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障害年金が不支給になる理由と見直し方法

📖 約36✍️ 阿部 菜摘
障害年金が不支給になる理由と見直し方法
障害年金が不支給となる主な理由は、「納付要件の不備」「初診日証明の不足」「診断書等の情報不足による等級非該当」の3点です。不支給決定通知が届いた場合、通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に「審査請求(不服申立て)」を行うことが可能です。等級非該当が理由であれば、元の診断書や申立書の内容を徹底的に見直し、日常生活の困難さを具体的に補強することが重要です。また、初診日の証明に成功した、または病状が悪化した場合は「再申請」も選択肢となります。不支給決定後の心理的ケアや、社会保険労務士などの専門家への速やかな相談の重要性についても解説しています。

長期間の準備と不安な思いを抱えて障害年金を申請した結果、「不支給決定通知書」が届いたとき、そのショックは計り知れません。 経済的な支えを失うことへの不安だけでなく、「自分の障害は認められなかったのか」と、精神的なダメージも大きいものです。

しかし、不支給決定は最終的な結果ではありません。 障害年金の不支給の理由は、制度の要件を満たしていない場合と、提出書類で障害の状態が正確に伝わらなかった場合の大きく2つに分けられます。 このガイドでは、不支給となる具体的な理由を分析し、不支給決定を覆すための「不服申立て(審査請求)」の手順と「再申請」の戦略を詳しく解説します。 一緒に希望を見出し、次のステップを踏み出しましょう。


障害年金が不支給となる3つの主要な理由

障害年金が不支給となる理由は、主に「加入要件の不備」「初診日の証明不足」「障害状態の非該当」の3つに分類されます。 不支給決定通知書には必ず理由が記載されていますので、まずはその理由を正確に把握することが重要です。

理由1:保険料納付要件を満たしていない

障害年金を受給するための大前提として、「初診日の前日」時点で年金保険料を適切に納付していることが求められます。

  • 納付状況の不足:

    国民年金や厚生年金の加入期間のうち、保険料を納付した期間と免除された期間の合計が3分の2未満である場合、この要件を満たしません。 特に、自営業者やフリーターなど、国民年金に任意加入していた期間の未納が原因となるケースが多く見られます。

  • 初診日の特定ミス:

    初診日を誤って申告した結果、本来の初診日の時点では納付要件を満たしていたにも関わらず、誤った初診日で審査が行われ不支給となるケースもあります。 初診日の再確認は、この理由で不支給となった場合の重要な見直しポイントです。

⚠️ 注意

初診日の前々月までの1年間に未納がないこと、という特例(特例納付要件)もありますが、こちらも満たしていない場合は不支給となります。 納付要件に関する理由は、基本的に後から覆すのが最も難しい理由です。

理由2:初診日の証明ができていない

障害年金の手続きは、「初診日」を起点として始まるため、その日が公的に証明できないと、他の要件を満たしていても申請が受理されません。

  • 「受診状況等証明書」の不足:

    初診の病院でカルテが廃棄されていたり、病院が廃院していたりして、初診日を証明する「受診状況等証明書」を提出できなかった場合、不支給となります。

  • 証明書類の説得力不足:

    初診の病院で証明書が取れず、代わりに使用した客観的な証拠(診察券、お薬手帳、第三者証明など)の説得力が、年金機構の審査基準を満たさなかった場合も不支給となります。

理由3:障害等級の認定基準に該当しない

最も多い不支給理由が、「提出された書類(主に診断書)では、障害年金の定める等級(2級または3級)に該当する状態だと認められなかった」というものです。

  • 診断書の内容不足:

    主治医が作成した診断書に、「日常生活における具体的な困難さ」や「労働能力の著しい制限」が十分に記載されていなかったり、障害の状態が軽めに評価されていたりした場合に生じます。

  • 申立書と診断書の矛盾:

    申請者自身が作成する「病歴・就労状況等申立書」に記載された日常生活の困難さが、診断書の医学的な所見や日常生活能力の判定と矛盾していると判断された場合も、審査官の心証を悪くし、不支給につながります。


不支給決定後の見直し戦略:審査請求の活用

不支給決定通知書を受け取ったら、次に取るべき行動は、通知書の内容を詳しく分析し、審査請求(不服申立て)を行うか、再申請を行うかを決定することです。 審査請求は、行政の決定を覆すための唯一の公的な手続きです。

審査請求(不服申立て)の手順と期限

審査請求は、決定通知書に記載されている不支給の理由が「事実誤認」や「法解釈の誤り」にあると主張する場合に有効な手段です。

  1. 期限の確認:

    不支給決定通知書を受け取った日の翌日から3ヶ月以内という厳格な期限があります。 この期限を過ぎると、原則として審査請求はできなくなります。

  2. 請求先の確認:

    社会保険審査官(地方厚生局内)に対して行います。 提出先は、年金事務所で確認できます。

  3. 審査請求書の作成:

    不支給となった決定に対する不服の理由(なぜ年金機構の判断が誤っているのか)を、具体的な根拠、証拠(追加の診断書や客観的な資料)を添えて論理的に記述します。

💡 ポイント

審査請求では、元の申請時に提出できなかった新たな証拠や、決定理由を覆す医学的な意見書を提出することができます。 不支給通知書に書かれた内容を一つ一つ論破していくイメージです。

審査請求の戦略:診断書の見直し

等級非該当が理由である場合、審査請求の最も重要な戦略は、主治医に再度診断書を作成してもらい、元の診断書では伝わっていなかった障害の重さを補強することです。

  • 医師への再度の依頼:

    不支給通知書の内容を医師に共有し、「年金機構は〇〇という点が不十分だと判断した」と具体的に伝えます。 特に精神障害の場合、「日常生活能力の判定」や「援助の必要性」の欄を、実態に合わせて修正してもらうことが重要です。

  • 新たな検査データの追加:

    身体障害や内部障害の場合、障害認定日以降の症状悪化を示す新たな検査データや、以前の検査では示されなかった医学的な所見を補足資料として提出します。


再申請と再挑戦のタイミング

審査請求が難しそう、あるいは納付要件がネックとなっている場合は、「再申請」という選択肢を検討します。 再申請は、文字通り「もう一度、初めから申請し直すこと」です。

再申請を選択すべきケース

再申請は、以下のようなケースで有効です。

  • 初診日の証明に成功した場合:

    元の申請で証明できなかった初診日について、新たな客観的な証拠を見つけ、初診日を特定できた場合は、再申請が必須となります。

  • 病状が悪化した場合:

    不支給決定後、病状が明らかに悪化し、より重い等級の基準を満たすようになった場合は、現在の状態に基づいた診断書を作成し、再申請を行います。

  • 納付要件が改善した場合:

    初診日以降に年金保険料を納付し直したとしても、過去の納付要件は変わりません。 しかし、もし初診日自体が特定できていなかった場合、正しい初診日が判明することで納付要件を満たすことがあり、この場合も再申請となります。

再申請時の重要対策:失敗原因の徹底分析

再申請で失敗を繰り返さないためには、元の不支給理由を徹底的に分析し、対策を講じる必要があります。

  1. 病歴申立書の書き直し:

    元の申立書が抽象的であったり、日常生活の困難さが十分に表現されていなかったりした点を反省し、「援助が必要な具体的な場面」「体調の波」を詳細に記載し直します。

  2. 医師との関係再構築:

    元の診断書に不備があった場合、医師に制度を説明し、自身の生活状況を理解してもらうための時間を取ります。 信頼関係を築き、等級認定基準に沿った正確な診断書を作成してもらうことが、再申請成功の鍵です。

  3. 新しい証拠の収集:

    福祉サービスの利用記録、介護記録、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳の写しなど、公的な機関が認めた障害の事実を証明する客観的な資料をすべて集め、添付します。

✅ 成功のコツ

不支給決定通知書が届いたら、まずは通知書をすべてコピーし、社会保険労務士(社労士)に相談することです。 特に不服申立ては、社労士の専門知識が不可欠です。


不支給決定後のメンタルケアと相談窓口

障害年金の不支給決定は、申請者やご家族にとって大きな精神的負担となります。 手続きの見直しと並行して、心のケアと適切な相談先の確保が非常に重要です。

不支給決定による心理的影響とケア

申請手続きの労力、そして期待が裏切られたショックにより、うつ症状の悪化や、社会からの孤立感を感じる方が多くいらっしゃいます。

  • 感情を共有する:

    まずは、家族や信頼できる支援者に正直な気持ちを話すことが大切です。 感情を溜め込まず、ネガティブな気持ちを共有することで、孤立を防げます。

  • ピアサポートの活用:

    同じ障害や病気を持つ方同士が支え合う「ピアサポート」グループや、当事者会に参加することも有効です。 成功例や失敗談を聞くことで、次のステップへの勇気をもらえることがあります。

専門的な相談窓口の活用

見直しを進める上で、専門家の支援は不可欠です。

  • 社会保険労務士(社労士):

    不服申立てや再申請の法的な手続き、書類作成の戦略立案を代行・サポートしてくれる専門家です。 不支給理由の分析からサポートしてくれます。

  • 地域包括支援センター/相談支援事業所:

    手帳や福祉サービスの利用を含めた総合的な生活相談ができます。 年金と並行して、他の支援を確保するためのアドバイスをもらえます。

  • 年金事務所:

    納付要件や初診日に関する基礎的な情報照会や手続きの確認を無料で行えます。 不支給通知書を持って相談に行くと、なぜその決定になったかの説明を受けることができます。


まとめ

  • 障害年金が不支給となる主な理由は、保険料納付要件の不備、初診日の証明不足、障害等級の認定基準に該当しない(提出書類の不備)の3つです。
  • 不支給決定に不服がある場合は、通知書受領後3ヶ月以内に、新たな証拠を添えて審査請求(不服申立て)を行うことが公的な見直し手段です。
  • 等級非該当が理由の場合、元の診断書や病歴申立書を徹底的に見直し、日常生活の困難さを具体的かつ客観的に証明し直すことが、再申請成功の鍵となります。
  • 複雑な手続きと精神的な負担を軽減するため、不支給決定通知書が届き次第、社会保険労務士などの専門家に相談することが強く推奨されます。

阿部 菜摘

阿部 菜摘

あべ なつみ36
担当📚 実務経験 12
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士

社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。

大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。

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