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自助具に救われた!日常生活を変えたアイテム

📖 約25✍️ 鈴木 美咲
自助具に救われた!日常生活を変えたアイテム
手指の麻痺で日常動作に困難を抱えていた筆者は、自助具によって生活が劇的に変化した体験を語る。当初は「障害者だと見られる」抵抗感があったが、自助具が生活の質を向上させる「最新ツール」だと認識を改めた。特に役立ったのは、太柄カトラリー、ボタンエイド、ソックスエイド、マジックハンドなど。これらは、食事や着替えのストレスを軽減し、自立度を向上させた。自助具導入の成功の鍵は、作業療法士と連携し、困っている動作を正確に「見える化」すること、そして既製品だけでなく自作や公的支援(補装具費支給制度など)も積極的に活用することであると強調している。

手足の機能に障害を抱える方や、そのご家族の皆さんにとって、「朝の歯磨き」「ボタンをかける」「料理をする」といった、健常者なら無意識に行える日常の動作が、大きな困難やストレスになっていませんか?私も脊髄損傷による麻痺で、手指の巧緻性(こうちせい:細かい作業を行う能力)が大きく低下し、生活の自立が遠のいたように感じていた時期があります。

当時の私にとって、食事の度にフォークが手から滑り落ちたり、服の着替えに30分以上かかったりすることは、精神的にも非常に辛いものでした。「誰かに助けてもらうしかないのだろうか」と、諦めにも似た感情に苛まれていました。

そんな私の日常を劇的に変えてくれたのが、「自助具(じじょぐ)」の存在でした。自助具とは、障害のある方が日常生活の動作を自分で行えるように工夫された道具のことです。この記事では、私を救ってくれた具体的な自助具の紹介と、それらが私の生活や心にどのような変化をもたらしたのか、そのリアルな体験をお話しします。自助具は、あなたの「できる!」を増やしてくれる、最高のパートナーです。


自助具に初めて出会った時の衝撃

「できない」の壁を打ち破る道具

私のリハビリ初期、最も困難だったのは、「食事」でした。手に力が入りにくく、一般的なスプーンやフォークでは、握り込むことができず、すぐに滑り落ちてしまいました。妻に介助してもらうこともありましたが、「自分の口に自分で食べ物を運ぶ」というごく自然な動作ができないことが、私にとって非常に屈辱的でした。

作業療法士の先生が最初に紹介してくれたのが、柄が太く、手のひら全体で握れるように工夫されたカトラリーでした。初めてそれを握った時、その安定感に驚きました。滑り落ちることなく、自分の力で食べ物をすくい上げ、口に運ぶことができたのです。

それは、単に食事の動作を助けるだけでなく、私に「自分にはまだできることがある」「諦めなくていいんだ」という、強い希望を与えてくれました。自助具は、私にとって「できない」という心の壁を打ち破る、魔法のような道具でした。

自助具への抵抗感をどう克服したか

正直に言うと、最初は自助具を使うことに抵抗感がありました。特に外出先で、周りの人と同じカトラリーを使えないことに、「障害者だと見られる」という恥ずかしさを感じていました。「特別な道具を使っている」という事実が、私を内向的にさせていたのです。

この抵抗感を克服できたのは、作業療法士さんの言葉と、「機能的なメリット」が上回ったからです。作業療法士さんは、「自助具は、あなたが自分の力で自由に動くための『最新ツール』です。健常者がパソコンやスマートフォンを使うのと同じですよ」と言ってくれました。

実際に、自助具を使うことで、食事にかかる時間が半分以下になり、疲労感も激減しました。外見よりも、「生活の質(QOL)」が劇的に向上したこと。これが、私の自助具に対する考え方を大きく変えました。

自助具は「努力の代わり」ではない

一部には、「自助具に頼りすぎると、自分の機能が衰えるのではないか」と心配する声もあります。しかし、自助具は「努力の代わり」ではなく、「残された機能を最大限に引き出すための補助輪」だと理解することが重要です。

例えば、ボタンエイド(ボタンかけ補助具)を使うことで、ボタンをかけるという時間とエネルギーを消費する作業を短縮できます。その節約できたエネルギーを、より重要なリハビリや仕事に使うことができるのです。自助具は、私たちのエネルギー配分を最適化してくれる賢い戦略ツールなのです。

⚠️ 注意

自助具を導入する際は、必ず作業療法士(OT)に相談し、残存機能(残された力)を最大限に活用できるデザインやサイズを選んでもらいましょう。自己判断での導入は、かえって体に負担をかける可能性があります。


私の日常を変えた!画期的な自助具5選

1.食事を快適にした:太柄カトラリー&ユニバーサルカップ

最も初期から活用し、今も手放せないのが食事関連の自助具です。

  • 太柄グリップカトラリー:手の指がうまく使えなくても、手のひら全体でしっかりと握れるよう、柄の部分が極端に太く作られています。これにより、食事中の不安定さが解消され、こぼすことが激減しました。
  • すくいやすい食器:食器の縁が内側にカーブしているため、スプーンを内側に沿わせるだけで簡単に食べ物をすくい上げられます。これは片手動作の方にも非常に有効です。
  • ユニバーサルカップ(取っ手付き):両手で持てる大きな取っ手がついたコップや、傾けてもこぼれにくいフタ付きのカップは、飲み物を飲む際の安心感を与えてくれました。

食事の自立は、私の生活の質自己肯定感を劇的に高めてくれました。毎日の「食べる楽しみ」を取り戻すことができたのです。

2.着替えのストレスをゼロに:ボタンエイドとソックスエイド

着替えは、朝の最も時間と労力を要する作業でした。特に、ワイシャツのボタンかけや、靴下を履く動作は、手の機能が低下した私にとって、非常に難易度が高い作業でした。

  1. ボタンエイド(ボタンかけ補助具):先端にフックがついたペン状の道具です。フックをボタン穴に通し、ボタンを引っ掛けて引き抜くだけで、複雑な指先の動作なしでボタンをかけることができます。
  2. ソックスエイド(靴下履き補助具):靴下をセットし、足を入れて引き上げるだけで靴下が履けるようになる道具です。体を深く曲げたり、バランスを取ったりする動作を完全に省略できるため、特に体幹が不安定な方には必須のアイテムです。

これらの道具のおかげで、着替えにかかる時間は30分から10分以下に短縮され、朝の時間を有効に使えるようになりました。

3.魔法の手の延長:マジックハンド(リーチャー)

車椅子ユーザーにとって、床に落ちたものを拾うことは、転倒リスクを伴う危険な動作です。車椅子から身を乗り出す動作は、麻痺の程度に関わらず、非常に不安定です。

私の「魔法の手」とも呼べるのが、マジックハンド(リーチャー)です。長い棒の先端に掴むための爪がついており、軽い力で遠くの物や床の物を掴むことができます。特に、リモコン、ペン、携帯電話など、日常で頻繁に使うものを落とした際に、介助者を呼ぶ手間なく自分で拾えるようになったことは、私の生活の自立度を格段に上げました。

マジックハンドは、長さやグリップの形状が多様なので、自分のリーチ(手の届く範囲)と握力に合ったものを選ぶことが大切です。


自助具導入を成功させるためのステップ

ステップ1:すべての動作を「見える化」する

自助具の導入を成功させるには、まず「自分がどの動作で困っているのか」を正確に把握する必要があります。これは、作業療法士さんが最初に行ってくれるプロセスです。

  1. 日常動作の洗い出し:起床から就寝まで、すべての動作を書き出す。
  2. ボトルネックの特定:それぞれの動作に対し、「時間がかかっている」「疲労が大きい」「危険を伴う」といった「困りごと」をマーキングする。
  3. 残存機能の評価:その動作を行う際に、どの程度の筋力や可動域が残っているかを作業療法士に評価してもらう。

この「見える化」を通じて、「朝食時のスプーンの握り込み」や「服のボタンかけ」といった、具体的なボトルネックが特定され、それに最適な自助具を選べるようになります。

ステップ2:「自作」も視野に入れる創造性

既製品の自助具が必ずしも自分の体に合うとは限りません。自助具は、「オーダーメイド」「自作」も可能です。私も、市販のペンが握りにくかったため、太めのグリップを自作しました。

  • スポンジ・ウレタンの活用:細いペンの柄に、水道管用の断熱材や太めのスポンジを巻きつけるだけで、簡単に握りやすい太さに調整できます。
  • U字型フックの活用:プラスチックの板や金具をU字型に加工し、手に固定できるようにすることで、鍵の開閉やドアのノブ操作が容易になります。

作業療法士さんの中には、粘土やプラスチック加工を使って、その場で最適な自助具を製作してくれる方もいます。既製品にこだわらず、自分の体に合わせてカスタマイズする創造性を持つことが、自助具活用の成功の鍵です。

ステップ3:公的支援と購入窓口の確認

自助具の中には、補装具費支給制度(身体障害者福祉法)の対象となるものや、日常生活用具給付事業(障害者総合支援法)の対象となるものがあります。費用が高額になる場合もあるため、必ず事前に自治体の窓口や相談支援専門員に確認しましょう。

購入窓口は、福祉用具店やインターネット通販だけでなく、リハビリテーション病院の売店や作業療法士を通じて購入できる場合もあります。専門家を通じて購入することで、適切な使い方のアドバイスも受けられます。

✅ 成功のコツ

自助具を使い始めたら、使い続けることが最も重要です。最初は違和感があっても、最低2週間は試用し、道具を使いこなすための練習を欠かさないようにしましょう。


まとめ

自助具は、私にとって単なる道具ではなく、「失われた自立を取り戻してくれた希望の光」です。太柄カトラリーが食事の楽しみを、ボタンエイドやソックスエイドが着替えのストレスを、そしてマジックハンドが自由な行動範囲を与えてくれました。

自助具を導入する際は、作業療法士さんと連携し、自分の体の残存機能に合わせた最適なデザインを選ぶことが大切です。「特別な道具」だと抵抗感を持つ必要はありません。自助具は、あなたの能力を最大限に引き出すための、賢い戦略ツールです。ぜひ、自分にぴったりの「相棒」を見つけて、より豊かな日常生活を手に入れてください。

まとめ

  • 自助具は、「できない」という心理的な壁を打ち破り、日常生活の自立を可能にする最高のツールです。
  • 導入を成功させるには、作業療法士による残存機能の評価と、「自作」やカスタマイズも視野に入れる創造性が必要です。
  • 自助具は、補装具費支給制度などの公的支援の対象となる場合があるため、事前に自治体窓口に相談しましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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