障害者のための就労支援・相談窓口まとめ

障害者のための就労支援・相談窓口まとめ
「自分に合った仕事が見つからない」「働くことはできるが、職場でうまく人間関係を築けるか不安」「ブランクが長く、何から始めればいいのかわからない」— 働くことに関して、このような悩みを抱えている障害のある方やご家族は少なくありません。障害のある方が地域社会で自分らしく活躍するために、就労は経済的な自立だけでなく、生きがいや自己肯定感を高める上で非常に重要です。
しかし、障害者のための就労支援制度は、ハローワーク、専門センター、福祉サービスなど多岐にわたり、それぞれの役割や利用方法が複雑で分かりにくいのが実情です。どの窓口に相談すれば、自分の特性や希望に合ったサポートを受けられるのか、迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、就職前の訓練から職場定着後のフォローアップまで、障害者向けの主要な就労支援・相談窓口を体系的に解説します。各窓口の具体的な機能と、あなたの現在の状況に合わせて最適な支援を選ぶためのヒントを提供します。ぜひ、あなたにとって最良の就労への一歩を踏み出すための道しるべとしてご活用ください。
就労の段階別!公的な3つの主要相談窓口
障害者の就労支援には、職業紹介を担う行政機関と、職業訓練や生活面の支援を担う専門機関があります。ご自身の「今、何をしたいか」という目的に合わせて、適切な窓口を選びましょう。
ハローワーク:職業紹介と求人情報の提供
ハローワーク(公共職業安定所)は、障害者の就労支援において、最も身近な「求職活動の拠点」となる行政機関です。特に、障害のある方を専門に支援する「専門援助部門」が設置されています。
- 主な機能:
- 障害特性に配慮した求人の紹介(障害者枠)
- 職業相談、就職面接会やセミナーの情報提供
- 障害者職業センターやナカポツなど他機関への連携
- 活用ポイント:障害者手帳の有無に関わらず相談できますが、手帳を持っていると障害者専用求人に応募できます。履歴書の書き方や面接対策など、基本的な就職活動の進め方についてもアドバイスが受けられます。
💡 ポイント
ハローワークでは、応募したい求人が自分の特性に合っているか、企業の採用担当者に確認(紹介状の発行)する前に、職業相談員に必ず相談しましょう。支援機関との連携も積極的に活用することが成功の鍵です。
地域障害者職業センター:専門的な職業リハビリテーション
地域障害者職業センター(通称:職セン)は、職業評価と職業リハビリテーションの専門機関です。ハローワークからの紹介や、直接の相談を通じて利用できます。
- 主な機能:
- 職業評価:適性、能力、作業遂行能力などを詳細に評価し、最適な職種を提案
- 職業準備支援:就職に向けた生活リズムや基礎的な職業能力の向上訓練
- ジョブコーチ支援:職場への定着を目的とした、ご本人と企業への支援(後述)
- 活用ポイント:「どんな仕事が自分に合っているかわからない」という方や、専門的なリハビリテーションが必要な方にとって最適な窓口です。手帳の有無は問いません。
職センで実施される職業評価は、その後の就労移行支援事業所の利用計画や、企業への特性の伝達にも非常に役立ちます。
障害者就業・生活支援センター(ナカポツ):仕事と生活の一体支援
障害者就業・生活支援センター(通称:ナカポツ)は、仕事と生活の両面をサポートする地域密着型の支援機関です。地域の中小企業や病院、学校など、地域の福祉資源と連携しています。
- 主な機能:
- 就職活動支援:求人開拓、応募書類作成、面接への同行
- 職場定着支援:就職後の職場での人間関係や業務の相談、企業側への調整
- 生活支援:金銭管理、健康管理、アパート探しなど、安定した生活のための相談
- 活用ポイント:就職前から就職後まで、同じ支援員が継続的に伴走してくれるため、生活面も含めた総合的なサポートを求める方に最適です。多くのナカポツは、土日や夜間の相談も柔軟に受け付けています。
ナカポツは、全国に330箇所以上設置されており、地域における重要な支援拠点となっています。
福祉サービスによる「訓練」と「雇用」の場
就労支援は、ハローワークなどの「相談」だけでなく、実際に訓練を受けたり、雇用契約を結んだりする「福祉サービス」として提供されています。これらは、障害者総合支援法に基づくサービスです。
就労移行支援:一般就労への準備期間
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方を対象とした訓練サービスです。原則として2年間という利用期間が定められています。
- 主な訓練内容:
- ビジネスマナーやコミュニケーションスキル訓練
- パソコンスキルや専門知識の習得
- 模擬就労や職場実習
- 活用ポイント:就職に必要なスキルを体系的に学びたい方や、ブランクが長い方におすすめです。利用者の方の多くは、無料で利用できます(前年の所得による)。利用開始には、相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成が必要です。
就労移行支援事業所の多くは、独自のカリキュラムや特化した支援分野(例:IT、デザイン、発達障害専門)を持っています。複数の事業所の見学を重ね、自分に合った訓練内容を選びましょう。
就労継続支援(A型・B型):働き続けるための場
就労継続支援は、一般企業での就労が難しい方が、雇用契約を結んで働く(A型)、または自分のペースで作業を行う(B型)ための場を提供するサービスです。
| サービスの種類 | 雇用契約の有無 | 賃金/工賃 |
|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | あり(事業者と雇用契約を結ぶ) | 最低賃金以上の給与が支払われる |
| 就労継続支援B型 | なし(利用契約のみ) | 作業量に応じた工賃が支払われる |
A型は、将来的には一般就労を目指したい方や、安定した収入を得たい方に適しています。B型は、体調や体力に不安があり、自分のペースでリハビリを兼ねて働きたい方にとって重要な居場所となります。
特定相談支援事業所:福祉サービス利用の入り口
就労移行支援や就労継続支援といった福祉サービスを利用するためには、特定相談支援事業所の相談支援専門員を通じて、サービス等利用計画を作成し、市区町村から支給決定を受ける必要があります。
⚠️ 注意
専門員は、就労活動そのものを直接支援するわけではありませんが、安定した生活基盤の整備(生活習慣、グループホーム利用、居宅介護との組み合わせ)を計画に盛り込むことで、就労を継続できる体制を構築してくれます。就労を目指す上での最も重要な「土台」作りをサポートしてくれます。
就労支援サービスに興味を持ったら、まずは市区町村の福祉担当課に連絡し、相談支援事業所のリストをもらうところから始めましょう。
職場定着とスキルアップのための専門支援
「就職すること」はゴールではなく、その後の「働き続けること」が最も重要です。就職後の不安や課題に対応するための専門的な支援も充実しています。
ジョブコーチ支援:職場での実践的なサポート
ジョブコーチ(職場適応援助者)支援は、就職後の職場での定着を図るための、実践的なサポートサービスです。主に地域障害者職業センターや、一部の就労支援事業所が提供しています。
- 支援内容:
- ご本人への支援:仕事のやり方や手順の習得、職場のルールや人間関係の調整。
- 企業への支援:障害特性の理解促進、適切な指示方法や職務内容の見直しに関する助言。
- 活用ポイント:ジョブコーチは、職場に訪問し、企業とご本人の双方に寄り添って支援を行います。特に、環境変化に戸惑いやすい方や、職場の理解が不十分な場合に、非常に有効な支援となります。
発達障害者支援センター:特性に応じた専門的サポート
発達障害(ASD、ADHDなど)を持つ方とその家族を支援するために、全国の都道府県・指定都市に設置されている専門機関です。就労に関しても、特性に応じた専門的な相談が可能です。
「ハローワークでは漠然としたアドバイスしか得られませんでしたが、発達障害者支援センターでは、私の『マルチタスクが苦手』という特性を理解し、ルーティンワークが中心の具体的な求人を探してくれました。また、職場でメモを効果的に使うための具体的なツールも提案してくれました。」
— 20代・ADHDを持つ利用者
ここでは、就労だけでなく、生活全般にわたる相談も可能です。発達障害に特化した支援を求める場合は、まず相談してみましょう。
精神保健福祉センター:精神的な安定のための支援
精神障害を持つ方が就労を目指したり、働き続けたりする上で、精神的な安定は欠かせません。精神保健福祉センターは、精神的な健康や福祉に関する専門的な相談窓口です。
就労に関する直接的な職業紹介は行いませんが、ストレス管理の方法、服薬管理、復職に向けたリハビリテーションの進め方など、働くための土台作りに関する相談ができます。地域の医療機関や自助グループとも連携しており、心強い存在です。
就労支援サービス利用のロードマップと注意点
就労支援サービスを効果的に利用するための、具体的な手順と、知っておくべき注意点を解説します。
就労支援サービス利用開始までのロードマップ
- 現在の状況を把握:まず、主治医や相談支援専門員に相談し、ご自身の体調、能力、希望を整理します。
- 相談窓口の選択:「就職活動」ならハローワーク、「訓練」なら就労移行支援、「生活と仕事の同時支援」ならナカポツを選びます。
- 申請と計画作成:就労移行支援などの福祉サービスを利用する場合は、市区町村への申請と、相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成が必要です。
- サービス利用開始:支給決定後、事業所と利用契約を結び、訓練を開始します。
- 職場定着:就職後も、ナカポツやジョブコーチの支援を受けながら、安定して働き続けるためのサポートを受けます。
サービス利用時の注意点
特に就労移行支援サービスを利用する上で、注意すべき点をまとめます。
⚠️ 注意
利用期間の制限:就労移行支援は原則2年間です。この期間内で就職を目指す必要があります。目標を明確にし、計画的に訓練に取り組みましょう。
事業所の質:事業所によって就職実績や訓練内容に大きな差があります。見学や体験利用を通じて、支援員の質や、訓練が自分のニーズに合っているか確認しましょう。
利用料金:前年度の世帯所得によっては、利用料金が発生する場合があります。費用負担について、事前に市区町村の福祉担当課に確認してください(多くの方は無料です)。
就労支援は、ご本人と支援者が二人三脚で進めるものです。ご自身の希望を明確に伝えることが、質の高い支援を受けるための最も重要なポイントです。
よくある質問(FAQ)と次のアクション
就労支援に関する利用者からの疑問に答え、次のステップを明確にします。
Q1:就労移行支援の「2年間」で就職できなかったらどうなるか?
A:原則2年間の利用期間が過ぎても就職に至らなかった場合、継続して利用することはできません。しかし、すぐに支援が途切れるわけではありません。
その後の選択肢としては、就労継続支援A型・B型へ移行して働く場を確保するか、地域障害者職業センターやナカポツで引き続き就職活動や生活支援を受けることが可能です。再利用の可否については、医師や専門員と相談の上、市区町村が判断します。
Q2:障害者枠での就職は「給与が低い」というイメージがあるが?
A:かつては一般枠よりも給与が低い傾向にありましたが、近年では障害者の活躍推進を図る企業が増え、専門スキルや経験があれば、一般枠と変わらない給与で採用されるケースが増えています。
特に、ITスキルや専門知識を身につけた方は、その能力を活かして高い報酬を得ることも可能です。支援機関を通じて、能力に見合った評価をしてくれる企業を見つけることが重要です。
Q3:どの支援機関に一番最初に相談すべきか?
A:就労に関する相談が初めての場合、障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)に相談するのがおすすめです。ナカポツは、仕事と生活の両面を総合的に見てくれるため、あなたの状況を包括的に把握し、ハローワーク、職セン、福祉サービスのどこに繋ぐのが最適かを判断してくれます。
もちろん、すぐに求人を探したいならハローワーク、訓練を受けたいなら就労移行支援事業所への直接相談も可能です。
次のアクション:お近くの「ナカポツ」に電話相談する
就労に関する支援をどこから始めるか迷っている方は、お住まいの地域にある障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)に電話相談をしてみましょう。
「これから就職活動を始めたいが、何から手をつければいいかわからない」と伝えてみてください。ナカポツの支援員が、あなたの不安を解消し、具体的な次のステップを提案してくれます。
まとめ
- 障害者向け就労支援の主要窓口は、ハローワーク(求人)、地域障害者職業センター(専門訓練)、障害者就業・生活支援センター(生活と仕事の一体支援)の3つです。
- 就職に向けた訓練の場として、就労移行支援(一般就労向け)と、就労継続支援A型・B型(働き続ける場)といった福祉サービスがあります。
- 就職後も、ジョブコーチ支援やナカポツによる継続的なフォローアップを受けることが、職場定着の鍵となります。まずはナカポツに相談し、ご自身の特性に合った支援計画を立てましょう。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





