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障害のある人がお金で悩みやすい理由と対策まとめ

📖 約52✍️ 谷口 理恵
障害のある人がお金で悩みやすい理由と対策まとめ
障害のある当事者やご家族が抱える「お金の悩み」に焦点を当て、その原因と具体的な解決策をまとめたガイド記事です。通院費や福祉サービスの自己負担といった「支出の増加」と、就労制約による「収入の減少」という構造的な課題を分析。その上で、自立支援医療や障害年金、税金・公共料金の減免措置といった公的制度の活用法を詳しく解説しています。また、将来の「親亡き後」に備えるための成年後見制度や信託の仕組み、専門家への相談方法なども紹介し、漠然とした将来不安を具体的な安心に変えるためのステップを提示します。

障害のある方がお金で悩みやすい背景と将来への備え方

障害を抱えながら生活する中で、将来のお金に関する不安を抱えるのはごく自然なことです。「働ける時間が限られている」「通院や福祉サービスにお金がかかる」「親亡き後の生活が心配」といったお悩みは、当事者やご家族にとって非常に切実なテーマです。

お金の悩みは、単に「貯金が少ない」という問題だけではなく、複雑な社会制度や支援情報の不足から生じることが多いのも特徴です。逆に言えば、制度を正しく知り、適切な窓口とつながることで、その不安を大きく軽減できる可能性があります。

この記事では、障害のある方がお金で悩みやすい具体的な理由を紐解き、家計を守るための公的支援や、将来に備えるための具体的なステップを詳しく解説します。現状を整理し、一歩ずつ安心を積み上げていくためのお手伝いができれば幸いです。


なぜ障害があると支出が増え収入が減るのか

通院や福祉サービスにかかる固定費

障害のある生活では、日常的な通院費や薬剤費が家計の固定費として重くのしかかります。特に専門的な治療やリハビリが必要な場合、交通費も含めた月々の支出は決して小さくありません。また、重度の障害がある場合は、訪問介護や通所サービスなどの利用料も発生します。

さらに、日常生活をサポートするための福祉用具や補装具の購入・メンテナンス費用も無視できません。車椅子や義足、特殊なベッドなどは公的な補助が出る場合も多いですが、耐用年数による買い替えや、一部自己負担分が重なる時期は、一時的に大きな支出を伴うことになります。

就労の制約による収入の不安定さ

体調や障害の特性によって、フルタイムでの勤務が難しいケースは少なくありません。短時間勤務やパートタイムでの就労は、体への負担を減らせる一方で、総支給額が低くなりやすく、生活費を稼ぐための経済的な基盤が脆くなりがちです。特に賞与がない雇用形態では、貯金が難しいという現実もあります。

また、就労継続支援B型事業所などで働く場合、平均的な工賃は月額で1万数千円程度にとどまることもあります。こうした状況下では、自立した生活を送るために、働いて得る「賃金」だけでなく、障害年金などの「制度的な収入」をいかに組み合わせるかが極めて重要になってきます。

見落としがちな隠れたコスト

バリアフリーに対応した住宅に住むための高い家賃や、移動のためにタクシーを利用せざるを得ない場面など、障害がない人にはかからない「目に見えないコスト」が存在します。例えば、食品を買いに行くのが困難で配食サービスを利用したり、衣服の着脱を容易にするために特殊な加工を施した衣類を選んだりすることも、日々の出費を増やす要因となります。

これらは贅沢ではなく、生活を維持するために必要な経費です。しかし、こうした細かな支出の積み重ねが、長期的に見ると大きな金額の差となって現れます。家計を圧迫する要因がどこにあるのかを客観的に把握することが、対策の第一歩といえるでしょう。

💡 ポイント

お金の悩みは「自分の努力不足」ではありません。障害特性による構造的な問題であることを理解し、まずは自分を責めないことが大切です。


家計の負担を軽減する公的制度の活用

自立支援医療による医療費抑制

精神通院や更生医療、育成医療など、特定の治療にかかる自己負担額を軽減する制度が自立支援医療です。通常3割負担の医療費が原則1割に軽減され、さらに世帯の所得に応じて1ヶ月あたりの支払上限額が設定されます。これにより、高額な治療や長期的な服薬が必要な方の負担が劇的に抑えられます。

この制度を利用するには、市区町村の窓口で申請を行い「受給者証」を受け取る必要があります。病院の窓口で提示するだけで適用されるため、毎月の通院費でお悩みの方は、まず主治医に相談してみましょう。対象となる疾患や状態は多岐にわたるため、自分が対象かどうかを確認する価値は十分にあります。

各種手当と給付金のチェック

障害のある方やその介護者を対象とした手当には、さまざまな種類があります。例えば、20歳未満で重度の障害がある子どもを育てる世帯に支給される「特別児童扶養手当」や、重度の障害により日常生活で常時の介護を必要とする20歳以上の方に支給される「特別障害者手当」などがあります。

これらの手当は、所得制限が設けられている場合もありますが、月額数万円単位の支給となるため、家計の大きな支えになります。申請主義(自分から申請しないともらえない仕組み)であることが多いため、お住まいの地域の福祉ガイドブックなどで、対象となる手当が漏れていないか定期的に見直すことが成功のコツです。

税金や公共料金の減免措置

所得税や住民税の「障害者控除」を受けることで、手元に残るお金を増やすことができます。また、自動車税の減免や、NHK受信料の免除、携帯電話料金の割引、上下水道料金の基本料金免除(自治体による)など、生活に密着したコストを削るための手段は意外と多く用意されています。

これら一つひとつの節約効果は数百円から数千円かもしれませんが、積み重なれば年間で数万円から十数万円の差になります。特に固定費の削減は、一度手続きを済ませれば効果がずっと続くため、優先的に取り組むべき項目です。

✅ 成功のコツ

自治体の窓口だけでなく、地域の「基幹相談支援センター」を活用しましょう。複数の制度を横断的に把握している専門家が、あなたに合った組み合わせを提案してくれます。


障害年金という強力な生活基盤

障害年金の種類と受給要件

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に制限が出た場合に支給される、最も重要な社会保障の一つです。大きく分けて「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日にどの年金制度に加入していたかによって決まります。受給できる級(1級〜3級)によって支給額が異なります。

例えば、障害基礎年金1級の場合、令和6年度の支給額は年間約102万円(月額約8.5万円)となっており、これに子の加算がつくこともあります。働いて得る収入に加えて、この年金を受け取ることができれば、生活の安定度は格段に向上します。まずは初診日を特定し、保険料の納付要件を満たしているか確認しましょう。

申請プロセスの難しさを乗り越える

障害年金の申請は、書類の準備が非常に複雑でハードルが高いと感じる方が多いのが現状です。医師に作成してもらう「診断書」の内容が、実際の生活の困難さを正確に反映しているかが、審査の結果を左右します。また、本人が作成する「病歴・就労状況等申立書」も、ポイントを押さえて書く必要があります。

もし自分で手続きを行うのが困難な場合は、社会保険労務士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。着手金や成功報酬が必要になりますが、複雑な書類作成を代行してもらえる安心感は大きいです。また、年金事務所や街の年金相談センターでも無料で相談に乗ってもらえるため、諦めずに最初の一歩を踏み出しましょう。

受給後の更新と体調の変化

障害年金の多くは「有期認定」となっており、1年〜5年ごとに診断書を提出して更新手続きを行う必要があります。この際、体調が改善して級が下がったり、支給が停止されたりする不安を持つ方も多いです。しかし、診断書は「現在の状態」を伝えるためのものであり、適切に主治医とコミュニケーションを取っていれば、過度に恐れる必要はありません。

逆に、以前よりも状態が悪化した場合には「額改定請求」を行い、上の級への変更を申し立てることも可能です。常に今の自分に最適な受給状況であるかを管理することが、長期的な経済的安定につながります。年金は「もしも」の時のための保険であることを忘れずに、賢く活用していきましょう。

年金の種類 対象者 主な特徴
障害基礎年金 国民年金加入者・20歳前 1級・2級のみ。一律の金額。
障害厚生年金 厚生年金加入者 1〜3級。給与額により変動。


将来の安心を作る「親亡き後」の備え

成年後見制度の検討

知的障害や精神障害により、自分でお金の管理をすることが難しい場合、将来的に成年後見制度の利用を検討することになるかもしれません。これは、本人の代わりに契約や財産管理を行う「後見人」を家庭裁判所が選任する仕組みです。親御さんが亡くなった後の金銭トラブルや、悪質な詐欺から本人を守るための盾となります。

ただし、後見制度を利用すると月々の報酬(費用)が発生したり、自由にお金を引き出せなくなったりする側面もあります。最近では、必要な時だけサポートを受ける「補助」や「補佐」といった類型もあります。また、信頼できる親族がいる場合は「任意後見制度」を事前に契約しておくなど、本人の状況に合わせた柔軟な選択が求められます。

「特定贈与信託」と「福祉信託」

重度の障害がある子にお金を残したいけれど、本人が管理できるか不安……という場合に有効なのが信託の仕組みです。「特定贈与信託」は、信託銀行が親から託された財産を管理し、本人に定期的に生活費として配分する制度です。この制度を利用すると、一定額までの贈与税が非課税になるという大きなメリットもあります。

また、生命保険の死亡保険金を本人の生活費として分割で支払うような特約もあります。一括でお金が本人に渡ると、管理できずに使い果たしてしまったり、搾取の対象になったりするリスクがありますが、信託や年金形式での支払いにすることで、細く長く生活を支え続けることが可能になります。

日常生活自立支援事業

成年後見制度を利用するほどではないけれど、通帳の管理や公共料金の支払いに少し不安があるという方には、社会福祉協議会が実施している「日常生活自立支援事業」がおすすめです。福祉サービスの利用手続きの手伝いや、日常的な金銭管理のサポートを低料金で受けることができます。

この事業のメリットは、地域の福祉の専門家が定期的に訪問してくれるため、孤立を防げる点にあります。お金の管理を通じて、体調の変化や生活の困りごとにも気づいてもらえる、見守りとしての機能も期待できます。早いうちから外部の支援に慣れておくことは、本人の自立にとっても大きなプラスになります。

⚠️ 注意

成年後見制度は、一度開始すると原則として途中でやめることができません。制度の内容を十分に理解し、専門家の意見を聞きながら慎重に判断することが大切です。


家計管理を支える専門家とコミュニティ

FPやソーシャルワーカーとの対話

「月々の収支がマイナスでどうしようもない」「借金があって苦しい」といった深刻な状況にある場合は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りましょう。障害福祉に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)は、年金や手当、今後の支出予測を踏まえたライフプランニングを一緒に行ってくれます。

また、病院や福祉施設にいる「ソーシャルワーカー(社会福祉士)」は、活用できる制度を探すプロフェッショナルです。お金の悩みは恥ずかしいことではありません。生活再建のための「生活困窮者自立支援制度」なども存在するため、今の苦しさを正直に話すことが、問題解決のスタートラインになります。

同じ悩みを持つ仲間との情報交換

当事者会や家族会などのコミュニティに参加することも、意外な解決策につながります。制度のパンフレットには載っていない「この銀行は障害者に優しい対応をしてくれた」「このスーパーは安くてバリアフリーだ」といった、生活に密着した生きた情報(口コミ)を得られるからです。

同じ境遇の人がどうやってお金のやりくりをしているかを聞くことで、「自分だけが苦しいわけではない」と心が軽くなる効果もあります。オンラインのフォーラムやSNSでも情報は得られますが、信頼できる地域のグループに身を置くことで、いざという時の助け合いのネットワークが作られていきます。

ライフプラン表を作ってみる

将来への漠然とした不安を「具体的な課題」に変えるために、簡単なライフプラン表を作成してみることをおすすめします。今後10年、20年でどのような大きな支出(住宅改修、買い替え、進学など)があるか、それに対して収入(年金、工賃、手当)はどう推移するかを書き出してみるのです。

数字で見える化することで、「意外となんとかなりそうだ」という安心感が得られることもあれば、「今のうちにこの支出を減らそう」という具体的な目標が見つかることもあります。完璧である必要はありません。今の自分たちが立っている場所を確認する作業そのものが、未来を守る力になります。

「お金の話はしづらいものですが、支援者の方に思い切って相談したら、知らなかった手当の存在を教えてもらえました。それだけで、夜も眠れないほどの不安が少し和らぎました。」

— 当事者家族の声


よくある質問(FAQ)

Q. 借金があるのですが、障害年金が差し押さえられることはありますか?

法律上、障害年金を受け取る権利は差し押さえが禁止されています(差押禁止債権)。ただし、年金が銀行口座に入金された後は「預金」として扱われるため、絶対に差し押さえられないとは言い切れない面があります。もし借金でお困りの場合は、弁護士や司法書士による債務整理を検討し、年金を生活再建のために正しく使えるよう早急に対策を取るべきです。

Q. 働くと障害年金が打ち切られると聞いたのですが本当ですか?

「働いている=障害がなくなった」とみなされて即座に停止されるわけではありません。特に精神障害の場合は就労状況が審査の参考にされますが、職場の配慮を受けているか、短時間勤務かなど、総合的に判断されます。逆に言えば、無理をしてフルタイムで働き、診断書に「生活に支障なし」と書かれるとリスクは高まります。自分の体調と働き方、そして年金の関係を主治医と共有しておくことが重要です。

Q. 生活保護と障害年金は両方もらえますか?

可能です。ただし、障害年金は「収入」としてカウントされるため、生活保護費から年金額が差し引かれます。障害年金の方が受給額が多ければ、生活保護は停止または廃止になります。一方で、生活保護を受けることで医療費が無料になったり、加算(障害者加算)がついたりするメリットもあります。どちらが良いかは個別のケースによるため、福祉事務所のケースワーカーとよく相談してください。


まとめ

障害のある方が直面するお金の悩みと、その対策について解説してきました。最後に大切なポイントを振り返ります。

  • 現状を肯定する:支出が増え、収入が減りやすいのは障害特性による構造的な問題であり、個人の責任ではありません。
  • 制度を使い倒す:自立支援医療、障害年金、各種減免措置など、活用できる「公的な財布」を最大限に利用しましょう。
  • 一人で悩まない:ソーシャルワーカーやFP、相談支援センターなど、専門家と一緒にライフプランを立てることが安心への近道です。

お金の不安は、情報の不足から生まれる「霧」のようなものです。一つひとつの制度を理解し、支援の網を張り巡らせることで、その霧は少しずつ晴れていきます。まずは、お住まいの地域の「障害福祉課」で配布されているパンフレットを一部手に入れることから始めてみませんか?

今日からできる小さな一歩が、数年後のあなたやご家族の大きな安心につながっています。私たちは、あなたが経済的にも精神的にも自立した、穏やかな生活を送れることを心から応援しています。

谷口 理恵

谷口 理恵

たにぐち りえ45
副編集長📚 実務経験 20
🎯 生活サポート🎯 地域情報

📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者

介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。

介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。

🎨 趣味・特技

料理、ガーデニング

🔍 最近気になっているテーマ

一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生

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