精神障害の人が抱える体調不良の特徴と支援方法

精神障害の人が抱える体調不良の特徴と支援方法
「頭痛や吐き気が続くけれど、病院では特に異常がないと言われた」「睡眠障害で日中のだるさが抜けない」「精神的な不調がひどくなると、決まってお腹の調子が悪くなる」—精神障害を持つ方やそのご家族・支援者の方で、心と体の不調が複雑に絡み合い、どう対処すれば良いか悩んでいませんか。
精神障害を持つ方は、病気の症状だけでなく、ストレスによる自律神経の乱れ、薬の副作用、そして生活習慣の乱れなど、様々な要因から特有の体調不良を抱えやすい傾向にあります。
この記事では、精神障害(統合失調症、うつ病、双極性障害など)に多く見られる身体症状の特徴と、その原因を詳しく解説します。さらに、これらの体調不良を予防し、心身ともに安定した生活を送るための具体的なセルフケアや支援の方法を、専門的な視点からご紹介します。
心と体は密接に繋がっています。そのつながりを理解し、適切なケアを行うことで、日々の生活の質(QOL)向上を目指しましょう。
精神障害と体調不良の関係:脳と自律神経の連携
精神的な不調が身体的な症状として現れるのは、脳と体が密接に連携しているためです。この関係性を理解することが、適切な支援の第一歩となります。
「脳腸相関」と消化器系の不調
脳と腸は、自律神経や様々なホルモンを介して常に情報をやり取りしています。これを脳腸相関(のうちょうそうかん)と呼びます。
精神的なストレスや不安、うつ状態がひどくなると、脳から腸へと負の信号が伝わり、下痢、便秘、腹痛、吐き気などの消化器系の不調として現れやすいです。
特に、不安障害やうつ病を抱える方の中には、過敏性腸症候群(IBS)を合併しているケースが多く見られます。
自律神経の乱れによる全身症状
精神的な緊張や不安が慢性的に続くと、体を興奮・活動させる交感神経が優位になりすぎ、体を休息・修復させる副交感神経とのバランスが崩れます。
この自律神経の乱れが、以下のような全身にわたる体調不良を引き起こします。
- 頭痛・めまい:血管の収縮と拡張が不規則になることによる。
- 動悸・息苦しさ:交感神経の刺激による心拍数の増加。
- 慢性的な肩こり・倦怠感:筋肉の過剰な緊張が続くことによる。
これらの症状は、病気の再発や悪化のサインとして現れることもあるため、注意が必要です。
薬物療法に伴う副作用
精神科で処方される薬(抗精神病薬、抗うつ薬など)は、症状を安定させる上で不可欠ですが、時に様々な副作用として身体症状を引き起こすことがあります。
代表的な副作用には、眠気(傾眠)、口の渇き(口渇)、便秘、体重増加、アカシジア(そわそわしてじっとしていられない)、錐体外路症状(手の震えなど)があります。
副作用による体調不良は、服薬継続の大きな妨げとなります。不調を感じたら、自己判断で服薬を中止せず、必ず主治医に相談し、薬の調整を行ってもらいましょう。
主な精神障害別に見る体調不良の特徴と支援
精神障害の種類によって、現れやすい身体症状や、それに対する適切な支援方法が異なります。
うつ病・双極性障害に多い身体症状
うつ病や双極性障害(双極症)の抑うつ状態では、精神症状だけでなく、強い身体症状が先行したり、同時に現れたりすることが多いです。
- 睡眠障害:不眠(寝つきが悪い、途中で目覚める)や過眠(寝すぎる)など、睡眠リズムの深刻な乱れ。
- 全身の倦怠感:体が鉛のように重いと感じるほどの強い疲労感。
- 食欲不振・過食:食欲がなくなる、または逆にストレスから過食に走る。
支援のポイント:規則正しい生活リズムの再構築が最優先です。日中の活動量を無理のない範囲で増やし、朝は決まった時間に起床して光を浴びるよう促しましょう。
統合失調症に多い身体的困難
統合失調症の場合、疾患自体による症状に加え、薬の副作用による体調不良や、生活習慣の乱れからくる健康問題が深刻化しやすい傾向があります。
⚠️ 注意
抗精神病薬の長期服用は、体重増加や耐糖能異常(糖尿病リスク)などの代謝系の副作用を引き起こすリスクがあります。定期的な血液検査と、栄養指導、運動指導による生活習慣病の予防が重要です。
また、幻覚や妄想などの症状が強い時は、体の異変を正確に認識したり、他者に伝えたりすることが困難になるため、支援者は日頃から体調の変化を客観的に観察することが求められます。
不安障害・パニック障害に特有の症状
不安障害やパニック障害では、強い精神的な不安が、身体的な危機として認識され、症状が現れます。
パニック発作時には、動悸、胸の痛み、息苦しさ、手足の痺れ、めまいなどが現れ、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖を伴います。
支援のポイント:発作時は、まずは「命に別状はない」という安心感を与え、ゆっくりとした呼吸法(腹式呼吸)を促し、過呼吸を防ぎましょう。
体調不良を予防するセルフケアと生活調整
精神障害に伴う体調不良の多くは、日々のセルフケアと生活習慣の見直しによって、その程度を軽減したり、予防したりすることが可能です。
「記録」による体調の自己モニタリング
自分の心身の状態を客観的に把握し、不調の「パターン」や「前兆」を知ることが、早期対処に繋がります。
- 体調記録:毎日の気分、睡眠時間、服薬状況、そして頭痛や腹痛などの身体症状を記録する。
- ストレス源の特定:体調が悪くなる前に、どんなストレス(人間関係、活動量の増加など)があったかを振り返る。
この記録を主治医や支援者と共有することで、症状悪化のトリガー(引き金)を特定しやすくなります。
「SST」で身につける対人ストレス対処法
対人関係や社会生活におけるストレスは、心身の不調の大きな原因となります。
SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)を受けることで、自分の意見を適切に伝える(アサーション)、断る、感情を表現するといった対人スキルを身につけ、ストレス耐性を高めることができます。
SSTは、就労移行支援事業所や地域活動支援センターなどで提供されています。
規則正しい「食事と運動」による体の土台作り
薬の副作用や自律神経の乱れに対抗するためには、体の土台をしっかりと作ることが欠かせません。
✅ 成功のコツ
栄養バランスの取れた食事を規則正しく摂り、特に腸内環境を整える食物繊維や発酵食品を積極的に摂取しましょう。
また、散歩や軽いストレッチなどの有酸素運動は、気分を高揚させ、睡眠の質を高める効果があります。
支援者・家族のための「適切な関わり方」
体調不良を訴える当事者に対し、支援者や家族がどのように理解し、サポートしていくべきか、具体的な関わり方のポイントをご紹介します。
「身体化」の理解と共感的な傾聴
当事者が訴える身体の痛みや不調は、「気のせい」や「大げさ」ではなく、精神的な苦痛が身体化している(体に現れている)現実の苦しみであることを理解することが重要です。
「頭が痛い、お腹が痛い」と訴えられた時、まずは「そうなんだね、つらいね」と共感し、その訴えを否定せずに受け止める(傾聴する)姿勢が、安心感に繋がります。
— 精神科看護師
心身の不調を言語化し、受け止めてもらうことで、不安が軽減され、自律神経の緊張が和らぐことがあります。
専門家との「情報共有」と連携
体調不良が病気の再発や悪化に伴うものか、薬の副作用によるものか、あるいは単なる風邪なのかを、家族や支援者が判断するのは困難です。
日々の体調記録や、気になる身体症状を、主治医や訪問看護師、精神科ソーシャルワーカーなど、専門職と積極的に共有し、連携を取りましょう。
特に、服薬後の体調変化(眠気、手の震えなど)は、薬の調整に直結するため、詳細に伝える必要があります。
休養と活動量の「ペーシング」サポート
うつ状態の倦怠感や、過度な緊張からくる疲労に対し、当事者に「頑張れ」と促すのは逆効果です。
支援者は、当事者のエネルギー残量を客観的に評価し、活動と休養のバランスを取る「ペーシング」をサポートしましょう。
例えば、「今日は調子が悪いから、家事はこれだけにして、残りは明日やろう」といった形で、休息の許可と、活動量の柔軟な調整を促します。
よくある質問(FAQ)と相談窓口リスト
精神障害に伴う体調不良に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。
Q. 検査で異常がないのに、なぜ体調が悪いのですか?
A. 血液検査や画像検査で異常が見られないのに体調が悪い場合、それは精神的なストレスや不安が、自律神経を通じて身体症状として強く現れている可能性が高いです(心身症、自律神経失調症など)。
「異常なし=健康」ではなく、「精神的なケアが必要な身体症状である」と捉え、心療内科や精神科で相談を続けましょう。
Q. 薬の副作用なのか、病気の症状なのか区別がつきません。
A. 専門家でも区別が難しい場合があります。体調不良が「薬を飲み始めてから始まったのか」「病気が悪化する前兆として出てきたのか」といった経過を詳細に記録し、主治医に報告することが重要です。
特に、アカシジア(そわそわ感)や手の震えは副作用の可能性が高く、服薬量を調整することで改善することが多いです。
Q. どこに相談すれば総合的なサポートを受けられますか?
A. 精神障害に関する体調不良や生活の困りごとは、複数の機関の連携でサポートされます。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 心身の不調と生活全般に関する初期相談、適切な機関の紹介。 |
| 精神科訪問看護 | 自宅での体調管理、服薬管理、生活リズムの指導。 |
| 保健所(精神保健福祉士) | 公的な支援制度や社会資源に関する情報提供。 |
まとめ
- 精神障害に伴う体調不良の多くは、脳腸相関や自律神経の乱れ、そして薬の副作用が原因です。
- 体調不良の予防には、毎日の体調記録による自己モニタリングと、SSTによる対人ストレス対処法の習得が有効です。
- 支援者は、身体化の訴えを否定せず共感し、専門家と連携を取りながら休養と活動の「ペーシング」をサポートすることが重要です。
心身の不調は、あなたの体が発する大切なメッセージです。このメッセージを無視せず、適切なケアを継続することで、心穏やかな毎日を取り戻すことができます。
まずは、今日から「気分と身体症状を毎日記録する『体調日記』」をつける習慣を始め、自分の体と心のパターンを知ることからスタートしてみましょう。
主な相談窓口・参考情報
- 精神科・心療内科: 診断と治療、薬の調整。
- 精神保健福祉センター: 専門的な相談と地域資源の紹介。
- 訪問看護ステーション: 自宅での継続的な健康管理サポート。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





