暑さ・寒さが苦手な人の体調管理テクニック

暑さ・寒さが苦手な人の体調管理テクニック
「夏は体がだるくて動けない、冬は手足の冷えがひどい」「季節の変わり目に必ず体調を崩す」—人一倍、暑さや寒さといった気温の変化に敏感で、つらい思いをしていませんか。
温度変化への過敏さは、単なる「わがまま」ではなく、自律神経の乱れや感覚特性から来る、深刻な体調不良のサインであることが多くあります。
この記事では、なぜ温度変化が苦手なのかというメカニズムを理解し、暑い夏と寒い冬を快適に乗り切るための、具体的な「温度管理(サーマル・マネジメント)」のテクニックを、衣食住の観点から徹底的に解説します。
体調不良を予防し、季節の移り変わりの中でも安定して活動するための、あなたに合った対策を見つけていきましょう。
暑さ・寒さが苦手な原因とメカニズム
気温の変化に対する苦手意識の背景には、体温調節を司る自律神経や、感覚情報処理の特性が大きく関わっています。
自律神経による「体温調節」の不全
人間の体には、外部の温度が変わっても体温を一定に保つための体温調節機能が備わっています。これは自律神経がコントロールしています。
- 暑い時:汗腺を開き、血管を拡張させて熱を逃がす(副交感神経優位)。
- 寒い時:血管を収縮させ、筋肉を震わせて熱を生成する(交感神経優位)。
しかし、自律神経が乱れていると、この切り替えがスムーズにできず、暑いのに汗をかけなかったり(熱がこもる)、寒いのに体が温まらなかったりする状態に陥ります。
感覚特性と「微細な温度変化」への過敏
発達障害(特にASD)を持つ方の中には、感覚過敏の一種として、体温や室温の微細な変化を非当事者以上に強く感じ取ってしまう特性があります。
例えば、オフィスで誰かが開けた窓から入る一瞬の冷気や、エアコンの吹き出し口から当たるわずかな風など、通常は無視できるはずの刺激が、強い不快感や痛みとして脳に伝わります。
これにより、常に不快な刺激にさらされている状態となり、交感神経が興奮し、体調を崩しやすくなります。
「体温計」に現れない精神的疲労
極端な暑さや寒さは、身体的な疲労だけでなく、脳にも大きな負担をかけます。
体温調節に大きなエネルギーを使うことで、脳のワーキングメモリ(作業記憶)が消費され、集中力の低下、イライラ、そして強い倦怠感といった精神的な不調として現れます。
特に、夏の猛暑の中で適応しようと無理をすると、熱中症だけでなく、うつ症状や不安症状の悪化につながるリスクもあります。
夏の暑さ対策:熱中症と疲労を防ぐ
日本の夏は、自律神経が乱れやすい方にとって非常に過酷です。熱中症を防ぎ、夏の慢性疲労を軽減するための具体的な対策を講じましょう。
「深部体温」を下げる冷却テクニック
暑さ対策の鍵は、体の表面ではなく、深部体温(体の中心の温度)を下げることです。
- 冷却スポット:太い血管が通っている首の裏、脇の下、股の付け根を、保冷剤や冷たいタオルで冷やす。
- 涼しい場所の確保:体調が悪くなる前に、必ずコンビニや図書館など、涼しい場所に移動する。
- 水分の摂取:喉が渇く前に、こまめに水分補給(できれば塩分も含む経口補水液など)を行う。
これらの冷却テクニックにより、体温が急激に上昇するのを防ぎ、自律神経の過負荷を軽減できます。
衣類による「皮膚感覚」の調整
汗をかいた時の服の張り付きや、化繊のチクチク感が苦手な触覚過敏を持つ方は、衣類の素材選びが重要です。
💡 ポイント
- 素材:吸湿速乾性に優れ、肌触りの良い天然素材(綿100%など)や、接触冷感素材のインナーを選ぶ。
- 圧迫:体を締め付ける下着や、硬いウエストバンドは避け、ゆったりとしたシルエットの服を選ぶ。
不快な皮膚感覚を最小限にすることで、無意識の緊張状態を解き、自律神経の安定につながります。
夏の「予防的な休息」と活動時間の調整
夏の暑さの中で無理に活動を続けると、一度深部体温が上がってしまうと回復に時間がかかります。
日中の活動は、最も気温が高くなる午前10時から午後3時の間を避け、早朝や夕方の涼しい時間帯に移行しましょう。
職場や学校での合理的配慮として、最も暑い時間帯は休憩室で休ませてもらう、または在宅勤務に切り替えることを検討してください。
冬の寒さ対策:冷えと自律神経の乱れを防ぐ
冬の寒さは、血管を収縮させ、交感神経を優位にし、手足の冷えや慢性的な緊張型頭痛を引き起こします。体を効率よく温め、自律神経の安定を保ちましょう。
「三首」を温める防寒の鉄則
体を効率よく温めるためには、熱を逃がしやすい「三首」(首、手首、足首)を重点的に温めることが鉄則です。
- 首:マフラーやネックウォーマーでしっかり覆い、温かい血液を脳に送る。
- 手首:手袋を着用し、指先への血流を確保する。
- 足首:厚手の靴下やレッグウォーマーで冷えを防ぐ。特に寝る時の靴下は、締め付けすぎないゆったりしたものを選ぶ。
三首を温めることで、全身の血行が改善され、冷えによる自律神経の過緊張を和らげることができます。
「温活」と内側から体を温める食事
体を内側から温める「温活」を意識した食事を取り入れましょう。
| 食材 | 温活への効果 |
|---|---|
| 生姜(ショウガ) | 体を温める代表的な食材。紅茶や料理に積極的に使用する。 |
| 根菜類 | ゴボウ、ニンジン、レンコンなど、体を温める作用がある。 |
| 発酵食品 | 味噌、納豆、キムチなど、腸内環境を整え、基礎代謝を高める。 |
ただし、熱い飲み物を一気に飲むと、一時的に体温が上がっても、その後の発汗で体温が下がりやすくなるため、ゆっくりと時間をかけて飲むようにしましょう。
「入浴」による強制的なリラックス
寒い冬こそ、毎日欠かさず入浴し、体の芯から温める習慣をつけましょう。
⚠️ 注意
熱すぎるお湯(42℃以上)は、交感神経を刺激してしまうため、38℃〜40℃程度のぬるめのお湯に、10分〜15分かけてゆっくり浸かるのが理想です。入浴剤やアロマオイルでリラックス効果を高めましょう。
環境調整と福祉サービスの活用
個人での対策に限界がある場合は、職場や公共の場での環境調整を求めたり、福祉サービスを活用したりして、体調管理をサポートしてもらいましょう。
職場・学校での合理的配慮の依頼
極端な温度変化への苦手意識は、体調管理上、合理的配慮の対象となり得ます。
- 座席の調整:エアコンや窓の近く、頻繁に扉が開く場所など、温度変化の激しい場所から離れた席に配置してもらう。
- パーソナル温度計:デスクに温度計を設置し、自分だけが許容できる温度範囲内でエアコンの調整を相談できるようにする。
- 防寒具の許可:職場でブランケットやヒーターなどの個人用防寒・冷房アイテムの使用を許可してもらう。
申請は、障害者就業・生活支援センターや産業医を通して行うのがスムーズです。
福祉サービスを活用した生活の安定
暑さ・寒さで体調を崩しやすい方は、季節の変わり目に生活リズムが乱れがちです。
自立訓練(生活訓練)事業所などでは、体温調節を含むセルフケアスキルの習得や、規則正しい生活リズムの構築をサポートしてくれます。
また、ヘルパーによる居宅介護サービスを利用し、体調不良時の家事や食事作りをサポートしてもらうことで、休息の時間を確保することも重要です。
「体調記録」による苦手パターンの把握
自分の苦手な温度や、体調を崩すパターンを客観的に把握するために、「体調記録(環境要因を含む)」をつけましょう。
記録には、以下の項目を含めます。
- その日の気温・湿度(天気予報アプリなどを活用)
- 具体的な不調(頭痛、めまい、倦怠感、冷えなど)
- 着用した衣類の種類(例:薄着すぎた、厚着すぎたなど)
この記録により、自分の「最適温度ゾーン」を特定し、季節に応じた適切な対策を講じられるようになります。
よくある質問(FAQ)と相談窓口リスト
暑さ・寒さの苦手意識に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。
Q. 寒暖差アレルギーとは何ですか?
A. 寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)は、7℃以上の急激な寒暖差に体がさらされた時に、自律神経が混乱し、鼻水やくしゃみといったアレルギーのような症状が出る状態です。
治療には、自律神経を整える生活習慣と、耳鼻咽喉科での薬物療法が有効です。日頃から服の着脱で寒暖差を小さくする工夫をしましょう。
Q. 夏、汗をかくのが苦手で困っています。
A. 汗のベタつきが苦手な触覚過敏の場合、汗をかき始める前に、皮膚に直接当てるクールスプレーや冷感タオルで、汗をかくのを遅らせる対策を試みましょう。
また、吸水速乾性の高い機能性インナーを着用し、汗をかいてもすぐにサラサラの状態を保つことで、不快感を軽減できます。
Q. 家族(支援者)としてどう配慮すべきですか?
A. 暑さや寒さに対する当事者の訴えを、「大げさだ」と否定しないことが最も重要です。
「つらい」という訴えは、自律神経が限界を超えているサインであることを理解し、室温設定、換気、服装の選択など、具体的な環境調整を本人の感覚に合わせて柔軟に行ってください。
まとめ
- 暑さ・寒さの苦手意識は、自律神経の体温調節機能の不全や、感覚過敏が原因です。
- 夏の対策は、首・脇の下など「三首」の冷却と、水分補給、そして最も暑い時間帯の予防的休息が鍵です。
- 冬の対策は、三首を温める防寒と、ぬるめの入浴や温活食材で体を内側から温めることが自律神経の安定につながります。
温度変化が苦手な体質を改善するには時間がかかりますが、一つずつ具体的な対策を積み重ねることで、心と体の安定度は必ず高まります。
まずは、今日から「首、手首、足首の三首を常に温める(または冷やす)工夫」を意識して、日々の服装を調整してみるという、具体的な一歩から始めてみましょう。
主な相談窓口・参考情報
- 心療内科・精神科: 自律神経失調症や寒暖差アレルギーに関する相談、生活指導。
- 障害者就業・生活支援センター: 職場での温度管理に関する合理的配慮の依頼支援。
- 自立訓練(生活訓練)事業所: セルフケアスキルや規則正しい生活リズム構築のサポート。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
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