就労継続支援A型・B型とは?違いをやさしく解説

「そろそろ働きたいけれど、自分の体調や障害の特性に合った働き方が見つからない」と悩んでいませんか?
障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートする福祉サービスの一つに、「就労継続支援」があります。しかし、就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、その違いがよくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
このサービスは、障害や難病のある方が働く場所や機会を得て、将来の一般就労や安定した生活を目指すための、とても大切なステップです。しかし、A型とB型、どちらを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
この記事では、就労継続支援A型とB型について、それぞれの特徴や目的、対象者、そして最も大きな違いである「雇用契約の有無」を、初めての方にもわかりやすく解説します。
ご自身やご家族にとって最適な働き方を見つけるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。
就労継続支援とは?働くための土台を築くサービス
就労継続支援とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、一般企業などで働くことが難しい方を対象に、働く場所を提供したり、働くために必要な知識や能力を高める訓練を行ったりするサービスです。
働く意欲があっても、体力や体調に不安がある、または長期間のブランクがあるといった理由で、すぐに一般就労(障害者雇用を含む)に進むのが難しい方にとって、安心して働く経験を積める場所として重要な役割を担っています。
就労継続支援には、事業所と利用者さんが雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」の2種類があり、それぞれの違いによってサービスの内容や働き方が大きく異なります。
厚生労働省のデータによると、令和4年度時点で就労継続支援を利用している方はA型で約8.8万人、B型で約31.7万人と、多くの方がこのサービスを利用されています。
就労継続支援の対象者と目的
就労継続支援の対象となるのは、原則として18歳以上で、一般企業での就労が困難と認められた障害のある方です。身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、そして難病の方も利用できます。
主な目的は、「就労の機会を提供すること」と「生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識および能力の向上に必要な訓練を行うこと」です。つまり、単に作業をするだけでなく、働くためのスキルや生活リズムを身につけることも重要な目的とされています。
最終的な目標は、多くの利用者さんにとって「一般就労への移行」や「地域社会で自立した生活を送ること」であり、就労継続支援はそのための準備期間やステップアップの場として活用されています。
利用にあたっては、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で申請を行い、サービス等利用計画を作成した上で、利用が決定されます。
就労継続支援A型とB型の最も大きな違い
A型とB型を分ける最大のポイントは、先ほどもお伝えした「雇用契約の有無」です。この違いが、働き方、賃金、利用者の役割に大きく影響します。
A型は事業所と雇用契約を結びますが、B型は雇用契約を結びません。雇用契約を結ぶA型は、労働者として働くため、最低賃金が保証されますが、B型は訓練的な側面が強いため、賃金ではなく「工賃」という形で成果に応じた報酬が支払われます。
この雇用契約の有無は、利用者さんの体調や能力、目指すキャリアパスによって、どちらのサービスが適しているかを判断する際の重要な基準となります。
就労継続支援A型:雇用契約を結んで働く
就労継続支援A型は「雇用型」とも呼ばれ、事業所と利用者さんの間で雇用契約を結びます。これにより、利用者さんは事業所の「労働者」として働くことになります。
この雇用契約により、A型はB型にはないいくつかの特徴と、それに伴うメリット・デメリットがあります。一つずつ確認していきましょう。
A型の特徴:最低賃金の保証と労働法の適用
A型事業所で働く利用者さんは、労働基準法や最低賃金法などの労働関連法規が適用されます。これは、一般の企業で働く場合と同じ権利を持つことを意味します。
最も大きな点は、最低賃金が保証されることです。事業所は、その地域の最低賃金以上の賃金(給与)を支払わなければなりません。厚生労働省の令和4年度実績によると、A型の平均賃金は月額83,380円と、安定した収入を得られる可能性があります。
また、労働者として、労働時間や休憩時間も労働基準法に基づいて管理されます。そのため、一定の勤務時間(例えば1日4~8時間、週5日など)を規則正しく働くことが求められます。
A型に向いている人、仕事内容とメリット
A型は、「一般就労に近い環境で働きたい」「安定した収入を得たい」という方に向いています。具体的には、働くことへの意欲が高く、ある程度の体力や体調の安定があり、毎日決まった時間に出勤して働くことができる方を想定しています。
仕事内容は、事務補助、清掃、商品の検品・梱包、カフェやパンの製造販売など、比較的幅広い職種があります。事業所によっては、プログラミングやデザインといった専門的なスキルを学べる場合もあります。
✅ 成功のコツ
A型は一般就労への移行を目標としていることが多く、働きながらビジネスマナーや報連相(報告・連絡・相談)といった、社会で必要とされるスキルを身につけられる点が大きなメリットです。
A型のデメリットと利用上の注意点
A型にも、いくつかの注意点やデメリットがあります。雇用契約を結ぶため、利用する前に面接や選考があり、採用されるためには一定のスキルや意欲が求められます。事業所側も、安定した生産活動を行う必要があるため、適性を慎重に見極める傾向にあります。
また、雇用契約があるため、体調が優れない日でも休みにくい、または突然の欠勤がしにくいといった責任やプレッシャーを感じることもあります。もし欠勤や遅刻が頻繁に続くと、雇用契約の更新や継続が難しくなる可能性もあります。
⚠️ 注意
A型で得られる賃金は最低賃金以上ですが、一般企業で働く場合の給与と比べると低い傾向にあります。収入の面だけで判断するのではなく、働きやすさや得られる経験も考慮することが大切です。
就労継続支援B型:自分のペースで働く訓練の場
就労継続支援B型は「非雇用型」とも呼ばれ、事業所と雇用契約を結びません。そのため、A型とは異なり、利用者さんは労働者ではなく、訓練を受ける立場に近い形となります。
雇用契約がないことで、体力や体調に合わせて非常に柔軟な働き方ができるのがB型の最大の特徴です。この柔軟性が、B型を必要とする方々にとって大きなメリットとなっています。
B型の特徴:工賃と労働時間の柔軟性
B型では、雇用契約がないため、労働基準法や最低賃金法の適用はありません。作業を行った成果に応じて、「工賃」として報酬が支払われます。
工賃は、事業所の売上から経費を差し引いた利益を、利用者さんに分配する形となるため、最低賃金の保証はありません。厚生労働省の令和4年度実績では、B型の平均工賃は月額17,503円と、A型と比べて低くなっています。
しかし、その代わりに労働時間や出勤日数を自由に調整できるというメリットがあります。例えば、「午前中だけ」「週に2日だけ」といった短時間・短期間の利用も可能です。体調が不安定な方や、まず生活リズムを整えたい方に適しています。
B型に向いている人、仕事内容とメリット
B型は、「体調を最優先に無理なく働きたい」「まずは働く習慣を身につけたい」という方に適しています。具体的には、体力や体調が不安定で、長時間の勤務や週5日の勤務が難しい方、または障害の特性上、働くことへの配慮を多く必要とする方が対象となります。
また、利用期間や年齢の制限がないため、長期的に利用を続けながら、社会との接点を持ちたいと考える方にも適しています。
仕事内容は、比較的簡単な軽作業が多い傾向にあります。具体的には、内職作業、部品の組み立て、農作業、清掃、手工芸品の制作など、事業所によって多岐にわたります。簡単な作業を通じて、集中力や持続力、作業の正確性を高めていきます。
💡 ポイント
B型は、働くことへの「リハビリ」の場として捉えることもできます。短時間から始めて、徐々に体力やスキルを向上させ、A型や一般就労へのステップアップを目指すことが可能です。
B型のデメリットと工賃向上の取り組み
B型の最大のデメリットは、やはり工賃が低いことです。生活を支えるほどの収入にはなりにくいため、障害年金やその他の収入と合わせて生活設計を立てる必要があります。
また、作業内容が単純な軽作業に偏りがちで、高度なスキルや専門知識を身につける機会が少ない事業所もあるという点も注意が必要です。将来的に一般就労を目指す場合は、B型での経験に加えて、就労移行支援などの他のサービスも視野に入れることが大切です。
しかし、近年は国や自治体が工賃向上の取り組みを推進しており、企業から請け負う仕事の単価を上げたり、自主製品の開発・販売に力を入れたりして、工賃アップを目指す事業所が増えてきています。事業所を選ぶ際には、工賃実績や取り組み内容も参考にすると良いでしょう。
A型とB型を徹底比較:どちらを選ぶべきか?
ここまでの解説で、A型とB型の基本的な違いはご理解いただけたかと思います。ここでは、両者の違いを表で整理し、ご自身がどちらのサービスに適しているかを判断するための具体的なポイントを解説します。
| 項目 | 就労継続支援A型(雇用型) | 就労継続支援B型(非雇用型) |
|---|---|---|
| 雇用契約 | あり(労働者として) | なし(訓練生として) |
| 賃金・報酬 | 賃金(最低賃金以上が保証) | 工賃(成果報酬、最低賃金保証なし) |
| 平均月収※ | 約83,380円 | 約17,503円 |
| 労働時間 | 比較的固定(例:1日4~8時間、週5日など) | 柔軟に調整可能(短時間、週1日なども可能) |
| 対象者 | 一般就労は困難だが、雇用契約に基づき就労可能な方(原則65歳未満) | 体力や体調面で雇用契約を結ぶことが困難な方(年齢制限なし) |
| 利用期間 | 制限なし | 制限なし |
| 一般就労への移行率 | B型より高い傾向 | A型より低い傾向 |
※平均月収は厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)実績」より。
A型がおすすめな方とB型がおすすめな方
ご自身の現状と照らし合わせながら、どちらがより合っているかを考えてみましょう。
【A型がおすすめな方】
- 安定した収入を得て、経済的な自立を目指したい方。
- ある程度の体力があり、決まった時間・日数の勤務ができる方。
- 一般就労への移行を強く希望しており、そのための実践的なスキルを身につけたい方。
- 雇用契約を結び、社会保険などの労働者としての権利を確保したい方。
【B型がおすすめな方】
- 体調が不安定で、自分のペースで無理なく働きたい方。
- まずは短時間・短期間から、働く習慣や生活リズムを整えたい方。
- 年齢が65歳以上で、就労の機会を探している方。
- 働くことによる収入よりも、社会との繋がりや日中の活動を重視したい方。
どちらのサービスが適しているかは、ご本人の状態や希望だけでなく、医師や相談支援専門員とよく相談して決めることが重要です。
具体的な利用例でイメージをつかむ
ここで、具体的な利用の例を見てみましょう。
「精神障害があり、体調の波があるAさん(30代)は、まずB型で週2日、午前中のみの作業からスタートしました。1年間かけて体調が安定し、週5日・1日4時間の勤務ができるようになったため、現在はA型事業所に移行し、一般就労を目指しています。」
「知的障害のあるBさん(50代)は、体力的に週5日の勤務は難しいですが、働く意欲は高く、工賃は低いものの、趣味や年金と合わせて生活できるため、長年B型事業所で週3日の軽作業を続けています。社会との繋がりや規則正しい生活が保てていることに満足しています。」
このように、A型とB型はどちらか一方を選び続ける必要はなく、ご自身の状態に合わせて段階的に移行することも可能です。大切なのは、今の自分に最も適した環境を選ぶことです。
就労継続支援A型・B型の利用までの流れと事業所選びのコツ
実際に就労継続支援を利用したいと考えたとき、どのような手続きが必要で、どのように事業所を選べば良いのでしょうか。利用までのステップと、事業所選びのポイントを解説します。
利用開始までの一般的な流れ
就労継続支援A型・B型を利用するまでの基本的な流れは、以下の通りです。
- 相談:お住まいの市区町村の障害福祉窓口、または相談支援事業所に相談します。
- 申請:サービス利用の申請を行い、必要に応じて医師の意見書などを提出します。
- 調査・審査:自治体の職員による聞き取り調査(アセスメント)が行われ、サービスの利用の必要性や区分認定が決定されます。
- サービス等利用計画作成:相談支援専門員が、ご本人の意向を踏まえた「サービス等利用計画」を作成します。
- 事業所探し・契約:利用したい事業所を見学・体験し、契約を結びます。A型の場合は、この段階で面接・選考が行われます。
- 利用開始:受給者証が交付され、サービスの利用を開始します。
このプロセスは、通常、1ヶ月から数ヶ月かかることがあります。特に初めて福祉サービスを利用する方は、相談支援専門員と連携を取りながら進めるのがスムーズです。
事業所選びの重要なチェックポイント
A型・B型に関わらず、事業所選びは非常に重要です。以下のポイントを参考に、複数の事業所を見学・体験することをおすすめします。
- 仕事内容:興味のある作業内容か、体力やスキルに合っているかを確認しましょう。
- 職場の雰囲気・人間関係:利用者さんや職員さんの雰囲気がご自身に合っているか、見学や体験を通じて感じ取ることが大切です。
- 送迎やアクセス:自宅からの交通手段や所要時間、送迎の有無などを確認します。
- 工賃・賃金の実績:可能な範囲で、過去の工賃や賃金の実績、工賃向上に向けた取り組みなどを確認しましょう。
- 一般就労への移行実績(A型):一般就労へのサポート体制や実績が多いかどうかも、A型を選ぶ際の重要な指標となります。
- 利用料:障害福祉サービスの利用料は、前年の世帯収入によって上限が設定されています(自己負担なしの方もいます)。事前に確認しましょう。
💡 ポイント
見学や体験利用を通じて、「長く続けられそうか」「自分らしくいられるか」という直感を大切にしてください。職員さんに、働く上での不安や配慮してほしい点を正直に伝えて、親身になって相談に乗ってくれるかどうかも見極めるポイントです。
就労継続支援に関するよくある質問(FAQ)
就労継続支援の利用を検討するにあたり、多くの方が抱く疑問点についてお答えします。
Q1:A型とB型を同時に利用することはできますか?
いいえ、同時に利用することはできません。就労継続支援A型とB型は、いずれも「日中活動系サービス」に分類され、原則としてどちらか一方しか利用できません。A型からB型へ、またはB型からA型へと、ご自身の状況に合わせて切り替えることは可能です。
Q2:利用期間に制限はありますか?
就労継続支援A型、B型ともに、利用期間に制限はありません。ご自身のペースで、必要な期間だけ利用することができます。就労移行支援(原則2年間)とは異なる点です。
Q3:就労継続支援を利用しながら障害年金はもらえますか?
はい、障害年金と就労継続支援の利用は併用可能です。ただし、A型で得られる賃金やB型で得られる工賃が一定額以上になると、年金額の調整や停止の対象となる場合があります。収入が増える見込みがある場合は、事前に年金事務所などに確認することをおすすめします。
Q4:利用を始めたら、必ず一般就労を目指さなければなりませんか?
必ずしも一般就労を目指さなければならないわけではありません。特にB型は、社会参加や生活リズムの維持を主な目的として、長期的に利用することも可能です。ご自身の目標や生活スタイルに合わせて、柔軟に利用方針を決めることができます。一般就労への移行率はA型で約25%、B型で約10%程度です(厚生労働省データ、一般就労移行の実績がある事業所の割合)。
Q5:利用料金はかかりますか?
障害福祉サービスの利用料は、原則として費用の1割を自己負担することになっていますが、前年の世帯収入に応じて月々の負担上限額が設定されています。
- 生活保護受給世帯・低所得世帯:負担上限額0円(自己負担なし)
- 一般1(市町村民税課税世帯):負担上限額9,300円
- 一般2(上記以外):負担上限額37,200円
多くの場合、低所得世帯や生活保護受給世帯の方は自己負担なしで利用できています。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
まとめ
この記事では、就労継続支援A型とB型の違いを中心に解説しました。
- A型は「雇用契約あり」で、最低賃金が保証され、一般就労に近い環境で働くことを目指します。
- B型は「雇用契約なし」で、工賃が支払われますが、体調やペースに合わせて無理なく働く訓練の場として活用できます。
- どちらのサービスも、障害のある方が「働きたい」という願いを実現するための、大切なステップアップの場所です。
どちらを選ぶかは、ご自身の体力、体調の安定度、目指す収入、そして将来の目標によって変わってきます。一番大切なのは、現在の自分に合った働き方を見つけることです。
✅ 次のアクション
まずは、お住まいの地域の相談支援事業所に連絡を取り、専門家に相談することから始めましょう。事業所の見学や体験を重ねることで、ご自身に最適な場所がきっと見つかります。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
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ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





