衝動買い・浪費がやめられないときに使える方法

衝動買い・浪費がやめられないときに使える方法
「使ってしまう」行動の背景を理解する
「分かっていても、つい衝動買いをしてしまう」「気づいたら必要のないものにたくさんお金を使っていた」—衝動買いや浪費は、多くの障害を持つ方やそのご家族にとって、家計を不安定にさせる大きな原因の一つです。
特に、発達障害(ADHDの衝動性や注意欠陥)、精神障害(双極性障害の躁状態)、知的障害を持つ方の場合、「今すぐ欲しい」という欲求のコントロールや、将来的な金銭リスクの見通しを立てることが非常に難しくなります。これはご本人の意志の弱さではなく、障害特性による認知のつまずきから生じる行動です。
この記事では、衝動買いや浪費の背景にある障害特性を理解した上で、それらの行動をコントロールし、お金を安全に管理するための具体的なテクニックと、利用できる外部の支援制度を詳しくご紹介します。ご自身を責めることなく、衝動を乗りこなすための仕組みづくりを始めましょう。
衝動買いの原因を探る:特性と感情の理解
発達障害(ADHD)と衝動性
発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動性障害)の特性を持つ方にとって、衝動買いは最も大きな金銭トラブルの原因となり得ます。ADHDの特性は、以下のような形で現れます。
- 即時報酬の追求:「欲しい」と思った瞬間に手に入れたいという欲求が強く、未来の貯金や支払いを優先できません。
- 時間割引率の高さ:未来の利益(貯金)よりも、目の前の小さな喜び(買い物)を過剰に評価してしまいます。
- 注意の転導性:視覚的な情報や、店内のポップアップ広告などに注意が奪われやすく、買う予定のないものに引き寄せられてしまいます。
この場合、衝動買いは「病的な行動」ではなく、脳機能の特性として「衝動を抑制するブレーキが効きにくい状態」であると理解することが重要です。
精神障害(双極性障害など)と浪費
双極性障害(躁うつ病)などの精神障害を持つ方は、病状の波によって金銭管理が大きく乱れます。特に、気分が高揚する「躁状態」では、浪費行動が顕著になります。
- 誇大妄想的な出費:「自分は成功する」「お金はいくらでもある」という根拠のない自信から、高額な商品を購入したり、無謀な投資を始めたりします。
- 判断力の低下:リスクを冷静に評価できず、借金やキャッシングに対する抵抗感が薄れ、結果的に多額の債務を抱えてしまうことがあります。
躁状態での浪費は、ご本人の意思ではコントロール不可能であり、医療的な介入と、家族や支援者による財産管理が不可欠です。病状が安定している間に、万が一の躁状態に備えた対策を講じることが重要です。
💡 ポイント
衝動買いや浪費行動の裏には、「ストレスの解消」「自己肯定感の低さ」「寂しさ」といった感情的な要因が隠れていることも多いです。何を買うかではなく、「なぜ買うのか」という感情の動きを把握することも、対策のヒントになります。
衝動を物理的に「止める」ための環境設定
現金の持ち歩きを極限まで制限する
衝動買いを防ぐための最も効果的かつ即効性のある方法は、「使えるお金の量を物理的に制限する」ことです。現金が手元になければ、衝動買いはできません。
- デビットカード・プリペイドカードの活用:クレジットカードは使った後に請求が来るため、衝動買いを助長します。代わりに、口座残高内またはチャージした金額しか使えないデビットカードやチャージ式プリペイドカードをメインの決済手段にしましょう。
- 日予算・週予算の徹底:1日に使える上限額を決め、その日必要な現金だけを財布に入れるようにします。残りの現金は、手の届かない場所(支援者預かり、貯金箱など)に保管しましょう。
- クレジットカードの解約・預かり:特に躁状態での浪費リスクがある場合は、クレジットカードはすべて解約するか、家族や成年後見人が預かるなど、使用できない状態にすることが必要です。
スマホ決済・オンライン決済の制限
最近はスマホ決済での衝動買いが増えています。スマホの決済アプリやオンラインショッピングサイトでのクレジットカード情報の登録を削除し、購入するたびにカード情報を入力しなければならない状態にすることも、衝動を抑える有効な手段です。
「自動積立」と「支払い分離」の徹底
手元にお金があると使ってしまう特性に対応するには、「使う前に、先に必要な分を確保する」仕組みを自動化することが重要です。
給与や年金が入金されたら、以下の資金を最優先で、すぐに別の口座に移動させましょう。
- 固定費の分離:家賃、公共料金、通信費など、必ず支払う固定費用の全額を、自動引き落とし専用の口座に移動させる。
- 貯蓄の自動積立:将来のための貯蓄や緊急予備費を、自動で貯蓄専用口座に積み立てる設定にする。
これにより、衝動買いに使えるお金は、残った「おこづかい」部分だけとなり、家計の根幹が守られます。この仕組みは、金融機関の自動振替サービスを利用すれば、手動で行う必要がありません。
✅ 成功のコツ
「貯金」という抽象的な目的よりも、「旅行資金」「〇〇(欲しいもの)購入資金」など、具体的な目的を設定し、貯蓄専用口座に目標のラベルを貼ることで、衝動買いを思いとどまる動機づけになります。
衝動的な行動を「遅らせる」ための心理的テクニック
「72時間ルール」の導入
衝動買いの多くは、一時的な感情の高ぶりや欲求によって引き起こされます。この衝動を乗り切るための心理的テクニックとして有効なのが「72時間ルール」です。
「欲しい」と思った商品があっても、購入を決める前に必ず72時間(3日間)待つというルールを自分に課します。この期間を設けることで、冷静になり、「本当に必要なのか」「生活費に影響はないか」を客観的に考える時間を持つことができます。
- リスト化:欲しいと思った商品は、すぐに買わずに「72時間リスト」に書き出すだけにとどめます。
- 代替行動:リストに書き出した後、散歩をする、趣味に没頭するなど、衝動を忘れるための代替行動を行います。
72時間経ってもその商品が本当に必要だと確信できる場合のみ、予算内で購入を検討します。ほとんどの場合、3日経てば衝動は薄れていることが実感できるでしょう。
「代替行動」で衝動を別の行動に置き換える
衝動買いは、多くの場合、ストレスや感情の不安定さを解消するための代替行為として発生します。買い物の代わりに、同じ満足感や安心感を得られる別の行動を用意しておくことが重要です。
- 買い物以外の趣味:運動、音楽鑑賞、読書など、お金がかからない、あるいは少額で済む趣味に没頭する。
- 感情を言語化する:衝動を感じた時に、何が原因で、どんな感情(寂しさ、怒り、退屈など)を感じているのかを日記やメモに書き出す。
- 人との交流:友人や支援者に連絡を取り、話を聞いてもらうことで、一時的な感情の波を鎮める。
特に、ADHDの方には、体を動かすようなすぐに満足感や集中力を得られる行動(例:筋トレ、パズルなど)を代替行動として用意すると効果的です。
「衝動買いを止めようと我慢するよりも、『衝動が起きたら、まずこれをやる』という行動リストを準備し、反射的に実行できるように訓練することが成功の鍵です。衝動を抑え込もうとすると、かえって反動が大きくなります。」
— 金銭管理指導専門家 F氏
浪費が止まらない場合の公的・専門的サポート
福祉サービスによる「第三者の介入」
自力でのコントロールが難しく、借金や深刻な金銭トラブルを繰り返してしまう場合は、公的な福祉サービスによる「第三者の介入」が不可欠です。
- 日常生活自立支援事業(社協):社会福祉協議会が提供するサービスで、ご本人の判断能力が不十分な場合、通帳や印鑑の預かり、公共料金の支払い代行など、日常的な金銭管理のサポートを担います。(有償サービス)
- 相談支援専門員:金銭管理の困難さを伝えることで、居宅介護やグループホームなどのサービス利用計画に、金銭管理のサポートを具体的に組み込んでもらうことができます。
支援者による金銭管理のサポートは、ご本人の自立心を尊重しつつ、トラブルを未然に防ぐための重要な手段です。遠慮せずに、相談支援専門員に相談しましょう。
成年後見制度:法律による財産保護
双極性障害の躁状態など、ご本人の判断能力が著しく低下し、多額の浪費や悪質な訪問販売の被害に遭うなど、重大な財産上の不利益を被る危険性が高い場合は、「成年後見制度」の利用を検討すべきです。
成年後見人が選任されると、後見人がご本人の財産管理や契約行為を代行・同意します。これにより、高額な契約や無謀な借金を後見人が取り消すことができるため、法的にご本人の財産を守ることが可能になります。
⚠️ 注意
成年後見制度は、一度利用すると原則としてご本人の判断能力が回復しない限り継続します。ご本人の意思決定の自由を制限することにもなるため、家族や専門家と十分に話し合い、最終手段として慎重に検討する必要があります。
借金問題・債務整理の専門家相談
既に衝動買いや浪費の結果、借金や多重債務で生活が圧迫されている場合は、専門家である弁護士や司法書士に相談し、債務整理を検討しましょう。
- 法テラス(日本司法支援センター):経済的に余裕がない方のために、無料で法律相談を受けられ、弁護士費用を立て替える制度もあります。
- 自立相談支援機関:債務整理が必要な場合に、法テラスや弁護士への橋渡しや、債務整理後の生活再建計画をサポートしてくれます。
特に精神障害による浪費の場合、医師の診断書が債務整理の交渉で考慮されることがあります。借金問題は一人で悩まず、専門家の力を借りて解決への一歩を踏み出しましょう。
まとめ
衝動買いや浪費は、障害特性や病状の波によって引き起こされる、コントロールが難しい行動です。自分を責めるのではなく、まずその背景を理解することが大切です。その上で、お金を物理的に使えないようにする「環境設定」と、衝動を乗り切るための「心理的テクニック」を組み合わせた対策が有効です。
手持ちの現金を制限し、自動積立で先に貯蓄を確保する仕組みを整えましょう。また、自力での管理が困難な場合は、日常生活自立支援事業や成年後見制度などの公的なサポートを利用し、大切な財産を確実に守りながら、安心した生活を目指しましょう。
まとめ
- 衝動買い・浪費を自己の意志の弱さではなく、障害特性によるものとして理解する。
- クレジットカードの解約やデビットカード活用など、使えるお金を物理的に制限する。
- 給与・年金入金時に、貯蓄や固定費を先に自動で分離する仕組みを整える。
- 「72時間ルール」や代替行動で、衝動的な行動を遅らせる訓練を行う。
- 深刻な浪費には、成年後見制度や日常生活自立支援事業など、第三者の介入を検討する。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





