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安全な段差解消・手すり設置のポイントと補助金

📖 約28✍️ 酒井 勝利
安全な段差解消・手すり設置のポイントと補助金
自宅の段差解消と手すり設置は、転倒防止と自立生活のために不可欠である。スロープ設置の安全基準は、車椅子の自力走行の場合、勾配1/12以下が推奨され、小さな段差は段差解消プレートや敷居の撤去で対応する。手すりは、玄関、廊下、トイレ、浴室、階段の5つの重要箇所に設置し、高さはご本人の手首の高さに合わせるのが基本。設置前には、福祉住環境コーディネーターやOTによる動作分析と、壁の強度(下地補強)確認が必須である。費用補助制度として、要介護認定者は介護保険の住宅改修費(20万円上限)、それ以外の方は障害者総合支援法の日常生活用具給付が利用可能。また、自治体独自の重度障害者向け補助金も確認すべきである。

自宅での生活において、「段差」は転倒や怪我の最大の原因となり、「手すり」は、立ち上がりや歩行の安定を支える命綱となります。特に障害を持つ方や高齢の方にとって、これらのバリアフリー対策は、生活の安全自立度を左右する非常に重要な要素です。

しかし、「どこに手すりを付ければ本当に安全なのか」「段差解消のスロープは、どのくらいの角度が必要なのか」といった専門的な判断は難しく、また、改修には費用がかかるため、「補助金制度をどう活用すればいいのだろう」という不安もつきものです。

この記事では、理学療法士福祉住環境コーディネーターの視点を取り入れながら、安全な段差解消と手すり設置のための具体的な基準とノウハウを、事例を交えて詳しく解説します。さらに、利用できる公的補助金制度(主に介護保険、自治体独自の補助)についても解説します。適切な改修を行い、自宅を安心できる空間に変えるための具体的な一歩を踏み出しましょう。


段差解消の基本:安全な勾配と3つの方法

方法①:スロープ設置の安全基準「勾配の決定」

車椅子や歩行器を利用する方にとって、段差を解消する最も一般的な方法がスロープ(傾斜路)の設置です。スロープ設置で最も重要なのは、安全な勾配(傾斜の度合い)を確保することです。

  • 自力走行の場合勾配は1/12(水平距離12に対して垂直距離1)以下が推奨されます。これは、10cmの段差に対し、120cmの長さのスロープが必要ということです。
  • 介助走行の場合勾配は1/8以下でも許容されますが、介助者の負担を考えると、できる限り緩やかにすることが望ましいです。
  • 電動車椅子の基準:電動車椅子の場合は、メーカーの推奨する最大登坂能力を超えないよう、特に屋外では注意が必要です。

スロープが長くなりすぎる場合は、途中に平坦な「踊り場」を設けて休憩や方向転換を可能にすることで、安全性を向上させることができます。

方法②:小さな段差解消の選択肢

家の中にある数ミリから数センチの小さな段差(敷居、上り框など)は、つまずきや転倒の原因になりますが、スロープ設置には向かない場合もあります。その場合は、以下の方法を検討しましょう。

  1. 段差解消プレート(置き型スロープ):数センチの段差であれば、置くだけで利用できるゴム製やプラスチック製のスロープを設置します。これは工事が不要なため、賃貸住宅でも活用しやすい方法です。
  2. 式台・踏み台の設置:玄関の上り框(あがりかまち)など、比較的大きな段差には、高さの異なる2段の式台(踏み台)を設置することで、立ち座りの動作を分割し、負担を軽減します。
  3. 敷居の撤去・床材のフラット化:リフォームが可能な場合は、敷居を完全に撤去し、隣接する床面を完全にフラットにすることが、最も理想的な段差解消策です。

特に敷居の撤去を行う際は、扉(開き戸から引き戸など)の交換も合わせて行うことで、より快適な移動が可能になります。

方法③:屋外階段への「段差昇降機」の導入

玄関前の段差が大きく、スロープの設置が敷地の制約により困難な場合や、集合住宅の2階以上に居住している場合は、段差昇降機(階段昇降機やホームエレベーター)の導入を検討します。

階段昇降機は高額ですが、安全かつ確実に段差を昇降できるという最大のメリットがあります。福祉住環境コーディネーターなどの専門家に相談し、設置場所の強度や配線、メンテナンス費用も含めた総合的な計画を立てる必要があります。高額な工事になるため、自治体の重度障害者向け補助制度を最大限に活用しましょう。

⚠️ 注意

スロープを設置する際は、雨天時の滑り止め対策が必須です。屋外スロープには凹凸のある滑りにくい素材を選び、定期的に水はけの状態を確認しましょう。特に冬場の凍結にも注意が必要です。


手すり設置の基本:最適な位置・高さ・形状

ポイント①:手すり設置の「5つの重要箇所」

手すりは、動作の補助、バランスの維持、転倒の予防という3つの役割を果たします。手すり設置を検討すべき「5つの重要箇所」を優先的にチェックしましょう。

  • 玄関靴の脱ぎ履き時のバランス保持と、上り框(段差)をまたぐ際の立ち座り補助。縦手すり(立ち上がり用)と横手すり(水平移動用)の組み合わせが効果的です。
  • 廊下長距離の歩行時のバランス保持のため、片側または両側に連続して設置。
  • トイレ便器への立ち座りの補助。L字型や可動式の手すりが一般的です。
  • 浴室浴槽をまたぐ際の移乗と、洗い場での立ち座りの補助。水に濡れても滑りにくい素材を選びます。
  • 階段:昇降時のバランス維持と体力の補助。階段の終わりから水平に30cm程度延長して設置すると、降り始め・降り終わりに安定して掴むことができます。

手すりを設置する際は、「途中で途切れないこと」が非常に重要です。途切れる箇所でバランスを崩しやすくなるためです。

ポイント②:手すりの「適切な高さと形状」

手すりの高さや形状は、ご本人の身体機能や握力、身長に合わせて、1cm単位で調整することが重要です。

  1. 高さ(横手すり)身長÷2+数cm(3〜5cm)が目安とされていますが、最も確実なのは、ご本人が楽に手を下ろした時の手首の高さを基準にすることです。
  2. 高さ(縦手すり):立ち上がり動作に利用する場合、手すりの上端が床から100cm~120cm程度の高さになるように設置し、握る位置が複数あるように工夫します。
  3. 形状・太さ:握りやすく、滑りにくいよう、直径が30mm~40mm程度のものを選びます。手の機能が不安定な方は、楕円形やディンプル(くぼみ)付きのものがおすすめです。

手すりは、壁に直接設置する「直付け」が基本ですが、壁の強度がない場合は、床と天井で支える「突っ張り式」「据置式」のポータブル手すりも活用できます。

ポイント③:福祉住環境コーディネーターによる「動作分析」

手すりの位置は、建築の知識だけでなく、医学的な動作分析に基づいて決定されるべきです。専門家である福祉住環境コーディネーターや作業療法士(OT)に必ず相談しましょう。

彼らは、「ご本人がどこでバランスを崩しやすいか」「最も力を発揮しやすい角度はどこか」を実際に動作してもらいながら分析し、最適な手すりの「始点」と「終点」を定めてくれます。この専門的な視点を取り入れることで、自己判断による「使えない手すり」の設置を防ぐことができます。

💡 ポイント

手すりを設置する壁の「下地補強」は非常に重要です。手すりには体重がかかるため、設置前に壁の裏に補強材を入れてもらわないと、使用中に外れてしまう危険性があります。リフォームの際は、必ず工事業者に確認しましょう。


費用負担を軽減する2つの公的補助制度

補助金①:障害者総合支援法に基づく「日常生活用具給付」

障害者手帳を持つ方が利用できる補助金制度として、まず障害者総合支援法「日常生活用具給付等事業」があります。これは、自立した日常生活を送るための用具の購入費用を、公費で助成する制度です。

  • 対象となる改修:段差解消のための置き型スロープや、据置式の手すり(ポータブル手すり)など、比較的簡易な福祉用具の購入・設置が対象となります。住宅改修のような大掛かりな工事は対象外です。
  • 助成額原則として費用の9割が公費で賄われますが、所得に応じて自己負担額が発生します(月々の利用者負担上限額が設定されています)。
  • 申請手続き購入・設置前に、市区町村の障害福祉窓口で申請し、給付決定を受ける必要があります。購入後の申請は認められません。

この制度は、介護保険の対象外となる40歳未満の方や、介護保険の要介護認定を受けていない方にとって、特に重要な支援源となります。

補助金②:介護保険の「住宅改修費の支給」

介護保険の要介護認定(要支援1~要介護5)を受けている方は、「住宅改修費の支給」制度を利用できます。これは、バリアフリー化を目的とした工事費用を助成する制度で、段差解消や手すり設置など、大規模な工事にも活用できます。

  1. 支給限度額:原則として、生涯を通じて20万円が上限です。このうち、自己負担は原則1割(所得に応じて2割または3割)で、残りの9割(最大18万円)が支給されます。
  2. 対象となる工事手すりの取り付け段差の解消滑り防止および移動の円滑化のための床材変更引き戸などへの扉の交換などが対象です。
  3. 申請手続き必ず工事着工前に、ケアマネジャーまたは相談支援専門員と相談し、理由書を作成した上で、市区町村に申請し、許可を得る必要があります。

この制度は「償還払い(いったん全額自己負担し、後で9割が戻ってくる)」が原則ですので、事前に資金を準備しておく必要があります。

補助金③:自治体独自の重度障害者向け補助

上記の国の制度(介護保険、障害者総合支援法)に加え、多くの自治体が独自に「重度障害者住宅改修費補助制度」を設けています。これは、国の制度の限度額(20万円)を超えて、大規模な改修(例:昇降機の設置、大規模な浴室改修)を行う場合に活用できます。

例えば、車椅子で生活する重度身体障害者に対し、100万円や200万円といった高額な改修費用の一部を助成する制度がある自治体もあります。これらの制度は、対象となる障害の等級や工事内容が厳しく限定されていますので、事前に市区町村の障害福祉課に詳細を確認しましょう。

✅ 成功のコツ

公的補助金を活用する際は、必ず工事前に専門家(ケアマネジャー、福祉住環境コーディネーター)に相談し、複数の補助制度の併用可能性を検討しましょう。介護保険自治体独自補助は併用できる場合がありますが、同一工事への二重の補助は認められません。


まとめ

安全な段差解消と手すり設置は、自宅での転倒事故を防ぎ、自立した生活を長く続けるために不可欠です。段差解消では、車椅子の自力走行なら1/12の勾配を基準とし、手すり設置では、ご本人の手首の高さに合わせて、玄関、トイレ、浴室、階段などの重要箇所に「途切れない手すり」を設置しましょう。

費用の負担を軽減するため、要介護認定を受けている方は介護保険の住宅改修費(20万円上限)を、そうでない方は障害者総合支援法の日常生活用具給付を積極的に活用してください。大規模改修が必要な場合は、自治体独自の重度障害者向け補助の情報を入手し、必ず工事着工前に専門家と連携して申請手続きを進めましょう。

まとめ

  • 段差解消は、勾配1/12(自力走行)を基準とし、スロープの長さが足りなければ踊り場を設けましょう。
  • 手すりは、ご本人の手首の高さを基準に、5つの重要箇所(玄関、廊下、トイレ、浴室、階段)に途切れなく設置します。
  • 費用の補助は、介護保険の住宅改修費(20万円上限)、または障害者総合支援法の日常生活用具給付を、必ず工事前に申請しましょう。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

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