 当事者視点型:特性を持つ当事者でなければ気づけない視点や経験を、サービスやコンサルティングとして提供する。(例:企業への合理的配慮コンサルティング)
最初は、時間と労力を直接売る「タスク代行型」から始め、実績ができてから「ノウハウ販売型」へと移行していくのが、低リスクなスモール起業の王道です。
「やりたいこと」と「稼げること」のバランス
自己分析で「やりたいこと」が見つかっても、それがすぐに収益に繋がるとは限りません。大切なのは、「市場のニーズ」と「あなたの強み」のバランスです。
⚠️ 注意
「やりたいこと」ばかりに固執すると、仕事が獲得できずに資金が尽きてしまうリスクがあります。まずは「稼げること」で生活基盤を安定させ、その後の余力で「やりたいこと」に取り組むという、段階的な計画を立てましょう。
収益モデルを検討する際は、クラウドソーシングサイトで「あなたの強みに関連する仕事」が、現在どれくらいの単価で募集されているかをリサーチし、市場の感覚を掴んでおくことが非常に重要です。
ステップ4:専門家のフィードバックと行動計画
自己分析は、自分一人で完結させるのではなく、専門家や第三者の客観的な意見を取り入れることで、精度が格段に向上します。
就労移行支援での客観的なアセスメント
自己分析の結果を、ぜひ地域の就労移行支援事業所や、職業センターに持ち込んで相談してみましょう。
支援員は、あなたの自己分析シートを基に、より客観的な適性検査(アセスメント)を行い、その特性がどのような職業分類にマッチするかを専門的な視点からフィードバックしてくれます。また、あなたの特性に適したスキル習得のためのプログラム(Webデザイン、ライティングなど)を紹介してくれます。
「自分ではただの『こだわり』だと思っていたことが、支援員さんから『それは品質管理能力です』と言われ、初めて仕事に繋がる強みだと認識できました。」
— 利用者 Iさんの声
最初の一歩となる具体的な行動計画
自己分析が完了し、専門家のフィードバックを得たら、いよいよ具体的な行動計画に移ります。
- スキル習得:強みを活かせる分野(例:Webライティング)の基礎講座を就労移行支援で受講する。
- ポートフォリオ作成:スキル習得と並行して、クライアントに見せるための実績集(サンプル作品)を作る。
- スモールスタート:クラウドソーシングサイトに登録し、単価の低いタスクから実際に仕事を受注し、体調と作業ペースを試す。
最初から完璧を目指す必要はありません。まずは「小さな成功体験」を積み重ねることで、自分らしい働き方への自信を深めていきましょう。
よくある質問(Q&A)と次のアクション
自分に向いた働き方を見つけるための自己分析に関する、よくある質問とその回答をご紹介します。
家族や支援者の意見は聞くべきですか?
はい、積極的に聞くべきです。自分のことは自分では見えにくいものです。
家族や支援者は、あなたが最もリラックスしている状態や、逆に最も苦しんでいる状況を客観的に見ています。「あなたが一番楽しそうにやっていることは何?」「どんな時に体調を崩しやすい?」といった質問を投げかけ、自分では気づかない強みや弱みを教えてもらいましょう。ただし、最終的な判断は、あなた自身の気持ちを最優先してください。
自己分析を始めるためのツールはありますか?
特別なツールは不要ですが、以下のシンプルなツールから始めることをおすすめします。
- 紙とペン:手を動かして書き出すことで、思考が整理されやすくなります。
- エクセル/スプレッドシート:過去の経験を時系列で整理し、感情の点数(10点満点など)をつけて客観的に分析するのに役立ちます。
また、就労移行支援事業所などでは、職業適性検査(VPIなど)を利用することもでき、科学的な視点からのフィードバックを得られます。
次のアクションとして具体的に何をすればいいですか?
この記事で学んだフレームワークを基に、まずは自己分析の準備を始めましょう。
✅ 成功のコツ
ノートやエクセルを開き、過去の経験から「強いストレスを感じた出来事」と「時間を忘れて夢中になれた出来事」を、それぞれ最低5つずつ具体的に書き出すことから始めてください。
まとめ
- 自分に向いた働き方を見つける鍵は、過去の経験から「苦痛の原因」と「特異な才能」を具体的に抽出する自己分析です。
- 特性を、仕事の「強み」と、体調の波を考慮した「合理的配慮の設計(時間・場所・方法)」へと転換させましょう。
- 自己分析の結果は、就労移行支援事業所などの専門家に相談し、客観的なフィードバックを得ることで精度が高まります。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





