良い就労移行支援と悪い就労移行支援|見極めのチェックリスト

事業所選びで失敗したくない
「就労移行支援事業所はたくさんあるけれど、どこを選べばいいの?」「質の悪い事業所を選んでしまったらどうしよう」——就労移行支援を利用しようと思っても、全国に3,000箇所以上ある事業所の中から、自分に合った良質な場所を見つけるのは簡単ではありません。
この記事では、良い就労移行支援事業所と避けるべき事業所の特徴を具体的に解説し、見学時に使える実践的なチェックリストをご紹介します。貴重な2年間を無駄にしないために、事業所選びのポイントをしっかり押さえておきましょう。
良い就労移行支援事業所の特徴
スタッフの専門性と対応の質
良い事業所の最も重要な特徴は、スタッフの専門性が高く、対応が丁寧であることです。就労支援員、職業指導員、生活支援員など、必要な資格を持つスタッフが配置されており、障害特性への理解が深いことが理想です。
見学時には、スタッフの対応を注意深く観察しましょう。質問に対して丁寧に答えてくれるか、利用者に対して尊重的な態度で接しているか、個別の状況に配慮した提案をしてくれるかなどがポイントです。「どの利用者にも同じことを言っている」と感じたら要注意です。
💡 ポイント
スタッフの離職率も重要な指標です。見学時に「スタッフの平均勤続年数はどのくらいですか?」と聞いてみましょう。スタッフの入れ替わりが激しい事業所は、何か問題がある可能性があります。
具体的で納得できる実績がある
良い事業所は、就職率だけでなく定着率も公開しています。「昨年度の就職率は○%で、就職後1年経過した時点での定着率は△%です」と具体的な数字を示してくれるはずです。
さらに、どんな業種・職種への就職実績が多いか、どんな企業と連携しているかなども教えてくれます。「多くの方が就職しています」といった曖昧な説明しかしない事業所は、実績に自信がない可能性があります。
個別支援計画が充実している
良い事業所では、一人ひとりに合わせた個別支援計画をしっかり作成します。利用開始前の面談で、本人の希望、目標、課題、必要な配慮などを丁寧にヒアリングし、それに基づいた計画を立ててくれます。
また、計画は固定されたものではなく、定期的に見直して調整してくれることも重要です。「うちのプログラムはこれです」と画一的な対応しかしない事業所は避けた方がよいでしょう。
訓練プログラムが多様で実践的
良い事業所は、多様で実践的な訓練プログラムを提供しています。基礎的なビジネスマナーから、パソコンスキル、専門的な職業訓練、職場実習まで、段階的に学べる環境が整っています。
見学時には、実際にどんな訓練をしているか見せてもらいましょう。設備や教材が充実しているか、訓練内容が時代に合っているかもチェックポイントです。古いバージョンのソフトしかない、実習先の企業がほとんどないといった事業所は要注意です。
就職後の定着支援が手厚い
本当に良い事業所は、就職して終わりではありません。就職後も定期的に職場を訪問したり、本人と面談したりして、長く働き続けられるようサポートしてくれます。
「定着支援は月に何回くらい行っていますか?」「どんな形でサポートしてもらえますか?」と具体的に聞いてみましょう。明確な答えが返ってこない場合は、定着支援に力を入れていない可能性があります。
避けるべき就労移行支援事業所の特徴
就職率だけを強調する
注意すべきなのは、就職率の高さだけを過度にアピールする事業所です。就職率が高くても、定着率が低ければ意味がありません。早期離職が多い可能性があります。
また、「就職率90%!」などと謳っていても、その計算方法が曖昧な場合があります。退所者全体に対する就職者の割合なのか、就職を目指した人に対する割合なのかで、数字は大きく変わります。数字のトリックに惑わされないよう注意しましょう。
⚠️ 注意
「とにかく早く就職させる」ことを重視し、本人の希望や適性を無視して就職を急かす事業所は避けるべきです。就職がゴールではなく、長く働き続けることが本当のゴールです。
利用者への対応が雑または高圧的
見学時に利用者への対応を観察して、雑な扱いや高圧的な態度が見られたら要注意です。「もっと頑張れ」「やる気がない」などと利用者を責めるような言葉が聞こえたら、その事業所は避けた方が無難です。
また、利用者が萎縮している様子、スタッフに話しかけづらそうにしている様子が見られる場合も、良好な関係が築けていない可能性があります。
見学や体験利用を渋る
良い事業所は、見学や体験利用を積極的に受け入れます。逆に、「今日は見学できない」「体験利用はやっていない」などと理由をつけて断る事業所は、何か隠したいことがある可能性があります。
特に、実際の訓練の様子を見せてくれない、利用者と話をさせてくれない、質問に対して曖昧な返答しかしないといった事業所は避けた方がよいでしょう。
費用や契約について説明が不透明
利用料金、その他にかかる費用、契約内容について、明確に説明してくれない事業所は信頼できません。「詳しいことは契約時に」「後で説明します」などと言って、具体的な情報を出し渋る場合は要注意です。
良い事業所は、費用負担の仕組み、交通費や昼食代などの実費、契約期間や解約の方法などを、事前に丁寧に説明してくれます。
設備や環境が劣悪
施設が極端に古く不衛生、設備が不十分、安全面に問題があるといった事業所も避けるべきです。訓練環境は、モチベーションや健康に直結します。清潔で安全、快適に過ごせる環境が整っているかチェックしましょう。
見学時に使える具体的チェックリスト
スタッフに関するチェック項目
見学時には、以下の点をチェックしましょう。
- 質問に対して丁寧で具体的な回答があるか
- 利用者への接し方が尊重的で温かいか
- 専門的な資格や経験について説明があるか
- スタッフの人数は十分か(利用者10人に対して2〜3人以上が目安)
- スタッフ間の雰囲気は良好か
プログラムと実績に関するチェック項目
- 個別支援計画について具体的な説明があるか
- 訓練プログラムの内容が自分の目標に合っているか
- 就職率と定着率の両方を具体的な数字で示してくれるか
- 職場実習の機会があるか、どんな企業と連携しているか
- 就職後の定着支援の内容が明確か
✅ 成功のコツ
チェックリストを印刷して持参し、見学後にその場で記入すると、後で複数の事業所を比較するときに役立ちます。印象だけでなく、客観的な基準で評価しましょう。
環境と雰囲気に関するチェック項目
- 施設は清潔で安全か
- 訓練に必要な設備や教材が充実しているか
- 通いやすい立地にあるか
- 利用者の表情は明るいか、リラックスしているか
- 全体的な雰囲気が自分に合っていると感じるか
複数の事業所を比較する方法
最低3箇所は見学する
事業所選びで失敗しないためには、最低でも3箇所は見学することをおすすめします。1箇所だけでは比較ができず、それが普通なのか特殊なのか判断できません。
複数を見学することで、それぞれの特徴や違いが明確になり、自分に合った事業所を見つけやすくなります。時間はかかりますが、2年間を過ごす場所を決める重要な作業ですので、手間を惜しまないようにしましょう。
口コミや評判も参考にする
インターネット上の口コミや評判も参考程度にチェックしましょう。ただし、匿名の口コミには偏りや虚偽の情報も含まれる可能性があるため、鵜呑みにはせず、自分の目で確かめることが大切です。
可能であれば、実際に利用している人や卒業生の話を聞けると、よりリアルな情報が得られます。見学時に「卒業生の声を聞くことはできますか?」と聞いてみるのもよいでしょう。
相談支援専門員に意見を聞く
市区町村の相談支援専門員は、地域の事業所の情報を豊富に持っています。「○○事業所と△△事業所で迷っているのですが」と相談すれば、客観的な視点からアドバイスをもらえることがあります。
ただし、相談支援専門員にも得意不得意があるため、最終的には自分の判断を大切にしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 見学だけで本当に良し悪しが判断できますか?
完璧には判断できませんが、多くのことがわかります。だからこそ、複数箇所を見学し、可能であれば体験利用もすることをおすすめします。実際に数日過ごしてみると、見学だけではわからない雰囲気や相性が見えてきます。
Q2. 事業所を途中で変更することはできますか?
はい、できます。利用開始後に「合わない」と感じたら、他の事業所への変更を検討できます。ただし、2年という期限は通算されるため、残りの期間が短くなることには注意が必要です。
Q3. 大手の事業所の方が安心ですか?
必ずしもそうとは限りません。大手にも小規模にも、それぞれ良い事業所と悪い事業所があります。規模よりも、スタッフの質、プログラム内容、自分との相性を重視して選びましょう。
Q4. 就職実績が少ない新しい事業所は避けるべきですか?
新しい事業所だからといって、必ずしも悪いわけではありません。スタッフの経験や専門性、設備の充実度、運営会社の実績などを総合的に判断しましょう。新しい事業所の方が設備が新しく、柔軟な対応をしてくれることもあります。
Q5. 家から遠い事業所でも良い事業所なら選ぶべきですか?
通所の負担は継続に大きく影響します。どんなに良い事業所でも、通うのが大変で途中で挫折してしまっては意味がありません。質と通いやすさのバランスを考えて選ぶことをおすすめします。
まとめ
この記事では、良い就労移行支援事業所と避けるべき事業所の見極め方について解説しました。
- 良い事業所は、スタッフの専門性、具体的な実績、個別支援、多様なプログラム、手厚い定着支援が特徴です
- 避けるべき事業所は、就職率だけを強調、対応が雑、見学を渋る、説明が不透明、環境が劣悪などの特徴があります
- 見学時にはチェックリストを活用し、複数の事業所を客観的に比較しましょう
- 最低3箇所は見学し、可能であれば体験利用もすることをおすすめします
- 口コミや相談支援専門員の意見も参考にしつつ、最終的には自分の目で確かめることが大切です
貴重な2年間を有意義に過ごすために、事業所選びには十分な時間をかけましょう。焦らず、納得のいく選択をすることが、就職成功への第一歩です。
あなたに最適な事業所が見つかることを願っています。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





