安心して暮らせる障害者向け賃貸住宅の選び方

賃貸でも安心!障害のある方のための住宅選びとチェックポイント
ご本人、ご家族、そして支援者の皆様、障害のある方が地域で自立した生活を送る上で、「安心して暮らせる住まい」の確保は最も重要な課題の一つです。しかし、一般の賃貸住宅を探す際、「バリアフリーではない」「大家さんに理解してもらえるか不安」「いざという時のサポート体制はどうすればいいか」といった様々な壁に直面することがあります。
賃貸住宅の選択肢は多様ですが、重要なのはご本人の障害特性や必要なサポートに合った物件と、それを支える環境を選ぶことです。適切な知識を持っていれば、よりスムーズに、希望に沿った住まいを見つけることができます。
この記事では、障害の種類や重度に応じた賃貸住宅の選び方のポイント、内見時に確認すべきバリアフリー構造、入居審査を円滑に進めるための交渉術、そして公的支援住宅(公営住宅、UR賃貸)の活用法まで、具体的な情報と成功のヒントを詳しく解説します。ぜひ、このガイドを参考に、理想の住まいを見つけ出してください。
🏠 ステップ1:賃貸選びの3つの柱と障害特性別の選択肢
障害のある方が賃貸住宅を選ぶ際、単に間取りや家賃だけでなく、「住環境」「契約のしやすさ」「サポート体制」という3つの柱を総合的に考慮することが重要です。
賃貸選びの3つの柱
- 物件の物理的条件(バリアフリー度): 玄関、廊下、水回りなどの構造が、移動のしやすさ、介助のしやすさ、事故の危険性などに配慮されているか。
- 契約の確実性と継続性: 障害を理由に入居を拒否されないか、保証人・保証会社の利用、長期的な居住が可能か。
- 生活サポート環境: 必要な福祉サービス(訪問介護、デイサービスなど)が受けやすい地域か、緊急時の対応が可能か。
特に、日本の賃貸市場において、障害のある方の入居を拒否する大家さんも少なくないため、専門知識を持つ不動産会社や支援機関を通すことが、契約の確実性を高める上で非常に重要になります。
💡 ポイント
物件探しを始める前に、必ずお住まいの地域の相談支援専門員(またはケアマネジャー)に、希望する地域の福祉サービス提供状況を確認してもらいましょう。いくら良い物件でも、必要なサポートが受けられなければ生活は成り立ちません。
障害特性に応じた選択肢
障害の種類によって、理想的な賃貸住宅の形態は異なります。
- 肢体不自由(車椅子利用): 公営住宅(優先入居枠あり)やUR賃貸(バリアフリー型が多い)が第一候補となります。民間賃貸の場合は、築年数の新しい1階の物件、またはエレベーター付きのマンションが必須です。
- 知的障害・精神障害: 共同生活援助(グループホーム)から次のステップとして、「見守りサービス付き」の民間賃貸や公営住宅が適しています。近隣住民とのトラブルを避けるため、支援者が定期的に訪問できる体制が不可欠です。
- 内部障害・難病: 身体的なバリアフリーよりも、温度変化が少なく、静かで、通院しやすい立地が重要です。過度な運動を避けるため、エレベーターやエントランスからの移動距離も考慮しましょう。
特に、単身で賃貸を借りる場合、緊急時の連絡体制と見守りの仕組み(週に数回の訪問介護など)を契約前に確立しておくことが、安心につながります。
🚪 ステップ2:内見で確認すべきバリアフリー構造
内見時には、メジャーを持参し、ご本人の移動手段(車椅子、杖など)を前提に、具体的な構造を細かくチェックすることが事故防止の鍵となります。
玄関と廊下:スムーズな移動の確保
自宅内で最もバリアが多いのが玄関と廊下です。
- 玄関アプローチ: 敷地内の段差(駐車場から玄関まで)や、アプローチの勾配を確認します。大きな段差がある場合、簡易スロープの設置が可能か(大家の許可が必要)を不動産会社に確認します。
- 上がり框の段差: 玄関の土間と床の段差の高さ(10cm以内が望ましい)を測ります。段差解消のための踏み台を置くスペース(幅と奥行き)があるかを確認しましょう。
- 廊下の幅: 車椅子での移動を想定する場合、最低でも78cm、できれば90cm以上の有効幅があるかチェックします。曲がり角やドア前も測りましょう。
廊下や玄関に手すりを後付けする場合、壁の裏側に下地があるか(賃貸では難しい場合が多い)も重要ですが、まずは大家さんに「手すり設置の可否」を交渉することが先決です。
⚠️ 注意
築年数の古い物件は、敷居(しきい)が高く、廊下に段差があることが非常に多いです。小さな段差でも車椅子や歩行器にとっては大きなバリアとなるため、敷居の高さ(2cm以上は要注意)を必ず測りましょう。
トイレ、浴室、キッチンの確認ポイント
水回りは、介助が必要となる場合や、転倒リスクが高い場所です。
- トイレのスペース: 車椅子から便座へ移乗するための十分なスペース(便器横に75cm以上が理想)があるか確認します。扉が内開きの場合、開閉時に車椅子が邪魔にならないかシミュレーションしましょう。
- 浴室の構造: 浴槽のまたぎ高さが低いこと、浴室の出入口に大きな段差がないことが重要です。床材が滑りにくいか、シャワーチェアを置くスペースがあるかを確認します。
- キッチンの高さ: 車椅子利用の場合、シンクやコンロの下に膝が入るスペース(車椅子のフットレストが当たらないか)と、作業台の高さが適切か(座って作業しやすいか)をチェックします。
これらの設備を後から改修することは賃貸ではほぼ不可能であるため、現在の設備がご本人の身体状況に合っているかを厳しくチェックする必要があります。
📄 ステップ3:入居審査を乗り切る交渉術と保証
一般の民間賃貸住宅の入居審査では、障害があるというだけで不安視され、契約を断られるケースがあります。これに対処するための戦略と、保証の仕組みを知っておきましょう。
大家さんへの信頼獲得交渉術
入居審査で大切なのは、「この人は安心して住んでくれる」という信頼感を大家さんに与えることです。
- サポート体制の明示: 「週に○回、訪問介護が入る」「緊急時は〇〇病院と連携している」「〇〇支援事業所の専門員が定期的に訪問する」など、具体的なサポート計画を書面で提出し、孤独死やトラブルのリスク管理をしていることを示しましょう。
- 収入源の安定性: 障害年金や各種手当など、安定した収入源があることを明確に示します。
- 交渉代行の活用: ご本人が直接交渉するのではなく、相談支援専門員や地域包括支援センター職員など、公的機関の専門員に同席・交渉を代行してもらうことで、信頼性が増します。
✅ 成功のコツ
近年、多くの不動産会社が利用する家賃保証会社の審査に通ることも重要です。保証会社は個人の収入や信用情報を見て審査するため、障害年金であっても安定収入と見なされることが多いため、積極的に活用しましょう。
公的保証人制度の活用
高齢者や障害者など、保証人の確保が難しい方を支援するため、国や自治体による「家賃債務保証制度」があります。
- あんしん居住支援事業: 国土交通省による支援で、保証人がいない方を支援するための保証制度です。不動産会社と支援機関が連携して、入居後の生活もサポートします。
- 緊急時連絡先の確保: 法的な保証人になれなくても、緊急時に連絡が取れ、駆けつけられる「緊急連絡先」(支援事業者や親族)を確保しておくことが、大家さんの安心につながります。
賃貸借契約を結ぶ際には、この公的な支援制度や保証会社を積極的に利用し、親族に過度な負担がかからないように配慮することが、長期的な安心につながります。
🏘️ ステップ4:公的住宅(公営・UR)という選択肢
民間賃貸が難しい場合や、家賃負担を抑えたい場合は、公的機関が提供する住宅(公営住宅、UR賃貸住宅)を検討しましょう。これらは一般の民間賃貸よりも入居条件が緩和され、バリアフリー化が進んでいることが多いです。
公営住宅への優先入居枠
市営住宅や県営住宅などの公営住宅には、障害のある方を対象とした特別な優遇措置が設けられています。
- 優先入居枠: 重度の身体障害者や知的障害者がいる世帯は、一般の抽選とは別に、優先的な選考対象となります。
- 家賃減免: 公営住宅の家賃は所得に応じて決定されますが、障害者世帯はさらに家賃の減額・減免措置が適用される場合があります。
公営住宅は、もともとバリアフリー設計が義務づけられているものも多く、賃料も安価ですが、募集時期が限られており、競争率が高いという欠点があります。情報収集と申請準備を怠らないようにしましょう。
UR賃貸住宅のバリアフリー物件
独立行政法人都市再生機構(UR)が提供するUR賃貸住宅は、礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要という大きなメリットがあります。さらに、バミュアフリー物件も豊富です。
- 福祉割制度: 障害者世帯を対象とした家賃の割引制度(福祉割)が設けられている場合があります。
- 物件の多様性: URには、車椅子対応のバリアフリー仕様の物件が多くあり、民間では見つけにくい広々とした間取りや、団地内の生活環境の良さ(緑が多い、公園が近いなど)も魅力です。
公営住宅ほどの家賃減免はありませんが、保証人不要で、手続きが明確で安心感があるため、自立を目指す障害のある方にとって非常に有力な選択肢となります。
✨ まとめと次の一歩の提案
障害のある方が安心して暮らせる賃貸住宅を選ぶためには、「物件の物理的なバリアフリー度」と「入居後のサポート体制」を両輪で考えることが重要です。内見時には、廊下幅、玄関段差、水回りのスペースなど、ご本人の移動に直結する箇所をメジャーで厳しくチェックしましょう。
民間賃貸では、専門の不動産会社や支援機関を介し、具体的なサポート計画を示すことで、大家さんの信頼を得る交渉術が不可欠です。費用負担を抑えたい場合は、公営住宅の優先入居やUR賃貸の福祉割制度も積極的に活用しましょう。
次の一歩の提案
まずは、お住まいの地域の居住支援法人や障害者向けの不動産相談窓口を検索してみましょう。一般の不動産会社に相談する前に、障害者支援に特化した専門家から、地域の物件情報や制度に関するアドバイスを受けることが、スムーズな住まい探しの第一歩となります。
まとめ
- 賃貸選びは、バリアフリー度、契約の確実性、生活サポート環境の3つの柱で総合的に判断する。
- 内見時は、車椅子移動に必要な廊下幅(90cm以上)や、玄関・水回りの段差を必ずメジャーで確認する。
- 入居審査には、相談支援専門員などの公的専門家に同席・交渉代行を依頼し、具体的なサポート体制を明示することが重要である。

原田 彩
(はらだ あや)35歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。
大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
街歩き、写真撮影
🔍 最近気になっているテーマ
インクルーシブな街づくり、ユニバーサルデザイン





