家族と障害者が安心して暮らせる住環境づくり

家族みんなが笑顔に!障害のある方が安心して暮らせる住環境づくり
ご家族に障害のある方がいらっしゃる皆様、毎日の生活の中で「もっと安全で快適な住まいにしたい」「介助の負担を少しでも減らしたい」と日々考えていらっしゃるのではないでしょうか。
住環境は、ご本人の自立度だけでなく、ご家族全員の心のゆとりや健康に深く関わってきます。しかし、どこから手をつけていいか、どんな工夫が効果的なのか、迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、身体的、知的、精神的な障害特性を踏まえ、家族と障害のある方が共に安心して暮らせる住環境づくりのための具体的なアイデア、そしてその実現をサポートする制度について、温かい視点から詳しくご紹介します。
専門的な知識をわかりやすく解説し、皆様の住まいづくりが、より幸福な毎日につながることを願っています。
🏠 住環境づくりの基本原則:ユニバーサルデザインの視点
「住環境づくり」というと大掛かりな改修をイメージしがちですが、大切なのはユニバーサルデザイン、つまり「誰にとっても使いやすいデザイン」の視点を取り入れることです。
特に障害のある方とその家族にとって、日々の「安全」「快適」「自立」を確保することが、住まいづくりの基本原則となります。
「安全」を確保するバリアフリーの徹底
住環境における最大のバリア(障壁)は、段差です。小さな段差でも、つまずきや転倒の原因となり、大きな怪我につながるリスクがあります。
玄関、廊下、浴室、トイレといった水回りだけでなく、室内の敷居(しきい)の段差も解消することが、バリアフリーの基本です。完全な解消が難しい場合は、緩やかなスロープの設置や、置き型踏み台の使用も検討できます。
また、床材も重要です。滑りにくい素材(例:防滑性の高いフローリングやクッションフロア)を選び、特に水気の多い場所では徹底することが安全確保の第一歩です。
さらに、夜間の移動の安全性を高めるために、足元灯(フットライト)を設置したり、廊下や階段にセンサーライトを導入したりする工夫も有効です。
これらの小さな工夫の積み重ねが、家庭内での転倒事故のリスクを大幅に減らすことにつながります。
💡 ポイント
住まいの改修を考える際は、ご本人の現在の状態だけでなく、将来の進行や加齢による身体能力の変化を見越して計画を立てることが、長期的な視点から見て非常に重要です。
「快適」と「自立」を支える動線の確保
住環境は、ご本人の「できること」を増やし、自立を促すための道具であるべきです。
特に車椅子を利用されている方にとっては、家の中での移動のしやすさ(動線)が快適さに直結します。廊下や扉の幅を広げ、車椅子での回転スペース(目安:直径150cm以上)を確保することが理想です。
また、頻繁に利用する生活空間(例:寝室、リビング、トイレ)は、なるべくワンフロアに集約したり、移動距離が短くなるように配置を工夫したりしましょう。
知的障害や精神障害のある方の場合、部屋の配置や収納を工夫することで、生活のルーティン化をサポートできます。
例えば、「この棚にはパジャマ」「このボックスには薬」といったように、視覚的にわかりやすいラベルや色分けを使うことで、混乱を避けることができます。物の配置を固定化し、探し物によるストレスを軽減することも快適な生活につながります。
🛏️ 家族みんなの負担を減らす居室と収納の工夫
障害のある方の居室は、単なる寝室ではなく、日中活動の場であり、介助が行われる重要なスペースです。ここを工夫することで、ご本人の快適性と、ご家族の介助負担を同時に軽減することができます。
介助しやすいベッド周りと広さの確保
介護や介助が必要な場合、ベッド周りの環境は特に重要です。
介助者が両側からアプローチできる十分なスペース(ベッドの両側に最低でも80cm〜100cm)を確保することで、体位交換やおむつ交換、移乗の際の負担が大幅に軽減されます。
ベッドは、高さが調節できる介護用電動ベッドの導入を検討しましょう。ベッドの高さを利用者の立ち上がりやすい高さや、介助しやすい高さに調整できる機能は、介助者の腰への負担軽減に直結します。
また、ベッドの頭側に緊急時に家族や外部支援者に連絡できるナースコールや呼び出しボタンを設置することは、ご本人の安心感につながります。
ある介護経験者の方からは、「電動ベッドに変えてから、夜間の体位変換が格段に楽になり、睡眠の質が向上した」という声も寄せられています。
✅ 成功のコツ
車椅子からの移乗が多い場合、ベッドの位置を壁から少し離して設置し、移乗時に安定して掴める固定式の手すりを壁に取り付けると、安全性が高まります。
整理整頓を促すわかりやすい収納システム
知的障害や発達障害のある方にとって、物が乱雑になっている環境は、集中力の低下や不安の原因となることがあります。
収納は、「どこに何があるか」が一目でわかるシステムにすることが大切です。扉のないオープンシェルフや、透明な収納ボックスを活用し、中身を視覚的に確認できるようにしましょう。
また、使用頻度が高いものは手の届きやすい位置に、そうでないものは手の届きにくい場所に配置するという、ゾーニング(区域分け)の考え方を導入することも有効です。
色のマジックも活用できます。例えば、日常的に使う衣服の収納ボックスを青色、趣味の道具を赤色にするなど、色でカテゴリを分けることで、文字が読めなくても整理整頓がしやすくなります。
この工夫は、ご本人が自分で物を管理する能力(セルフマネジメント能力)を育むことにもつながります。
🚻 水回りと出入り口:誰もが使いやすい工夫
前回の記事でも触れましたが、水回り(浴室・トイレ)と出入り口(玄関・扉)は、障害のある方の生活に直結し、改修の優先度が高いエリアです。
ここでは、特に家族の介助負担軽減と、自立的な利用を可能にするためのポイントを掘り下げます。
玄関と扉の幅の確保と操作性の向上
外出は社会参加の基本です。玄関は、車椅子や歩行器がスムーズに出入りできる幅(目安として80cm以上)を確保することが重要です。
玄関前の階段や段差には、固定または持ち運び可能なスロープを設置しましょう。特に屋外に設置する場合、雨で滑らない防滑性の高い素材を選ぶことが不可欠です。
また、家の中の扉は、開閉時に大きなスペースを必要とする開き戸ではなく、引き戸(スライドドア)への交換が推奨されます。引き戸は、車椅子に乗ったままでも、力の弱い方でも開閉しやすく、介助者も楽に移動できます。
取っ手も、握力の弱い方でも使いやすいように、レバーハンドルやプッシュプル式のものを選ぶと良いでしょう。
「玄関に電動式のスロープを設置してから、雨の日も外出を諦めずに済むようになりました。社会との繋がりが保てる安心感は大きいです。」
— 身体障害のある方
トイレ・浴室での介助負担軽減策
トイレや浴室は、介助が必要な場面が多く、介助者の身体的な負担が大きくなりがちです。
トイレでは、介助スペースを確保するための個室の拡張に加え、昇降機能付きの便座を導入することで、介助者が低い姿勢で無理な体勢をとる必要がなくなります。
浴室では、浴槽のまたぎ高さを低くするだけでなく、壁に埋め込むタイプの可動式シャワーチェアを設置すると、使わない時は収納でき、介助スペースを広げることができます。
また、シャワーやカランは、介助者が立ったまま操作しやすい高さに設置し、水温調節を素早く行えるサーモスタット式のものを選ぶと、安全性と快適性が向上します。
⚠️ 注意
特に浴室やトイレの手すりは、利用者の身体状況に合わせて、最適な高さと位置に設置する必要があります。福祉住環境コーディネーターなどの専門家に相談し、ベストな位置を決定しましょう。
🤝 資金計画と専門家との連携:改修の実現に向けて
住環境の整備には費用がかかりますが、障害のある方のための改修には、公的なサポート制度が用意されています。これらの制度を理解し、専門家と連携することが、理想の住環境実現への近道です。
住宅改修をサポートする公的制度
住まいの改修には、主に以下の公的制度が活用できます。
- 介護保険制度(住宅改修費の支給): 要介護認定を受けた方が対象で、原則20万円を上限に、費用の7〜9割が支給されます。段差解消、手すりの取り付け、扉の交換などが対象です。
- 障害者総合支援法に基づく日常生活用具給付等事業: 居宅生活動作補助用具(手すり、段差解消機など)として、自治体によっては住宅改修の一部を対象に助成が出る場合があります。
- 自治体独自の補助金: 各市町村が独自に、高齢者や障害者のための住宅改修補助金制度を設けていることがあります。
これらの制度は、必ず工事着工前に申請が必要です。特に介護保険の場合、ケアマネジャーの作成した理由書が必要となるため、計画の初期段階から専門家と連携を取りましょう。
| 制度 | 主な対象 | 主な改修例 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 要介護認定者 | 手すり、段差解消、扉の交換 |
| 障害者総合支援法 | 障害者手帳所持者 | 自治体によるが、生活動作補助具など |
| 自治体独自の補助 | 自治体により異なる | バリアフリー改修全般、耐震改修など |
福祉住環境コーディネーターの役割
「福祉住環境コーディネーター」は、医療・福祉・建築の知識を兼ね備えた専門家です。
彼らは、利用者の身体状況や生活スタイルを詳細にヒアリングし、医学的な視点と建築的な視点の両方から、最も適切な改修プランを提案してくれます。
例えば、「この動線では介助者の腰に負担がかかる」「この位置に手すりがあれば、一人で立ち上がれる」といった、生活に密着した具体的なアドバイスを得ることができます。
改修の失敗を防ぎ、費用対効果の高い工事を行うためには、設計段階でこのコーディネーターに相談することが非常に重要です。地域によっては、自治体を通じて紹介してもらえる場合もあります。
さらに、施工業者(工務店)は、バリアフリー工事の実績が豊富な業者を選ぶようにしましょう。実績の多い業者は、制度の利用にも慣れており、申請手続きもスムーズに進むことが多いです。
❤️ 精神・知的障害への配慮と安心感の創出
住環境づくりは、身体的なバリアフリーだけでなく、精神的・知的な障害特性を持つ方が「安心できる」空間を創出することも大切な要素です。
視覚と聴覚からの情報整理と遮断
知的障害や発達障害を持つ方の中には、過敏性(感覚が敏感すぎること)を持つ方が多くいます。光や音、色といった環境刺激への配慮が、パニックや不安の軽減につながります。
例えば、リビングや自室では、明るさを調整できる調光機能付きの照明(ライトコントロール)を導入し、刺激の少ない暖色系の光を使えるようにすることが望ましいです。
また、外部からの騒音や、家族の生活音が気になる場合は、遮音性の高い窓や壁材を使用したり、パーテーションを設置したりして、「静かに過ごせる空間」を確保しましょう。
色使いは、刺激の強い原色を避け、落ち着いたアースカラーやパステルカラーを基調にすることで、心理的な安定をもたらします。
✅ 成功のコツ
特に発達障害を持つ方の場合、「感覚統合」を促すための設備(例:ハンモック、ボールプール、加重ブランケットなど)を設置できる空間を確保することも、生活の安定に役立つことがあります。
緊急時対応と安心できる「居場所」の確保
精神障害を持つ方の中には、急な不安やパニック発作に見舞われることがあります。そのような時に「避難できる居場所」を家の中に用意しておくことが、安心感につながります。
これは、家族の気配を感じながらも、適度なプライバシーが保てる「半個室」のスペースや、静かで閉じこもれる小さな部屋(セーフティゾーン)などが考えられます。
また、緊急時の対応として、火災報知器やガス漏れ警報器は、聴覚・視覚の両方で危険を知らせる複合型のものを選ぶと安心です。例えば、音だけでなく光や振動で知らせる機器の導入も検討できます。
さらに、地域生活を続ける上で、ご本人が困った時に誰に連絡を取るべきかをすぐに確認できるよう、緊急連絡先リストをわかりやすい場所に掲示しておくことも大切です。
❓ よくある質問(Q&A)と相談窓口
住環境づくりに関してよくある質問と、頼れる相談窓口についてまとめました。
Q1. 賃貸住宅でもバリアフリー化は可能ですか?
A. 賃貸住宅の場合、大規模な改修は原則としてオーナー(大家さん)の許可が必要です。
しかし、退去時に原状回復が必要ない、簡易的な改修や福祉用具の活用は可能です。例えば、置くだけの玄関スロープ、吸盤式の浴室手すり、段差解消のための置き型台などは許可なく利用できることが多いです。
オーナーとの交渉次第で、公的制度を利用した本格的な改修が認められるケースもありますので、まずは不動産会社やオーナーに相談してみましょう。
Q2. 改修後、家族の生活スペースが狭くなるのが心配です。
A. 確かに、車椅子スペースの確保などで居住スペースが一時的に狭くなることがあります。しかし、ユニバーサルデザインは、家族全員が快適に暮らすことを目指しています。
例えば、介助スペースを広げた結果、介助者の身体的な疲労が減り、その分、家族団らんの時間が増えるといったメリットも生まれます。福祉住環境コーディネーターは、家族全員の生活を考慮した最適なバランスを見つけてくれるはずです。
Q3. まず最初に、何を相談すれば良いですか?
A. まずは、現在のご自宅での「困りごと」や「危険だと感じる場所」を具体的にリストアップし、以下の専門窓口にご相談ください。
- お住まいの市町村役場 障害福祉担当課: 公的制度や補助金について確認できます。
- 地域包括支援センター or 相談支援専門員: 総合的な支援計画作成や、福祉住環境コーディネーターの紹介を受けられます。
- 社会福祉協議会: 地域に密着した非営利のサポート情報や、ボランティアを紹介してもらえます。
これらの専門家は、単なる改修だけでなく、介護保険や障害者総合支援法といったサービスとの連携も含めて、総合的にサポートしてくれます。
🌈 まとめと次の一歩
家族と障害のある方が安心して暮らせる住環境づくりは、一夜にして完成するものではありません。それは、ご本人の成長や加齢、そして家族の状況に合わせて、継続的に見直し、改善していくプロセスです。
大切なのは、「安全」「快適」「自立」という3つの視点を忘れず、ご本人とご家族の「こうしたい」という願いを、専門家と共有することです。
この情報が、皆様の住まいづくりへの不安を希望に変え、一歩踏み出す勇気を与えることができれば幸いです。
次の一歩の提案
まずは、スマートフォンやカメラで、ご自宅の中で「ここが危ない」「ここが使いにくい」と感じる場所を写真に撮り、その写真を持って地域の福祉住環境コーディネーターや相談支援専門員に連絡してみましょう。具体的な視覚情報があると、相談がより具体的で効果的になります。
まとめ
- 住環境づくりの基本は、段差解消や滑りにくい床材の使用など、「安全」を確保するバリアフリーの徹底である。
- ベッド周りの介助スペース確保や、視覚的にわかりやすい収納は、利用者と家族双方の「快適」と「自立」を支える。
- 改修の資金調達には、介護保険、障害者総合支援法、自治体独自の補助金などの公的制度を積極的に活用すべきである。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





