ホーム/記事一覧/困りごとガイド/お金の困りごと/身体障害で使える給付・助成の徹底ガイド

身体障害で使える給付・助成の徹底ガイド

📖 約35✍️ 谷口 理恵
身体障害で使える給付・助成の徹底ガイド
身体障害を持つ方の生活を支える給付・助成制度は多岐にわたります。本記事では、障害年金や特別障害者手当といった生活の柱となる給付から、自立支援医療や重度心身障害者医療費助成による医療費軽減制度を解説します。さらに、車いすや補聴器などの補装具、特殊寝台などの日常生活用具の給付制度、そして住宅改修や自動車改造の助成についても詳しく紹介します。これらの制度の多くは身体障害者手帳が必須です。手続きは複雑ですが、市区町村の福祉担当窓口や相談支援専門員に相談することで、必要な支援を確実に受けましょう。

身体障害で使える給付・助成の徹底ガイド

身体障害を持つ方を支える経済的な制度

身体障害を持つ方やそのご家族、支援者の皆さま、日々の生活では、医療費や介護費用、またバリアフリー化の費用など、様々な経済的な負担が生じていることと思います。

安心して生活を送り、社会参加を続けるためには、国や自治体が提供している給付金や助成制度を適切に活用することが非常に重要です。しかし、制度が多岐にわたるため、「自分たちが使える制度は何だろう」「どこに相談すればいいのだろう」と悩むことも少なくありません。

この記事では、身体障害を持つ方を対象とした主要な給付・助成制度を、「医療・介護」「日常生活用具」「住宅・移動」といったカテゴリに分けて徹底的に解説します。一つ一つの制度を理解し、生活を支えるための経済的な柱を築いていきましょう。


生活の基盤を支える「年金・手当」制度

障害年金:長期的な生活費の柱

身体の障害によって日常生活や仕事に支障が出ている場合、障害年金(障害基礎年金または障害厚生年金)の受給資格がある可能性があります。障害年金は、長期にわたる生活費を支える最も大きな給付の一つです。

身体障害の場合、初診日(病気や怪我で初めて医師の診察を受けた日)が厚生年金加入中であれば障害厚生年金、国民年金加入中であれば障害基礎年金となります。受給するためには、初診日や年金保険料の納付要件を満たし、所定の障害等級(1級~3級)に該当する必要があります。

身体障害における障害年金申請のポイント

身体障害で障害年金を申請する場合、診断書の内容が非常に重要です。特に、肢体不自由や内部障害など、障害の部位や種類によって診断書の様式が異なります。

  • 肢体不自由:関節の可動域や筋力、ADL(日常生活動作)の制限の程度を正確に記載してもらう。
  • 内部障害(心臓、腎臓など):検査数値や病状の経過、治療による制限(例えば、人工透析の頻度)を詳細に記載してもらう。

専門的な判断が必要になるため、年金制度に詳しい医師や社会保険労務士(社労士)に相談しながら手続きを進めることが、受給の成功率を高めるコツです。

特別障害者手当:重度障害者への支援

特別障害者手当は、身体または精神に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする20歳以上の方に支給される手当です。具体的な金額は変更されることがありますが、令和6年度は月額約27,980円です。

この手当は、所得制限があるため、申請者本人や扶養義務者の所得が一定額を超えると支給停止となります。また、施設に入所している方や3ヶ月以上病院に入院している方は原則として対象外となります。

💡 ポイント

特別障害者手当は、障害年金とは別個の手当です。障害年金を受給している方も、重度の障害状態であれば、特別障害者手当の申請を検討することができます。

その他の手当・給付

自治体によっては、重度心身障害者に対して独自の「福祉手当」を支給している場合があります。これは地域によって名称や金額、所得制限の有無が大きく異なります。

お住まいの市区町村の福祉担当窓口で、「重度障害者向けの福祉手当」や「地域独自の給付制度」がないか確認することが重要です。


医療費と介護費用の助成制度

自立支援医療制度:医療費の軽減

自立支援医療制度は、障害を持つ方が継続して治療を受けるための医療費の自己負担額を軽減する制度です。身体障害者手帳を持つ方は、以下の分野で利用可能です。

  • 更生医療:身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方で、その障害を除去・軽減するための手術などの治療が必要な場合。

この制度を利用すると、原則として医療費の自己負担割合が1割に軽減されます。さらに、所得に応じて月々の自己負担上限額が設定されるため、高額な医療費がかかる方にとって非常に心強い制度です。

自立支援医療(更生医療)の対象となる具体例

更生医療の対象となるのは、以下の治療などが挙げられます。

  • 人工透析療法(腎臓機能障害)
  • 心臓ペースメーカーの植え込み術(心臓機能障害)
  • 関節置換術(肢体不自由)
  • 免疫抑制剤の投与(免疫機能障害)

申請には、指定医療機関の医師による意見書などが必要です。まずはかかりつけの医師や病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。

重度心身障害者医療費助成制度

これは、重度の障害を持つ方の医療費の自己負担分を、自治体が助成する制度です。地域によって名称は異なりますが、一般的に「重度心身障害者医療費助成(マル福、マル障など)」と呼ばれています。

対象となる障害の等級や、所得制限の基準は自治体ごとに異なりますが、対象となれば、健康保険の自己負担分(通常1割~3割)が実質的に無料(または一部自己負担あり)となります。入院費や調剤費も対象となることが多く、経済的なメリットは非常に大きいです。

✅ 成功のコツ

この制度は、多くの自治体で申請手続きが遡及(さかのぼって)適用されない場合があります。身体障害者手帳を取得したら、できるだけ早くお住まいの市区町村役場の福祉担当課に申請しましょう。

訪問介護・居宅介護などのサービス費用助成

介護保険と障害者総合支援法のサービスを利用する際、その費用の原則1割(または0割)が自己負担となりますが、この自己負担額にも所得に応じた上限(負担上限月額)が設けられています。

特に、重度訪問介護や居宅介護といった障害福祉サービスは、生活上不可欠な支援であり、これらのサービス費用の自己負担が軽減されることは、家計の大きな助けとなります。


日常生活用具と補装具の給付・修理

補装具費の支給制度:身体機能の補完

補装具(ほそうぐ)とは、障害のある部分を補い、日常生活や職業生活を容易にするための用具です。身体障害者手帳を持つ方を対象に、費用の全部または一部が支給されます。

対象となる主な補装具には、以下のものがあります。

  • 義肢(義手、義足)
  • 装具(コルセットなど)
  • 車いす、電動車いす
  • 補聴器、人工内耳
  • 盲人安全つえ、義眼

支給を受けるためには、事前に市区町村役場への申請が必要です。自己負担割合は原則1割ですが、世帯の所得に応じて月々の自己負担上限額が設定されています。

補装具費支給の注意点と流れ

補装具費の支給を受けるためには、以下のステップを踏む必要があります。

  1. 市区町村役場の福祉担当窓口に相談
  2. 指定された医師の意見書や処方箋を入手
  3. 役場から指定業者を通じて補装具の見積もりを取る
  4. 役場に申請し、支給決定を受ける
  5. 決定後、業者が補装具を作成・納品し、自己負担分を支払う

申請前の自己購入は原則として助成の対象外となりますので、必ず先に役場に相談することが重要です。

日常生活用具の給付制度:生活の質の向上

日常生活用具とは、補装具ほど高価ではないが、障害のある方の生活の質(QOL)を向上させるために必要な用具です。補装具と同様に、費用の全部または一部が給付されます。

対象となる用具は多岐にわたり、市町村によって多少異なりますが、一般的には以下のものが含まれます。

  • 特殊寝台、体位変換器
  • 入浴補助用具、ポータブルトイレ
  • 火災警報器、自動消火器
  • ストーマ装具(オストメイトの方)
  • 携帯用会話補助装置(意思伝達装置)

この制度も所得制限があり、自己負担は原則1割ですが、負担上限月額があります。まずは、お住まいの自治体の「日常生活用具給付等事業」のリストを確認しましょう。


住宅改造・移動支援のための助成

住宅改修費の助成制度

身体障害のある方が自宅で安全かつ快適に生活するために、手すりの設置や段差の解消などの住宅改修が必要になることがあります。この改修費用を助成する制度が複数あります。

  • 介護保険制度による住宅改修費の支給:要介護認定を受けている方が対象。原則20万円を上限に、費用の9割~7割が支給されます。
  • 障害者総合支援法による住宅改修費の助成:重度の身体障害者手帳を持つ方を対象に、より大規模な改造(例えば、エレベーター設置など)に対して、上限額内で助成が行われます。

これらの制度は同時に利用できないことが原則ですが、介護保険の上限額を超えた部分について、障害者総合支援法の制度を利用できる場合があります。どちらの制度を使うべきか、事前に福祉担当窓口やケアマネジャーに相談しましょう。

住宅改修の具体的な助成対象

助成の対象となる主な工事は以下の通りです。

  • 玄関、廊下、浴室、トイレなどへの手すりの取り付け
  • 車いすで移動しやすいように、段差をなくす工事
  • 滑り防止、移動の円滑化のための床材の変更
  • 引き戸などへの扉の取り替え

住宅改修も、必ず工事着工前に申請し、承認を受ける必要があります。着工後の申請は認められませんので、ご注意ください。

自動車運転免許の取得・改造費助成

肢体不自由のある方が、社会参加や就労のために自動車の運転免許を取得したり、自動車を身体の状態に合わせて改造したりする場合、その費用の一部を助成する制度があります。

  • 自動車運転免許取得費の助成:就労など社会活動への参加のために自動車運転免許を取得する場合、費用の一部が助成されます。(上限額あり)
  • 自動車改造費の助成:既に自動車を持っている方が、手動運転装置や座席昇降装置などの改造を行う場合、その費用の一部が助成されます。(上限額あり)

これらの助成制度も、自治体や各都道府県の社会福祉協議会などが実施主体となっている場合があり、所得制限や対象となる障害等級の基準が設けられています。


よくある質問と相談窓口

Q1. 障害者手帳がないと給付は受けられませんか?

A. 本記事で紹介した多くの給付・助成制度(補装具、日常生活用具、自立支援医療など)は、原則として身体障害者手帳の交付を受けていることが必須の要件となります。

しかし、一部の医療費助成や地域独自のサービスでは、難病患者や特定疾患の診断を受けている方も対象となる場合があります。まずは、ご自身の状態を証明できる診断書や証明書を持って、市区町村の福祉担当窓口に相談してみましょう。

Q2. 申請手続きはどこに相談すればいいですか?

A. 制度によって窓口は異なりますが、ほとんどの給付・助成制度の申請手続きに関する相談は、まずお住まいの市区町村役場の福祉担当課(障害福祉課など)に相談することが最も確実です。

  • 年金関連:年金事務所、街角の年金相談センター
  • 医療・介護関連:病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)、地域包括支援センター(介護保険サービスの場合)
  • 日常生活支援全般:障害者就労・生活支援センター

「給付制度は申請主義なので、こちらから動かないと何も始まりません。私は最初、手続きの多さに圧倒されましたが、地域の相談支援専門員に手伝ってもらったおかげで、必要な福祉サービスと給付を全て受けることができました。」

— 身体障害者手帳1級(肢体不自由)のEさん

Q3. 複数の制度の併用は可能ですか?

A. はい、多くの制度は併用可能です。例えば、障害年金を受給しながら、自立支援医療制度を利用し、さらに日常生活用具の給付を受けるといった併用は一般的です。

ただし、同じ目的の給付(例:住宅改修費における介護保険と障害者総合支援法)については、一方の制度が優先されるか、あるいは一方の上限を超えた分がもう一方の制度で助成されるなど、複雑なルールがあります。窓口で必ず「この制度とこの制度は併用可能か?」を確認しましょう。


まとめ

身体障害を持つ方を対象とした給付・助成制度は、医療費の軽減から、日常生活用具の購入、住宅のバリアフリー化に至るまで、生活のあらゆる側面を経済的に支援してくれます。

これらの制度を最大限に活用するためには、まず身体障害者手帳を取得し、ご自身の障害の状況と世帯の所得状況に基づいて、利用可能な制度を一覧で把握することが重要です。手続きは煩雑に感じられるかもしれませんが、市区町村の福祉担当窓口や相談支援専門員といった専門家の助けを借りることで、スムーズに進めることができます。

今日紹介した情報を活用し、経済的な不安を解消して、より豊かで自立した生活を送るための基盤を固めていきましょう。

まとめ

  • 障害年金、特別障害者手当は長期的な生活の柱となる。
  • 自立支援医療、重度心身障害者医療費助成で医療費負担が大幅に軽減される。
  • 補装具や日常生活用具は、生活の質を向上させるための重要な給付である。
  • 住宅改修や自動車改造の助成は、必ず着工前に事前申請を行う必要がある。

谷口 理恵

谷口 理恵

たにぐち りえ45
副編集長📚 実務経験 20
🎯 生活サポート🎯 地域情報

📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者

介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。

介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。

🎨 趣味・特技

料理、ガーデニング

🔍 最近気になっているテーマ

一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生

📢 この記事をシェア

関連記事