生活介護とは?利用対象・内容・費用をやさしく解説

ご家族に重度の障害があり、日中の見守りや介護が必要な場合、「毎日、自宅でどうやって介護を続ければいいのだろう」「日中の安全な居場所と活動の場を提供したい」といった不安や悩みを抱えることは少なくありません。 特に、長期間にわたり手厚い支援が必要な方の生活を支えることは、ご家族にとっても大きな負担となります。
このような状況を支えるための障害福祉サービスが、「生活介護(せいかつかいご)」です。 生活介護は、主に日中、施設に通所して、介護、訓練、創作活動などを受けることができるサービスであり、利用者の方の生活の充実と、介護されているご家族の休息(レスパイト)という二つの重要な役割を持っています。 この記事では、生活介護の対象者、具体的なサービス内容、費用、利用開始までの流れを、専門用語をわかりやすく解説しながらご紹介します。
生活介護とは?基本の目的と位置づけ
生活介護は、障害者総合支援法に基づく「日中活動系サービス」の一つです。 主に、常に介護が必要な障害のある方に対し、安定した日中の活動の場と、日常生活を送るために必要な支援を提供することを目的としています。
生活介護が果たす二つの役割
生活介護サービスには、利用者の生活を支える上で、重要な二つの役割があります。
- 1. 利用者の生活の質(QOL)向上:
日中の活動や他者との交流の機会を提供し、閉じこもりを防ぎます。 また、機能訓練や創作活動を通じて、身体機能の維持・向上や社会参加を促します。
- 2. 介護者の負担軽減(レスパイトケア):
日中、利用者が施設で安全に過ごせることで、ご家族は介護から一時的に解放され、休息や社会活動を行う時間を確保できます。 これは、介護を継続していく上で非常に重要な側面です。
サービス提供の場所と時間
生活介護は、「多機能型事業所」や「生活介護事業所」と呼ばれる施設に通所して利用する「通所型」のサービスです。
- 通所型の提供:
原則として、自宅から施設に通ってサービスを受けます。 多くの事業所で送迎サービスが提供されています。
- 提供時間:
日中(例:午前9時〜午後4時)に提供されることが一般的ですが、利用者の状態や希望に応じて、短時間や延長サービスの利用が可能な場合もあります。
💡 ポイント
生活介護は、利用期間に制限がありません。 つまり、「長期にわたり継続的な支援が必要」と判断された場合、障害がある限り、安定してサービスを利用し続けることができるのが大きな特徴です。
生活介護の利用対象者と障害支援区分
生活介護は、特に手厚い介護や支援が必要な方を対象としており、利用するためには、市町村から特定の「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。
対象となる方の具体的な要件
生活介護の対象となるのは、障害支援区分が原則「区分3以上」の方(50歳以上の方は区分2以上)で、以下のいずれかの要件を満たす方です。
- 入所施設に入所していない方:
自宅で生活している方で、常に介護を必要とし、入浴、排せつ、食事などの介護を受けている方。
- 特別支援学校卒業生:
特別支援学校を卒業し、就労移行支援や就労継続支援などの就労系サービスを利用できない方。
- 日中活動系サービスからの移行:
療養介護、医療型短期入所を利用していた方で、生活介護が必要と認められた方。
障害支援区分と利用対象(原則)
| 年齢 | 障害支援区分 | 利用可否 |
|---|---|---|
| 18歳以上50歳未満 | 区分3〜6 | 利用可能 |
| 50歳以上 | 区分2〜6 | 利用可能 |
この区分認定は、利用者の心身の状態や介護の必要性を測るための客観的な指標であり、手帳の等級とは異なります。
精神障害者や難病患者の利用
生活介護は、主に身体障害や知的障害を持つ方の利用が多いですが、重度の精神障害や、難病を抱える方でも、区分3以上の認定を受け、生活全般にわたる介護や支援が必要と認められれば、利用することが可能です。
特に、症状が安定せず、常に専門的な見守りや個別的な支援が必要な場合は、生活介護の利用が選択肢の一つとなります。 まずは、相談支援専門員に相談し、適切な区分認定を受けることが重要です。
生活介護で受けられる具体的なサービス内容
生活介護のサービスは、単に日中を過ごすだけでなく、その方の残存機能を維持・向上させ、生活に彩りを与えるための多面的な支援が提供されます。
日常生活上の介護と見守り
日常生活に必要な介護は、最も基本的なサービス内容です。
- 身体介護:
入浴、排せつ(トイレ誘導、おむつ交換)、食事(食事介助)など、利用者の身体に直接触れる介助を、専門の職員が行います。
- 健康管理・療養上の支援:
看護師などの配置により、バイタルチェックや服薬管理、簡単な医療的ケアなど、日常の健康状態のチェックが行われます。 体調不良時の緊急対応も、施設の体制によって異なりますが、支援内容に含まれます。
生産活動・創作活動・機能訓練
日中の活動を通じて、生活の充実と機能の維持・向上を図ります。
- 創作活動・生産活動:
手芸、絵画、陶芸、軽作業(箱折りや封入作業など)といった創作・生産活動の機会が提供されます。 これにより、生きがいや達成感を得られるとともに、工賃(お小遣い程度)が支払われる場合もあります。
- 機能訓練:
理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などとの連携により、身体機能の維持や、日常生活動作(ADL)の訓練が行われます。 これは、在宅での生活を長く続けるために非常に重要です。
「以前は自宅で一日中テレビを見ているだけでしたが、生活介護に通うようになってから、絵を描く楽しみを見つけ、表情が明るくなりました。家族も安心して仕事に行けます。」
— ご家族からの声
✅ 成功のコツ
生活介護の事業所を選ぶ際は、単なる介護体制だけでなく、創作活動やレクリエーションの内容を確認しましょう。 利用者が「楽しい」「行きたい」と思える活動がある施設を選ぶことが、継続利用の鍵です。
生活介護の利用手続きと費用負担の仕組み
生活介護サービスを利用するためには、他の障害福祉サービスと同様に、市町村への申請と支給決定が必要です。 また、費用負担についても理解しておくことが重要です。
サービス利用開始までの流れ
- 相談・申請:
まず、市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に相談し、利用申請を行います。
- 障害支援区分の認定:
市町村の調査員による心身の状態や介護の必要度に関する調査が行われ、障害支援区分(区分3以上など)が認定されます。
- サービス等利用計画の作成:
相談支援専門員が、利用者の希望や区分認定の結果に基づき、利用計画案を作成します。
- 支給決定・受給者証交付:
市町村が利用計画に基づき、生活介護の利用を認め、「受給者証」を交付します。
- 事業所との契約・利用開始:
利用者が希望する生活介護事業所と契約を結び、サービス利用が始まります。
生活介護の費用負担の仕組み
生活介護の利用にかかる費用は、原則として以下の通りです。
- サービス費の原則1割負担:
サービス本体にかかる費用(介護、訓練、活動費など)は、原則として費用の1割が自己負担となります。
- 所得に応じた上限額:
自己負担額には、世帯所得に応じて月額の上限額が設定されています。 上限額を超えて支払う必要はありません。
市町村民税非課税世帯や生活保護世帯の場合、上限額が0円となるため、無料でサービスを利用できることがほとんどです。
実費負担となる費用
サービス本体費用は上記のように公費で賄われますが、以下の費用は実費(全額利用者負担)となります。
- 食事代(昼食代など)
- 活動で使う材料費(創作活動や生産活動で使う費用)
- 送迎サービスにかかる費用(ガソリン代など、事業所が定めるもの)
生活介護と他の日中活動系サービスとの違い
障害福祉サービスには、生活介護以外にも日中に利用できるサービスがあります。 ここでは、特に混同しやすい「就労継続支援B型」との違いを明確にします。
生活介護と就労継続支援B型(B型)の比較
生活介護と就労継続支援B型は、共に日中の通所型サービスですが、目的と対象者が大きく異なります。
| 項目 | 生活介護 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 介護、機能訓練、生活の充実 | 生産活動を通じた就労訓練、工賃の獲得 |
| 対象者(区分) | 原則 区分3以上(50歳以上は区分2以上) | 区分認定なし(訓練や就労の意欲がある方) |
| 支援の中心 | 入浴、排せつ、食事等の介護 | 作業活動、能力向上の訓練 |
| 利用期間 | 制限なし(継続利用可能) | 制限なし(継続利用可能) |
サービスを選ぶ際の判断基準
どちらのサービスを選ぶかは、「今、最も必要な支援は何か」によって判断します。
- 生活介護が適している方:
日常的に手厚い身体介護や見守り、健康管理が必要で、就労に向けた訓練が困難な方。 機能維持やレクリエーションを通じた生活の充実を重視する方。
- 就労継続支援B型が適している方:
体調に波があっても、自分のペースで働く訓練をしたい、工賃を得たいという意欲があり、身体介護や医療的ケアの必要性が比較的低い方。
利用者の状態や希望は変化するため、相談支援専門員と定期的に相談し、サービスの見直し(モニタリング)を行うことが重要です。 例えば、B型を利用していた方が、体調悪化により介護の必要性が高まった場合、生活介護への移行を検討できます。
よくある質問と生活介護に関する相談窓口
生活介護を検討する際によくある疑問や、安心して利用するための相談先についてご紹介します。
Q&A:生活介護に関する疑問
Q1. 生活介護と介護保険のデイサービスは併用できますか?
A. 原則として、同じ目的のサービスを併用することはできません。 65歳以上の方は、介護保険のサービス(デイサービスなど)が優先されます。 ただし、障害福祉サービスでしか提供されない専門的な支援(例:重度の障害に特化したリハビリ)が必要な場合は、引き続き障害福祉サービスを利用できることがあります。
Q2. 施設の見学や体験利用は可能ですか?
A. ほとんどの生活介護事業所で、事前の見学や体験利用が可能です。 事業所の雰囲気、職員の対応、活動内容、送迎のルートなどを確認するためにも、複数の事業所を比較検討し、実際に体験してみることを強くおすすめします。
Q3. 利用を断られることはありますか?
A. 以下の理由で利用を断られる可能性があります。
- 事業所の定員が埋まっている場合。
- 利用者の介護度が、事業所の対応可能な範囲を超えている場合(例:喀痰吸引など重度の医療的ケアが必要だが、事業所に看護師がいない)。
- お住まいの地域が事業所の送迎範囲外である場合。
まずは相談支援専門員を通じて、現在の状態に対応できる事業所を探してもらいましょう。
まずは相談支援事業所へ
生活介護をはじめとする障害福祉サービスを利用する上での最初の一歩は、「相談支援専門員」に相談することです。
- 相談支援専門員とは:
障害福祉の専門家として、利用者の意向を把握し、最適なサービスを組み合わせた利用計画を作成し、市町村との手続きを代行してくれます。
- 相談窓口:
お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で、相談支援事業所の一覧を入手できます。 「どのサービスがいいか分からない」という段階から、遠慮なく相談してください。
生活介護は、利用者本人の自立と生活の質の向上を支えるとともに、ご家族の生活を守るための大切な制度です。 この情報を活用し、安心できる日中の活動の場を見つけていきましょう。
まとめ
- 生活介護は、主に障害支援区分3以上(50歳以上は区分2以上)で、常に介護が必要な方を対象とする日中活動系サービスです。
- サービス内容は、入浴・食事・排せつなどの介護、健康管理、創作・生産活動、機能訓練など、多岐にわたります。
- 利用期間の制限がなく、長期にわたり安定した介護と活動の場を提供することで、利用者の生活充実と介護者のレスパイトに貢献します。
- 費用は原則1割負担ですが、所得に応じて月額上限があり、低所得世帯は無料で利用できます(食事代などは実費負担)。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





