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障害者の生活費を支える給付金(生活保護含む)

📖 約34✍️ 阿部 菜摘
障害者の生活費を支える給付金(生活保護含む)
障害者の生活費を支える公的支援は、「障害年金」「特別障害者手当」、そして「生活保護」の三本柱です。障害年金は、加入要件と障害等級に応じて支給される重要な権利であり、複雑な申請は社労士への相談が推奨されます。特別障害者手当は、重度障害を持つ方に上乗せされる福祉的手当ですが所得制限があります。生活保護は、年金や手当などの収入全てを活用しても最低生活費に満たない場合に、不足分を支給する最後のセーフティネットです。障害者加算もあり、年金受給までの「繋ぎ」としても有効です。これらの制度を正しく理解し、経済的不安を解消しましょう。

障害者の生活費を支える給付金(生活保護含む)

障害を持つ方々やそのご家族にとって、安定した生活を送るための経済的な基盤は、何よりも大切なものです。医療費や福祉サービス費、補装具費など、様々な支援制度がある一方で、日々の「生活費」そのものをどう賄っていくかという課題は、常に重くのしかかります。特に、就労が難しかったり、病状によって働くことが制限されたりする場合、公的な給付金や年金は、生活を維持するための生命線となります。

この記事では、障害を持つ方の生活費を直接的に支える重要な公的制度である、「障害年金」「特別障害者手当」といった各種給付金に加え、最後のセーフティネットである「生活保護制度」について、その概要と具体的な利用方法を詳しく解説します。これらの制度は互いに関連し合っており、それぞれの仕組みを理解し、適切に組み合わせることが、経済的な不安を解消する鍵となります。制度の正しい知識を身につけ、安心して生活できる環境を整えましょう。


障害年金制度の基本と受給要件

障害年金の種類と加入要件

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が出るようになった場合に、現役世代を含め、年齢にかかわらず受け取ることができる公的な年金です。障害年金には、以下の二種類があります。

  • 障害基礎年金:国民年金に加入している間、または20歳前や60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる間に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある方が対象です。
  • 障害厚生年金:厚生年金に加入している間に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある方が対象です。

受給するためには、初診日の前日までに保険料の納付要件を満たしていることが原則となります。ただし、20歳前の障害については、納付要件は問われません。

障害等級と支給額の目安

障害年金は、障害の状態に応じて定められた「障害等級」に基づいて支給されます。等級は1級、2級、3級(厚生年金のみ)に分かれています。

  1. 障害基礎年金:1級と2級のみが対象です。支給額は、等級と子の有無によって異なり、令和6年度の例では、1級が約102万円、2級が約81万円(年額)が目安です。
  2. 障害厚生年金:1級、2級、3級が対象です。基礎年金に加えて、報酬比例の年金が上乗せされます。3級は、厚生年金のみの支給となります。

等級の認定は、提出された診断書や病歴・就労状況等申立書などの書類に基づき、日本年金機構によって行われます。障害の状態によって年金額が大きく変わるため、診断書の記載内容が非常に重要となります。

20歳前障害と診断書の記載の重要性

先天性の障害や、20歳未満で初診日がある病気・けがによる障害は「20歳前障害」と呼ばれます。この場合、本人が年金保険料を納めていないため、保険料の納付要件は問われません。ただし、所得による支給制限が設けられている点が特徴です。

障害年金の申請において、最も重要で、かつ難しいのが「診断書の作成」です。医師に日常生活の困難さ就労への支障を正確に理解してもらい、それを診断書に反映させることが、適正な等級認定を受けるための最大の成功のコツです。抽象的な表現ではなく、具体的な活動の制限を医師に伝えましょう。


障害者手当の役割と受給資格

特別障害者手当の目的と対象者

特別障害者手当は、20歳以上で、日常生活において常に特別の介護を必要とする重度の障害を持つ方に支給される手当です。これは、福祉的な手当であり、年金とは異なります。

対象となるのは、概ね身体障害者手帳の1級・2級の一部療育手帳のA判定に相当するような、複数の重度障害が重複している方や、日常生活においてほぼ全介助が必要な状態の方です。支給額は、令和6年度で月額約27,980円(国の基準)です。この手当は、障害年金とは別に支給されます。

障害児福祉手当と経過的福祉手当

特別障害者手当と同様に、重度障害を持つ方を支援する手当には、以下のものがあります。

  • 障害児福祉手当20歳未満で、重度の障害があり、日常生活において常時の介護が必要な児童に支給されます(月額約15,690円)。
  • 経過的福祉手当:かつてあった制度の経過措置として、特定の要件を満たす方に支給されている手当です。現在、新規の申請はできません。

これらの手当には、所得制限が設けられています。特に、手当を受け取る本人だけでなく、扶養義務者(親や配偶者)の所得も審査の対象となるため、世帯全体の収入状況を確認する必要があります。

地方自治体独自の福祉手当と加算

国が定める特別障害者手当や障害児福祉手当とは別に、多くの地方自治体(都道府県や市区町村)が、独自の福祉手当を設けています。これは、国の手当の対象とならない方や、国の手当に上乗せする形で支給されることがあります。

支給額は自治体によって様々ですが、月額数千円程度が一般的です。例えば、「〇〇市心身障害者福祉手当」といった名称で実施されています。これらの自治体独自の制度は、居住地の市町村によって情報が大きく異なるため、福祉担当課に直接問い合わせることが最も確実です。


最後のセーフティネット「生活保護制度」

生活保護の原則と補足性

生活保護制度は、憲法第25条の理念に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための最後のセーフティネットです。障害を持つ方にとって、障害年金や手当などを受けてもなお、生活費が不足する場合に利用を検討する制度となります。

生活保護の原則は「補足性の原理」です。これは、資産や能力(預貯金、不動産、働ける能力など)、そしてあらゆる他の公的制度(障害年金、各種手当、医療保険など)を全て活用した上で、それでもなお生活が困難な場合に、不足分を保護費として支給するというものです。障害年金や手当は、生活保護費から差し引かれます。

障害者世帯における生活保護の特別加算

生活保護には、障害を持つ方のために特別な配慮がなされています。それが「障害者加算」です。これは、障害を持つ方が、障害特有のニーズ(通院費、補装具の維持費、介護用品費など)によって一般の生活費以上に出費が必要となることを考慮し、上乗せして支給されるものです。

障害者加算の対象となるのは、身体障害者手帳の1級・2級、または精神障害者保健福祉手帳の1級・2級、あるいは知的障害の程度が重度・中度と認定された方などです。加算額は障害の程度に応じて異なり、生活費の総額を底上げしてくれます。

申請の注意点:扶養照会と資産の保有

生活保護の申請には、いくつかのハードルがあります。

  • 扶養照会:申請者が生活に困窮している場合、三親等内の親族(親、子、兄弟姉妹など)に対して、扶養の可否について福祉事務所から問い合わせ(扶養照会)が行われます。ただし、DVや虐待の経緯がある場合など、照会が困難な事情がある場合は、照会を控えることができます。
  • 資産の保有:原則として、預貯金や生活に利用していない不動産、自動車などは処分して、生活費に充てる必要があります。ただし、障害者が通勤や通院に不可欠な自動車など、例外的に保有が認められる場合があります。

生活保護の相談は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所の窓口(生活保護担当課)へ行います。


障害年金と生活保護の調整と併給の原則

収入認定の原則と年金の扱い

生活保護制度において、障害年金や各種手当は「収入」として認定されます。これは、生活保護が「補足性の原理」に基づいており、他の公的制度の給付を全て活用することが前提となっているためです。

具体的には、まず国が定める最低生活費を計算し、そこから障害年金や手当などの収入を差し引きます。この差し引いた後の不足額が、生活保護費として支給されます。つまり、障害年金を受け取っているからといって生活保護が受けられないわけではなく、保護費の額が調整されるということになります。

障害年金の方が有利なケースが多い理由

多くの障害者世帯にとって、障害年金を満額受給できる状況の方が、生活保護を受けるよりも経済的・精神的に有利となることが多いです。

  • 資産保有の自由度:障害年金のみで生活する場合、資産保有や就労に関する厳格な制限を受けません。
  • 給付額の安定性:障害年金は物価スライド等で安定しており、毎年生活保護の基準見直しに左右されることがありません。
  • 精神的な独立性:年金は「権利」として得られるものであり、生活保護の「補足性」とは異なり、プライバシーの保護や心理的な負担が少ないという側面があります。

まずは障害年金と各種手当の受給を確立し、それでも足りない場合に生活保護を補足的に活用するというのが、賢明な戦略です。

実例:年金と生活保護の組み合わせによる支援

「うつ病で働くことができなくなったAさんは、当初、収入が全くなく生活保護の申請をしました。その後、障害厚生年金2級の受給が決定し、月約15万円の年金を受け取れるようになりました。これにより、Aさんの最低生活費(約13万円+障害者加算)を年金収入が上回ったため、生活保護は停止となりました。しかし、年金決定までの間、生活保護が生活費を支えてくれたことで、Aさんは安心して療養することができました。このように、年金が決定するまでの繋ぎとして、生活保護制度は非常に有効です。」

— 福祉事務所の相談員

年金受給決定までには時間がかかるため、その間の生活費を確保するための手段として、生活保護制度を恐れずに活用することが重要です。


申請手続きの成功のコツと相談窓口

障害年金申請の専門家(社労士)の活用

障害年金の申請手続きは、書類が多く、専門的な知識が必要で、非常に複雑です。特に、初診日の証明や診断書の記載内容のチェックなど、専門的な判断が成功を左右します。

そこで、障害年金に特化した社会保険労務士(社労士)に依頼することを強く推奨します。社労士は、書類作成の代行、医療機関との連絡調整、年金事務所への提出など、一連の手続きを代行してくれます。費用はかかりますが、不支給のリスクを減らし、適正な等級での受給につながる可能性が高まります。

生活保護・手当の相談窓口と連携

各種給付金・手当の申請窓口は、制度によって異なります。

  • 障害年金年金事務所またはお住まいの市区町村の年金担当窓口
  • 特別障害者手当・障害児福祉手当お住まいの市区町村の福祉担当課
  • 生活保護お住まいの地域を管轄する福祉事務所(生活保護担当課)

これらの窓口で相談する際は、現在受給している年金や手当の情報を全て正確に伝えることが重要です。そうすることで、担当職員が制度間の調整を含めた最適なアドバイスをしてくれます。

次のアクションへの具体的な提案

生活の経済的な基盤を固めるための、具体的な次の一歩を提案します。

  1. 年金の受給資格確認:障害を持つご本人またはご家族は、まず障害年金の受給資格があるかどうかを、年金事務所で確認しましょう。特に初診日の確定が重要です。
  2. 福祉手当の申請特別障害者手当障害児福祉手当の所得制限などを確認し、受給資格を満たしている場合は、市区町村の福祉担当課へ申請しましょう。
  3. 生活保護の利用検討:年金や手当だけでは最低限度の生活費が不足する場合は、遠慮せずに福祉事務所へ生活保護の相談に行きましょう。

「お金の心配」は、病状の悪化やご家族のストレスにつながります。適切な公的支援を活用して、安心できる生活を実現してください。


まとめ

障害者の生活費を支える公的な給付金には、障害年金特別障害者手当、そして最後のセーフティネットである生活保護制度があります。

  • 障害年金は、障害の程度に応じた経済的な権利であり、まずはその受給を確立することが重要です。複雑な申請は社労士の活用を検討しましょう。
  • 特別障害者手当は、重度障害者に上乗せして支給される福祉的な手当ですが、所得制限があります。
  • 生活保護は、他の収入で最低生活費に満たない場合に、不足分が支給される制度であり、障害者加算によって生活水準が確保されます。

これらの制度を適切に組み合わせ、経済的な不安を解消し、安心して療養・生活できる環境を整えましょう。

阿部 菜摘

阿部 菜摘

あべ なつみ36
担当📚 実務経験 12
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士

社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。

大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

🎨 趣味・特技

資格勉強、温泉巡り

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障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題

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