就労継続支援の利用期間は?卒業できる?よくある疑問に回答

就労継続支援の利用を検討する際、「どれくらいの期間利用できるのだろう?」「目標を達成したら、卒業できるのかな?」といった利用期間や将来に関する疑問は、多くの方が抱える共通の悩みです。特に、就労移行支援のように「原則2年」といった明確な期限があるサービスと比較すると、就労継続支援の期間については曖昧に感じられるかもしれません。
このサービスは、働くことを通じて生活の質を高め、社会参加を継続するための非常に重要な仕組みです。この記事では、就労継続支援(A型・B型)の利用期間に関する基本的な考え方、長期利用のメリットとデメリット、そして一般就労への「卒業」の可能性について、具体的な制度と事例に基づいて徹底的に解説します。
この記事を通じて、あなたが抱える不安や疑問が解消され、安心して就労継続支援の利用を計画できるようになることを願っています。
就労継続支援の利用期間:原則「期限なし」の考え方
就労継続支援A型・B型に期間の定めはある?
就労継続支援サービスは、障害者総合支援法に基づくサービスの中でも、原則として利用期間に制限がないという大きな特徴を持っています。これは、一般企業での就労が困難な方に対して、長期にわたり継続的に働く機会と、必要な支援を提供し続けることを目的としているためです。
例えば、一般就労を目指す「就労移行支援」には、原則2年という期限が設けられていますが、就労継続支援にはそのような期限はありません。ご自身の体調やライフステージの変化に合わせて、必要な期間だけ利用し続けることが可能です。これは、特に体調の波が大きい方や、加齢に伴い体力の維持が難しくなってきた方にとって、大きな安心材料となります。
長期利用を可能にする制度の背景
就労継続支援が長期利用を前提としている背景には、働くことを通じた社会参加の維持と、生活の安定という重要な目的があります。働くという活動は、収入を得るためだけでなく、生活リズムを整え、他者との交流を通じて孤立を防ぐ役割も果たします。
特にB型事業所は、体調や体力に合わせて無理なく活動を行うことで、心身のリハビリテーションの場としての側面も強く持っています。すぐに一般就労を目指すのではなく、「まずは社会と繋がること」を大切にする方々にとって、期限のない継続的な利用が不可欠なのです。
💡 ポイント
就労継続支援は、一般就労への「通過点」としてだけでなく、長期的な「働く居場所」として機能するように設計された、柔軟性の高いサービスです。
利用継続の可否は定期的に見直しされる
利用期間に制限がないとはいえ、サービスを漫然と利用し続けるわけではありません。就労継続支援の利用者は、少なくとも年に一度、相談支援専門員による「サービス等利用計画」の見直し(モニタリング)を受けます。この見直しを通じて、ご本人の心身の状態、目標の達成度、そしてサービス利用の継続が適切かどうかを確認します。
モニタリングの結果、状態が安定し一般就労が可能と判断された場合は、次のステップ(就労移行支援や一般就労)への移行が提案されることもあります。逆に、体調が悪化している場合は、利用日数や時間の見直しなど、より負担の少ない形での継続が検討されます。
就労継続支援の「卒業」:一般就労への移行
就労継続支援の最終的な目標とは?
就労継続支援の最終的な目標は、利用者が自立した日常生活または社会生活を営むことができるようになることです。この目標の達成方法は、A型とB型、そして個々の利用者の状況によって異なります。特にA型は、一般就労への移行を大きな目標の一つとして掲げています。
しかし、目標は「必ず一般就労すること」だけではありません。B型の場合は、安定した生活リズムの確立や、地域社会での役割を持つこと自体が大きな目標となります。そのため、一般就労に至らなくても、サービス利用を通じて充実した生活を送っている状態も、「成功」の一つと言えるのです。
「卒業」=一般就労への移行実績
就労継続支援における「卒業」とは、主に一般企業などに就職し、サービス利用が不要になることを指します。特にA型事業所では、一般就労への移行支援を積極的に行っており、利用者が安定して働き続けるための訓練とサポートを提供しています。
厚生労働省の統計によると、令和4年度の就労継続支援A型から一般就労へ移行した人数は約4,000人(出典:厚生労働省、前年度比増加傾向)となっており、多くの利用者が次のステップへと進んでいます。移行の実現には、事業所内でのスキルアップだけでなく、就職活動のサポートや定着支援が不可欠です。
「A型で2年間、事務作業を経験した後、一般企業に就職することができました。事業所での経験がそのまま活かせたので、自信を持って働き始めることができました。」
— 20代・精神障害のある利用者
B型からのステップアップの可能性
B型は長期利用が前提とされていますが、利用を通じて体調が安定したり、作業スキルが向上したりした場合、A型へのステップアップや、さらにその先の一般就労を目指すことも可能です。これは、B型が「自分のペースで力をつける場所」としての役割を果たしている証拠です。
B型から一般就労へ直接移行するケースもありますが、体力やスキルに自信をつけ、より安定した収入を求めてA型へ移行するパターンも多く見られます。大切なのは、ご自身の状態に合わせて、柔軟に目標を修正し、次のステップに進むことです。
長期利用のメリットとデメリット:知っておくべきこと
就労継続支援を長く利用するメリット
就労継続支援の利用期間に制限がないことは、多くの利用者にとって大きなメリットをもたらします。
- 安定した生活リズムの維持:長期間にわたり、決まった時間に事業所に通うことで、規則正しい生活リズムを維持でき、体調管理に繋がります。
- 社会的な孤立の防止:事業所の仲間や支援員との交流を通じて、社会との繋がりを継続でき、孤立を防ぐことができます。
- スキルと経験の積み重ね:同じ作業を継続することで、特定のスキルが向上し、自信につながります。B型であれば、工賃の向上にも繋がる可能性があります。
- 環境の変化へのストレス軽減:一般就労のように、常に環境の変化やプレッシャーにさらされることが少ないため、安心して長く働き続けられます。
特に、精神障害や発達障害などで環境の変化が苦手な方にとって、慣れた場所で安心して働き続けられることは、何物にも代えがたいメリットとなります。
長期利用における注意点(デメリット)
一方で、長期利用には注意しておくべき点(デメリットとなりうる点)も存在します。
- スキル停滞の可能性:慣れた作業ばかりを続けることで、新しいスキルを学ぶ機会が減り、職業能力の向上が停滞してしまう可能性があります。
- 社会との隔絶感:事業所内での人間関係や作業に慣れすぎてしまうと、一般企業や地域社会との交流が減り、社会との隔絶感を覚えることがあります。
- 収入(工賃)の限界:特にB型の場合、工賃の平均が低い水準にあるため、長期的に利用しても収入が大幅に増えることは難しく、経済的な自立に限界が生じる可能性があります。
これらのデメリットを避けるためには、定期的なモニタリングで目標を見直し、新たな訓練や交流の機会を意識的に設けることが大切です。支援員と共に、現状に満足せず次のステップを探る姿勢が重要となります。
⚠️ 注意
長期利用によって、他の利用者との人間関係が固定化し、新たな軋轢を生む場合もあります。職員とのコミュニケーションを密にし、風通しの良い職場環境を維持することが大切です。
65歳以降の継続利用と特例措置
原則65歳未満という年齢制限
就労継続支援を含む障害福祉サービスは、原則として18歳以上65歳未満の障害のある方が対象とされています。これは、65歳に達すると、多くの方が「介護保険サービス」の対象となるためです。
しかし、65歳に達したからといって、すぐにサービスが打ち切られるわけではありません。特に長く就労継続支援を利用してきた方にとっては、サービスがなくなることで生活が不安定になるリスクがあります。そのため、65歳以降も継続して利用できる特例措置が設けられています。
「継続支給の特例」とは?
65歳以降も就労継続支援の利用を継続できるように設けられているのが、「継続支給の特例」です。この特例が適用されるための主な要件は以下の通りです。
- 65歳になる前5年間、継続して障害福祉サービス(就労継続支援など)を利用していたこと。
- 65歳になる時点で、介護保険サービスでは同等の支援を受けられないと認められること。
- サービスを継続利用しないと、心身の機能が低下し、生活に支障をきたす恐れがあると認められること。
この特例が認められれば、65歳以降も引き続き、障害福祉サービスとして就労継続支援を利用し続けることができます。これにより、長年の生活基盤が失われるのを防ぎます。
65歳が近づいたらすべきこと
就労継続支援を利用している方で65歳が近づいてきたら、以下の行動を早めに起こすことが重要です。
- 相談支援専門員へ相談:65歳以降の生活やサービス継続の希望を伝え、必要な手続きの確認を始めます。
- 介護保険サービスの検討:介護保険サービスで代替できる支援がないか、地域の地域包括支援センターなどと連携して検討します。
- 継続支給の特例申請:特例の要件を満たすか確認し、市区町村に継続支給の申請手続きを行います。
手続きには時間がかかるため、65歳の誕生日が来る数ヶ月前から準備を始めることが、サービスの途切れを防ぐために非常に大切です。
💡 ポイント
継続支給の特例は、長年の生活の安定を尊重するための重要な制度です。もし不安があれば、早めに支援員や市区町村の窓口にご相談ください。
利用継続・卒業に向けた支援とよくある疑問
一般就労への移行支援の具体的な内容
一般就労への「卒業」を目指す利用者に対しては、事業所が様々な移行支援を提供します。特にA型事業所は、一般企業に近い環境であるため、実践的な訓練が可能です。
- 職業スキルアップのための訓練:パソコン操作、ビジネスマナー、専門的な作業スキルなど、個々の目標に合わせた訓練を実施します。
- 求職活動のサポート:履歴書作成の指導、面接の練習、ハローワークへの同行支援などを行います。
- 職場実習の調整:一般企業での職場実習をアレンジし、実際の職場の雰囲気を体験させ、適性を確認します。
- 定着支援:一般就労へ移行した後も、一定期間(原則6ヶ月)、職場への訪問や相談対応を行い、職場定着をサポートします(就労定着支援への移行も可能)。
これらの支援は、利用者がスムーズに次のステップへ進み、長期的に安定して働くための土台作りとなります。
Q. 体調不良で休みがちだと利用継続は難しい?
就労継続支援は、障害や体調に配慮しながら働くためのサービスです。特にB型では、体調不良による欠席や、短時間利用への柔軟な対応が事業所の役割として期待されています。休みがちであっても、すぐに利用ができなくなるわけではありません。
重要なのは、休む理由や体調の変化を支援員にしっかりと伝えることです。支援員はその情報をもとに、利用計画の見直しや、医療機関との連携などを提案してくれます。ただし、A型の場合は雇用契約を結んでいるため、極端に欠勤が多いと、雇用契約の見直しや解除(解雇)に至るリスクもゼロではありません。体調管理と報告・相談は欠かせません。
Q. 途中でA型からB型に変わることはできる?
はい、可能です。利用者の心身の状態や目標が変わった場合、サービスの種類を変更することができます。例えば、A型で働いていたが、体調を崩してしまい、最低賃金以上の勤務を続けることが難しくなった場合、負担の少ないB型へ移行するという選択肢があります。逆に、B型で体調が安定し、収入を増やしたい、一般就労を目指したいという意欲がわいた場合は、A型へ移行することも可能です。
このサービス変更を行う際も、相談支援専門員が中心となり、市区町村へ申請手続きを行います。ご自身の状態に合わせ、無理せず柔軟にサービスを活用しましょう。
Q. 利用期間中、別の事業所に移ることはできる?
はい、事業所を途中で変更(転所)することは可能です。現在の事業所の雰囲気が合わない、提供される作業内容に飽きてしまった、自宅から通いやすい別の事業所が見つかったなど、様々な理由で転所を希望される方がいます。
転所を希望する場合も、まずは相談支援専門員に相談し、転所先の事業所の見学や体験利用を経て、新しい事業所と契約を結ぶことになります。ただし、新しい事業所の受け入れ状況や、市区町村への手続きが必要となるため、計画的に進めることが大切です。
まとめ
就労継続支援は、一般就労を目指す方にとっての「ステップアップの場」であると同時に、長期にわたり安定して働く機会と居場所を提供する「セーフティネット」でもあります。利用期間に原則制限がないという特徴は、ご自身のペースを尊重し、安心して働き続けることを可能にしています。
一般就労への「卒業」は大きな目標の一つですが、それがすべてではありません。大切なのは、定期的な見直しを通じて、常に現在の自分に最適な働き方を選択し続けることです。65歳以降の継続利用の特例も含め、制度を正しく理解し、あなたの「働く」を支えるサービスを最大限に活用してください。
まとめ
- 就労継続支援は、A型・B型ともに原則として利用期間の制限はありません。
- 「卒業」とは一般就労への移行を指しますが、長期的な社会参加と生活安定も重要な目標です。
- 65歳以降も、要件を満たせば継続支給の特例によりサービス利用を続けられます。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





