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移動が怖かった私が“外出できるようになった”方法

📖 約65✍️ 鈴木 美咲
移動が怖かった私が“外出できるようになった”方法
身体障害を負い、移動に対する強い恐怖から引きこもりがちになった当事者が、いかにして外出への自信を取り戻したかを綴った体験談です。玄関からポストまでの「スモールステップ」の有効性、バリアフリーマップやレスキューバッグを活用した「情報の武装化」、そして駅員や乗客とのコミュニケーションを通じて社会を味方に変える方法を、実体験に基づいて解説します。単なる移動技術の紹介にとどまらず、自尊心の回復や「行きたい場所」を持つことの重要性など、心理面のアプローチも重視した内容となっています。

玄関の向こう側が遠かったあの日:外出への恐怖を乗り越えた私の記録

身体に障害を負ったとき、私が最も高い壁だと感じたのは「移動」でした。かつては何の気兼ねもなく歩いていた街並みが、一瞬にして障害物だらけの迷路のように見え、玄関の扉を開けることさえ怖くなってしまったのです。段差、人混み、トイレの不安、そして周囲からの視線。これらが重なり、私はいつの間にか「家の中にいるのが一番安全だ」と自分に言い聞かせるようになっていました。

しかし、ずっと閉じこもっていては心が枯れてしまうことも事実です。この記事では、重い腰を上げられなかった私が、どのようにして少しずつ外出への自信を取り戻していったのか、その具体的なステップをご紹介します。今、外出をためらっているあなたや、それを支えるご家族の方に、小さな一歩を踏み出す勇気と、外の世界を楽しむための実践的な知恵をお届けします。


心の中に築かれた「外出禁止」の壁

退院して自宅に戻った直後、私の世界は「家の中」だけで完結していました。窓の外を走る車の音を聞きながら、自分はもうあの流れの中に戻ることはできないのだと、勝手に決めつけていたのです。外出という言葉を聞くだけで、「何かトラブルが起きたらどうしよう」という予期不安が心臓を締め付け、呼吸が浅くなるのを何度も経験しました。

外出を拒んでいた最大の理由は、自分の身体の変化を街中の「鏡」や「ショーウィンドウ」に映し出されることで直面したくなかったからです。障害を負った自分の姿を他人に見られること、そして、健常者だった頃の自分とのギャップを突きつけられることが、何よりも苦痛でした。この「心の壁」は、物理的な段差よりもはるかに高く、私を家の中に縛り付けていました。

「準備不足」という名の言い訳

外出を促す家族に対しても、「まだリハビリが十分じゃないから」「今日は天気が悪いから」「万が一の時の予備がないから」と、次々に言い訳を重ねていました。本当は外に出たい気持ちも少しはあるのに、失敗して傷つくのが怖くて、自分を守るために防衛本能が働いていたのだと思います。

準備を完璧にしようとすればするほど、必要なものが増えていき、最終的には「準備が大変だから行かない」という結論に至る。この負のスパイラルに陥っている間、私の表情からは笑顔が消え、社会との繋がりはスマートフォンの画面越しだけになっていきました。「完璧主義」が、私の移動の自由を奪っていた一因でもありました。

外出をシミュレーションする恐怖

頭の中で外出のシミュレーションを始めると、悪い想像ばかりが膨らみます。駅のエレベーターが点検中だったら? 目的地までの道が工事中で砂利道だったら? 公衆トイレが車椅子対応じゃなかったら? こうした不安要素を数え上げると、外出は楽しいイベントではなく、ただの「リスク管理のテスト」に変わってしまいました。

実際、2024年に実施されたある調査では、身体障害者の約60%が「外出時に何らかの不安を感じている」と回答しています。その多くが、物理的な環境への不安と、周囲の配慮への不透明さです。私の恐怖は、決して私一人の特別なものではなく、多くの当事者が共通して抱える「現実的なハードル」に基づいたものでした。

他人の視線という「無言の圧力」

街中を歩く人々が、自分の車椅子や装具を見てどう思っているのか。勝手な被害妄想に陥り、「可哀想だと思われているのではないか」「邪魔だと思われていないか」と自問自答を繰り返していました。周囲が自然に接してくれていても、自分の心が自分自身を差別しているような感覚があり、それが外の世界への扉をさらに重くしていました。

今思えば、他人はそれほど私を見ていなかったのですが、当時の私にはすべての視線が鋭い矢のように感じられました。「自尊心の低下」が、外に出るという当たり前の行為を、戦場へ向かうような覚悟が必要なものに変えてしまっていたのです。この時期の私は、自分から社会を遮断することで、辛うじて心の平安を保っていました。

⚠️ 注意

予期不安が強すぎて動悸や過呼吸が出る場合は、無理に外出せず、まずは医師やカウンセラーに相談してください。心と身体の足並みを揃えることが大切です。


半径100メートルからの「スモールステップ」

私が外出できるようになったきっかけは、リハビリの先生からの意外なアドバイスでした。「駅まで行く必要はありません。今日は玄関から出て、ポストまで行って、空を見上げたら終わり。それで100点です」。その言葉を聞いたとき、私の肩からスッと力が抜けるのを感じました。「遠くへ行かなくていい」という許可が、私を自由にしてくれたのです。

そこから私は、自分の行動範囲を「メートル単位」で広げていくスモールステップを始めました。目標は「楽しむこと」ではなく、単に「外の空気に触れること」。このハードルの低さが、長年閉ざされていた私の心の扉を少しずつ押し広げていきました。成功体験をコツコツと貯金していく作業は、筋力トレーニングと同じくらい私の再起に不可欠でした。

玄関の「外側」で立ち止まる練習

まずは、玄関のドアを開けて、マンションの廊下で5分間過ごすことから始めました。外気に触れるだけで肌がピリピリと刺激を受け、眠っていた五感が目覚めるような感覚がありました。誰もいない廊下で、ただ呼吸を整えるだけ。そんな些細なことが、当時の私には「大冒険」の第一歩でした。

この練習を数日間繰り返すと、廊下に出ることが「当たり前の日常」に変わっていきました。脳が「外は危険な場所ではない」と学習し始めたのです。自分のペースを尊重し、誰にも邪魔されない時間帯に少しだけ外に出る。この「安全な領域を1メートルずつ広げる」感覚が、恐怖心を克服するための最も有効な手段となりました。

ポスト、そして近所の電柱まで

次のステップは、自宅から10メートル先にある郵便ポストまで行くことでした。家族に付き添ってもらい、ゆっくりと車椅子を漕いで向かいます。ポストに手が届いたとき、まるで山の頂上にたどり着いたような達成感がありました。そこには、以前と変わらない街の匂いや、近所の家の庭に咲く花の色がありました。

さらに次の日は、隣の家の電柱まで。その次は角のゴミ捨て場まで。自分の中に「行動範囲の地図」を少しずつ描き直していきました。誰かと競争しているわけではありません。「昨日の自分より1メートル遠くへ行けた」。その事実だけが、崩れかけていた私の自信を底上げしてくれました。小さな成功は、どんな励ましの言葉よりも力強く私を支えてくれました。

コンビニという名の「最初のゴール」

外出を始めてから2週間後、私は自宅から50メートル先にあるコンビニを最終ゴールに設定しました。コンビニは、車椅子ユーザーにとっての「聖地」です。24時間明るく、入口は自動ドアで段差がなく、通路もある程度の広さが確保されています。店内に入り、自分でお茶を選んでレジで支払いを済ませる。その「消費活動」が、私に社会の一員である感覚を思い出させてくれました。

レジで店員さんと「お願いします」「ありがとうございました」とやり取りをした瞬間、私は透明な壁の向こう側から、現実の世界へ戻ってこれたのだと実感しました。コンビニへの買い物という、以前は何の価値も感じていなかった日常が、今の私には最高の贅沢であり、誇らしい実績となりました。ここから、私の移動範囲は加速的に広がっていくことになります。

✅ 成功のコツ

目標は「達成できなければおかしい」と思えるほど小さく設定しましょう。成功の味を脳に覚えさせることが、次の意欲を生む最短ルートです。


移動を支える「情報とツール」の武装化

少しずつ遠くへ行けるようになると、次に必要だったのは「安心を担保するための道具と知識」でした。恐怖心の正体は、多くの場合「予測できない事態」への不安です。それなら、徹底的に予測可能にすればいい。私は、テクノロジーと最新の情報を活用し、自分の外出を「戦略的にデザイン」するようになりました。

現在では、障害者向けのルート検索アプリやバリアフリーマップが非常に充実しています。例えば、目的地まで一度も段差を通らずに行けるルートや、多目的トイレの空き状況をリアルタイムで確認できるサービスもあります。こうした「情報の盾」を持つことで、かつて私を震えさせていた不確定要素は、制御可能な課題へと変わっていきました。

バリアフリーマップの徹底活用

私が愛用しているのは、ユーザー投稿型のバリアフリー情報共有アプリです。「ここには段差がある」「このエレベーターは狭いけれど電動車椅子でも乗れる」といった、当事者ならではの生の声は、どんな公式ガイドよりも信頼できます。外出前には、必ず目的地の周囲1キロメートル以内の「多目的トイレの位置」を3ヶ所以上ピックアップすることにしています。

この「トイレの予備を把握する」という習慣だけで、外出中の緊張感は半分以下に軽減されました。「もしもの時も、あそこに行けば大丈夫」という精神的な余裕は、足元の動きを驚くほどスムーズにしてくれます。情報は、物理的な装具と同じくらい、私たちの移動を支える重要なパーツなのです。知ることは、そのまま安心へと直結します。

レスキューアイテムの常備

外出に対する恐怖を減らすために、私は専用の「レスキューバッグ」を作成しました。中身は、車椅子のタイヤ修理キット、予備の滑り止め、ウェットティッシュ、そして自分の障害特性を記した「ヘルプカード」です。これがあるだけで、「何かあっても何とかなる」という自信が持てるようになりました。

また、スマートフォンの充電切れは死活問題になるため、大容量のモバイルバッテリーも欠かせません。トラブルが起きた時に、いつでも誰かと繋がれる、あるいはタクシーを呼べる。この「外部との繋がり」を確保しておくことが、一人の外出を可能にする大きな要因となりました。道具は私たちの「能力」を拡張し、恐怖という枷を外してくれます。

「お出かけ練習会」への参加

一人で外に出るのが不安な時期、私は地域の障害者支援センターが開催している「外出同行イベント」に参加しました。ピアサポーター(同じ障害を持つ仲間)と一緒に、大きな公園やショッピングモールへ行くプログラムです。そこでは、階段の昇降機(エスカル)の使い方や、混雑した場所での車椅子の取り回しなど、「実践的なコツ」をたくさん教えてもらいました。

同じ立場の人が「大丈夫だよ、こうすれば通れるよ」と背中を押してくれるのは、何よりも心強い体験でした。一人で戦う必要はないのだと気づいたことで、外出へのハードルはさらに低くなりました。プロや仲間の力を借りて、安全な環境で「練習」を積む。このステップが、私の移動能力を格段に向上させてくれました。

💡 ポイント

外出先で困ったときは、迷わず「ヘルプカード」を掲示しましょう。周囲の人は「どう助ければいいか」を知りたがっています。視覚化された情報は、コミュニケーションの壁を壊してくれます。


交通機関の「味方」を増やすコミュニケーション

近所から一歩飛び出し、電車やバスなどの公共交通機関を利用するようになったとき、私は再び緊張のピークを迎えました。駅員さんにスロープをお願いする気まずさや、乗客の視線。しかし、実際に利用を始めてみると、そこには「社会の温かさ」が想像以上に溢れていました。私は、周囲を敵と見なすのをやめ、積極的にコミュニケーションを取ることで、社会を「味方」に変えていきました。

駅員さんやバスの運転手さんは、私たちの移動を支えるプロフェッショナルです。彼らに対して「すみません」ではなく「ありがとうございます」「お願いします」と笑顔で接するように心がけたところ、驚くほど親身になってサポートしてくれるようになりました。「助けてもらう勇気」を持つことが、移動の自由を確立するための最大の鍵となりました。

電車の「予約」から「習慣」へ

最初は、電車に乗る数日前に駅に電話をし、車椅子席の予約やサポートの依頼をしていました。事前に予定を伝えておくことで、駅員さんが配置を考慮してくれ、スムーズな乗降が可能になります。この「事前連絡」の手間を惜しまないことが、初期の外出における大きな安心材料となりました。

慣れてくるにつれて、予約なしでも駅の窓口で「〇〇駅まで行きたいです」と伝えるだけで対応してもらえるようになりました。駅員さんが「スロープ用意しますね!」と笑顔で応じてくれる姿を見るたびに、私は自分が「社会から歓迎されている」と感じることができました。交通機関を利用することは、自分の居場所を社会の中に再構築するプロセスそのものでした。

バスの「優先席」と「声かけ」

ノンステップバスの普及により、バスでの移動も格段に楽になりました。バスは電車よりも目的地に近く停まってくれるため、移動距離を短縮するのに非常に便利です。ただ、車椅子スペースが埋まっていることもあるため、私は混雑時間を避けるなどの工夫をしています。

乗車する際、周囲の乗客に「車椅子通ります、失礼します」と一言かけるだけで、驚くほど道が開けます。無言で通り過ぎるのではなく、言葉を添えることで、周囲の人は「一人の人間」として私を見てくれるようになります。コミュニケーションは、狭い車内という空間における物理的なバリアを取り除き、温かい空気を作り出してくれます。

「感謝の言葉」が社会を変える

私は、助けてもらった時には必ず、相手の目を見て「助かりました、ありがとうございます」と伝えるようにしています。駅員さんも、乗客の方も、一人の人間です。感謝されることで、その人も「今日はいいことをしたな」と温かい気持ちになります。私たちの感謝の言葉が、その人をまた「誰かを助けよう」という気持ちにさせる。この「優しさの循環」を作ることが、私にできる社会貢献だと思っています。

私が外に出ることで、社会は「障害者がいる風景」に慣れていきます。そして、私が笑顔でいることで、障害は「可哀想なもの」ではなく、単なる「一つの個性」として受け入れられていきます。外に出ることは、自分を救うだけでなく、社会全体のバリアフリーな意識を育てることに繋がっている。そう考えるようになってから、移動への恐怖は「使命感」と「誇り」に変わりました。

交通機関 利用のコツ メリット
電車(JR・私鉄) 事前に有人改札で降車駅を伝える スロープ設置や乗り換えサポートが手厚い
路線バス ノンステップバスの時間を調べる 目的地近くまで行ける、短距離移動に最適
タクシー UDタクシー(ユニバーサルデザイン)を呼ぶ ドア・トゥ・ドアで体力を温存できる


「行きたい場所」があるという生きる力

移動のテクニックや情報の集め方も大切ですが、最後に私を玄関の向こう側へと連れ出したのは、「これがやりたい」「あの場所へ行きたい」という純粋な渇望でした。リハビリのために歩くのではなく、あのお店のケーキを食べたい、あの公園の桜を見たい。そんな小さな欲望が、恐怖という名のブレーキを解除してくれました。

障害を負ってから、私は自分の人生に「制限」ばかりをかけていました。でも、ある時気づいたのです。「身体は不自由でも、心はどこへでも行ける」。その心を、もう一度現実の場所に連れて行ってあげたい。行きたい場所があることは、生きるエネルギーそのものです。そのエネルギーが、私に車椅子を漕ぐ力を、そして勇気を持って声を出す力を与えてくれました。

「楽しみ」を最優先にする外出計画

以前の私は、病院へ行く、役所へ行くといった「義務」の外出ばかりでした。しかし、それでは外出が楽しくなるはずもありません。私は週に一度、自分の好きな場所へ行くための「ご褒美外出の日」を作りました。お気に入りのカフェ、映画館、あるいはただ広い海が見える公園。目的が「喜び」であれば、移動の苦労も一つのプロセスとして受け入れられるようになります。

「今日はこれを買った」「あそこでいい景色を見た」。そんな土産話を家族に持ち帰るたびに、家の空気は明るくなっていきました。私が外で得た刺激は、私自身の生命力を活性化させ、リハビリへの意欲も高めてくれました。「楽しみ」こそが、最高のバリアフリーなのです。あなたは、今日どこへ行って、何を見たいですか?

ファッションや身だしなみで「鎧」を纏う

外出を楽しくするために、私はファッションにも気を配るようになりました。車椅子に座っていても綺麗に見えるシルエットの服や、お気に入りのスニーカー。鏡を見て「今日の自分、悪くないな」と思えることは、外に出るための強力なバックアップになります。身だしなみを整えることは、自分の尊厳を守り、周囲に「私は私の人生を楽しんでいる」と表明するための強力なツールです。

お気に入りの帽子を被ったり、少し明るい色の服を選んだりするだけで、気分は劇的に変わります。身体の機能が完全ではなくても、美しさやスタイルを諦める必要はありません。むしろ、自分なりのスタイルを確立することで、周囲の視線は「好奇の目」から「一人の人間としての敬意」へと変わっていくのを感じました。外見を整えることは、心の武装でもありました。

「失敗」を冒険のネタにする

もちろん、今でも外出先で困ることはあります。道に迷ったり、エレベーターが遠すぎて疲れたり。でも、今の私はそれを「失敗」とは呼びません。それは、後で誰かに話すための「冒険のエピソード」です。「今日はこんな大変なことがあったけれど、何とか乗り越えたよ」と笑って話せるようになったとき、私は本当の意味で自立できたのだと思います。

完璧な外出など存在しません。トラブルも含めての「旅」です。その旅を重ねるごとに、私の心は逞しくなり、少々のことでは動じない強さが備わりました。外に出ることで傷つくこともありますが、それ以上に得られる感動や学びがあります。「傷ついても、また立ち上がれる」。その確信こそが、私が移動の恐怖を完全に手放すことができた理由です。

✅ 成功のコツ

最初の外出は、美味しいものを食べる、好きな景色を見るなど「自分の欲求」をエンジンにしましょう。義務ではなく「快」を追求することが継続の鍵です。


よくある質問(FAQ):外出への第一歩を踏み出すために

外出への不安を抱える当事者やご家族から、よくいただく質問にお答えします。

Q1. 他人に迷惑をかけている気がして、どうしても気兼ねしてしまいます。

その謙虚さは大切ですが、過度に自分を責める必要はありません。社会は、さまざまな特性を持つ人が共に生きる場所です。あなたが外に出ることで、社会のバリアフリー化が進み、結果的に高齢者やベビーカーを利用する人など、「多くの人のため」に繋がっています。助けが必要なときは、「今は私が助けてもらう番。いつか別の形で誰かの役に立とう」と、大きな視点で考えてみてください。

Q2. 途中で体調が悪くなったらと思うと怖いです。

その不安を解消するために、外出前に「休憩スポット」をリストアップしておきましょう。デパートのソファや、静かな図書館のロビーなど、無料で座って休める場所を知っておくだけで安心感が違います。また、最初から最後まで自分で行こうとせず、疲れたら「タクシーで帰る」という最終手段を自分に許してあげてください。逃げ道を用意しておくことが、逆に勇気を生んでくれます。

Q3. 家族が外出を勧めるのを嫌がってしまいます。どう接すればいいですか?

ご家族の方は、本人の「怖さ」を否定せず、まずは寄り添ってください。「怖くても当たり前だよね」と共感した上で、まずは窓から5分間一緒に外を眺める、といった極小のステップから提案してみましょう。無理強いは逆効果ですが、「あなたが外で笑っている姿が見たい」という素直な気持ちを伝えることは、本人にとって大きなモチベーションになります。焦らず、本人の心の準備が整うのを待ってあげてください。


まとめ:世界はあなたの帰り、そして出会いを待っている

移動が怖くて、玄関のドアノブを握る手が震えていたあの頃。私は、自分だけが世界から取り残されたような気持ちでいました。でも、一歩、また一歩と外へ踏み出すうちに気づいたのは、世界は私が思っていたよりもずっと広く、そして温かかったということです。不自由な身体というフィルターを通したからこそ見える、人の心の美しさや、四季の移ろいの尊さがありました。

あなたが外に出ることは、あなたがあなたの人生を諦めていないという、最高の宣言です。最初は5メートルでも構いません。その5メートルが、やがて50メートルになり、隣の街、そして見たことのない遠い景色へと繋がっていきます。あなたの車椅子の轍は、後に続く誰かのための道しるべになります。恐れを抱えたままで大丈夫です。その恐れを相棒にして、新しい世界を一緒に見に行きませんか?

次にとるべきアクション

明日を少しだけ新しくするために、今この瞬間からできるアクションです。

  • Googleマップで、行ってみたい「カフェ」や「公園」を一つだけブックマークする: 「いつか」ではなく「具体的に」イメージすることから始めましょう。
  • 外出専用の「お気に入りバッグ」を用意する: 中にヘルプカードやモバイルバッテリーを入れ、いつでも出られる準備だけしておきましょう。
  • 窓を開けて、大きく深呼吸をする: 外の空気、街の音、季節の匂いを脳に感じさせてあげてください。

あなたの世界が、再び鮮やかな色彩で満たされることを心から願っています。さあ、次は玄関の向こう側で、お会いしましょう。


まとめ

  • 外出の恐怖はスモールステップ(玄関→ポスト→コンビニ)で、成功体験を積むことで克服できる。
  • バリアフリーマップやレスキューツールの「情報の武装化」が、予期不安を具体的な安心に変える。
  • 「助けてもらう勇気」と感謝の言葉によるコミュニケーションが、社会を味方に変える。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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