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障害者の一人暮らしを支える制度とサービスまとめ

📖 約40✍️ 酒井 勝利
障害者の一人暮らしを支える制度とサービスまとめ
障害のある方が一人暮らしを始めるための、公的制度と民間サービスの活用術を網羅したガイドです。居宅介護や重度訪問介護といった福祉サービスから、障害年金や各種減免制度による経済的支援、さらに障害者向けの公営住宅や居住支援事業まで詳しく解説しています。一人暮らしで懸念される家事の負担や緊急時の対応、金銭管理の不安についても、自立生活援助や成年後見制度、IT見守りなどの具体的な解決策を提示。「全部一人でやる」のではなく「サポートを使いこなす自立」を目指すための、実践的で温かいアドバイスをまとめています。

障害者の一人暮らしを叶えるためのガイド

障害がある中で「一人暮らしを始めたい」という願いを持つことは、自立に向けた大きな一歩です。しかし、ご本人やご家族にとっては「家事はこなせるだろうか」「防犯面や急病の時はどうすればいいのか」といった不安が尽きないのも当然のことでしょう。

この記事では、障害のある方が安心して自分らしい生活を送るために活用できる、公的な制度や民間サービスを網羅的にご紹介します。一人暮らしは決して「すべてを一人で完璧に行うこと」ではありません。適切なサポートを組み合わせることで、自由で安心な暮らしを実現するための具体的なヒントをお届けします。

自立を支える福祉サービスの基本

居宅介護と重度訪問介護

一人暮らしの生活を直接的に支える柱となるのが、障害者総合支援法に基づく「居宅介護(ホームヘルプ)」です。ヘルパーが自宅を訪問し、入浴や排泄、食事の介助といった身体介護だけでなく、調理や洗濯、掃除などの家事援助も行います。これにより、体力的・身体的に困難な部分を補いながら、自宅での生活を維持することが可能になります。

また、重度の肢体不自由がある方や、知的障害・精神障害により常時介護が必要な方には、「重度訪問介護」というサービスがあります。こちらは比較的長い時間、外出時も含めて総合的に支援を受けることができるため、重度の障害がありながら一人暮らしを実現されている方の多くがこの制度を活用しています。

同行援護と行動援護

視覚障害がある方の外出をサポートするのが「同行援護」です。移動に必要な情報の提供や、代読・代筆などの支援を受けることができ、一人暮らしにおける買い物や通院、役所の手続きなどのハードルを大きく下げてくれます。

知的障害や精神障害により、行動に著しい困難がある場合には「行動援護」が適用されます。危険を回避するための援助や、外出時のコミュニケーション支援が受けられるため、社会との接点を保ちながら一人暮らしを続ける上での安心材料となります。これらの外出支援は、自宅にこもりがちになるのを防ぎ、生活の質を向上させる重要な役割を担っています。

地域活動支援センターの活用

一人暮らしで不足しがちな「他者との交流」や「日中の居場所」を提供してくれるのが地域活動支援センターです。創作活動や生産活動の機会があるほか、専門のスタッフによる生活相談を受けることもできます。

特に精神障害がある方にとっては、孤独感を解消し、規則正しい生活リズムを維持するための拠点として非常に有効です。多くのセンターでは、同じような悩みを持つ仲間と出会える場にもなっており、一人暮らしの精神的な支えとなるコミュニティとしての側面も持っています。

💡 ポイント

これらの福祉サービスを利用するには、市区町村の窓口で「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。まずはお住まいの地域の福祉課に相談してみましょう。

住まい探しと住環境の整備

障害者向けの公営住宅と優遇措置

一人暮らしを始める際に大きな壁となるのが、家賃の負担と入居審査です。各自治体が運営する公営住宅(都営・県営・市営など)では、障害者世帯を対象とした当選確率の優遇措置や、家賃の減額制度が設けられていることが多くあります。

バリアフリー設計が施された「車椅子対応住宅」などの特定目的の住戸も用意されているため、民間の賃貸物件を探す前に、まず自治体の住宅供給公社などで募集要項を確認することをお勧めします。ただし、地域によっては倍率が非常に高い場合もあるため、長期的な視点で情報収集を行うのがコツです。

住宅入居等支援事業(居住支援)

民間の賃貸マンションを探す際、障害を理由に入居を断られてしまうのではないかという不安を感じる方も多いでしょう。そこで活用したいのが「住宅入居等支援事業」です。これは、保証人が見つからない場合や、不動産業者との交渉が難しい場合に、相談支援事業所などが間に入ってサポートしてくれる仕組みです。

近年では、障害者や高齢者の入居を拒まない「セーフティネット住宅」の登録も増えています。地域にある居住支援協議会や、福祉に理解のある不動産業者のリストを自治体から入手することで、スムーズな住まい探しが可能になります。

住宅改修費の給付と補助金

既存の住宅で生活環境を整えるためには、住宅改修費の給付制度が役立ちます。手すりの設置、段差の解消、和式便器から洋式便器への取り替えなど、障害の特性に合わせて住まいをカスタマイズするための費用が補助されます。

一般的に、障害者手帳の種類や等級、所得状況によって給付額が決まります。工事を始める前に申請を行う必要があるため注意が必要ですが、リフォームによって「自分の力でできること」が増えれば、ヘルパーへの依存度を下げ、より自由な一人暮らしを楽しめるようになります。

制度名 主な内容 対象の目安
公営住宅優遇 当選確率のアップ・家賃減免 手帳所持者(等級による)
住宅入居等支援 保証人確保・不動産屋との調整 入居に困難を抱える方
住宅改修費給付 手すり設置・段差解消工事 下肢・体幹障害等(原則1回)

日々の生活を支える経済的な制度

障害年金による所得保障

一人暮らしの安定に欠かせないのが、障害年金です。病気やケガによって生活や仕事に制限が出た場合に支給されるもので、基礎年金と厚生年金の2種類があります。障害の程度に応じて1級、2級(厚生年金は3級まで)の認定が行われます。

年金額は毎年改定されますが、例えば障害基礎年金1級であれば月額約8万円強、2級であれば約6.6万円程度(2024年度基準)が支給されます。これに加えて、所得が一定以下の場合は「年金生活者支援給付金」が加算される仕組みもあり、一人暮らしの貴重な固定収入となります。

特別障害者手当と各種減免

精神または身体に著しく重度の障害があるために、日常生活において常時の介護を必要とする方には、特別障害者手当が支給される場合があります。月額27,000円程度(支給額は変動あり)が四半期ごとにまとめて支払われ、家賃や光熱費の支払いを助けてくれます。

また、経済的負担を軽くするために、各種公共料金の減免制度も忘れずにチェックしましょう。NHK受信料の免除、水道料金の基本料金減免、携帯電話会社の障害者割引(ハートフレンド割引など)は、申請するだけで固定費を大幅に削減できるため、一人暮らしの家計管理において非常に重要です。

自立支援医療と日常生活用具

通院や薬代が家計を圧迫しないよう、自立支援医療制度を利用しましょう。通常3割負担の医療費が原則1割に軽減され、所得に応じてひと月の支払い上限額が設定されます。一人暮らしでは健康管理が最優先事項となるため、継続的な通院を経済的に支えてくれるこの制度は必須と言えます。

さらに、日常生活を便利にするための日常生活用具の給付もあります。聴覚障害者用の屋内信号装置、視覚障害者用の音声時計、身体障害者用の特殊寝台など、高価な福祉用具を安価で購入できるため、自立生活の質を飛躍的に向上させることが可能です。

✅ 成功のコツ

経済的な制度は「申請主義」です。自分から申し出ないと受けられないため、手帳を取得した際や引っ越し時には、利用できる減免制度の一覧を役所で必ずもらいましょう。

自立生活援助と地域での見守り

自立生活援助サービスの役割

障害者支援施設やグループホームから一人暮らしに移行したばかりの方、あるいは長年の一人暮らしで生活が不安定になってきた方を対象とした「自立生活援助」というサービスがあります。専門の相談員が定期的に自宅を訪問し、食事や掃除の状況を確認したり、公共料金の支払いが滞っていないかチェックしたりしてくれます。

「ゴミの出し方がわからない」「近所の人とのトラブルにどう対応すればいいか」といった、ヘルパーには頼みにくい細かな困りごとも相談に乗ってくれます。利用期間は原則1年間ですが、環境の変化に慣れるまでの「伴走者」として活用することで、一人暮らしの挫折を防ぐことができます。

緊急通報システムとIT見守り

一人暮らしで最も怖いのが、夜間や早朝に体調が急変したときです。多くの自治体では、障害者や高齢者を対象に緊急通報システムの貸与を行っています。ボタン一つで警備会社やコールセンターにつながり、必要に応じて救急車の手配や親族への連絡を行ってくれる仕組みです。

最近では、人感センサーやスマート家電を活用したIT見守りサービスも充実しています。一定時間、冷蔵庫の開閉がない場合に家族に通知が飛ぶような仕組みを導入することで、プライバシーを守りつつ「何かあったときは誰かが気づいてくれる」という安心感を得ることができます。これは、離れて暮らすご家族の精神的な負担軽減にもつながります。

近隣との関係作りと民生委員

制度ではありませんが、地域に住む民生委員・児童委員とのつながりも大切です。民生委員は、地域住民の生活上の相談に応じるボランティアの専門職です。一人暮らしを始めたことを事前に伝えておくことで、災害時の避難支援や、地域の福祉情報の提供を受けることができます。

また、ゴミ出しの際やマンションの共用部分で会った近隣住民の方に、簡単な挨拶をしておくことも立派な防犯・見守り対策になります。「あの部屋には障害のある方が住んでいる」と周囲にポジティブな意味で知ってもらうことは、トラブルを防ぎ、いざという時の助け合いを生むきっかけになります。

⚠️ 注意

見守りサービスはあくまで「事後」の対応がメインです。急な体調不良に備え、持病や緊急連絡先を記した「緊急搬送カード」を冷蔵庫に貼るなどの対策も併せて行いましょう。

精神的な自立と意思決定のサポート

成年後見制度と日常生活自立支援事業

一人暮らしでは、自分一人で契約や金銭管理を行わなければなりませんが、知的障害や精神障害がある方にとって、複雑な契約や大金の管理が負担になることもあります。その際に役立つのが、「日常生活自立支援事業」です。社会福祉協議会のスタッフが、通帳の預かりや公共料金の支払い代行、福祉サービスの契約手続きをお手伝いしてくれます。

さらに判断能力が不十分な場合には、成年後見制度の検討も一つの選択肢です。後見人が財産管理や契約行為を代理またはサポートすることで、悪質商法の被害から守られ、長期間にわたって安定した生活基盤を維持できるようになります。どちらの制度が適しているかは、現在の判断能力や生活状況に合わせて専門家と相談することが大切です。

ピアサポートと仲間づくり

一人暮らしの成功は「物理的な自立」だけでなく「心の充足」にかかっています。同じ障害を持ちながら一人暮らしをしているピアサポーター(仲間の支援者)の話を聞く機会を持つことは、非常に大きな励みになります。「こうすれば料理が楽になる」「寂しい時はこう乗り越える」といった、経験に基づいた具体的なアドバイスが得られるからです。

当事者会や自助グループに参加することで、一人ではないという実感が持てます。悩みは一人で抱え込むと重たくなりますが、誰かと分かち合うことで、解決の糸口が見えてくるものです。一人暮らしは孤独を楽しむ時間でもありますが、そのベースには「いつでも誰かとつながれる」という安心感が必要です。

相談支援専門員との二人三脚

一人暮らしを計画する段階から、相談支援専門員は最強のパートナーになります。どのような福祉サービスを組み合わせて「サービス等利用計画」を作成するか、一緒に頭を悩ませてくれる存在です。

生活が始まってからも、定期的な「モニタリング(状況確認)」を通じて、サービスの過不足を調整してくれます。一人暮らしが始まってから「やっぱりお風呂掃除が大変だった」と感じれば、ヘルパーの時間を増やす提案をしてくれるなど、常に生活のアップデートを支えてくれます。何でも話せる相談支援専門員を見つけることが、一人暮らしの継続率を高める秘訣です。

「自分一人で全部やらなきゃいけないと思って怖かったけれど、ヘルパーさんと相談員さんがいれば意外と何とかなるものです。自分のペースで起きられる朝が、今は一番の幸せです。」

— 統合失調症を持ちながら一人暮らし5年目のBさん


よくある質問と具体的な対処法

Q1. 家事が全くできないのですが、それでも一人暮らしできますか?

結論から申し上げますと、家事ができなくても一人暮らしは可能です。居宅介護(ホームヘルプ)の家事援助を利用すれば、掃除、洗濯、調理をヘルパーに任せることができます。また、宅配弁当(配食サービス)や全自動洗濯機、お掃除ロボットなどの家電を活用することで、自分で行う負担を最小限に抑える方法もあります。「家事の自立」よりも「サポートを使いこなす自立」を目指しましょう。

Q2. 夜間に具合が悪くなったらどうすればいいですか?

夜間の対応については、複数の備えを組み合わせておくのが安心です。まずは前述の緊急通報システムの導入を検討しましょう。また、一部の地域では「夜間対応型訪問介護」や、24時間対応の相談窓口が設置されています。主治医やケアマネジャーと相談し、夜間の緊急連絡先(親族、病院、相談先)をリスト化して、電話の近くや枕元に置いておく習慣をつけましょう。

Q3. お金の管理が不安で使いすぎてしまいそうです

金銭管理に不安がある場合は、前述の「日常生活自立支援事業」の利用を強くお勧めします。1週間分のお小遣いだけを手元に残し、残りの生活費や公共料金を管理してもらうことで、計画的な支出が可能になります。また、デビットカードやプリペイドカードを活用して、あらかじめ決めた金額以上は使えないように設定するのも、使いすぎを防ぐ物理的な工夫として有効です。

Q4. 近所付き合いや騒音トラブルが心配です

精神障害や発達障害による特性(声が出てしまう、足音が大きくなってしまう等)がある場合、最初から福祉に理解のある物件(グループホームを併設しているマンション等)を選ぶのも一つの手です。また、入居時に相談員から管理会社へ、必要な配慮を伝えてもらうこともできます。厚手のカーペットを敷く、壁側に家具を置くなどの防音対策を行い、万が一苦情が来た際の相談先をあらかじめ決めておくと安心です。


まとめ

障害者の一人暮らしは、多くのハードルがあるように見えるかもしれません。しかし、現在の日本では、福祉サービス、住まいの支援、経済的保障、そして地域での見守りなど、多種多様なピースが揃っています。これらを自分の特性に合わせてパズルのように組み合わせていくことで、あなただけの「自立の形」を作り上げることができます。

最初からすべてを完璧にしようとする必要はありません。まずは小さな「やりたい」という気持ちを大切に、相談支援事業所や自治体の窓口へ足を運んでみてください。一人暮らしはゴールではなく、新しい自由と可能性に満ちた生活のスタートラインです。一歩を踏み出す勇気を、周囲のサポートが必ず支えてくれるはずです。

まとめ

  • 居宅介護や自立生活援助など、自分に合った福祉サービスを組み合わせて生活の基盤を作りましょう。
  • 障害年金や公共料金の減免、手当などの制度をフル活用し、経済的な安定を確保することが大切です。
  • 住宅入居支援や緊急通報システムなどを利用し、物理的な安全と住まいの安心を整えましょう。
  • 相談支援専門員やピアサポーターなど、困ったときにすぐ相談できる「人のつながり」を複数持っておきましょう。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

スマート家電と福祉の融合、IoT活用

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