身体障害者が知っておくべき生活習慣病予防法

💪 身体障害者が知っておくべき生活習慣病予防法:二次障害を防ぎ、健康寿命を延ばすために
「運動制限があるから、どうしても体重が増えてしまう…」「高血圧や糖尿病のリスクがあるけれど、具体的な対策がわからない」「障害特性を考慮した健康管理のポイントを知りたい」
生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)は、全ての人にとって重要な健康課題ですが、特に身体障害者にとってはその予防が非常に重要になります。なぜなら、身体機能の制限や活動量の低下から、生活習慣病のリスクが高まりやすい上、一度発症すると既存の障害を悪化させたり、新たな二次障害を引き起こしたりする危険性があるからです。
例えば、脊髄損傷の方が糖尿病を発症すると、褥瘡(床ずれ)の治癒が遅れたり、視覚障害を合併して移動がさらに困難になったりする可能性があります。
この記事では、身体障害者が直面しやすい生活習慣病のリスクを深く理解し、**「栄養管理」「運動療法」「二次障害予防」**の三つの柱に基づいた、具体的かつ実践的な予防法を徹底的に解説します。障害特性に合わせた食事の工夫、無理なく続けられる運動方法、医療機関や専門家との連携など、健康寿命を延ばし、より安心できる生活を送るための具体的な戦略を構築しましょう。
🩺 1. 身体障害者が抱える生活習慣病のリスク要因
身体障害者が生活習慣病になりやすい背景には、いくつかの固有のリスク要因が存在します。
リスク要因①:活動量の低下と肥満
多くの身体障害は、移動や全身運動を困難にします。
- **エネルギー消費の減少:車椅子使用や麻痺、関節の可動域制限などにより、日常生活におけるエネルギー消費量(カロリー消費)**が健常者と比較して大幅に減少します。
- **肥満の進行:**エネルギー消費が少ないにもかかわらず、食事量が減らなければ、過剰なエネルギーが体脂肪として蓄積され、肥満(内臓脂肪型肥満)につながりやすくなります。肥満は、糖尿病や高血圧の主要なリスク要因です。
- **筋力の低下:**運動不足は骨格筋量の低下を招き、基礎代謝がさらに減少するという悪循環を引き起こします。
リスク要因②:二次障害としての合併症
生活習慣病は、既存の障害をさらに悪化させる「二次障害」を引き起こす可能性があります。
- **糖尿病と褥瘡・感染症:**糖尿病による高血糖状態は、免疫力を低下させ、**褥瘡(床ずれ)**の発生・悪化や感染症の治癒を遅らせます。重度の身体障害者にとって、褥瘡の悪化は生命に関わる重大な問題です。
- 高血圧と脳卒中の再発:脳原性麻痺など、脳血管疾患が原因の障害を持つ方は、高血圧を放置すると脳卒中の再発リスクが著しく高まります。
- 脂質異常症と心疾患:動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの心血管疾患を招くリスクが高まります。
🚨 特に注意すべき障害
脊髄損傷や脳卒中後遺症、重度の肢体不自由を持つ方は、活動量の低下が著しいため、特に厳密なカロリー管理と運動療法が求められます。
🍽️ 2. 栄養管理の基本:カロリーと食事内容の工夫
身体障害者の生活習慣病予防において、運動制限があるからこそ、適切な栄養管理とカロリーコントロールが最も重要な予防策となります。
チェックポイント①:適切なエネルギー量の設定
活動量が少ない身体障害者は、一般成人よりも必要なカロリー量が少ないことを理解する必要があります。
- **基礎代謝の低下を考慮:**脊髄損傷など、麻痺がある方は、健常者より基礎代謝が10〜20%低いとされています。管理栄養士と連携し、一人ひとりの活動レベルや障害レベルに基づいた適切な摂取カロリーを設定することが不可欠です。
- **体重管理:BMI(体格指数)だけでなく、腹囲(内臓脂肪の指標)や体組成(体脂肪率)**を定期的にチェックし、必要に応じてカロリー制限を行います。
チェックポイント②:食事内容の質の向上
摂取カロリーを抑えるだけでなく、栄養バランスを整え、生活習慣病予防に役立つ食品を積極的に取り入れます。
- **炭水化物の質:**血糖値の急激な上昇を抑えるため、白米よりも玄米、全粒粉パンなど、**食物繊維が豊富な炭水化物(複合糖質)**を選びます。
- 良質な脂質:魚介類に含まれるEPA・DHA(オメガ3脂肪酸)は、血液をサラサラにし、脂質異常症の予防に役立ちます。動物性脂肪(肉の脂身)を減らし、魚や植物油(オリーブオイルなど)を意識的に摂りましょう。
- 野菜・きのこ・海藻類:これらの食品に含まれる豊富な食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにし、コレステロールの吸収を抑えます。毎食、積極的に摂ることを目標とします。
チェックポイント③:食事の形態と嚥下機能への配慮
脳卒中後遺症などにより嚥下機能が低下している場合、食事の形態にも注意が必要です。
- **形態調整食:**むせやすい方には、刻み食、ミキサー食、とろみ調整食など、嚥下のしやすさに配慮した食事を提供します。
- **脱水予防:**水分が不足すると、血液が濃くなり、血栓ができやすくなります。特に夏の暑い時期や、排泄介助が必要なために水分摂取を控える傾向がある方は、意識的に水分補給を行いましょう。
🚴 3. 運動療法の工夫:障害特性に合わせた活動の提案
運動制限があるからといって、運動を諦める必要はありません。残存機能を最大限に活用し、無理なく続けられる「運動」を見つけることが大切です。
チェックポイント④:座位・臥位でできる運動の導入
車椅子使用者や臥位(寝た状態)で過ごす時間の長い方でも、全身の筋肉を使うことは可能です。
- **ストレッチと可動域運動:**関節の硬直を防ぎ、血行を促進するために、介助者による受動運動や、残存機能を使った自動運動を毎日行います。
- **アイソメトリクス運動:**関節を動かさずに、筋肉に力を入れる運動(例:お腹やお尻に数秒間力を入れる)は、臥位でも筋力維持に役立ちます。
- **上肢・体幹の運動:**車椅子に座ったままでも、ダンベルやセラバンドを使った上肢(腕)の運動や、バランスボールを使った体幹(腹筋・背筋)の運動は、エネルギー消費を高めるのに有効です。
チェックポイント⑤:日常動作を運動に変える工夫
特別な時間を作らなくても、日常生活の動作を少し工夫することで活動量を増やせます。
- 移動の工夫:電動車椅子ではなく手動車椅子を使い、自分でこぐ回数を増やす。可能な範囲で、移動の一部を歩行訓練に充てる。
- 家事への参加:座ったままでもできる皿洗い、野菜の下処理、洗濯物の仕分けなど、家事に参加することで活動量を増やし、生活リハビリテーションにもつながります。
✅ 専門家への相談
どのような運動が安全で効果的かについては、必ず**理学療法士(PT)や作業療法士(OT)**に相談し、個別的な運動プログラムを作成してもらいましょう。自己流の運動は、関節の損傷や怪我につながるリスクがあります。
チェックポイント⑥:運動の目標と継続性の確保
生活習慣病予防の運動は、短時間の高強度な運動よりも、長時間の低強度な運動を継続することが重要です。
- 目標設定:「毎日30分、体幹のストレッチと上肢の運動を行う」「週に3回、地域のプールで水中歩行を行う」など、具体的で達成可能な目標を設定します。
- **モチベーション維持:**運動記録をつけたり、支援員や家族と一緒に運動したりするなど、楽しく継続できる仕組みを取り入れましょう。
🤝 4. 医療連携と専門家による継続的なサポート
生活習慣病の予防と管理は、ご本人や介助者だけで行うには限界があります。専門家の力を借り、常にモニタリングできる体制を築きましょう。
チェックポイント⑦:かかりつけ医と多職種連携
身体障害者の健康管理には、内科医(生活習慣病専門医)、リハビリテーション科医、そして管理栄養士の連携が不可欠です。
- **内科医:**生活習慣病の診断と薬物療法、運動・食事療法の指示を担当します。
- **リハビリテーション科医:**障害特性を考慮した安全な運動プログラムを監修し、リハビリテーションサービスを処方します。
- 管理栄養士:個人の障害レベル、嗜好、嚥下機能に合わせた具体的な栄養指導や献立作成を担当します。
訪問看護師や訪問栄養指導のサービスを活用し、自宅にいながらにして、定期的なバイタルサインのチェックや専門的な栄養指導を受けることも有効です。
チェックポイント⑧:定期的な健康診断と検査
生活習慣病は自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な検査による早期発見・早期治療が命を守ります。
- 検査項目:一般的な血液検査(血糖値、HbA1c、コレステロール、中性脂肪など)に加え、血圧、体重、腹囲、尿検査などを定期的に行います。
- **特定健診・特定保健指導:**40歳以上の方は、特定健診の結果に基づいて、生活習慣病のリスクが高いと判断された場合、特定保健指導(保健師や管理栄養士による生活改善のサポート)を受けることができます。
🚨 介助者への注意
身体障害者は、検査や受診に移動の困難を伴うため、介助者は検査日が近づいたらリマインドし、通院の準備(移動支援、受診同行)を怠らないようにしましょう。
📚 5. 環境整備と心理的サポート:予防を支える土台
生活習慣病予防を継続するためには、物理的な環境と、ご本人の心理的な安定が欠かせません。
チェックポイント⑨:家庭内の環境整備
健康的な食生活と運動を促すための環境を整えます。
- **調理環境:**座ったままでも安全に調理できるキッチン(車椅子対応キッチンなど)や、握りやすい調理器具を導入することで、ご本人が自ら調理に参加する機会を増やし、食事への関心を高めます。
- **運動器具の設置:**自宅でできる簡単な運動器具(セラバンド、小型エアロバイクなど)を、すぐに手に取れる場所に設置します。
- **情報源の確保:**健康情報や運動動画を、ご本人の見やすい位置(ベッドサイドなど)に設置したタブレットなどで視聴できるようにします。
チェックポイント⑩:ストレスとメンタルヘルスの管理
ストレスは、食欲増進やホルモンバランスの乱れを引き起こし、生活習慣病のリスクを高めます。
- **ストレスの把握:**身体障害者は、痛みや不自由さから常にストレスを感じやすい状態にあります。日々の気分や睡眠の状況を記録し、ストレスの状況を把握します。
- 趣味・社会参加:リハビリテーション以外の趣味や社会参加活動(障害者スポーツ、趣味のサークル、ボランティアなど)を通じて、ストレスを軽減し、生活にハリと満足感を持たせることが、予防の土台となります。
- **心理的なサポート:**不安や抑うつがある場合は、臨床心理士や精神科医のサポートを受け、心理的な安定を図ることが重要です。
まとめ
- 身体障害者は、活動量の低下による肥満や基礎代謝の低下から、生活習慣病のリスクが高く、発症すると褥瘡の悪化や脳卒中の再発といった二次障害を引き起こす危険性がある。
- 予防の基本は、管理栄養士と連携し、障害特性に基づいた適切な摂取カロリーを設定し、玄米や魚介類、食物繊維を意識的に摂るなど、食事内容の質を高めることである。
- 運動療法は、理学療法士・作業療法士の指導のもと、座位・臥位でできるストレッチやアイソメトリクス運動、家事参加など、日常動作を工夫して活動量を増やすことが重要である。
- かかりつけ医、管理栄養士、リハビリテーション科医が連携し、定期的な血液検査や特定保健指導を受けることで、生活習慣病の早期発見・早期治療を可能にする。
- ストレス管理や、ご本人が自ら調理や運動に参加できる家庭内の環境整備も、予防を継続するための重要な土台となる。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





