交通費・移動支援に使える助成金まとめ

交通費・移動支援に使える助成金まとめ
病院への通院、福祉サービスの利用、そして何より社会とのつながりを保つための外出は、私たちにとって欠かせないものです。しかし、障害を持つ方やそのご家族にとって、移動に伴う交通費や特別な支援にかかる費用は、日常的な負担となりがちです。特に、車いすやストレッチャーを利用する場合、公共交通機関の利用が難しく、福祉タクシーなどの費用が高額になることも少なくありません。移動の経済的な不安が、社会参加へのハードルとなってしまうのは非常にもったいないことです。
この記事では、障害を持つ方の交通費や移動にかかる費用を支援する公的制度を、国や自治体の制度、そして割引制度に分けて徹底的に解説します。具体的には、福祉サービスとしての移動支援、公共交通機関の割引、そして車両の購入や改造に関する助成金まで、幅広くご紹介します。この情報を活用することで、移動の経済的な負担を軽減し、より自由で活動的な生活を実現するための具体的な方法を見つけられるでしょう。
障害者総合支援法に基づく「移動支援」サービス
移動支援(地域生活支援事業)の目的と対象者
障害を持つ方の移動を支援する制度の中で、最も実用性が高いのが、障害者総合支援法に基づく「移動支援」です。このサービスは、障害者が単独で外出することが困難な場合に、ヘルパー(移動支援従業者)が付き添い、外出を支援するものです。これにより、社会参加や地域生活の維持を目的とした外出が可能になります。
移動支援は、市町村が実施主体となる「地域生活支援事業」の一つです。そのため、制度の詳細や対象者の範囲(手帳の等級など)、利用できる回数や時間数、そして費用負担の仕組みは、市区町村によって異なります。お住まいの地域の福祉担当課に確認することが必要不可欠です。
移動支援で利用できる外出の範囲と費用負担
移動支援の対象となる外出は、社会生活上必要不可欠な外出や余暇活動など、比較的広範囲にわたります。具体的には、役所への手続き、金融機関での用事、散歩やレジャー、冠婚葬祭などが含まれます。ただし、通勤や営業活動など、経済活動に関する外出は基本的に対象外です。
このサービスの費用負担は、原則として費用の1割を自己負担することになっています。しかし、障害者総合支援サービスの他のサービスと同様に、世帯の所得状況に応じて月ごとの上限額が設定されています(低所得世帯は0円、一般世帯は概ね37,200円など)。この上限額を超える利用料は公費で賄われるため、高頻度で利用しても安心です。
行動援護・同行援護との違い
移動支援と似たサービスに、「行動援護」や「同行援護」といった国の障害福祉サービスがあります。これらは、より専門性の高い支援を必要とする方を対象としています。
- 同行援護:視覚障害により移動に著しい困難がある方を対象とし、移動の安全確保や代読などの支援を行います。
- 行動援護:知的障害や精神障害により、行動上著しい困難があり、危険回避などの援助が必要な方を対象とします。
移動支援は、これら国のサービスに該当しない、幅広い外出ニーズに対応するための地域独自のサービスとして位置づけられています。どのサービスを利用できるかは、障害支援区分や個別支援計画によって決定されます。
公共交通機関・タクシーの運賃割引制度
JR・私鉄運賃の割引と手帳の提示
障害を持つ方が最も日常的に利用できる助成として、公共交通機関の運賃割引制度があります。これは、障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳)を提示することで適用されます。
JRや多くの私鉄では、手帳の等級に応じて、割引が適用されます。特に、第一種身体障害者または第一種知的障害者(療育手帳A判定など)の場合、本人だけでなく、介護者(付き添い)も割引の対象となることが大きなポイントです。割引率は概ね5割(半額)です。割引を受けるためには、乗車券購入時や改札通過時に、手帳を提示することを忘れないようにしましょう。
バス運賃・タクシー運賃の割引利用
バスやタクシーといった、より身近な交通手段でも割引が適用されます。
- 路線バス:多くのバス会社で、障害者手帳を提示することで、本人と介護者1名まで5割引が適用されます。
- タクシー:乗車時に手帳を提示することで、運賃の1割引が適用されます。これは、身体障害者手帳、療育手帳のどちらでも適用されますが、事業者によっては割引がない場合もあります。
タクシーの割引率はJRやバスに比べて低いですが、福祉タクシーの費用が高額になる場合があるため、少しでも負担を軽減するために活用すべきです。割引制度は、即座に利用できる最も分かりやすい支援策です。
航空運賃の割引と事前予約の重要性
遠方への移動や旅行の際には、航空機の利用も選択肢に入ります。国内の航空会社では、障害を持つ方(障害者手帳所持者)を対象とした「身体障害者割引」運賃を提供しています。割引率は路線や時期によって異なりますが、普通運賃の2~5割引き程度になることが多いです。
航空券の予約時には、この割引運賃を希望する旨を伝え、搭乗当日には必ず手帳を提示する必要があります。また、車いすの搭載や座席に関する配慮が必要な場合は、できるだけ早い段階で航空会社に連絡し、必要なサポートを手配してもらうことが重要です。
車両購入・改造に関する助成金と税制優遇
自動車税・軽自動車税の減免措置
自家用車を所有し、移動手段としている障害者世帯にとって、最も大きな経済的支援の一つが自動車税(または軽自動車税)の減免です。これは、以下の条件を満たす場合に、税金が免除または軽減される制度です。
- 障害者本人が所有し、運転する場合。
- 障害者と生計を一にする家族が所有し、もっぱら障害者のために運転する場合。
減免を受けるためには、手帳の等級や障害の種類、そして車両の排気量などの要件があります。申請には期限が設けられていることが多いため(購入後や年度初めなど)、必ずお住まいの都道府県の税務事務所に確認し、手続きを忘れないようにしましょう。
自動車改造費用の助成制度(自治体独自)
重度の身体障害を持つ方が自分で運転するために、車両を特殊に改造する必要がある場合(例:手動運転装置の取り付けなど)、その費用の一部を助成する制度が、多くの地方自治体(市区町村)で設けられています。
この助成は、障害者の社会参加と自立を促すことを目的としており、助成額には上限(数十万円程度)が設定されています。ただし、自治体によっては所得制限があったり、すでに車を所有している期間が要件となったりする場合もあります。改造前に必ず申請と承認を受けることが必須であり、事後の申請は認められません。
⚠️ 注意
改造費助成制度は、自治体の独自事業であるため、隣接する市町村でも制度の有無や内容が全く異なることがあります。まずは、お住まいの市区町村の福祉担当課に相談しましょう。
駐車禁止除外指定車標章の取得
直接的な助成金ではありませんが、移動の利便性を高める重要な支援として「駐車禁止除外指定車標章」があります。これは、歩行が困難な障害を持つ方が、やむを得ない場合に駐車禁止区域に駐車することを特例として認めるための標章です。
取得には、身体障害者手帳の交付を受けており、歩行困難な一定の等級(主に下肢または体幹機能障害)にあることが要件です。この標章を取得することで、通院や福祉サービスの利用、短時間の買い物など、移動の際の利便性が格段に向上します。申請は、各都道府県の警察署で行います。
福祉タクシー・リフト付き車両の利用支援
福祉タクシー利用券の交付(自治体独自)
車いすを利用している方など、通常のタクシーや公共交通機関の利用が困難な重度障害者向けに、多くの自治体が「福祉タクシー利用券(助成券)」を交付しています。これは、タクシー料金の一部を自治体が負担する現物給付に近い助成です。
利用券は、年間〇〇枚、または〇〇円分などと定められており、利用時にはこの券を運賃に充当します。対象者は、重度の身体障害者や療育手帳の重度(A判定)の方などに限定されることが多いです。この制度は、通院や社会活動の支援として非常に有効で、福祉タクシーの割高な運賃を補填してくれます。
運転免許取得費用の一部助成
重度障害を持つ方が、自分で運転することを希望する場合、特別な指導が必要となるため、運転免許取得費用が高額になることがあります。この費用の一部を助成する制度も、自治体独自で用意されている場合があります。
助成の目的は、自動車の運転によって社会参加や就労の機会を拡大することです。助成を受けるためには、事前に相談し、指定された自動車教習所で取得する必要があるなど、要件が設けられています。まずは、お住まいの自治体の福祉担当課で、この制度の有無を確認してみましょう。
実例:通院時の負担を減らした福祉タクシー券の活用
「脊髄損傷で車いす生活を送る母の定期的な通院は、毎回福祉タクシーを利用するため、費用が大きな負担でした。しかし、市の福祉タクシー利用券(年間36,000円分)を申請したところ、月に約3,000円の負担軽減となり、おかげで通院費用の心配が減りました。この利用券があることで、母も『気兼ねなく病院に行ける』と安心しています。利用券の申請は簡単で、福祉担当課で手帳を見せるだけでした。」
— 重度身体障害者のご家族
このように、福祉タクシー利用券は、日々の生活に必要な移動の経済的なハードルを大きく下げる、非常に効果的な助成金です。
医療機関・施設に通う交通費の支援と注意点
施設・デイサービス利用時の送迎サービス
障害福祉サービス事業所やデイサービスセンター、特別支援学校などでは、多くの場合、送迎サービスを提供しています。これは、自宅と施設間の移動を支援するもので、特に重度な障害を持つ方にとっては不可欠なサービスです。
送迎サービスにかかる費用は、サービスの利用料に含まれているか、または別途少額の実費として徴収されることが一般的です。これは、直接的な助成金ではありませんが、交通費の心配をなくし、安定的なサービス利用を可能にする、実質的な支援です。利用の可否や費用については、各事業所や学校に確認が必要です。
通院交通費の助成制度(自治体独自)
一部の地方自治体では、通院に特化した交通費の助成制度を独自に実施している場合があります。これは、主に、重度の障害者や難病患者が、長期にわたり遠方の専門病院に通院しなければならない場合の経済的な負担を軽減するために設けられています。
助成の対象となる交通手段や支給額には自治体ごとに差があり、公共交通機関の費用の一部や、自家用車の燃料費の一部が補助されることがあります。この制度も、福祉担当課で確認が必要です。国の制度ではカバーされない、地域のニーズに合わせたきめ細やかな支援として注目されています。
よくある質問:通所施設の工賃と交通費
就労継続支援B型事業所などに通所している障害者の方から、「通所にかかる交通費は工賃から差し引かれるのか?」という質問をよく受けます。これは、事業所によって対応が異なりますが、多くの場合、工賃から交通費が差し引かれる、または交通費の支給がないケースがあります。
しかし、中には交通費を別途支給している事業所もありますので、契約前に必ず確認することが重要です。また、自治体によっては、福祉サービスの利用に伴う交通費を助成する制度を設けている場合もありますので、この点も併せて福祉担当課に相談してみましょう。
申請手続きの成功のコツと相談窓口
申請の入り口:障害支援区分と個別支援計画
移動支援サービスや、それに伴う福祉タクシー利用券など、多くの移動支援に関わる助成やサービスは、障害支援区分(必要な支援の度合いを示す区分)や個別支援計画に基づいて決定されます。サービス利用の申請は、まず市区町村の福祉担当課で行い、相談支援専門員と連携して、ご自身の移動ニーズを反映したサービス等利用計画案を作成してもらうことが必要です。
特に、なぜその移動が必要なのか、単独での移動がいかに困難かという点を具体的に伝えることが、移動支援サービスの支給決定をスムーズにするための鍵となります。
相談窓口:地域生活支援事業担当課と相談支援事業所
移動支援やそれに付随する地域独自の助成金に関する情報は、以下の窓口で得られます。
- 市区町村の地域生活支援事業担当課:福祉タクシー利用券、自動車改造費助成、通院交通費助成など、地域独自の助成制度について最も詳しい窓口です。
- 相談支援事業所:移動支援(ヘルパーの利用)のサービス利用計画を作成し、必要なサービスをコーディネートしてくれます。
- 公共交通機関の窓口:JRや航空会社、バス会社などに直接問い合わせることで、最新の割引運賃や介助サービスに関する情報を得られます。
一つの窓口で全ての情報が得られるわけではないため、各窓口を連携させて情報収集することが成功のコツです。
次のアクションへの具体的な提案
移動の負担軽減に向けた、具体的な次の一歩を提案します。
- 手帳の活用:今一度、お手持ちの障害者手帳の等級が交通機関の割引適用範囲内であるかを確認し、日常の移動時に必ず提示するように習慣づけましょう。
- 自治体独自の助成金の確認:お住まいの市区町村の福祉担当課に連絡し、福祉タクシー利用券や自動車改造費助成などの独自の助成制度の有無と、その要件を確認してください。
- 移動支援の相談:単独での外出に不安がある方は、相談支援事業所に連絡を取り、移動支援サービスの利用を検討するための相談を始めましょう。
移動の支援は、社会との接点を増やすための大切な支援です。使える制度を一つも見逃さず、ご自身の行動範囲を広げてください。
まとめ
障害を持つ方の移動を経済的に支援する制度は、割引制度から福祉サービス、車両購入・改造補助まで多岐にわたります。
- 最も身近な支援は、障害者手帳の提示による公共交通機関の運賃割引(最大5割引)です。
- 自治体が独自に実施する福祉タクシー利用券や自動車改造費助成は、重度障害者の移動の質を向上させる重要な助成金です。
- ヘルパーが付き添う移動支援サービスは、障害者総合支援法に基づくサービスで、費用の自己負担は原則1割(所得に応じた上限あり)であり、社会参加を力強くサポートします。
これらの制度を組み合わせて活用することで、移動の負担を最小限に抑え、より活動的な生活を目指しましょう。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
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