ホーム/記事一覧/当事者・家族の声/精神障害の体験談/親として抱えた罪悪感と、救われた言葉

親として抱えた罪悪感と、救われた言葉

📖 約23✍️ 鈴木 美咲
親として抱えた罪悪感と、救われた言葉
「私の育て方が悪かったのでは」——娘のうつ病診断で抱えた罪悪感。過去の「失敗」ばかりを思い出し、自分を責め続けた日々。周囲の心ない言葉、完璧主義。カウンセリングで救われた「あなたのせいではない」という言葉。家族会での出会い、娘からの「お母さんのせいじゃない」。認知の歪みに気づき、「今」を大切に。罪悪感に苦しむ親へのメッセージ。

「私の育て方が悪かったのではないか」

娘がうつ病と診断された日、私は医師に聞きました——「私の育て方が、悪かったのでしょうか」。医師は優しく答えました——「いいえ、お母さんのせいではありません」。でも私は、その言葉を信じられませんでした。

娘の幼少期を思い返しました。厳しく叱りすぎたこと。仕事で忙しくて、十分な時間を取れなかったこと。期待をかけすぎたこと。「あの時、ああしていれば」——後悔と罪悪感が、私を苦しめました。

この記事では、娘の精神疾患に向き合う中で抱えた罪悪感と、それをどう乗り越えてきたか、そして救われた言葉についてお話しします。同じように罪悪感に苦しんでいる親御さんに、少しでも心が軽くなるきっかけになれば幸いです。

罪悪感の始まり——「私のせいだ」

診断を受けた時の衝撃

25歳の娘が、うつ病と診断されました。仕事のストレスで体調を崩し、休職することになりました。

診断を聞いた時、私の頭には様々な思いが駆け巡りました。「なぜ娘が」「何が原因なのか」——そして、「私のせいではないか」という思いが、強く浮かびました。

医師は説明してくれました。うつ病は、遺伝、脳の働き、環境ストレスなど、様々な要因が複雑に絡み合って発症する病気だと。特定の誰かのせいではないと。

でも私は、自分を責め続けました

⚠️ 注意

精神疾患の発症に、特定の誰かの「せい」はありません。遺伝的要因、生物学的要因、心理社会的要因など、多くの要因が複雑に関係しています。親が自分を責める必要はありませんが、多くの親がこの罪悪感に苦しみます。

過去を振り返り、後悔する

私は、娘の幼少期からの記憶をすべて振り返りました

そして、「失敗」だと思えることばかりが、思い出されました。

  • 幼稚園の時、泣いている娘を「甘えないで」と突き放したこと
  • 小学生の時、テストの点数が悪いと叱りすぎたこと
  • 中学生の時、進路について親の希望を押し付けたこと
  • 高校生の時、反抗期の娘と激しく言い合ったこと
  • 仕事が忙しくて、娘の話をちゃんと聞けなかったこと
  • 「もっと頑張りなさい」と言い続けたこと

「良い思い出」は、なぜか思い出せませんでした。「悪かったこと」ばかりが、鮮明に蘇りました。

「完璧な親」になれなかった自分

私は、自分が「完璧な親」ではなかったことを、激しく後悔しました。

もっと優しくすべきだった。もっと話を聞くべきだった。もっと時間を取るべきだった。もっと愛情を示すべきだった——「〜すべきだった」という後悔が、際限なく湧いてきました

そして思いました——「私が完璧な親だったら、娘は病気にならなかったのではないか」と。

この罪悪感が、私を苦しめました。

「親が罪悪感を持つのは、自然なことです。でもその罪悪感は、多くの場合、事実に基づいていません。完璧な親など存在しませんし、完璧な親であっても、子どもが精神疾患になることはあります」

— 後にカウンセラーが教えてくれた言葉

罪悪感が深まる——様々な要因

周囲の心ない言葉

罪悪感をさらに深めたのは、周囲の心ない言葉でした。

「最近の若い人は弱いのね」——親戚の一人が言いました。

「甘やかしすぎたんじゃない?」——別の人が言いました。

「うちの子は大丈夫よ。しっかり育てたから」——そんな言葉も聞こえてきました。

これらの言葉は、まるで「娘の病気は、私の育て方のせい」と言われているように感じました。

周囲の言葉 私が感じたこと
「甘やかしすぎたのでは?」 私の育て方が悪かったんだ
「厳しすぎたのでは?」 私が娘を追い詰めたんだ
「気づかなかったの?」 私は母親失格だ
「遺伝じゃない?」 私の遺伝子が悪いんだ
「働きすぎたのでは?」 仕事より娘を優先すべきだった

自分自身の完璧主義

もう一つ、罪悪感を深めた要因は、私自身の完璧主義でした。

私は、「良い母親」でありたいと思っていました。子どもに何不自由なく育ってほしい。幸せになってほしい——そう願っていました。

でも娘は、病気になりました。これは、私が「良い母親」ではなかった証拠だ——そう思い込みました。

完璧主義の私は、「失敗」を許せませんでした。そして娘の病気を、私の「失敗」だと捉えてしまったのです。

💡 ポイント

完璧主義的な親ほど、罪悪感を強く感じる傾向があります。しかし、「完璧な親」など存在しませんし、子どもの人生のすべてを親がコントロールできるわけでもありません。罪悪感の背景にある完璧主義に気づくことが、第一歩です。

娘の言葉に傷つく

娘自身の言葉にも、傷つきました。

ある日、娘は言いました——「お母さんは、いつも『頑張れ』って言った。それが、辛かった」。

その言葉を聞いて、私は打ちのめされました。娘を励ますつもりで言った言葉が、娘を傷つけていた——それを知って、自分を激しく責めました。

「やっぱり私のせいだ」——その思いが、確信に変わりました。

カウンセリングとの出会い——罪悪感と向き合う

「あなた自身もサポートが必要です」

娘の主治医から、「お母さんも、カウンセリングを受けてみませんか?」と勧められました。

最初は抵抗がありました。「病気なのは娘で、私じゃない」と思いました。でも、罪悪感に押しつぶされそうだった私は、藁にもすがる思いで、カウンセリングを受けることにしました。

初回のカウンセリングで、私は堰を切ったように話しました。娘の病気、自分の罪悪感、後悔の数々——すべてを吐き出しました。

カウンセラーは、ただ聞いてくれました。否定もせず、励ましもせず、ただ受け止めてくれました。

救われた言葉——「あなたのせいではありません」

数回のカウンセリングを重ねた後、カウンセラーは言いました——

あなたのせいではありません。本当に、あなたのせいではないんです」。

この言葉は、医師からも聞いていました。でもカウンセラーの言葉は、なぜか心に染み入りました。

カウンセラーは続けて言いました——「完璧な親など、存在しません。すべての親は、間違いを犯します。でもそれは、子どもが精神疾患になる『原因』ではないんです」。

「あなたは、その時その時で、最善を尽くしてきたはずです。今の知識と視点で過去を見れば、『ああすればよかった』と思うのは当然です。でも、当時のあなたは、精一杯だったんです」。

この言葉を聞いて、私は泣きました。初めて、少しだけ、自分を許せたような気がしました。

✅ 成功のコツ

罪悪感を一人で抱え込まず、カウンセラーや家族会で話すことが大切です。同じ経験をした人や専門家から「あなたのせいではない」と言われることで、少しずつ罪悪感が軽くなります。一度で消えるものではありませんが、繰り返し聞くことで、受け入れられるようになります。

認知の歪みを知る

カウンセリングでは、認知の歪みについても学びました。

私の罪悪感は、いくつかの認知の歪みに基づいていました。

  • 全か無か思考:「完璧な親でなければ、ダメな親だ」
  • 過度の一般化:「いくつかの失敗をした = 全体的にダメな親だった」
  • 心のフィルター:良かったことは無視し、悪かったことだけに注目
  • 自己関連づけ:「娘の病気 = 私のせい」と、すべてを自分に関連づける
  • べき思考:「〜すべきだった」という、過度な基準

これらの歪んだ思考パターンに気づくことで、罪悪感を客観視できるようになりました。

家族会で出会った言葉——「私も同じでした」

「罪悪感を持たない親はいない」

家族会に参加した時、先輩の親御さんが言いました——

罪悪感を持たない親は、いません。みんな、自分を責めます。私もそうでした」。

その言葉を聞いて、「自分だけじゃない」と感じました。

他の参加者も、次々と語りました。「私も自分を責めた」「私の育て方が悪かったと思った」「何年も罪悪感に苦しんだ」——皆、同じ経験をしていました。

この「自分だけじゃない」という実感が、大きな救いになりました。

「でも、それは事実じゃない」

先輩の親御さんは、続けて言いました——

「でも、それは事実じゃないんです。私たちのせいじゃない。時間がかかりましたが、私はそれを受け入れられました。あなたも、いつか受け入れられる日が来ます」。

この言葉が、希望をくれました。今は罪悪感に苦しんでいても、いつか乗り越えられる——そう思えました。

娘からの言葉——「お母さんのせいじゃない」

そして何より救われたのは、娘自身の言葉でした。

ある日、私は娘に言いました——「あの時、ああしていれば、あなたは病気にならなかったかもしれない。ごめんね」。

娘は答えました——「お母さん、違うよ。お母さんのせいじゃない。私の病気は、いろんなことが重なってなったの。お母さんを責めたりしないし、むしろ感謝してる。支えてくれて、ありがとう」。

その言葉を聞いて、私は泣きました。娘が私を責めていないこと。感謝してくれていること——それを知って、心が軽くなりました

罪悪感を手放す——少しずつの変化

「良かったこと」も思い出す

カウンセラーの提案で、「良かったこと」も思い出すようにしました。

娘との楽しい思い出。娘を褒めたこと。一緒に笑ったこと。娘の成長を喜んだこと——そうした記憶も、確かにありました。

「悪かったこと」だけでなく、「良かったこと」も見る——このバランスが大切だと学びました。

「完璧な親」を手放す

もう一つ大切だったのは、「完璧な親」という理想を手放すことでした。

完璧な親など、存在しません。すべての親は、間違いを犯します。それは当然のことで、恥ずかしいことではない——そう思えるようになりました。

十分良い親」——その言葉が、私を楽にしてくれました。完璧でなくても、十分良い親であればいい。娘を愛し、支えようとしている——それで十分なのだと。

「過去」ではなく「今」を大切にする

そして、「今」を大切にすることを学びました。

過去は変えられません。でも、今は変えられます。今、娘にできることをする。今、娘を支える——それが大切なのだと。

過去の後悔に囚われるのではなく、今と未来に目を向ける——この視点の転換が、罪悪感を軽くしてくれました。

2年後の今——罪悪感との付き合い方

罪悪感が完全になくなったわけではない

2年が経った今も、罪悪感が完全になくなったわけではありません。

時々、「あの時、ああしていれば」と思うこともあります。でも以前と違うのは、その思いに囚われなくなったことです。

「そういう思いが浮かぶのは自然だ」と受け止め、「でも、それは事実じゃない」と自分に言い聞かせる——この対処法を、身につけました。

娘との関係が深まった

罪悪感と向き合う過程で、娘との関係も深まりました。

以前より、お互いの気持ちを話せるようになりました。私の後悔も、娘の思いも、正直に言い合えるようになりました。

病気をきっかけに、私たちの関係は、より誠実なものになったように思います。

同じ立場の親を支えたい

そして今、私は家族会で、同じように罪悪感に苦しむ親御さんを支える側になりました。

「あなたのせいじゃない」「私も同じだった」「いつか楽になる日が来る」——かつて私が救われた言葉を、今度は私が伝えています。

自分の経験が、誰かの役に立つ——それが、新しい意味を私に与えてくれました。

罪悪感に苦しむ親御さんへ

あなたのせいではありません

もし今、罪悪感に苦しんでいるなら、まず知ってほしいことがあります——あなたのせいではありません

精神疾患は、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。特定の誰かの「せい」ではありません。

あなたは、悪い親ではありません。あなたは、子どもを愛している親です。

罪悪感は自然な感情

罪悪感を持つことは、自然なことです。子どもを愛しているからこそ、感じる感情です。

でも、その罪悪感は、多くの場合、事実に基づいていません。認知の歪みによって、過度に自分を責めているだけなのです。

罪悪感を否定する必要はありません。でも、それに囚われる必要もありません。

一人で抱え込まないで

罪悪感を一人で抱え込まず、誰かに話してください。

カウンセラー、家族会、信頼できる友人——話すことで、少しずつ楽になります。

「あなたのせいじゃない」——その言葉を、繰り返し聞いてください。最初は信じられなくても、聞き続けることで、少しずつ受け入れられるようになります。

「今」を大切に

最後に、これだけは伝えたいです——「今」を大切にしてください

過去は変えられません。でも、今と未来は変えられます。

今、子どもにできることをする。今、子どもを支える——それが、最も大切なことです。

罪悪感に囚われるより、今と未来に目を向けてください。あなたと子どもの、新しい関係が、そこから始まります。

「罪悪感は、親が子どもを愛している証です。でも、愛しているからこそ、自分を責めるのをやめてください。あなたが元気でいることが、子どもにとって最大のサポートです」

— 家族会の先輩の言葉

よくある質問

Q1: 罪悪感を完全になくすことはできますか?

完全になくすことは難しいかもしれません。でも、罪悪感に囚われず、適切に対処できるようになることは可能です。時々罪悪感が浮かんでも、「それは事実じゃない」と認識し、手放せるようになります。完全になくすことより、上手く付き合うことを目指しましょう。

Q2: 子どもに謝るべきですか?

もし具体的に傷つけたことがあるなら、謝ることは意味があります。ただし、「病気にさせてごめん」という謝罪は適切ではありません。病気はあなたのせいではないからです。また、過度な謝罪は子どもに罪悪感を与えることもあります。カウンセラーや主治医と相談しながら決めるとよいでしょう。

Q3: 周囲の心ない言葉に、どう対処すればいいですか?

周囲の言葉は、多くの場合、無知や偏見から来ています。真に受ける必要はありません。「そういう見方もあるのね」と受け流し、距離を取ることも一つの方法です。必要に応じて、精神疾患について説明することもできますが、無理に理解を求める必要はありません。理解してくれる人とつながることが大切です。

Q4: 自分の親も完璧ではなかったのに、なぜ自分は完璧であろうとするのですか?

多くの場合、「自分の親のようにはなりたくない」という思いや、「子どもには幸せになってほしい」という強い願いから、完璧を目指してしまいます。また、社会の「良い親」像も影響します。でも、完璧な親など存在しません。「十分良い親」で十分なのだと、受け入れることが大切です。

Q5: 罪悪感を乗り越えるのに、どのくらい時間がかかりますか?

人によって大きく異なります。数ヶ月の人もいれば、数年かかる人もいます。大切なのは、焦らないことです。罪悪感と向き合い、少しずつ手放していく——そのプロセスを、自分のペースで進めてください。カウンセリングや家族会のサポートを受けながら、一歩ずつ進んでいきましょう。

まとめ

この記事では、娘の精神疾患に向き合う中で抱えた罪悪感と、それを乗り越えてきた道のりをお話ししました。

  • 子どもの精神疾患に、親の「せい」はありません
  • 罪悪感は自然な感情ですが、多くは認知の歪みに基づいています
  • 「あなたのせいではない」という言葉を、繰り返し聞くことが大切です
  • 過去ではなく「今」を大切にすることで、罪悪感を手放せます

もし今、罪悪感に苦しんでいるなら、一人で抱え込まないでください。あなたのせいではありません。カウンセリングや家族会で、同じ経験をした人とつながってください。少しずつ、罪悪感を手放していけます。あなたは、十分頑張っています。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

📢 この記事をシェア

関連記事