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身体がうまく動かない日でも、私を助けてくれた工夫

📖 約52✍️ 鈴木 美咲
身体がうまく動かない日でも、私を助けてくれた工夫
身体障害を持つ当事者が、体調が悪く身体がうまく動かない日をどのように乗り越えているか、実体験に基づく具体的な工夫を紹介しています。朝の起き上がりを助けるベッド周りの環境整備から、冷凍食品やスマート家電を活用した家事の簡略化、音声操作による生活環境のコントロール、そして周囲に上手く助けを求めるコミュニケーション術までを詳しく解説。動けない自分を責めてしまう心のケアについても触れ、テクノロジーとマインドセットの両面からQOLを向上させるためのヒントを提案します。

心と身体の波に寄り添う:動けない日を乗り越えるための生活術

身体障害を抱えて生活していると、体調や気圧の変化、あるいは心の疲れによって、どうしても「今日は身体が思うように動かない」という日があります。朝起きた瞬間に身体の重さを感じ、絶望感に襲われることもあるでしょう。そんな時、「周りに迷惑をかけてしまう」「自分はなんてダメなんだ」と自分を責めてはいませんか?

私自身、脊髄の疾患を抱えてから、日によって身体の可動域や痛みの強さが大きく変わる生活を送っています。最初は「動けない自分」を否定してばかりでしたが、今は無理をしないための工夫を凝らすことで、そんな日も穏やかに過ごせるようになりました。この記事では、身体がうまく動かない日でも自分を助けてくれた具体的なライフハックや、心の持ち方について、私の実体験を交えて詳しくお話しします。今の不自由さが少しでも軽くなるヒントを、一緒に見つけていきましょう。


朝の「動けない」を解消する環境づくり

身体が重い日、最も高いハードルになるのが「ベッドから出ること」です。関節の強張りや痺れが強い朝は、起き上がるだけで体力を使い果たしてしまいます。以前の私は、気合で起き上がろうとして余計に身体を痛めていました。しかし、寝室の環境を少し整えるだけで、朝の絶望感は驚くほど軽減されます。

大切なのは、「最小限の動きですべてが完結する」状態を作っておくことです。身体が動かない日は、立って歩くこと自体が大きなリスクになります。そのため、ベッド周囲の環境を徹底的にカスタマイズしました。これにより、「動かなければならない」というプレッシャーから解放され、心の余裕が生まれるようになったのです。

ベッドサイドに必要なものを集約する

私は、ベッドの脇に小さなワゴンを置いています。そこには、一日を始めるために必要な最低限のアイテムをすべて収納しています。例えば、薬、水、スマートフォン、充電器、そしてウェットティッシュや予備の着替えなどです。これにより、身体が動かない朝でも、ベッドに座ったまま多くのことを済ませられます。

特に重要なのは、手の届く範囲にリモコン類をまとめることです。照明のスイッチやカーテンの開閉がベッドから操作できれば、暗い部屋で一人落ち込む時間を減らせます。今はスマート家電(声やスマホで操作できる家電)も普及しており、テクノロジーの力を借りることで、身体への負担を劇的に減らすことが可能です。

着替えを楽にするための工夫

身体が動かない日は、服のボタンを留めることさえ苦行になります。そこで私は、体調が悪い日用の「レスキュー服」を用意しています。伸縮性の高いスウェットや、前開きでマジックテープ式のインナーなど、手指の巧緻性(こうちせい:細かな動き)が低下していても着脱しやすいものです。

また、ソックスエイドなどの自助具(じじょぐ:生活を助ける道具)も積極的に活用しています。自力で靴下を履くのに10分かかっていたのが、道具を使うだけで1分で終わります。「自分の力でやらなければ」というこだわりを捨て、道具に頼る勇気を持つことが、朝の体力を温存する秘訣です。

💡 ポイント

枕元に「今日をやり過ごすためのセット」を常備しておきましょう。準備があるという安心感が、ストレスを軽減します。


食事と家事の「徹底的な手抜き」術

身体が動かない日、次に困るのが食事です。お腹は空くけれど、キッチンに立って料理をする体力はない。そんな時、以前の私は食事を抜いたり、お菓子で済ませたりしていました。しかし、それでは身体の回復が遅れるだけでなく、精神的にもさらに沈んでしまいます。今は、「頑張らなくても食べられる」仕組みを構築しています。

家事についても同様です。完璧主義を捨て、「命に関わらない家事は後回しにする」というルールを決めました。床に少しホコリがあっても、洗濯物が畳めていなくても、今日を生き延びることが最優先です。家事のハードルを下げることで、身体が動かないことへの罪悪感を切り離すことができます。

冷凍食品とデリバリーの活用

我が家の冷凍庫には、レンジで加熱するだけで栄養が摂れる「宅配弁当」や、カット済みの冷凍野菜がつねにストックされています。包丁を握る力がない日でも、レンジのボタンを押すだけで温かい食事が摂れる。この安心感は計り知れません。また、自治体の配食サービスを定期的に利用するのも一つの方法です。

最近はスマートフォンのアプリで簡単に注文できるデリバリーサービスも充実しています。配送料がかかることを贅沢だと感じるかもしれませんが、身体を壊して医療費がかさむことを考えれば、それは必要経費です。栄養バランスの整った食事を摂ることで、翌日の体調が上向く可能性も高まります。

「座ったまま」できる家事のススメ

どうしてもやらなければならない家事があるときは、徹底的に座って行います。キッチンには高さ調節ができる椅子を置き、座ったまま食器を洗ったり、食材を洗ったりできる環境を整えました。また、洗濯物を干す際も、部屋干し用の低いラックを使い、車椅子や椅子に座ったまま作業を完結させます。

掃除はロボット掃除機に任せています。2023年のデータによると、ロボット掃除機の普及率は年々上昇しており、特に身体障害者世帯では「自立支援」のツールとして非常に高く評価されています。自分で掃除機をかけられない自分を責めるのではなく、機械を使いこなす管理者になったつもりで、家事を自動化していきましょう。

✅ 成功のコツ

「やらないことリスト」を作りましょう。身体が動かない日は、そのリストにあることは絶対にやらないと決めることで、心が軽くなります。


スマートホームと音声操作の恩恵

身体障害を持つ私にとって、ここ数年のテクノロジーの進化はまさに革命的でした。特に、スマートスピーカーを通じた音声操作は、身体がうまく動かない日の最強の味方です。指一本動かすのが辛い時でも、声だけで室内の環境をコントロールできることは、生活の質(QOL)を劇的に向上させてくれました。

「アレクサ、電気をつけて」「ヘイ、グーグル、エアコンを24度にして」。これらの操作ができるようになる前は、暗い部屋でスイッチの場所まで這っていくこともありました。今は声が出せれば、あるいはスマホのタップ一つで、住まいが自分に従ってくれるのです。これは、身体の自由を一部取り戻したような感覚さえ与えてくれます。

声で操作できるデバイスの導入

私は現在、照明、テレビ、エアコン、カーテンの開閉、さらには玄関の鍵の施錠までを音声やスマホで操作できるようにしています。導入には多少のコストがかかりましたが、一度設定してしまえば、動けない日のストレスは8割ほどカットされます。特に、深夜に喉が渇いた時、声で照明をつけられる安心感は格別です。

また、スマートロック(電子錠)は非常に便利です。訪問介護のヘルパーさんや、急に駆けつけてくれた家族に対して、ベッドの中からスマホで解錠できます。玄関まで必死に移動する必要がなくなり、転倒のリスクも回避できます。安全をテクノロジーで買うという考え方は、身体障害者にとって非常に合理的です。

見守りカメラと緊急通報の仕組み

一人暮らしや、家族が不在がちな時間帯に身体が動かなくなると、最も怖いのは「助けを呼べないこと」です。私は、各部屋に音声で起動できる緊急通報システムを導入しています。万が一ベッドから転落して動けなくなっても、声で誰かに知らせることができる。このバックアップがあるからこそ、安心して生活できています。

また、家族との共有範囲でネットワークカメラを設置するのも有効です。プライバシーの懸念があるかもしれませんが、「いざという時に見てもらえる」という安心感は、当事者だけでなく家族の精神的負担も減らします。「つながっている」という感覚が、動けない日の孤独感を癒してくれるのです。

「テクノロジーを使うことは、決して楽をしているのではありません。自分の人生の主導権を取り戻すための、正当な手段なのです」

— IT支援専門家 Bさんの言葉


周囲の助けを借りる「コミュニケーション術」

身体が動かない日、一番難しいのが「人に頼ること」かもしれません。「こんなことで呼んでいいのかな」「忙しいのに悪いな」と遠慮してしまう気持ちはよく分かります。私も以前は、ギリギリまで我慢して、結果的に事態を悪化させてしまうことが多々ありました。しかし、今は「上手な頼り方」もリハビリの一部だと考えています。

周囲の人、特に支援者や家族は、あなたが何に困っているのかを具体的に知りたいと思っています。曖昧に「具合が悪い」と言うよりも、「今日は足の痺れが強くて歩けないので、お昼を買ってきてほしい」と具体的に伝える方が、相手も動きやすくなります。コミュニケーションの質を高めることで、お互いのストレスを最小限に抑えられます。

ヘルパーさんへの具体的なリクエスト

訪問介護などのサービスを利用している場合、身体が動かない日はいつも通りのメニューをこなすのが難しいこともあります。そんな時は、遠慮なく優先順位の変更を伝えます。「今日は身体が辛いので、掃除はいいから、溜まっているゴミ出しと、飲み物の補充を最優先でお願いします」といった具合です。

ヘルパーさんはプロですが、あなたの身体の「今日の調子」までは分かりません。自分の状態を言語化して伝えることは、自分を守るための大切なスキルです。また、感謝の言葉を添えることも忘れません。「今日は動けなくて本当に助かりました」という一言が、支援者との良好な関係を築く礎になります。

「SOS」を出せるネットワーク作り

いざという時に頼れる先は、多ければ多いほど良いです。家族、友人、ケアマネジャー、近所の方。私は、自分の状況を理解してくれている数人に、あらかじめ「今日はダメそうです」とだけ伝えるLINEのグループを作っています。過剰な心配をさせず、でも誰かが気にかけてくれているという状態を作ることが、心の安定に繋がります。

また、自治体の緊急通報サービスや、民間警備会社のシニア・障害者向けプランなども検討の価値があります。身近な人に負担をかけすぎるのが心苦しい場合は、こうした有料の「安心」を契約することで、気兼ねなくサポートを受けられるようになります。頼る先を分散させることは、共倒れを防ぐための知恵です。

⚠️ 注意

「我慢」が美徳とされることもありますが、身体障害においては転倒や症状悪化の引き金になります。早めのSOSを心がけましょう。


動けない日を肯定するためのメンタルケア

身体的な工夫も大切ですが、それ以上に重要なのが「動けない自分をどう受け入れるか」という心の持ち方です。身体が動かない日は、思考もネガティブになりがちです。「みんなは働いているのに」「自分だけが取り残されている」という声が頭の中で響くかもしれません。しかし、その声に従う必要はありません。

動けない日は、身体があなたに「休んで」というサインを出しているだけです。それはサボりではなく、次に動くための大切なプロセスです。車だって燃料が切れたら走りません。あなたの身体も、今は燃料を補給したり、エンジンを冷やしたりしている最中なのです。そう自分に言い聞かせることが、回復への近道になります。

「何もしない」というタスクをこなす

私は身体が動かない日、「今日は一日、ゆっくり休むことが私の仕事だ」と考えるようにしています。何もしないことは、決して無意味な時間ではありません。身体の炎症を抑え、神経の疲れを癒やすための、積極的な活動なのです。スケジュール帳に「休養」という大きなバツ印をつけることで、罪悪感をタスク達成の満足感に変えています。

また、身体が動かなくても楽しめるコンテンツをリスト化しています。好きなアーティストのライブ映像、オーディオブック(聴く本)、お気に入りのポッドキャスト。これらは視覚や聴覚だけで楽しめ、指一本動かさずに済みます。身体の不自由さから意識を逸らすことができれば、時間の流れは驚くほど穏やかになります。

「小さな幸せ」を数える練習

動けない日でも、世界には小さな幸せが転がっています。窓から見える空の色が綺麗だった、コーヒーの香りが良かった、誰かからのメッセージが嬉しかった。そんな些細なことを、心の中で一つひとつ数えてみます。心理学では「スリーグッドシングス(3つの良いこと)」という手法がありますが、これを動けない日にこそ実践します。

「できないこと」を数えれば切りがありませんが、「あるもの」を数えれば心は豊かになります。今の身体の状態は、あくまで一時的な波です。その波に抗って溺れるのではなく、波に身を任せて浮いておく。そんなしなやかさを身につけることで、不自由な生活の中にも、確かに幸福感を見出すことができるようになります。


身体障害者の生活を支えるサービス一覧

身体が動かない日を助けてくれる、具体的な制度やサービスを比較表にまとめました。ご自身の状況に合わせて、活用を検討してみてください。

サービス種別 内容・メリット 利用のヒント
訪問介護(ホームヘルプ) 身体介助や生活援助を受けられる。 体調に合わせた優先順位を伝える。
配食サービス 栄養バランスの取れた食事が届く。 自治体の助成がある場合も多い。
日常生活用具給付 スマートホーム機器などが対象になる場合も。 お住まいの自治体窓口で確認。
就労継続支援(在宅) 体調に合わせたペースで仕事ができる。 動ける時間に自分のスキルを活かす。


身体障害の日常生活に関するよくある質問

当事者の方から寄せられる、よくある悩みにお答えします。

Q. 毎日身体が重くて、改善の兆しが見えません。

身体の波は長期的なサイクルでやってくることもあります。まずは主治医に相談し、薬の調整やリハビリメニューの見直しを検討してください。また、気圧や湿度が影響していることも多いため、気象病の対策を並行するのも一つの手です。焦らず、「今はそういう時期」と割り切ることも必要です。

Q. 家族にこれ以上迷惑をかけたくなくて、本音を言えません。

家族にとって最も辛いのは、あなたが一人で苦しんでいることに気づけないことです。本音を隠すことが、かえって家族の不安を煽ってしまうこともあります。まずは「いつも感謝しているけれど、実は今日は辛い」と、感謝とセットで伝えてみてください。お互いの「心のバリアフリー」を進めることが大切です。

Q. 福祉用具を使うと、ますます身体が弱くなってしまいそうで怖いです。

福祉用具は、身体を弱くするためのものではなく、残された機能を最大限に活かすためのものです。道具を使って体力を温存し、その温存した体力でやりたいことに挑戦する。この好循環を作ることが自立に繋がります。リハビリの時間と、楽をする時間のメリハリをつけましょう。


まとめ

  • ベッド周りを「基地化」し、最小限の動きで生活できる環境を整える
  • 家事や食事は完璧を目指さず、冷凍食品や便利家電に徹底的に頼る
  • 音声操作やスマートホームを導入し、身体の制限をテクノロジーで補完する
  • 「動けない=休養という仕事」と捉え直し、罪悪感を捨てるメンタルを持つ

身体がうまく動かない日は、あなたの価値が下がっている日ではありません。ただ、少しだけ休息が必要なだけです。今日ご紹介した工夫のどれか一つでも、あなたの明日を少しだけ軽くすることができれば幸いです。もし、何か気になる工夫があれば、まずは一つだけ試してみることから始めてみませんか?

例えば、今日寝る前に、枕元にペットボトルの水を置いておくだけでもいい。そんな小さな一歩が、自分を助けるための第一歩になります。あなたは一人ではありません。無理をせず、自分のペースで、この「波」を一緒に乗り越えていきましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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