発達障害の種類と違いをわかりやすく解説

近年、「発達障害」という言葉が広く認知されるようになりましたが、その実態は多岐にわたり、一括りにすることはできません。発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、日常生活や社会生活において特有の困難が生じる状態を指します。
しかし、その現れ方は人それぞれで、「コミュニケーションや対人関係が苦手」な方もいれば、「集中力が続かず衝動的」な方も、「読み書きや計算だけが極端に苦手」な方もいます。これらの違いを理解せず、一律の対応をしてしまうと、当事者は「自分の努力が足りないからだ」と自責の念にかられ、本来持っている能力を発揮できず、うつ病や不安障害といった二次的な困難(二次障害)に陥るリスクが高まります。
このガイド記事は、発達障害の中でも特に支援の必要性が高い「自閉症スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」「学習障害(LD)」という主要な3つの種類に焦点を当て、それぞれの核となる特性、原因、そして日常生活で生じる具体的な困難と、最も効果的な支援方法を、比較対照しながらわかりやすく解説する「完全ガイド」です。
発達障害への支援は、「苦手の克服」ではなく「特性を理解し、環境を整える」ことにあります。この知識が、相互理解の土台となり、誰もが安心してその能力を発揮できる社会の実現に繋がることを願っています。
パート1:発達障害の共通点と分類の基礎
1.発達障害の共通点と定義
発達障害は、日本の「発達障害者支援法」において、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
- 共通する特性:生まれつきの脳機能の偏りによって生じ、成長過程において特性が明らかになるという点です。これは、親の育て方や本人の努力不足が原因ではないことを意味します。
- 支援の対象:発達障害の特性により、「社会生活や日常生活に困難が生じている」場合、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの対象となります(主に精神障害の枠組み)。
2.主要な3つの発達障害
それぞれの障害は、困難が生じる領域が異なります。この違いを理解することが、適切な支援の第一歩となります。
| 種類 | 略称 | 核となる主な困難 | 主な支援の方向性 |
|---|---|---|---|
| 自閉症スペクトラム症 | ASD | コミュニケーション、社会性、こだわり、感覚過敏 | 環境の構造化、視覚化、SST |
| 注意欠如・多動症 | ADHD | 不注意、多動性、衝動性、実行機能の困難 | 仕組み化(リマインド)、薬物療法、CBT |
| 学習障害 | LD | 特定の学習技能(読み・書き・計算)の習得 | 代償手段(テクノロジー)、個別指導、合理的配慮 |
パート2:ASD(自閉症スペクトラム症)の特性と支援
ASDは、対人関係の困難と限定的な関心・反復行動を核とする特性の連続体(スペクトラム)です。特性は一生続きますが、適切な環境調整で社会生活を送ることが可能です。
核となる2つの特性と困難
1.対人関係とコミュニケーションの困難
- 困難の例:
- 非言語情報の読み取り:相手の表情や声のトーン、ジェスチャーから、感情や意図を読み取ることが非常に苦手。
- 言葉の裏の意味の理解:冗談、皮肉、比喩などが理解できず、言葉を文字通りに受け取ってしまう。
- 相互性の困難:自分の興味のあることだけを一方的に話し続け、相手の関心に合わせることが苦手。
- 必要な支援・配慮:
- **コミュニケーションの明確化:**指示や依頼は、曖昧さを排除し、「具体的な言葉」で伝える。
- **視覚化の徹底:**口頭での指示だけでなく、文字、イラスト、チェックリストなどを用いて「見える化」する(構造化)。
2.限定的な興味・こだわりと感覚特性
- 困難の例:
- 強いこだわり:日課や手順、物の配置などの「変化」に対して強い抵抗や不安を感じ、パニックになることがある。
- 感覚過敏・鈍麻:特定の音、光、匂い、肌触りなどに過敏に反応したり、逆に痛みや寒さに気づきにくい。
- 必要な支援・配慮:
- **変化の予告と理由の説明:**予定の変更や新しい作業は、事前に、理由と手順をセットで伝え、心の準備を促す。
- **環境調整:**騒音や蛍光灯の光など、苦手な刺激を避けるためのスペースやツールの使用(耳栓、サングラス)を許可する。
パート3:ADHD(注意欠如・多動症)の特性と支援
ADHDは、不注意、多動性、衝動性という3つの特性を核とし、主に脳の「実行機能」(計画、目標達成、抑制)に困難が生じる発達障害です。特に、大人になるとその困難が仕事のミスや金銭トラブルにつながりやすくなります。
核となる3つの特性と困難
1.不注意(集中と持続の困難)
- 困難の例:
- 整理整頓・計画性:机やロッカーの整理ができず、書類や持ち物を頻繁に紛失する。物事の段取りを組むのが苦手。
- ケアレスミス:細部への注意が不足し、簡単な計算や書類の誤字脱字が多い。
- 必要な支援・配慮:
- **タスクの分解:**複雑な作業を「小さなステップ」に分解し、一つずつ取り組めるようにする。
- **仕組み化(外部化):**タスク管理を個人の努力に頼らず、リマインダー、カレンダー、チェックリストといった外部ツール(デジタル・アナログ)で徹底的に補う。
2.多動性(行動・思考の落ち着きのなさ)
- 困難の例:
- 子どもの多動:授業中などに席を離れる、じっと座っていられない。
- 大人の多動:頭の中で思考が常に高速回転し、心が落ち着かない感覚(内的多動)として現れる。
- 必要な支援・配慮:
- **作業環境の調整:**気が散る要因(騒音、人の動き)を最小限にするため、集中できる個別スペースを確保する。
- **休憩の活用:**適度な休憩や体を動かす時間をスケジュールに組み込み、多動性を解消する。
3.衝動性(抑制・感情制御の困難)
- 困難の例:
- 発言の抑制:人の話を遮る、質問が終わる前に答え始めるなど、会話のルールを破ってしまう。
- 感情の爆発:強い感情(怒り、苛立ち)を制御できず、衝動的に怒鳴る、物を壊すなどの行動に出てしまう。
- 衝動的な行動:深く考えずに高額な買い物や転職を決めてしまう。
- 必要な支援・配慮:
- **クールダウンのルール:**衝動が高まった際に「その場を離れる」「深呼吸をする」といった具体的な行動を事前に決めておく。
- **薬物療法:**専門の医師による診断のもと、不注意と衝動性を改善する薬を検討する(自立支援医療制度が適用される)。
パート4:LD(学習障害)の特性と支援
LDは、全般的な知的発達には遅れがないにもかかわらず、「読み(読字障害)」「書き(書字障害)」「計算(算数障害)」といった特定の学習技能の習得に著しい困難を示す発達障害です。その困難は、読み書きを前提とする現代社会において、大きなバリアとなります。
核となる3つの特性と困難
1.読字障害(ディスレクシア):読みの困難
- 困難の例:
- 文字と音の結びつけ:文字を滑らかに音読できない、文字が歪んで見えるなどで、長文を読むのに極端に時間がかかる。
- 読解の遅れ:読む速度が遅いことで、内容の理解も遅れやすい。
- 必要な支援・配慮:
- **代償手段:**文字情報を音声読み上げソフトや画面拡大などで補い、聴覚情報として理解する。
- **合理的配慮:**試験や重要な書類は、口頭での説明や時間延長、データ形式での提供を求める。
2.書字障害(ディスグラフィア):書きの困難
- 困難の例:
- 運筆の困難:文字の形を整えたり、枠内に収めたりすることが難しい。
- 文章構成の困難:頭の中の考えを、論理的でわかりやすい文章として構成することが難しい。
- 必要な支援・配慮:
- テクノロジーの活用:音声入力(話した内容を文字に変換)や、PC・タブレットによるタイピングを主として使用する。
- **専門家による訓練:**文字の形や筆順を、視覚・聴覚・触覚を組み合わせたマルチ感覚的な指導で学ぶ。
3.算数障害(ディスカリキュリア):計算の困難
- 困難の例:
- 数の概念・位取り:抽象的な数の概念や、位取りを理解するのが難しい。
- 暗算の困難:簡単な計算でもミスが多く、金銭管理などでトラブルになりやすい。
- 必要な支援・配慮:
- **具体物操作:**数や計算を実物や図を用いて視覚的に理解する指導を受ける。
- **ツールの活用:**電卓、会計ソフト、スマートフォンアプリなどの計算ツールを常に使用することを習慣化する。
パート5:複合的な支援の重要性
実際には、複数の発達障害の特性を併せ持つ「重複」や、ASDとADHDの特性が混在している方も多くいます。また、発達障害と知的障害が併存する場合もあります。
個別支援計画(ケアプラン)の役割
このような複合的な困難に対しては、一つのサービスで全てを解決することはできません。
- **特定相談支援事業所:**まずは、地域の特定相談支援事業所に相談し、総合的なアセスメント(評価)を受けてください。
- **サービスの組み合わせ:**相談支援専門員が、ADHDの特性(不注意)にはデジタルツールの活用(自立訓練)、ASDの特性(対人関係)にはSST(就労移行支援)といった、複数のサービスを組み合わせた「個別支援計画」を作成します。
✅ 理解すべきこと:発達障害の特性はグラデーション
これらの3分類は明確に分かれているわけではありません。大切なのは、「この人はASDだからこうだ」と決めつけるのではなく、「この人の生活のどの場面で、どの特性(不注意か、こだわりか)が特に困難を引き起こしているのか」という「個別性」に焦点を当てて支援することです。
まとめ:発達障害は「違い」であり「個性」である
発達障害の種類と違いを理解することは、当事者やご家族にとって「自責の念から解放される」ための鍵となり、支援者にとっては「的外れな支援」を避けるための羅針盤となります。
- **ASD:**コミュニケーションと変化への配慮。
- **ADHD:**不注意と衝動性への仕組み化と訓練。
- **LD:**読み書き・計算への代償手段と合理的配慮。
これらの違いを認識し、その人が持つ強み(例:ASDの集中力、ADHDの発想力)を活かしながら、困難な部分を環境やテクノロジーの力で補うことが、真の支援です。まずは地域の発達障害者支援センターや特定相談支援事業所に連絡を取り、専門的なサポートを受け始めることを強く推奨します。
✅ 次のアクション
この記事で紹介された3種類のうち、ご自身や支援対象者に最も当てはまる「核となる特性」を一つ選び、その特性に対する「支援策(例:視覚化、仕組み化、代償技術)」を一つ試してみてください。そして、その結果を発達障害者支援センターに相談して、継続的な支援計画を立てましょう。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
🎨 趣味・特技
資格勉強、温泉巡り
🔍 最近気になっているテーマ
障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





