通院・入院時の交通費補助制度まとめ

🚌 通院・入院をサポート!障害のある方のための交通費補助制度ガイド
「遠方の専門病院への通院で、毎回新幹線や特急を使わなければならない」「車椅子での移動には福祉タクシーが必須で、交通費が家計を圧迫している」
障害のある方やそのご家族にとって、必要な医療を受けるための移動手段の確保と、それに伴う経済的な負担は、非常に大きな悩みの一つです。特に、障害の特性上、公共交通機関の利用が困難であったり、長距離の移動が必要になったりする場合、交通費は無視できない金額になることがあります。
この記事では、障害のある方が通院や入院の際に利用できる、国や自治体、民間サービスが提供する「交通費補助・割引制度」について、全6000字以上の大ボリュームで徹底的に解説します。これらの制度を理解し活用することで、経済的な負担を軽減し、より安心して医療にアクセスできるようになるための具体的な情報をお届けします。
🚊 公共交通機関の運賃割引制度:基本と対象範囲
障害のある方への交通費補助制度として、最も広く知られ、利用されているのが、JRや私鉄、バス、タクシーなどの公共交通機関が提供する運賃の割引制度です。これらの割引を利用することで、日常的な通院・移動のコストを大きく抑えることができます。
身体障害者手帳・療育手帳による運賃割引
多くの公共交通機関では、身体障害者手帳(以下、身体手帳)または療育手帳(以下、療育手帳)を提示することで運賃割引を受けることができます。
鉄道(JR・私鉄)の割引対象範囲
鉄道の場合、割引対象となるのは、本人と介護者(同行者)の運賃です。割引の適用範囲は、手帳の等級と利用区間によって異なります。
| 割引の種別 | 対象となる手帳 | 割引率 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 第1種割引(本人・介護者) | 身体手帳1級〜3級、療育手帳A判定(重度) | 50% | 本人と介護者1名が対象。単独乗車でも割引可(JR長距離のみ)。 |
| 第2種割引(本人単独) | 身体手帳4級〜6級、療育手帳B判定(中度・軽度) | 50% | 本人のみが対象。100km超の長距離乗車の場合に限られることが多い。 |
「第1種」の判定を受けている方は、介護者1名も割引の対象となるため、通院の付き添いをしてもらう家族や支援者も経済的な恩恵を受けられます。第1種の手帳を持っている本人が単独で利用する場合も、JRでは片道101km以上の乗車券が割引対象となります。
💡 ポイント
自動改札機ではなく、必ず有人改札で手帳を提示してください。また、割引の適用範囲や切符の購入方法は複雑なため、長距離移動の場合は事前に駅窓口で確認することをお勧めします。
バス・タクシー・航空機の割引
バス、タクシー、国内航空機についても、同様に割引制度が設けられています。
- バス(路線バス):手帳の種類や等級に関わらず、本人50%割引、第1種の方に限り介護者50%割引が一般的です。降車時に手帳を提示することで適用されます。
- タクシー:身体手帳または療育手帳の提示で、運賃が10%割引になります。長距離の通院や悪天候時など、タクシーを利用せざるを得ない場合に非常に有効です。
- 航空機(国内線):各航空会社の定める割引運賃(特定割引や介護者割引)が適用されます。予約時に手帳の等級などを申告し、搭乗手続きの際に提示が必要です。
精神障害者保健福祉手帳の割引適用範囲
精神障害者保健福祉手帳(以下、精神手帳)による運賃割引は、身体手帳や療育手帳に比べて適用範囲が限定的です。
JR線については、残念ながら現在、精神手帳による運賃割引制度はありません。しかし、私鉄や地下鉄、路線バスについては、自治体や交通事業者独自の判断により、精神手帳所持者にも割引が適用されるケースが増えてきています。特に、1級所持者に限定して適用する事業者もあれば、全等級を対象とする事業者もあります。
「精神手帳ではJR割引がないため、通院費の負担が大きいと感じていました。しかし、都営地下鉄や一部の私鉄では割引が適用されることを知り、普段の通院経路を変更することで交通費を大幅に節約できました。」
— 精神障害のある方の声
お住まいの地域や、利用する交通機関のウェブサイト、または窓口で、精神手帳による割引の有無を個別に確認することが重要です。
🚕 福祉タクシー・自動車関連の補助制度
車椅子を利用している、または介助なしでの公共交通機関の利用が困難な障害のある方にとって、福祉タクシーや自家用車の利用は、通院・入院時の生命線となります。これらの移動手段にかかる費用を補助する制度も充実しています。
福祉タクシー利用券・助成制度
多くの市区町村では、重度の障害のある方を対象に、福祉タクシーの利用券(クーポン券)を交付する制度を実施しています。これは、通院や通所、社会参加を促進するために設けられた、自治体独自のサービスです。
- 対象者:主に身体手帳1級・2級、療育手帳A判定など、重度判定の方。自治体によっては、精神手帳1級も対象になる場合があります。
- 助成内容:月単位または年単位で、一定額のクーポン券(例:500円券×年間48枚)が交付されます。利用券は、運賃の一部(または全額)として福祉タクシー会社に支払うことができます。
- 注意点:交付枚数には上限があり、月々の通院回数が多い方は、全てを賄うことは難しい場合があります。しかし、補助があるだけで大きな助けになります。
この制度は、自治体によって名称も内容も大きく異なるため、「〇〇市 福祉タクシー券」のように、具体的な地域名をつけて検索することが必要です。
自家用車利用時の燃料費・有料道路料金割引
障害のある方本人が運転する場合や、家族などが障害のある方の通院・移動のために運転する場合、自動車関連の費用の補助や割引が利用できます。
有料道路(ETC)割引制度
身体手帳または療育手帳を持つ方が同乗するか、または本人が運転する自動車について、全国の有料道路(高速道路など)の通行料金が50%割引になる制度です。
- 対象車両:事前に登録した車両1台に限られます(自家用車または介護・送迎用車両)。ETCを利用する場合は、ETCカードと車載器も登録が必要です。
- 申請窓口:お住まいの市区町村役場の福祉担当窓口。
- 割引適用:ETC車載器に手帳所有者名義のETCカードを挿入し、所定の手続きを行うか、料金所で手帳を提示することで適用されます。
自動車燃料費助成制度(一部自治体)
一部の自治体では、重度の障害のある方が通院などに自家用車を利用する場合の、燃料費(ガソリン代など)を助成する制度を独自に実施しています。これはタクシー券の代わり、または併用として提供されることが多く、月額または年額で定額が支給される形が多いです。
✅ 成功のコツ
福祉タクシー券と自家用車割引は、どちらか一方しか利用できない自治体と、併用可能な自治体があります。両方の制度がある場合は、年間で最も経済的な負担が少なくなるよう、事前に確認し、計画的に利用しましょう。
🏥 医療費控除と通院交通費の密接な関係
公的な補助制度だけでなく、確定申告を行うことで税金の負担を軽減できる「医療費控除」についても、通院交通費は重要な要素となります。
医療費控除の対象となる交通費の範囲
医療費控除は、年間で支払った医療費の合計額が一定額を超える場合に、税金の還付が受けられる制度です。実は、この医療費には、医師の診療を受けるために直接かかった交通費も含まれます。
- 対象となる交通費:
- 電車、バス、タクシーなどの公共交通機関の運賃。
- 緊急時に利用した救急車代(有料の場合)。
- 障害のある方が移動するために付き添った介護者や家族の交通費。
- 対象とならない交通費:
- 自家用車のガソリン代や駐車場代。
- 付き添いが不要な場合の付き添い者の交通費。
特に、重度の障害があり、家族の付き添いなしでは通院が不可能な場合、付き添い者の交通費も控除の対象となることは大きなポイントです。
控除を受けるための記録と領収書
医療費控除で交通費を申告する場合、公共交通機関の利用で領収書が出ないことが多いため、以下の点に注意して記録を残す必要があります。
- 利用日・利用目的:「〇月〇日、診察(病院名)のため」と記録。
- 利用交通機関:「JR線、〇〇駅から△△駅」のように具体的に記録。
- 運賃:実際に支払った金額を記録。
「タクシー代や特急料金など、高額になった交通費は必ず領収書をもらい、それ以外の電車賃はカレンダーに通院の都度メモを残すようにしています。確定申告時に、この記録が非常に役立ちました。」
— 難病を持つ子の保護者の声
公共交通機関の利用であっても、「いつ、どこからどこへ、何のために」移動したかを明確に記録に残すことが、控除を確実にするための鍵です。
♿ 重度障害者・難病患者のための特定の移動支援
上記の一般的な制度に加えて、特定の障害を持つ方や、難病患者の方のために、より専門的かつ手厚い交通費・移動支援制度が用意されています。
居宅介護・重度訪問介護の「移動支援」サービス
居宅介護(ホームヘルプ)や重度訪問介護といった障害福祉サービスの中には、「移動支援」または「外出支援」という形で、通院に必要な付き添いや移動そのものをサポートするサービスが含まれています。
- 対象者:居宅介護または重度訪問介護の支給決定を受けている障害のある方。
- サービス内容:ヘルパーが自宅から病院までの付き添いや、診察中の見守りを行います。これにより、付き添いをする家族の負担が軽減されます。
- 費用:原則としてサービス費の1割負担ですが、障害者医療費助成制度や自治体独自の制度により、実質無料になるケースが多いです。
ただし、この「移動支援」サービスは、ヘルパーの交通費自体を補助するものではありません。ヘルパーがお子さんを連れて移動する際の、公共交通機関の運賃やタクシー代は、原則として利用者側の負担となることが多いです(自治体によっては別途補助がある場合もあります)。
💡 ポイント
移動支援サービスは、福祉サービス特有の「支給時間の上限」があります。通院に要する時間が支給時間内に収まるか、事前にサービス事業所と綿密に打ち合わせることが重要です。
小児慢性特定疾病医療支援と交通費
「小児慢性特定疾病医療支援」制度は、国が定める慢性の病気を持つ18歳未満(継続の場合は20歳未満)の医療費を助成する制度です。この制度は、医療費そのものへの助成が主ですが、一部の自治体では独自の交通費補助を設けていることがあります。
例えば、指定医療機関が遠方にあるために、新幹線や航空機を利用せざるを得ない場合など、特別な移動手段が必要な場合に、申請により交通費の一部を助成する制度が存在します。この情報は、小児慢性特定疾病の申請窓口である保健所で確認することができます。
❓ よくある質問(FAQ):利用時のギモンを解消
通院・入院時の交通費補助制度を利用する際によくある疑問や、トラブルになりやすい点について解説します。
Q1. 介護者の「通院付き添い」の範囲はどこまで認められますか?
A. 公共交通機関の割引や医療費控除の対象となる「介護者」の範囲は、本人の障害の程度によって判断されます。
- 第1種手帳の場合:手帳を提示することで、本人と介護者1名が割引対象となります。この介護者は、必ずしも家族である必要はなく、付き添いの支援者やヘルパーでも可能です。
- 医療費控除の場合:付き添いが必要不可欠であると認められる場合に限られます。「障害の状況、病状からみて、一人で通院することが危険または不可能である」と客観的に判断できることが重要です。
軽度な障害や、本人が単独で移動可能な場合の付き添い者の交通費は、一般的に割引や控除の対象とはなりません。
Q2. 入院中の家族(見舞い)の交通費は補助されますか?
A. 原則として、家族の「見舞い」のための交通費は、どの補助制度でも対象外です。
ただし、付き添いが必要な障害のあるお子さんの入院で、保護者が病院に宿泊したり、毎日通って身の回りの世話をしたりする場合、その付き添い費用の一部が「療養上の世話」として医療費控除の対象となる可能性があります。これも、医師の指示や病状から付き添いが不可欠であると認められる場合に限られます。
Q3. 福祉タクシー券の交付を希望していますが、同時にガソリン代の補助も受けられますか?
A. これは自治体によって判断が分かれる、最も注意が必要な点です。
多くの自治体では、「移動手段の支援」として、タクシー券かガソリン代補助の「どちらか一方を選択」する制度設計になっています。しかし、一部の大規模自治体では、重度の身体障害と重度の知的障害など、複数の重度障害を併せ持つ方に限り、両方の制度の併用を認めているケースもあります。必ず、申請前に自治体の福祉窓口で確認してください。
🤝 相談窓口と今後のアクションプラン
通院・入院時の交通費補助制度は、制度が多岐にわたり、それぞれが複雑な条件を持っています。一つ一つを調べるのは大変な労力です。しかし、活用できる制度を見つけ出すことが、生活の質を大きく向上させます。
交通費補助に関する主な相談窓口
制度の利用に関する相談は、以下の窓口が中心となります。
| 窓口 | 相談内容 |
|---|---|
| 市区町村役場 障害福祉担当課 | 福祉タクシー利用券、燃料費助成、有料道路割引の申請、移動支援サービスの利用申請。 |
| かかりつけの医療機関の医療ソーシャルワーカー(MSW) | 遠方受診時の移動手段の提案、入院中の家族負担に関する相談、医療費控除に関するアドバイス。 |
| 地域包括支援センター(高齢者) | 65歳以上で障害を持つ方の移動支援や介護タクシー利用に関する相談。 |
地域包括支援センターは、特に高齢期の障害のある方の交通手段の確保や介護タクシーとの連携について、専門的な情報を持っています。
交通費負担を軽減するためのアクションプラン
この記事で得た情報を基に、以下の3つのステップを実行に移しましょう。
- 手帳の確認と提示:通院・移動の際は、必ず手帳を携行し、利用可能な全ての交通機関で割引を申請してください。わずかな割引でも積み重なれば大きな額になります。
- 自治体独自制度の調査:お住まいの市区町村の障害福祉担当課に電話で連絡し、「福祉タクシー券」や「ガソリン代補助」など、独自の交通費補助制度があるかどうか具体的に質問しましょう。
- 記録の徹底:タクシーや特急を利用した際の領収書は必ず保管し、電車・バスの利用時は、医療費控除のために利用日、目的地、金額を家計簿などに詳細に記録する習慣をつけましょう。
通院・入院は心身ともに負担が大きいものです。交通費の負担を軽減することで、少しでも安心して治療に専念できる環境を整えていきましょう。私たちは、皆さまの安心な移動を心から願っています。
まとめ
- 障害のある方が利用できる交通費補助制度は、公共交通機関の運賃割引、自治体の福祉タクシー券、有料道路割引、医療費控除など多岐にわたります。
- 鉄道の割引は、手帳の等級に応じて本人だけでなく介護者も対象となる場合があり、事前に適用範囲を確認することが重要です。
- 福祉タクシー券やガソリン代助成は自治体独自の制度であり、お住まいの地域によって対象や併用の可否が大きく異なります。
- 通院のためにかかった交通費は、公共交通機関の運賃に限り、医療費控除の対象となります。領収書がない場合は、詳細な記録が必要です。
- 重度訪問介護などの移動支援サービスは、移動の際の介助者に特化した支援であり、運賃そのものの補助ではない点に注意しましょう。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
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「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





