カウンセリングが苦手だった私が続けられた理由

「話すこと」が苦痛だった
「次回からカウンセリングも受けてみましょう」——主治医からそう提案された時、私の心には強い抵抗感がありました。見知らぬ人に自分の弱さをさらけ出す。過去の辛い経験を話す。感情を言葉にする——そのすべてが、苦痛に思えました。
実際、最初の数回は本当に辛かったです。何を話せばいいのかわからない。沈黙が怖い。カウンセラーの反応が気になる。「こんなの意味があるのだろうか」と何度も思いました。
でも今、カウンセリングを2年以上続けている私がいます。なぜ続けられたのか。どう変わったのか。この記事では、カウンセリングが苦手だった私が続けられるようになった理由と、その過程で得たものについてお話しします。
最初のカウンセリング——緊張と戸惑い
初回の予約を入れるまで
主治医からカウンセリングを勧められてから、実際に予約を入れるまで2週間かかりました。予約の電話をかけることすら、勇気が必要でした。
当時の私がカウンセリングに抱いていたイメージは、以下のようなものでした。
- 「過去を根掘り葉掘り聞かれる」
- 「弱みを握られる」
- 「ダメ出しされる」
- 「泣かされる」
- 「洗脳される」
- 「高圧的に指導される」
これらは完全に誤解でしたが、当時の私には本当にそう思えたのです。
⚠️ 注意
カウンセリングに対する誤解や不安は自然なことです。実際のカウンセリングは、カウンセラーが一方的に指導するものではなく、対話を通じて自分自身の理解を深めていく過程です。
初回セッション——「何を話せばいいのか」
初めてカウンセリングルームに入った時、私は緊張で手が震えていました。カウンセラーは40代くらいの女性で、穏やかな雰囲気でした。
「今日はどうされましたか?」——その質問に、私は固まりました。何を話せばいいのかわからなかったのです。
「うつ病と診断されて...」と言った後、言葉が続きませんでした。沈黙が続きます。その沈黙が、とても居心地悪く感じられました。
カウンセラーは焦らせることなく、「ゆっくりで大丈夫ですよ」と言ってくれました。でも私には、その「ゆっくり」がとても長く感じられました。
「評価されている」という感覚
初回のカウンセリングで最も辛かったのは、「評価されている」と感じたことでした。
カウンセラーがメモを取るたびに、「何か変なことを言ったのではないか」と不安になりました。質問をされるたびに、「正しい答え」を探そうとしました。
50分のセッションが終わった時、私はぐったりと疲れていました。「もう二度と来たくない」——そう思いました。
「カウンセリングに『正しい答え』はありません。あなたが感じたこと、考えたことを、そのまま話してくれればいいんです」
— 後にカウンセラーが教えてくれた言葉
続けることへの抵抗
「意味があるのか」という疑問
カウンセリングを数回受けた後も、私はその効果に懐疑的でした。
話をするだけで、何が変わるのか。過去を振り返って、何の意味があるのか。薬を飲んでいれば、カウンセリングなんて必要ないのではないか——そんな思いがありました。
主治医は「薬物療法とカウンセリングを併用することで、より効果的な治療ができます」と説明してくれました。でも当時の私には、その言葉が実感できませんでした。
「話したくないこと」への恐怖
カウンセリングを避けたかった大きな理由の一つは、「話したくないこと」を話さなければならないと思っていたからです。
幼少期のトラウマ、人間関係の失敗、恥ずかしい過去——こうしたことを掘り返されるのが怖かったのです。
でもある日、カウンセラーが言いました——「話したくないことは、話さなくて大丈夫です。あなたが話したいことだけ、話してください」。
この言葉に、少し安心しました。「強制されない」とわかったからです。
カウンセラーとの相性
5回目のセッションの後、私は主治医に相談しました——「カウンセラーと合わない気がします」と。
主治医は理解を示してくれました。「カウンセラーとの相性は大切です。合わないと感じるなら、変更も可能ですよ」。
この言葉を聞いて、私は少し考えました。「本当に合わないのか、それとも自分が心を開いていないだけなのか」と。
そして、もう数回続けてみることにしました。その決断が、後に大きな意味を持つことになります。
💡 ポイント
カウンセラーとの相性は重要です。ただし、最初の数回で判断するのは早いこともあります。信頼関係を築くには時間がかかります。それでも合わないと感じる場合は、変更を検討することも一つの選択肢です。
変化の兆し——「聞いてもらえる」安心感
初めて「楽になった」と感じた日
7回目のセッション。その日、私は仕事での失敗について話しました。自分を責める気持ち、情けなさ、将来への不安——そうした感情を、ぽつりぽつりと話しました。
カウンセラーは、ただ聞いてくれました。アドバイスもせず、批判もせず、ただ「そうだったんですね」と受け止めてくれました。
50分が終わった時、不思議なことに心が軽くなっていました。何か解決したわけではありません。でも、話を聞いてもらえたこと、受け止めてもらえたことで、楽になったのです。
これが、私が初めてカウンセリングの価値を実感した瞬間でした。
「評価されない」という発見
セッションを重ねるうちに、私は重要なことに気づきました——カウンセラーは私を評価していないということです。
どんなことを話しても、「それはダメです」とは言われませんでした。矛盾したことを言っても、否定されませんでした。弱音を吐いても、「甘えている」とは言われませんでした。
この「評価されない空間」が、どれほど貴重かを知りました。日常生活では、常に誰かの評価を気にしています。でもカウンセリングルームでは、ありのままの自分でいられたのです。
自分の感情に気づく
カウンセラーは時々、こんな質問をしました——「今、どんな気持ちですか?」
最初、私はこの質問に答えられませんでした。自分が何を感じているのか、わからなかったのです。
でもカウンセラーは、焦らせることなく待ってくれました。そして少しずつ、私は自分の感情に気づけるようになっていきました。
| 時期 | 感情への気づき |
|---|---|
| 最初の頃 | 「わからない」「何も感じない」 |
| 2ヶ月目 | 「悲しい」「辛い」など基本的な感情を認識 |
| 4ヶ月目 | 「寂しい」「怖い」など複雑な感情に気づく |
| 6ヶ月目 | 「怒り」や「嫉妬」など否定的な感情も認められる |
| 現在 | 微妙な感情の変化にも気づけるようになった |
カウンセリングを続けられた理由
「理解された」という実感
私がカウンセリングを続けられた最大の理由は、「理解された」と感じられたことでした。
カウンセラーは、私の話を本当に聞いてくれました。表面的な言葉だけでなく、その裏にある感情や意味まで、理解しようとしてくれました。
ある日、私が何気なく言った一言に、カウンセラーは反応しました——「今の言葉、大切な気がします。もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」
その瞬間、「この人は本当に私の話を聞いている」と実感しました。
✅ 成功のコツ
カウンセリングの効果は、カウンセラーとの信頼関係に大きく依存します。「理解されている」と感じられることが、継続の鍵になります。それを感じられない場合は、率直にカウンセラーに伝えることも大切です。
安全な「練習の場」
カウンセリングは、私にとって「練習の場」になりました。
日常生活では言えないことを、カウンセリングでは言える。失敗しても大丈夫な場所。感情を出しても否定されない空間——そこで「自分を表現する」練習ができたのです。
カウンセリングで練習したことを、少しずつ日常生活でも試せるようになりました。例えば:
- 「NO」と言う練習 → 実際に断れるようになった
- 感情を言葉にする練習 → 家族に気持ちを伝えられるようになった
- 自分の考えを整理する練習 → 職場でも意見を言えるようになった
自己理解が深まった
カウンセリングを続ける中で、自分自身への理解が深まりました。
なぜ自分はこう感じるのか。どんな時にストレスを感じるのか。何が自分を苦しめているのか——こうしたことが、少しずつわかってきました。
特に大きかったのは、自分の「思考パターン」に気づけたことです。
私には、「完璧でなければならない」「人に頼ってはいけない」「弱さを見せてはいけない」——こうした思い込みがありました。
カウンセラーと一緒にこれらを検証することで、それらが必ずしも真実ではないと理解できました。
カウンセリングで学んだこと
「答え」をくれる場所ではない
カウンセリングを続けてわかったことの一つは、カウンセラーは「答え」をくれないということです。
「どうすればいいですか?」と聞いても、「あなたはどうしたいですか?」と返されます。最初はこれがもどかしく感じました。
でも今はわかります。答えは、自分の中にあるのです。カウンセラーは、その答えを見つける手伝いをしてくれる人なのだと。
沈黙も意味がある
初期の頃、私は沈黙を恐れていました。「何か話さなければ」と焦っていました。
でもカウンセラーは、沈黙を急かしませんでした。むしろ、沈黙の中で自分の内面と向き合う時間を大切にしてくれました。
今では、沈黙も大切な時間だと理解しています。その中で、自分の感情や考えが整理されていくのです。
変化には時間がかかる
カウンセリングは、即効性のあるものではありません。1回や2回で劇的に変わることは、ほとんどありません。
でも、継続することで確実に変化が起きます。それは小さな変化かもしれませんが、積み重なると大きな違いになります。
私の場合、明確な変化を実感できたのは、3ヶ月ほど経ってからでした。焦らず続けることが大切だと学びました。
今——カウンセリングは生活の一部
月2回のセッション
今、私は月に2回カウンセリングを受けています。症状が安定してからも、続けています。
なぜなら、カウンセリングは「治療」だけでなく、「予防」や「成長」の場でもあるからです。
ストレスが溜まる前に話せる。小さな変化に気づける。自分を見つめ直す時間を持てる——こうした予防的な意味が、今は大きいです。
カウンセラーとの関係
2年以上続けている今、カウンセラーとの間には信頼関係ができています。
最初は「他人」だったカウンセラーが、今では私の回復を支える大切な存在になりました。ただし、それは「友人」とは違う、専門的な関係です。
この適度な距離感が、むしろ心地よいのです。
カウンセリングで得たもの
カウンセリングを続けて、私が得たものは計り知れません。
- 自己理解が深まった
- 感情を言葉にできるようになった
- 自分を許せるようになった
- 他人とのコミュニケーションが改善した
- ストレス対処法を学んだ
- 自分の価値観を見直せた
- 人生の意味を考えられるようになった
これらは、薬だけでは得られなかったものです。
カウンセリングが苦手な人へ
抵抗があるのは自然なこと
もし今、カウンセリングに抵抗を感じているなら、それはとても自然なことです。私もそうでした。
見知らぬ人に心を開くのは、勇気がいります。でも、その一歩が、大きな変化につながることもあります。
「合わない」と感じたら
カウンセラーとの相性は大切です。数回試してみて、どうしても合わないと感じたら、変更を検討してください。
合わないカウンセラーと無理に続けるより、自分に合う人を探す方が、効果的です。
最初から完璧を求めない
カウンセリングで、最初から上手く話せなくても大丈夫です。沈黙が続いても、言葉が出てこなくても、それでいいのです。
カウンセラーは、そんなあなたも受け入れてくれます。完璧を求めず、ありのままで臨んでください。
効果を焦らない
カウンセリングの効果は、すぐには現れないことが多いです。でも、続けることで確実に変化は起きます。
少なくとも3ヶ月は続けてみることをお勧めします。その頃には、何かしらの変化を実感できるはずです。
「カウンセリングは、鏡のようなものです。カウンセラーという鏡を通して、自分自身をより深く理解できるようになる。その過程には時間がかかりますが、必ず価値があります」
— カウンセラーの言葉
よくある質問
Q1: カウンセリングと薬物療法、どちらが効果的ですか?
多くの研究で、両方を併用することが最も効果的だと示されています。薬は症状を和らげ、カウンセリングは根本的な問題に取り組みます。それぞれの役割が異なるため、併用をお勧めします。
Q2: カウンセリングは何回くらい受ければいいですか?
人によって異なりますが、最低でも10〜20回は継続することが推奨されます。急性期は週1回、安定してきたら月2回など、頻度を調整していきます。終了時期は、カウンセラーと相談しながら決めます。
Q3: カウンセリングの内容は、誰かに知られますか?
カウンセラーには守秘義務があります。あなたの許可なく、話した内容が他人に伝わることはありません。ただし、自傷他害の恐れがある場合など、例外的な状況では関係者と情報共有することがあります。
Q4: オンラインカウンセリングでも効果はありますか?
研究では、対面とオンラインで効果に大きな差はないとされています。外出が困難な方や、遠方の方にとって、オンラインは有効な選択肢です。ただし、重度の症状の場合は対面が推奨されることもあります。
Q5: カウンセリング費用はどのくらいですか?
医療機関でのカウンセリングは保険適用で、1回あたり1,000円〜3,000円程度(3割負担)です。民間のカウンセリングルームでは、1回5,000円〜15,000円程度が一般的です。自立支援医療制度を利用すれば、さらに負担を軽減できます。
まとめ
この記事では、カウンセリングが苦手だった私が続けられた理由と、その過程で得たものについてお話ししました。
- カウンセリングへの抵抗や不安は自然な感情です
- 信頼関係の構築には時間がかかりますが、それが継続の鍵です
- カウンセリングは「答え」をくれる場所ではなく、自己理解を深める場所です
- 効果は即座には現れませんが、継続することで確実に変化が起きます
もし今、カウンセリングに不安を感じているなら、まずは試してみてください。合わなければ変更もできます。自分に合ったカウンセラーと出会えれば、それは回復の大きな力になります。焦らず、自分のペースで、一歩を踏み出してください。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





