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発達障害と精神障害を併発した息子との日々

📖 約21✍️ 鈴木 美咲
発達障害と精神障害を併発した息子との日々
「僕はどこかおかしいの?」——ADHDと診断された息子が、中学でうつ病も発症。二つの障害の複雑さ。症状の見分けの難しさ、薬の調整、支援の優先順位。多職種連携で支える体制づくり。「特性」と「症状」の区別。5年経って症状安定、通信制高校へ。併発は珍しくない。適切な支援で自分らしく生きられる。発達障害と精神障害併発の体験談。

二つの診断——複雑さの始まり

「お母さん、僕はどこかおかしいの?」——15歳の息子がそう聞いた時、私は言葉に詰まりました。息子は、小学校の時にADHD(注意欠如・多動性障害)と診断されていました。そして中学3年の時、新たにうつ病の診断を受けました。

発達障害だけでも大変だったのに、精神障害まで——私は、どう向き合えばいいのかわかりませんでした。二つの障害が絡み合う複雑さに、家族全員が戸惑いました。

この記事では、発達障害と精神障害を併発した息子と向き合ってきた10年間の道のりをお話しします。同じように複数の診断を抱える子どもと向き合っているご家族の参考になれば幸いです。

最初の診断——ADHD(小学2年生)

「落ち着きがない子」

息子の「困りごと」は、幼稚園の頃から始まっていました。じっとしていられない。順番が待てない。衝動的に行動する——先生から、何度も注意を受けました

私は、「男の子はこんなもの」「そのうち落ち着く」と思っていました。でも小学校に入ると、問題はさらに顕著になりました。

授業中に席を立つ。忘れ物が多い。宿題ができない。友達とトラブルになる——学校からの連絡が、絶えませんでした。

⚠️ 注意

発達障害を持つ人は、精神障害を併発するリスクが高いことが知られています。ADHDやASD(自閉スペクトラム症)がある場合、うつ病や不安障害などの精神障害を発症する可能性が、一般より高くなります。早期からのサポートと、メンタルヘルスの観察が重要です。

ADHD診断と服薬開始

小学2年生の時、児童精神科を受診しました。詳しい検査の結果、ADHD(不注意優勢型と多動・衝動性混合型)と診断されました。

医師からは、ADHD治療薬の服用を勧められました。最初は抵抗がありました。「まだ小さいのに、薬を飲ませるのか」と。

でも、息子の困りごとは深刻でした。学校でも家でも、叱られることばかり。息子の自己肯定感は、どんどん下がっていました。

服薬を始めると、変化がありました。授業に集中できるようになった。忘れ物が減った。衝動的な行動も減った——薬の効果を、実感しました。

それでも残る「困りごと」

でも、すべてが解決したわけではありませんでした。

友達関係は、依然として難しかったです。空気が読めない。冗談が通じない。一方的に話してしまう——こうした特性は、薬では改善しませんでした

息子は、次第に孤立していきました。友達から避けられる。いじめられる——学校が、辛い場所になっていきました。

時期 主な困りごと 息子の状態
小学2年 多動、不注意、衝動性 ADHD診断、服薬開始
小学4年 友人関係のトラブル増加 孤立し始める
小学6年 いじめ、不登校傾向 自己肯定感の著しい低下
中学1年 完全不登校 引きこもり、抑うつ気分
中学3年 希死念慮の出現 うつ病診断

「発達障害のある子どもは、学校生活での困難やいじめ体験から、二次的に精神障害を発症することがあります。特に思春期は要注意です。早期のメンタルヘルス支援が、予防につながります」

— 後に児童精神科医が教えてくれたこと

二つ目の診断——うつ病(中学3年生)

「もう学校に行けない」

中学1年の時、息子は完全に不登校になりました。朝になると、体が動かなくなるのです。

「学校に行きたくない」「みんなが怖い」「自分はダメな人間だ」——息子は、そう言いました。

私は、「発達障害のせいだ」と思っていました。学校が息子に合っていないのだと。でも、何か違う——そう感じていました。

抑うつ症状の悪化

中学3年になると、息子の状態はさらに悪化しました。

一日中部屋に引きこもる。食欲がない。眠れない。何にも興味を示さない。「消えたい」と言うようになった——明らかに、ADHDだけの問題ではありませんでした

そして、決定的な出来事がありました。息子が、自傷行為をしたのです。

うつ病の診断

急いで、主治医に相談しました。詳しい診察の結果、「中等度のうつ病」と診断されました。

医師は説明しました——「発達障害のある人は、ストレスに弱く、うつ病を発症しやすい傾向があります。お子さんの場合、学校でのいじめや孤立体験が、大きなストレスになっていたと思われます」。

私は、衝撃を受けました。ADHDだけでも大変なのに、うつ病まで——二つの障害を抱えて生きていくことの困難さを、想像すると胸が苦しくなりました。

💡 ポイント

発達障害と精神障害の併発は、珍しくありません。それぞれの障害が相互に影響し合い、症状が複雑になることがあります。両方の専門知識を持つ医師や支援者と連携することが大切です。

複雑さと向き合う——どちらの症状なのか

「ADHDのせいか、うつのせいか」

二つの障害を抱える息子を支える中で、最も難しかったのは、症状の見分けでした。

集中できないのは、ADHDのせい? それともうつ病のせい? 引きこもるのは、うつ病のせい? それとも発達障害による疲労? イライラするのは、ADHDの衝動性? それともうつ病の焦燥感?

どちらの症状なのか、判断がつかないことが多かったです。

薬の調整の難しさ

薬の調整も、複雑でした。

ADHD治療薬と抗うつ薬——二つの薬を併用することになりました。でも、薬の相互作用や副作用を考慮しながらの調整は、時間がかかりました。

ADHD治療薬で不眠が悪化することもあれば、抗うつ薬で集中力が低下することもありました。主治医と何度も相談しながら、最適な組み合わせを探しました。

支援の優先順位

どちらの支援を優先すべきか——これも悩みました。

発達障害の支援(ソーシャルスキルトレーニングなど)を優先すべきか。うつ病の治療(休養、カウンセリング)を優先すべきか。

医師は言いました——「まず、うつ病の症状を安定させることが優先です。抑うつ状態では、発達障害の支援も効果が出にくいからです」。

この助言に従い、まずはうつ病の治療に専念することにしました。

支援体制を作る——多職種連携

様々な専門家との連携

二つの障害を支えるには、多職種連携が不可欠でした。

私たちが関わった専門家:

  • 児童精神科医:診断、薬物療法の管理
  • 臨床心理士:カウンセリング、認知行動療法
  • 作業療法士:感覚統合療法、日常生活スキルの訓練
  • 言語聴覚士:コミュニケーションスキルの支援
  • 相談支援専門員:福祉サービスの調整
  • 訪問看護師:自宅での健康管理、服薬支援
  • スクールカウンセラー:学校との連携

これらの専門家が、情報を共有しながら、息子を支えてくれました。

✅ 成功のコツ

発達障害と精神障害の併発では、単一の専門家では対応が難しいことがあります。多職種チームを作り、定期的に情報共有することが重要です。親が全体のコーディネーター役を担うこともありますが、相談支援専門員に依頼することもできます。

個別の教育支援計画

学校とも連携し、個別の教育支援計画を作成しました。

息子の特性と必要な配慮をまとめ、学校と共有しました。例えば:

  • ADHD:板書の時間を長めに取る、指示は短く具体的に
  • うつ病:無理な登校を強要しない、保健室の利用を認める
  • 両方:感覚過敏への配慮(静かな場所の提供)

この計画があることで、学校も適切な支援をしやすくなりました。

放課後等デイサービスの活用

放課後等デイサービスも、大きな支えになりました。

そこで息子は、同じような困難を抱える仲間と出会いました。「自分だけじゃない」という実感が、息子の孤独を和らげてくれました。

スタッフも、発達障害と精神障害の両方を理解してくれていました。息子のペースを尊重し、無理強いせず、居場所を提供してくれました。

家族としてできたこと、できなかったこと

「特性」と「症状」を区別する

私が学んだ大切なことの一つは、「特性」と「症状」を区別することでした。

ADHDの特性(不注意、多動など)は、息子の個性の一部です。否定するのではなく、受け入れる必要があります。

一方、うつ病の症状(抑うつ気分、希死念慮など)は、治療すべきものです。

この区別を意識することで、息子への接し方が変わりました。特性は受け入れ、工夫する。症状は治療する——このバランスが大切でした。

「できないこと」を責めない

もう一つ大切だったのは、「できないこと」を責めないことでした。

息子には、「できないこと」がたくさんありました。でもそれは、怠けているからでも、努力が足りないからでもありません。障害のためです。

「なんでできないの?」と責めるのではなく、「どうしたらできるか」を一緒に考える——この姿勢を、心がけました。

自分たちの限界を認める

そして、自分たちの限界を認めることも学びました。

家族だけでは、支えきれません。専門家の力を借りる。福祉サービスを使う——それは、「逃げ」ではなく「賢明な判断」だと理解しました。

私自身も、カウンセリングを受けました。家族会にも参加しました。自分を支えることが、息子を支えることにつながる——そう学びました。

5年後の今——それぞれのペースで

症状は安定している

うつ病の診断から5年が経った今、息子の症状は安定しています

抗うつ薬とADHD治療薬を継続しながら、定期的に通院しています。希死念慮もなくなり、少しずつ前を向けるようになりました。

ADHDの特性は、今もあります。でも、対処法を身につけました。リマインダーを使う、やることリストを作る、環境を整える——こうした工夫で、生活しやすくなりました。

通信制高校に通っている

息子は今、通信制高校に通っています。週に数日、登校するスタイルです。

全日制は無理でしたが、通信制なら自分のペースで学べます。理解のある先生方と、同じような経験を持つ仲間——その環境が、息子に合っていました。

「高校卒業」という目標に向かって、息子なりのペースで進んでいます。

将来への希望

将来のことは、まだわかりません。でも、今は希望を持てています。

就労移行支援の利用も視野に入れています。障害者雇用での就労も、選択肢の一つです。グループホームでの自立生活も、いつか目指したい——息子は、そう言っています。

発達障害と精神障害、二つの障害を抱えながらも、自分らしく生きる道を、息子は探しています。

同じ立場の家族へ伝えたいこと

併発は珍しくない

もし子どもが発達障害と精神障害を併発したら、まず知ってほしいことがあります——併発は珍しくありません

発達障害のある人の約70%が、生涯のどこかで精神障害を経験すると言われています。あなたの子どもだけではありません。

複雑でも、支援はある

複雑だからこそ、様々な支援が必要です。でも、支援はあります。

医療、福祉、教育——様々な分野の専門家と連携しながら、子どもに合った支援を見つけていってください。

一人で抱え込まず、チームで支える——それが、鍵です。

それぞれの「回復」がある

最後に、これだけは伝えたいです——それぞれの「回復」があります。

発達障害の特性は、なくなりません。でも、生きやすくすることはできます。精神障害は、治療できます。

「普通」を目指す必要はありません。子どもらしく、その子のペースで——それが、最も大切なことです。

希望を持ってください。道は、必ず開けます。

「発達障害と精神障害の併発は、確かに複雑です。でも、適切な支援があれば、子どもは自分らしく生きていけます。焦らず、一つずつ、できることから始めていきましょう」

— 児童精神科医の言葉

よくある質問

Q1: 発達障害があると、必ず精神障害になりますか?

いいえ、必ずではありません。ただし、発症リスクは一般より高いことが知られています。早期からのサポート、ストレス管理、自己肯定感の育成などが、予防につながります。定期的なメンタルヘルスチェックも重要です。

Q2: どちらの障害を優先して支援すべきですか?

一般的には、まず精神障害の症状を安定させることが優先されます。抑うつ状態や不安が強いと、発達障害への支援も効果が出にくいためです。ただし、個々の状況によって異なるため、主治医や支援チームと相談しながら決めてください。

Q3: 薬はどうなりますか? 両方の薬を飲むのですか?

多くの場合、両方の薬を併用します。ADHD治療薬と抗うつ薬(または抗不安薬)などです。ただし、薬の相互作用を考慮しながら慎重に調整する必要があります。定期的な受診で、効果と副作用を確認しながら進めます。

Q4: 学校にはどう説明すればいいですか?

両方の診断名と、それぞれに必要な配慮を説明することをお勧めします。個別の教育支援計画を作成し、具体的な配慮事項を明記すると、学校も対応しやすくなります。医師の診断書や意見書があると、より理解されやすいです。

Q5: 将来、自立できますか?

多くの方が、適切な支援を受けながら自立した生活を送っています。就労移行支援、障害者雇用、グループホームなど、様々な選択肢があります。時間をかけて準備し、段階的に自立を目指していくことが大切です。焦らず、本人のペースで進めましょう。

まとめ

この記事では、発達障害と精神障害を併発した息子との10年間の道のりをお話ししました。

  • 発達障害のある人は、精神障害を併発するリスクが高いです
  • 二つの障害が絡み合う複雑さには、多職種連携で対応します
  • 「特性」と「症状」を区別し、それぞれに適切に対応することが大切です
  • 併発は珍しくなく、適切な支援があれば子どもは自分らしく生きていけます

もし子どもが発達障害と精神障害を併発しているなら、一人で抱え込まないでください。様々な支援があります。専門家と連携しながら、子どもに合った支援を見つけていってください。複雑でも、道は必ず開けます。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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