福祉施設・サービス付き住宅の選び方と注意点

自宅での生活が難しくなったり、将来的な見守りや介護が必要になったりした場合、「施設や住宅への入居」は避けて通れない選択肢となります。しかし、障害を持つ方のために用意されている住まいには、「グループホーム(共同生活援助)」や「障害者支援施設」といった福祉施設に加え、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」など、さまざまな種類があり、その違いや選び方は非常に複雑です。
ご家族や支援者の方にとって、大切な方が「その人らしく、最期まで安心できる」住まいを見つけることは、最大の願いでしょう。しかし、施設選びを誤ると、必要な支援が受けられなかったり、費用負担が大きくなったり、住環境の変化によるストレスが生じたりするリスクもあります。
この記事では、障害者の方が利用できる主な施設・住宅の種類を明確にし、それぞれの特徴と費用、そして入居を検討する際に必ずチェックすべき具体的な注意点を詳しく解説します。多岐にわたる選択肢の中から、ご本人にとって最も快適で安全な「終の棲家」を見つけるための羅針盤として、ぜひご活用ください。
施設選びの基本:3つの住居タイプの理解
タイプ①:地域での自立を支える「グループホーム」
グループホーム(共同生活援助)は、障害を持つ方が少人数で共同生活を送りながら、世話人や生活支援員の支援を受けて生活する、最も一般的な地域生活の拠点です。これは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。
- 対象者:主に知的障害、精神障害を持つ方。近年は身体障害を持つ方に対応したホームも増えています。
- 提供される支援:食事の提供、服薬管理、金銭管理の助言、緊急時の対応、生活相談など、地域での自立した生活を目的とした支援です。
- 費用の構造:家賃、食費、光熱費などが実費負担となりますが、サービス利用料の9割は公費で賄われます(原則)。また、低所得者には家賃補助(特定障害者特別給付)が適用される場合があります。
グループホームは、プライバシーを確保しつつ、必要な支援を継続的に受けられるという点で、地域移行や一人暮らしの練習にも適しています。
タイプ②:終身的な支援を提供する「障害者支援施設」
障害者支援施設(旧入所施設)は、常時介護や医療的ケアが必要な方、強度行動障害などにより居宅生活が難しい方に対して、終身的な支援を提供する場所です。
- 対象者:主に障害支援区分4~6の重度の障害を持つ方や、常に医学的管理が必要な方です。
- 提供される支援:入浴、排泄、食事などの生活介護に加え、日中活動の場(生産活動や創作活動)の提供、機能訓練、医療的な支援などが一体的に行われます。
- 費用の構造:施設利用料のほとんどが公費で賄われますが、食費、光熱水費、日用品費などは実費負担となります。低所得者は減免制度が適用されます。
入所施設は、医療や介護が充実している反面、集団生活となるため、個人の自由度やプライバシーの確保については事前に確認が必要です。
タイプ③:高齢障害者も利用できる「サ高住・特定施設」
65歳以上の高齢障害者、または将来的な加齢を考慮する方は、介護保険法に基づく高齢者向け住宅・施設も選択肢に入ります。特に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や介護付き有料老人ホーム(特定施設)は、身体介護や医療連携が充実しています。
サ高住は、比較的自由度の高い賃貸契約を基本とし、安否確認や生活相談などのサービスが提供されます。特定施設では、施設の職員が介護サービスを提供するため、外部の事業所との契約が不要です。
これらの高齢者向け施設を選ぶ際は、「障害者総合支援法のサービス(訪問系など)」の併用が可能かどうかを、事前に施設側に書面で確認することが極めて重要です。
入居前に確認すべき5つの重要チェックリスト
チェック①:支援体制と職員の専門性
提供されるサービス内容だけでなく、「誰が、どのような資格を持って、どのような態度で支援してくれるか」を確認することが、質の高い生活を送るための鍵です。
- 職員配置:昼夜間の職員の最低配置基準は満たしているか、また夜間・休日の緊急時に十分な人数の職員が常駐・待機しているかを確認しましょう。
- 専門資格:理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、看護師、強度行動障害支援者養成研修修了者など、ご本人のニーズに合わせた専門職が配置されているかを確認します。
- 支援計画:個別支援計画が、ご本人やご家族の意向を十分に反映しているか、また定期的に見直しが行われているかを確認しましょう。
見学時に職員の利用者への接し方や、支援記録の確認を依頼することで、施設の雰囲気を掴むことができます。
チェック②:医療連携と緊急時の対応フロー
特に高齢障害者や、慢性疾患を持つ方にとって、医療的なバックアップ体制は施設選びの最重要項目です。
- 協力医療機関:協力病院や診療所が明確に定められているか、また訪問診療や往診に対応しているかを確認します。
- 看護師の配置:看護師が常駐している時間帯や、インスリン注射、経管栄養(胃ろう)などの医療的ケアに対応可能かを確認します。
- 緊急時の搬送:夜間や休日に体調が急変した場合、どのような手順で、何分以内に医療機関への搬送が行われるのか、具体的なフローを確認しましょう。
施設によっては、提携する医療機関が遠い場合もありますので、地理的な条件もあわせてチェックが必要です。
チェック③:費用体系と将来的な料金変動リスク
施設・住宅は、長期的な居住を前提とするため、費用体系の透明性と将来的な費用変動リスクを理解しておく必要があります。
特に有料老人ホームでは、入居一時金(償却期間の確認)、月額利用料のほかに、個別の介護サービス費がかかる場合があります。グループホームでも、家賃や食費は物価変動により値上がりする可能性があります。契約書を確認し、どのような場合に料金が改定されるのかを明確にしておきましょう。
⚠️ 注意
契約する前に、提示されたすべての費用(初期費用、月額費用、追加費用)を詳細に書き出し、想定外の出費がないかをチェックリストで確認しましょう。不明点があれば、必ず書面で回答を求め、納得してから契約してください。
入居後の生活の質(QOL)を高める工夫
工夫①:プライバシーと個人の尊厳の確保
施設での集団生活においても、個人の尊厳とプライバシーが守られているかは、生活の質(QOL)に直結します。
- 個室の有無:個室が提供されているか、また個室に鍵がかけられるかを確認します。共同生活の場合でも、個人の持ち物やスペースが尊重されているかを見学時に確認しましょう。
- 外出・外泊の自由度:日中の外出や外泊、面会時間に不当な制限がないかを確認します。特にグループホームでは、地域社会との交流を妨げるような制限がないことが望ましいです。
- 自己決定の尊重:食事の選択や入浴時間など、日常の選択において、ご本人の自己決定権が尊重されているかを確認します。
職員の側が、利用者を一律に扱うのではなく、個性を尊重しているかどうかが、施設の文化を知る重要な指標です。
工夫②:多様な日中活動と地域交流
単に生活するだけでなく、生きがいや役割を持って地域で暮らすことが、施設・住宅での生活の満足度を高めます。
- 日中活動の選択肢:施設内で提供される活動(創作活動、軽作業など)だけでなく、外部の就労継続支援や生活介護事業所など、外部の活動へ通所できる環境にあるかを確認します。
- 地域住民との交流:施設が地域のお祭りやイベントに積極的に参加しているか、また地域住民との交流の機会を設けているかを確認します。
- 趣味やレクリエーション:ご本人の趣味や特技を活かせるレクリエーションが提供されているか、あるいはボランティア活動などの機会があるかを確認します。
活動の選択肢が広いほど、閉じこもりがちな生活になるリスクが低く、精神的な健康を保ちやすくなります。
工夫③:トラブル・苦情対応と退去条件
どんなに良い施設でも、利用者間のトラブルやサービスへの不満は発生する可能性があります。その際の対応体制と、最悪の場合の退去条件を把握しておくことは、最後の安心につながります。
苦情や相談を受け付ける担当者が明確になっているか、第三者委員会によるチェック機能が働いているかを確認します。また、契約書に記載されている「退去を求められる具体的な条件」(例:長期の入院、共同生活の維持が困難など)を詳細にチェックし、不当な退去勧告がないかを把握しておきましょう。特にサ高住など賃貸契約の場合は、借地借家法の保護がどこまで適用されるかも重要です。
まとめ
福祉施設やサービス付き住宅を選ぶ際は、まずグループホーム、障害者支援施設、高齢者向け住宅という3つの基本タイプを理解し、ご本人の障害特性、重度、そして加齢の状況に合ったタイプを絞り込むことが重要です。入居前には、職員の専門性、医療連携体制、そして透明性の高い費用体系を徹底的にチェックしましょう。
単に「安全に暮らせる」だけでなく、個人の尊厳が守られ、地域との繋がりが保たれる環境であるかどうかが、質の高い生活(QOL)を決定します。複数の施設を必ず見学・体験利用し、相談支援専門員と連携して、納得のいく住まいを見つけてください。
まとめ
- 施設選びは、グループホーム、障害者支援施設、高齢者向け住宅の3タイプを理解し、ニーズに合ったタイプを選びましょう。
- 入居前には、職員の専門性、医療連携体制、夜間・休日の緊急対応フローを徹底的にチェックすることが不可欠です。
- プライバシーの尊重、外出・交流の自由度、そして費用体系の透明性が、長期的な生活の質(QOL)を決定します。

原田 彩
(はらだ あや)35歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。
大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
街歩き、写真撮影
🔍 最近気になっているテーマ
インクルーシブな街づくり、ユニバーサルデザイン





