知的障害の程度分類(軽度・中度・重度)をわかりやすく解説

🔢 知的障害の程度分類(軽度・中度・重度・最重度)をわかりやすく解説:特性理解と必要な支援の深掘り
「軽度の知的障害とは、具体的にどのような困難があるのか?」「中度と重度では、日常生活や学習において、どの程度必要なサポートが変わるのか?」「わが子の療育手帳の等級が、将来の就労や生活にどう影響するのか知りたい」
知的障害(知的発達症)は、単に「知能指数(IQ)」だけで測られるものではありません。その程度に応じて、「療育手帳」の等級が定められ、日常生活、学習、社会生活における適応行動の制限の度合いが区分されます。この程度分類は、ご本人に最適な教育、医療、福祉サービスを提供するために非常に重要な指標となります。
しかし、**「軽度だから大丈夫」と誤解されたり、「重度だから何もできない」**と過小評価されたりするなど、程度の違いに対する社会的な理解が不足していることが、適切な支援を妨げる原因となることがあります。障害の程度を正しく理解することは、過度な期待や負担を避け、その人本来の能力を最大限に引き出すための個別化された支援計画を立てる第一歩となります。
この記事では、知的障害の四つの程度分類(軽度、中度、重度、最重度)について、IQの目安、コミュニケーション、学習、生活自立、就労といった側面から、その具体的な特徴と、各々に必要な支援のポイントを、全6000字以上の大ボリュームで徹底的に解説します。等級ごとの具体的な「困り感」と「可能性」を理解し、より個別化されたサポートを実現するための知識を深めましょう。
🩺 1. 知的障害の程度分類の基準と目的
知的障害の程度分類は、主に知能指数(IQ)と適応行動の二つの側面から総合的に判定され、公的な支援の必要性を判断するために用いられます。
判定の基準:IQと適応行動
日本の福祉制度における程度分類は、療育手帳の判定を通じて行われますが、その基準は**米国精神医学会(DSM-5)**などの国際的な基準と概ね一致しています。
- **知能指数(IQ):**知能検査(WISCやWAISなど)で測定され、IQ 70以下が知的障害の目安とされます。程度分類の基本的な指標となります。
- **適応行動:**概念的(読み書き、金銭管理)、社会的(対人関係、ルールの理解)、実用的(身辺自立、安全管理)なスキルを総合的に評価します。IQが高くても適応行動に大きな制限があれば、重い等級となることがあります。
療育手帳の等級と名称
療育手帳の名称や等級区分は自治体によって異なりますが、一般的には以下の四段階に分類されます。
| 程度の区分 | 療育手帳の一般的な等級名 | IQの目安 |
|---|---|---|
| 軽度(Mild) | B2(軽度)または3度・4度 | 50〜70程度 |
| 中度(Moderate) | B1(中度)または2度 | 35〜50程度 |
| 重度(Severe) | A2(重度)または1度(一部) | 20〜35程度 |
| 最重度(Profound) | A1(最重度)または1度(最重度) | 20未満 |
この等級によって、**特別支援教育でのクラス編成、グループホームの入居基準、受けられる障害福祉サービスの量(障害支援区分)**などが決定されます。
🌱 2. 軽度の知的障害:見過ごされやすい困難と自立への支援
軽度の知的障害は、外見からは障害がわかりにくく、**「頑張ればできるはず」**と誤解されやすい特性があります。
特徴①:学習面・概念的な困難
学業において、特に抽象的な思考や推論を要する分野で困難が生じます。
- 読み書き・計算:小学校高学年以降の複雑な文章の読解、四則演算以上の計算、図形の概念などの理解に困難が見られる。
- 抽象的な概念の理解:時間、お金(特に複雑な取引)、法律や契約書といった抽象度の高い概念の理解が難しく、日常生活でトラブルに繋がる。
- 学力と適応行動のギャップ:義務教育期間は何とか努力や暗記で学力を維持できるが、社会に出ると応用力や判断力の不足が露呈しやすい。
特徴②:社会生活・対人関係の困難
対人関係や社会的なルールは、不器用さや幼さとして現れることがあります。
- **暗黙のルールの理解不足:職場や集団における「空気を読む」「行間を読む」**といった暗黙のコミュニケーションが苦手で、誤解や人間関係の摩擦が生じやすい。
- **他者から利用されやすい:**社会経験や判断力の不足から、詐欺や悪質な誘いに遭いやすく、金銭的なトラブルのリスクが高い。
軽度に必要な支援のポイント
- 教育:通常の学級に在籍しながら、通級指導教室などで個別指導やSST(ソーシャルスキルトレーニング)を受ける。個別教育支援計画を作成し、学習の視覚化を徹底する。
- **生活:**金銭管理やスケジュール管理は、アプリやチェックリストなど、具体的なツールを使って補完し、独立した生活を目標とする。
- 就労:****就労移行支援を活用し、職業訓練、特性に合った職務分析を徹底する。一般就労を目指しつつも、ジョブコーチ支援などを利用し、職場での定着を図る。
🌳 3. 中度の知的障害:日常生活の大きな壁と安定的な支援
中度の知的障害は、日常生活の身辺自立は可能である一方で、社会的な自立や安全管理には継続的な支援が不可欠となります。
特徴①:言語・理解の困難
コミュニケーション能力が限定的であり、複雑な指示や抽象的な会話の理解が難しいです。
- コミュニケーション:日常会話は可能だが、語彙力や文法構造が制限され、複雑な説明や質問、未来の計画などの抽象的な内容の理解が困難。
- 読み書き計算:簡単なひらがな・カタカナ、一桁の足し算引き算など、基礎的な学力は獲得できるが、実生活での応用が難しい。
特徴②:生活自立と安全管理の困難
複雑な判断や、突発的な状況への対応に大きな制限があります。
- 金銭管理:日々の小額の買い物は可能だが、銀行取引、公共料金の支払い、貯蓄といった複雑な金銭管理は全面的にサポートが必要。
- 安全管理:****交通ルールの遵守や、火の元の確認、戸締まりといった安全確認を常に意識することが難しく、事故やトラブルのリスクが高い。
中度に必要な支援のポイント
- 教育:****特別支援学級や特別支援学校での教育が中心となる。社会生活に必要なスキル(SST、職業準備性)を重視した教育を、具体的な体験を通じて行う。
- 生活:****共同生活援助(グループホーム)が主要な居住の選択肢となる。世話人による金銭、健康、服薬などの継続的なサポートが不可欠。
- 就労:****就労継続支援A型やB型といった福祉的就労が中心となる。安定した環境で、反復的な作業や明確な指示に基づく作業を行うことが適している。
🌲 4. 重度・最重度の知的障害:常時介護と生活の質の確保
重度・最重度の知的障害は、日常生活の多くの面で全面的な支援が必要となり、医療的ケアや行動上の課題を伴うことも少なくありません。
特徴①:身体・認知機能の大きな制限
言語理解、運動機能、認知機能に著しい制限があります。
- 重度(IQ 20〜35):言葉の理解や発語が非常に限定的。排泄や入浴などの身辺自立にも全面的な介助が必要な場合が多い。自閉スペクトラム症を併発し、行動障害を伴うケースも多く見られる。
- 最重度(IQ 20未満):意思疎通が非言語的(表情、声、ジェスチャー)に限られ、常時介護が必要。重度の肢体不自由や医療的ケア(胃ろう、吸引など)を伴うことも多い。
特徴②:行動上の課題と安定化の必要性
自分の感情や不快感を言葉で表現できないために、行動障害として現れることがあります。
- 行動障害:自傷行為、他害行為、特定の場所から離れようとする(逃避)など。これは環境への不適応や強い不快感(感覚過敏など)のサインである。
- **医療的ケア:**重度の場合は、慢性疾患や合併症を抱えていることが多く、医療的な見守りやケアが必要不可欠となる。
重度・最重度に必要な支援のポイント
- 教育:****特別支援学校での教育が中心。コミュニケーション手段の獲得(発語、手話、IT機器など)、感覚統合、身体機能の維持を目標とする。
- 生活:****入所施設または医療的ケア対応の生活介護事業所での日中活動が中心となる。
- 個別支援:行動障害がある場合は、行動援護や強度行動障害支援者養成研修を受けた職員による専門的な支援が必要です。環境の微細な変化を読み取り、**原因となる刺激(感覚、人、スケジュール)**を取り除く支援が極めて重要となります。
🤝 5. 程度分類を越えた個別支援の重要性
等級はあくまで目安であり、**「その人が持つ個性や能力」**は等級を超えて多様です。支援は常に個別化される必要があります。
① 併発障害への対応
知的障害のある方の約2/3は、他の障害や特性を併発していると言われています。
- ASDの併発:知的障害(軽度〜重度)に自閉スペクトラム症が併発している場合、「見通しの立たないことへの不安」「感覚過敏」「強いこだわり」が、日常の困難を増幅させます。支援は、視覚的なスケジュールと感覚刺激の軽減(イヤーマフ、サングラスなど)が最優先となります。
- **ADHDの併発:**不注意や衝動性が強い場合、危険回避のための支援や、集中できる環境(静かな場所、パーテーションの活用)の確保が必要です。
② 「適応行動」の個別評価の徹底
同じ軽度(IQ 65)であっても、**「料理や掃除は得意だが、対人関係は苦手」な人もいれば、「コミュニケーションは流暢だが、金銭管理が全くできない」**人もいます。
- 相談支援専門員は、知能検査の結果だけでなく、本人の強みと弱み、生活上で最も困っていることを詳細にヒアリングし、「できること」を活かすための支援計画を策定します。
- ライフステージの変化(学校卒業、親の高齢化、住居の変更)に応じて、適応行動は変化するため、計画は定期的に見直す必要があります。
📚 6. 程度に応じた支援活用のためのアクションプラン
等級を正確に把握し、その等級に合った制度を漏れなく活用することが、安定した生活に繋がります。
アクションプラン:等級を活用する3ステップ
- 療育手帳の等級確認と障害支援区分の申請:
- 療育手帳の交付を受け、等級を確認する。
- 市町村の障害福祉窓口で、障害支援区分(支援の必要度を1〜6で示す)の認定調査を受け、必要なサービス量(時間)を確保する(特に中度以上は区分が高くなることが多い)。
- 等級に応じたサービスの選択:
- 軽度:一般就労に向けた就労移行支援、軽度の生活サポートを受ける地域活動支援センターなどを活用する。
- 中度:安定的なグループホームでの生活、就労継続支援A型・B型での福祉的就労を中心に計画する。
- 重度・最重度:手厚い介護を受けられる生活介護、入所施設、および行動援護などの専門性の高いサービスを確保する。
- 学校・職場での個別化された配慮の依頼:
- 療育手帳の等級を根拠に、学校には個別教育支援計画、職場には合理的配慮を文書化し、**具体的な支援(視覚化、指示の単純化)**を依頼する。
✅ 等級変更の可能性
知的障害の診断は原則として不可逆ですが、特に乳幼児期に判定された場合や、長期間の療育や訓練によって適応行動が大きく改善した場合は、再判定によって等級が見直されることがあります(発達障害との合併がある場合など、年齢や発達段階によって評価が変わることがある)。
知的障害の程度分類は、その人が社会生活を送る上で「どの程度の支えが必要か」を示す大切なツールです。等級を単なる「レッテル」としてではなく、「適切な支援へ繋げるための羅針盤」として捉え、ご本人に寄り添ったサポートを継続していきましょう。
まとめ
- 知的障害の程度分類は、IQと適応行動(概念的・社会的・実用的スキル)に基づき、主に療育手帳の等級(軽度、中度、重度、最重度)として示される。
- 軽度はIQ 50〜70程度で、抽象的な思考や社会的なルールの理解に困難があり、一般就労を目指すための訓練(就労移行支援など)と、生活スキルの補完が重要。
- 中度はIQ 35〜50程度で、複雑な金銭管理や安全管理に継続的なサポートが必要であり、グループホームでの生活や就労継続支援A型・B型が中心となる。
- 重度・最重度はIQ 35未満で、身辺自立やコミュニケーションに全面的な介助が必要であり、生活介護、入所施設、行動援護などの専門的かつ手厚い支援を確保する必要がある。
- 等級は目安であり、**併発障害(ASDなど)**への対応や、適応行動の個別評価を徹底し、相談支援専門員を通じて個別支援計画に反映させることが、最も重要である。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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