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「勉強が苦手」な子に合う学び方とは

📖 約61✍️ 菅原 聡
「勉強が苦手」な子に合う学び方とは
「勉強が苦手」な子の教育支援ガイド。その背景には、学習障害(LD)や発達障害(ADHD、ASD)など、脳の特性が関わっていることが多いです。この記事では、特性に応じた具体的な学び方として、視覚優位には図解、聴覚優位には音読・朗読、運動優位には具体物操作といった五感を活用した学習法を解説します。また、学校で利用できる「個別の教育支援計画(IIP)」やICTを活用した合理的配慮の申請戦略、さらに得意を伸ばす非認知能力の重要性など、子どもが自信を持って自立に向かうための教育戦略を詳説します。

「勉強が苦手」は個性!発達障害・学習障害のある子に合う学び方と得意を伸ばす教育戦略

「うちの子はいくら教えてもなかなか覚えられない」「漢字の読み書きだけが極端に苦手」「授業中、座っていられず、いつも注意されてしまう」。お子さんが学校での「勉強の困難」に直面し、自信を失っている姿を見るのは、親御さんにとって非常につらいことかと思います。多くの場合、その「苦手」の背景には、努力不足ではなく、脳の特性(発達障害や学習障害など)が関わっている可能性があります。

しかし、ご安心ください。現代の教育支援では、画一的な学び方にこだわる必要はありません。その子の特性や得意なことを理解し、「学び方」を工夫することで、誰でも必ず能力を伸ばすことができます。この「学び方の工夫」こそが、学習障害(LD)発達障害(ADHD、ASD)のある子どもたちにとって、「学ぶ喜び」と「自己肯定感」を取り戻すための鍵となります。

この記事では、「勉強が苦手」の背景にある特性を理解する方法から、視覚、聴覚、触覚といった感覚を活用した具体的な学習方法、さらに学校の通級指導教室やICT(情報通信技術)を活用した合理的配慮の申請戦略までを詳細に解説します。そして、単なる学力向上だけでなく、将来の自立と就労を見据えた「得意を伸ばす教育」の重要性についても深く掘り下げます。

この記事を最後までお読みいただくことで、お子さんの「苦手」を克服する具体的な手段を知り、お子さんが自信を持って未来に進むための最適な教育戦略を見つけることができます。一緒に、お子さんの無限の可能性を信じて、次のステップを踏み出しましょう。


「勉強が苦手」の背景を理解する:発達障害と学習障害

お子さんの「勉強の苦手」を解決するための第一歩は、その困難がどこから来ているのか特性の正確な理解から始まります。苦手は努力不足ではなく、脳の情報処理方法の違いによるものであることが多いのです。

1. 学習障害(LD):「読む・書く・計算」の特定困難

学習障害(LD:Learning Disability)とは、全般的な知的発達に遅れはないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する・推論する」といった特定の能力の習得や使用に、著しい困難を示す状態を指します。

  • 読字障害(ディスレクシア):文字を正確に読んだり、滑らかに読むことが極端に苦手。文字が歪んで見える、入れ替わると感じる場合がある。
  • 書字表出障害(ディスグラフィア):文字を正確に書くことが苦手。ひらがなや漢字の鏡文字を書く、マス目からはみ出るといった特徴が見られる。
  • 算数障害(ディスカリキュア):数の概念の理解、計算、推論が苦手。繰り上がり・繰り下がり、筆算の位取りが理解しにくい。

LDの困難は、早期に発見し、その子に合った代償手段(苦手な部分を補う方法)を習得することが、学力低下を防ぐ鍵となります。

2. 発達障害(ADHD・ASD):「集中と実行」の困難

発達障害の中でも、ADHD(注意欠如・多動症)ASD(自閉症スペクトラム障害)は、間接的に学習に影響を及ぼす特性です。

  • ADHDの影響:不注意により授業の内容を聞き逃す衝動性により問題文を読み飛ばす多動性により席を立ち集中できないといった形で学習に困難が生じる。
  • ASDの影響:聴覚情報処理の苦手さから口頭指示が理解しにくい抽象的な概念の理解が難しい、集団の中の暗黙のルールがわからず人間関係で疲弊し学習どころではなくなる。

これらの特性が原因で「勉強が苦手」になっている場合、学習方法の工夫だけでなく、環境調整や行動のマネジメントが不可欠となります。

3. まずは「困りごとの正体」を把握する

「うちの子、何が苦手で、なぜ苦手なんだろう?」という疑問に答えるためには、専門家による評価(アセスメント)が非常に重要です。

  • 発達検査:WISC(ウィスク)やKABCといった検査で、認知特性(得意な情報処理の方法)発達の凸凹を客観的に把握します。
  • 医療機関の受診:児童精神科などで専門的な診断を受けることで、学校の合理的配慮福祉サービスへ繋げやすくなります。

困りごとの正体が分かれば、「努力が足りない」という誤解が解け、適切な支援を始めることができます。

💡 ポイント

LD(学習障害)は、発達障害の一つとして扱われますが、ADHDやASDの特性と併存することも珍しくありません。例えば、ADHDによる不注意が原因で、LDの文字の読み書きの困難がより深刻になるケースもあります。


特性別アプローチ:五感を活用した学び方

従来の教育は「聴覚(先生の話を聞く)」「視覚(文字を読む・板書を見る)」が中心ですが、「勉強が苦手」な子どもたちは、その情報処理に偏りがあることが多々あります。ここでは、特性に応じて五感を活用した、具体的な学び方を紹介します。

1. 視覚優位の子どもに響く「見える化」学習法

視覚からの情報処理が得意な子どもは、耳からの情報(口頭指示、説明)だけでは理解が難しい場合があります。学習内容や指示を「見える形」にすることで、理解度を高めます。

  • 色と図を活用:重要な箇所を色分け(例:赤は重要、青は補足)し、板書やノートを視覚的に整理します。図解やイラスト、マインドマップなどを積極的に活用しましょう。
  • 手順の視覚化:宿題や複雑な課題は、チェックリストやフローチャートにして手順を「見える化」します。ADHDによる不注意での「やり忘れ」を防ぐのに効果的です。
  • 動画教材の活用:教科書を読むのが苦手な場合、動画やアニメーションを使った視覚的な教材を導入することで、内容の理解を深めます。

2. 聴覚優位の子どもに有効な「音読・朗読」学習法

聴覚からの情報処理が得意な子どもは、黙読や視覚的な暗記よりも、「音」として情報をインプットする方が記憶に残りやすいです。

  • 音読・耳学習:暗記すべき歴史の年号や英単語を、リズムや歌に乗せて声に出して覚える。教科書を録音した音声を聞きながら学習を進める。
  • ディスカッション:内容を口に出して説明することで、理解の定着を促します。家族や先生学習内容について話し合う機会を設けましょう。
  • 音声入力・読み上げ機能:読み書きに困難がある場合、パソコンやタブレットの読み上げ機能や、音声入力機能を活用することで、学習のスピードを落とさずに進められます。

3. 触覚・運動感覚優位の子どもに合う「体験・身体」学習法

触覚や身体の動きを通して学ぶことが得意な子どもは、じっと座って机に向かうことが非常に苦痛な場合があります。「手を動かす」「身体を動かす」学びを意識的に取り入れましょう。

  • 具体物操作:算数おはじきやブロックを使って実際に数を操作する。化学実験キットを使って体験する。
  • 触覚教材:英単語や漢字砂や粘土で形作る凹凸のある教材に触れて覚える。体を使って文字を書く練習をする。
  • 歩きながらの暗記:立ち歩きや多動が抑えられない場合は、無理に座らせるのではなく、歩きながら単語帳をめくるなど、動きを学習に結びつける工夫も有効です。

✅ 成功のコツ

学び方の工夫は、「すべてを完璧にやろうとしない」ことが重要です。読むことが苦手なら「聞く」で代償し、書くことが苦手なら「音声入力」で代償するなど、テクノロジーや他者の支援を積極的に利用しましょう。


学校での支援戦略:合理的配慮とICTの活用

学校での学習環境を整えるためには、個別の教育支援計画を策定し、ICT(情報通信技術)を活用した合理的配慮を申請することが不可欠です。

1. 「個別の教育支援計画」(IIP)の重要性

個別の教育支援計画(IIP:Individualized Education Program)は、その子の特性や困難、そして得意なことをまとめ、学校で受けるべき具体的な支援内容を記した支援の羅針盤です。

  • 目的の共有:IIPには、「読み書きの困難があるため、テストは設問の読み上げとキーボード入力を許可する」など、具体的で客観的な支援内容を明記します。
  • 一貫性の確保:IIPは担任の先生が変わっても継続して引き継がれるため、支援が途切れるのを防ぎます

IIPの作成には、保護者、担任、特別支援教育コーディネーター、通級指導教員が参加し、子どもの将来を見据えた長期的な目標を定めることが求められます。

2. 合理的配慮:学校生活での具体的な工夫

「合理的配慮」とは、障害のある子ども障害のない子どもと平等に学校生活を送るために、学校側が行うべき環境調整や方法の変更のことです。

  • ADHDへの配慮:授業中、集中が途切れたら立ち上がってストレッチを許可する、席を教卓の近くや窓側から離れた場所にする。
  • LDへの配慮:板書をノートに写す時間を確保する、テストの設問を短く区切る漢字を全てひらがなで解答することを許可する。

合理的配慮は、「努力を減らすこと」ではなく、「苦手な部分での不必要な努力を減らし、学ぶべき本質に集中できるようにすること」が目的です。

3. ICT(情報通信技術)を活用した代償戦略

ICTは、「勉強が苦手」な子どもたちの代償手段(苦手な活動を補うツール)として、最も強力なツールとなりつつあります。文部科学省も、特別支援教育での活用を推進しています。

  • リーディングペン:読みの困難がある場合、ペンで文字をなぞる音声で読み上げる機器で、教科書やプリント内容理解を助けます。
  • 音声入力・テキスト化:書くことが苦手な場合、タブレットやPCに声を吹き込むことで文字に変換し、長文の記述レポート作成を可能にします。

学校に対し、これらの機器の持ち込みや、GIGAスクール構想で配布されたタブレットの機能合理的配慮として利用することを積極的に求めましょう

⚠️ 注意

学校での合理的配慮やICT機器の利用は、保護者からの明確な申請と、医師の診断書や専門家の意見書などの客観的な根拠が必要となることが一般的です。まずは就学相談や通級指導教室の先生に相談しましょう。


自立とキャリアを見据えた「得意を伸ばす教育」

学校での学力向上も重要ですが、それ以上に大切なのは、子どもが将来社会で自立し、得意なことを活かして生きていくための土台を作ることです。「勉強が苦手」でも、得意なことや才能は必ずあります。

1. 「非認知能力」を伸ばす教育

学力(認知能力)とは別に、「非認知能力」とは、自己肯定感、忍耐力、コミュニケーション力、問題解決能力、協調性など、社会で生きるために必要な人間力を指します。

  • 得意な活動で成功体験:スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、勉強以外の得意な活動に没頭させ、「自分はできる」という成功体験を積み重ねることが、非認知能力を伸ばします。
  • 自己肯定感の醸成:「勉強が苦手でも、人の気持ちがわかる」「集中力はないけれど、発想力が豊か」など、特性のポジティブな側面を認め、ありのままの自分を受け入れられるよう支援しましょう。

非認知能力は、学力以上に、将来の就労や人間関係の基盤となります。

2. 職業興味や特性を活かせる進路選択

高校進学やその後の進路選択において、「学力偏差値」だけでなく、「本人の興味と特性」を最優先に考えることが重要です。

  • 専門高校・職業訓練校:普通教科の学習よりも、実技や専門技術の習得に力を入れている工業高校、農業高校、商業高校などが、手先を動かすのが得意な子どもに向いている場合があります。
  • 通信制高校・単位制高校:体調や集中力に波がある場合、自分のペースで学習を進められる通信制や単位制の学校が適応しやすい場合があります。

進路選択の際には、学校の進路指導だけでなく、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)などの専門機関にも相談し、将来の就労を見据えたキャリア計画を立てましょう。

3. ライフスキル(自立に必要な力)の習得

学習面での支援と並行して、自立した社会生活に必要なスキルを習得させることが、「勉強が苦手」な子ども将来の安心に繋がります。

  • 金銭管理・時間管理:お小遣いの管理、公共交通機関の利用、スケジュールの確認など、日常生活に必要な自己管理能力を、子どもの発達段階に合わせて教えます。
  • 福祉サービスとの連携:高校卒業後を見据え、障害福祉サービス(就労移行支援、自立訓練など)について情報を集め、将来の支援に繋げられるよう準備します。

勉強の困難を抱える子どもにとって、「自分一人でできること」を増やすことが、最も強力な支援であり、自信の源となります。


よくある質問(FAQ)と親の関わり方のヒント

「勉強が苦手」な子どもを持つ保護者の方が抱きがちな疑問と、家庭で実践できる具体的な関わり方のヒントをまとめました。

Q1. 塾に通うべきですか?家庭教師の方が良いですか?

A. お子さんの特性と学習スタイルによって異なります。従来の集団指導の塾は、特性を持つ子どもには適していないことが多いです。

  • 個別指導・家庭教師:LDやADHD集中力が持続しない、苦手な箇所が極端な場合は、1対1の個別指導家庭教師(特に特別支援教育の知識がある人が望ましい)がおすすめです。
  • 専門の教室:読み書きの困難に特化した学習支援教室や、SSTを専門とする通級指導教室など、専門性の高い場所苦手克服のトレーニングを受ける方が効果的です。

まずは無料で体験授業を受けさせ、指導者との相性指導方法がお子さんに合っているかを確認しましょう。

Q2. 叱ってはいけないと聞きますが、どう接すれば良いですか?

A. 「勉強が苦手」なのは努力不足ではないため、感情的に叱ることは自己肯定感の低下に繋がります。肯定的な関わり方を意識しましょう。

  • 行動承認:結果ではなく「プロセス(過程)」を褒める。「10分間座っていられたね」「難しい問題から逃げずに挑戦したね」など、具体的な行動を承認します。
  • 環境調整:「できない」状況「できる」状況に変える「環境調整」に注力する。「集中できる静かな場所」「気が散らないツールの利用」などを促します。
  • 指示の工夫:指示「短く、簡潔に、一つずつ」視覚的なサポート(メモや絵)を添えることも効果的です。

Q3. 薬物療法(ADHD)と学習支援はどのように組み合わせますか?

A. ADHDの場合、薬物療法不注意や衝動性コントロールするのに役立ちますが、学習スキルを教えるわけではありません。

  • 療法の目的:薬物療法不必要な多動や衝動性を軽減し、「学習に取り組める状態」を作ります。
  • 学習支援の役割:その状態で、通級指導教室などを活用し、「効率的な学習方法やSST」を学びます。

薬物療法はあくまで学習支援の効果を高めるための補助的な手段であり、教育と医療連携して進めることが大切です。

相談窓口・参考リンク

「勉強が苦手」の背景にある特性に関する専門的な相談は、以下の窓口を活用してください。

  • 児童発達支援センター・発達障害者支援センター:特性に関する相談、発達検査、地域の専門機関の紹介を受けられます。
  • お住まいの地域の教育委員会(就学相談窓口):通級指導教室、特別支援学級の利用に関する具体的な手続きや情報を提供しています。
  • 特別支援教育コーディネーター(学校):校内での合理的配慮、IIPの策定、担任との連携の中心となります。


まとめ

「勉強が苦手」であることは、努力不足ではなく、多くの場合、脳の情報処理の特性によるものです。この特性を学習障害(LD)や発達障害として理解し、その子に合った学び方を見つけることが、困難を乗り越えるための唯一の方法です。

視覚、聴覚、触覚といった五感を活用した学習法、学校での合理的配慮、そしてICTを積極的に利用した代償戦略を組み合わせることで、学習の困難を軽減できます。さらに、得意な活動を通じて非認知能力を伸ばし、自立とキャリアを見据えた「その子らしさ」を活かせる進路選択を支援しましょう。

まとめ

  • 「勉強の苦手」の背景にはLD(学習障害)や発達障害があることが多く、早期の専門的アセスメントが不可欠である。
  • 視覚・聴覚・触覚など、得意な感覚チャネルを活かしたオーダーメイドの学習法(音読、図解、具体物操作など)を実践する。
  • 学校のIIP(個別の教育支援計画)を活用し、ICT機器や合理的配慮を導入することで、苦手な部分を補い(代償)、学習の本質に集中できる環境を整える。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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