先生に伝わりやすい困りごとの伝え方

先生に伝わりやすい困りごとの伝え方:学校との連携を深める技術
「うちの子の困りごとを先生に伝えているのに、なかなか理解してもらえない気がする……」
「どんな言葉を選べば、学校に負担をかけずに必要な支援をお願いできるのだろう?」
配慮が必要なお子さんの保護者や支援者の皆様にとって、学校の先生方との連携は、お子さんの学校生活の質を左右する最も重要な要素の一つです。しかし、忙しい先生方に、複雑で多岐にわたるお子さんのニーズを正確に伝え、具体的な行動変容に繋げてもらうのは、簡単なことではありません。
このページでは、お子さんの「困りごと」を「学校で実践できる具体的な支援」へと変換し、先生方に「伝わりやすい」「行動しやすい」形で提案するための、実践的かつ具体的なコミュニケーション技術を、豊富な事例とともに詳しくご紹介します。
この記事を読み終える頃には、きっと自信を持って学校との対話に臨み、お子さんにとってより良い教育環境を築くための道筋が見えてくるはずです。
伝わらない理由を知る:学校側の状況と視点
先生方の多忙な現状と情報処理の課題
まず、私たちが伝えたい困りごとが先生に「伝わりにくい」理由の背景には、学校現場の多忙さがあります。クラス運営、授業準備、保護者対応、部活動、そして校務分掌(事務作業)など、先生方は常に多くの業務に追われています。
文部科学省の調査データを見ても、教員の勤務時間は平均して非常に長く、特に担任の先生は、個々の生徒に割ける時間や、保護者からの情報をじっくりと読み込む時間が物理的に限られています。このような状況下で、情報量が多すぎたり、整理されていない情報は、先生方にとって「処理しきれないタスク」として認識されてしまいがちです。
⚠️ 注意
先生は「支援の専門家」ではありますが、「全ての子どもの特性の専門家」ではありません。特に発達障害や難病などに関する専門知識は、個々の先生によって差があることを理解しておくことが、対話のスタート地点になります。
そのため、情報を伝える側である保護者や支援者には、先生方の状況を理解し、「短時間で」「必要な情報だけ」を伝える工夫が求められます。先生方がすぐに「これは〇〇の時に役立つ情報だ」と判断し、次の行動に移れるような伝え方を意識しましょう。
「困りごと」と「特性」の区別を明確にする
私たちが「困りごと」として伝える際、それが単なる「現象(結果)」なのか、その背景にある「特性(原因)」なのかを区別できていないと、先生には具体的な支援策が見えません。
例えば、「うちの子は授業中に立ち歩いて困る」というのは「現象(結果)」です。これだけでは先生は「注意すればいいのか」「休憩させればいいのか」が判断できません。しかし、「聴覚過敏があり、周囲の雑音が気になって集中できず、そのストレス解消のために立ち歩く」と伝えれば、これは「特性(原因)」に基づいた情報となり、先生は「雑音を減らす工夫(座席変更やイヤーマフの使用許可)」という具体的な支援策に繋げやすくなります。
先生が知りたいのは、その困りごとの背後にあるメカニズムです。抽象的な言葉や診断名(例:ADHDなので)だけで終わらせず、その特性が「学校生活のどの場面で」「どのように」現れるのかを、具体的なエピソードとともに伝えることが、伝わりやすさの鍵となります。
学校の組織体制と情報共有のルート
私たちが伝える情報は、担任の先生だけでなく、学年の先生、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、教頭・校長など、多くの教職員に共有される必要があります。情報が伝わりやすいように、学校の情報共有のルートを理解しておくことも大切です。
多くの場合、保護者から担任の先生に伝えられた情報は、担任から特別支援教育コーディネーターに集約され、そこで具体的な支援策が検討された後、必要に応じて他の教職員に伝達されます。コーディネーターの先生は、学校全体の支援をマネジメントする役割を担っているため、まずはこの先生との連携を深めることが、効率的な情報共有に繋がります。
| 担当者 | 主な役割と伝達すべき情報 |
|---|---|
| 担任の先生 | 日常の具体的な困りごとと、家庭で成功している小さな工夫 |
| 特別支援教育コーディネーター | 診断情報、過去の支援経過、具体的な合理的配慮の要求 |
| 養護教諭(保健室の先生) | 体調の変化、感覚過敏、服薬情報、二次障害の兆候 |
情報の送り先を意識し、誰に、何を、どの深さで伝えるかを事前に整理しておくだけで、先生方の情報処理の負担を大きく減らすことができます。特に重要な情報は、書面(後述の「サポートブック」など)でまとめて渡すことで、情報共有の漏れを防ぐ効果も期待できます。
「客観的な情報」で語るための観察と記録の技術
「主観的な感情」を「客観的な事実」に変換する
保護者や支援者にとって、お子さんの困りごとを見るのは辛く、つい感情的な表現になってしまいがちです。「うちの子はいつも頑張っているのに、先生は理解してくれない」といった主観的な感情を伝えてしまうと、先生方は「感情的な訴え」として受け取ってしまい、具体的な支援策を考えにくくなります。
先生に伝わりやすい情報とは、「誰が見てもそうだと確認できる客観的な事実」です。感情を排し、冷静に事実を伝えることが、先生との建設的な対話の第一歩となります。
変換の具体例:
- 主観的な表現: 「うちの子はいつも友達にいじめられていて辛いようです。」
- 客観的な表現: 「昨日のお昼休み、A君に『バカ』と言われ、その後、教室の隅で30分間泣き続けていました。この状況が週に2〜3回発生しています。」
このように、「誰が(When)、いつ(Who)、どこで(Where)、何を(What)、どのようにしたか(How)」という5W1Hの視点を取り入れて表現することで、先生方も状況を正確に把握しやすくなります。
困りごとを明確にするための「ABC分析」
困りごとを客観的に記録するための有効なツールとして、「ABC分析」があります。これは、問題行動の背景を探るための行動分析の手法です。ABCはそれぞれ以下の頭文字です。
- A (Antecedent/先行事象): 問題行動が起こる「直前」に何が起こったか。(例:チャイムが鳴った、先生に質問された、隣の席の子が消しゴムを落とした)
- B (Behavior/行動): 実際に起きた問題行動は何か。(例:大声を出した、机の下に潜り込んだ、筆箱を投げた)
- C (Consequence/結果事象): 問題行動の「直後」に何が起こったか。(例:先生が駆けつけてくれた、他の生徒が笑った、活動が中断された)
この分析を1週間〜1ヶ月程度行うことで、「特定の環境(A)」が引き金となり、「特定の行動(B)」が起きていることが明確になり、先生方は「A」の部分への介入(環境調整)という具体的な支援策を見つけやすくなります。
「先週の観察記録では、国語の授業で音読の順番が近づくと(A)、必ず保健室に行きたがる(B)というパターンが見られました。このことから、音読への不安が行動の原因ではないかと推測しています。」
— ABC分析に基づいた先生への報告例
✅ 成功のコツ
ABC分析を行う際は、具体的な回数や頻度も記録しましょう。「時々」ではなく「週に3回」「休み時間の始まりから5分以内」といった数字を入れることで、問題の深刻度と緊急性が明確に伝わります。
「サポートブック」や「取扱説明書」の作成と活用
お子さんの特性、困りごと、そして有効な支援策を一つの冊子にまとめた「サポートブック」(または「トリセツ」)を作成することは、情報伝達の効率を飛躍的に高めます。特に転校や進級の際、先生が変わるたびに一から説明する手間を省くことができます。
サポートブックに含めるべき核となる情報:
- 基本情報: 氏名、診断名(任意)、現在の学年、主な相談窓口(病院・療育機関など)。
- 子どもの「取扱説明書」: 好きなこと・苦手なこと、得意な感覚・苦手な感覚(視覚・聴覚・触覚など)、モチベーションが上がる声かけの方法。
- 困りごとの「発生トリガー」と「有効な支援」のセット: 「大きな声を聞くとパニックになる(トリガー)」→「耳を塞ぐことを許可する、またはイヤーマフの使用を認める(有効な支援)」のように具体的に記述。
- 家庭で成功している介入法: 学校でも試せる具体的な対応策をリスト化する。
サポートブックは、A4用紙数枚程度にまとめ、先生が短時間でポイントを把握できるよう、箇条書きや表を多用して簡潔に作成することが伝わりやすさの秘訣です。
「提案型コミュニケーション」で学校と連携する
「要求」ではなく「提案」の形にする重要性
先生に困りごとを伝える際、単に「〇〇をどうにかしてください」という「要求型」の伝え方をしてしまうと、先生方は「負担が増える」というネガティブな印象を持ちがちです。これに対し、「〇〇という困りごとを解決するために、△△という方法はいかがでしょうか」という「提案型」のコミュニケーションは、先生方と一緒に解決策を考える協力的な姿勢を示します。
提案型の伝え方には、以下の要素を盛り込みましょう。
- 現在の困りごとの明確化: 客観的な事実(ABC分析など)を提示する。
- 提案する配慮の具体性: 「漠然とした支援」ではなく「具体的な行動」を提示する。(例:「注目してもらえない」→「先生は声かけの前に肩を軽く叩く」)
- 学校側の負担への配慮: 「これは先生にとって手間がかからない方法だと思いますが」といった一言を添える。
- 効果の予測: 「この配慮によって、授業中の集中力が10%程度向上すると期待できます」のように、ポジティブな効果を伝える。
💡 ポイント
提案は、「先生が今すぐ、手軽に、一人でもできること」から始めるのが成功のコツです。大規模な設備投資や人員配置が必要な提案は、まず特別支援教育コーディネーターと相談し、段階的に進めましょう。
提案を成功させる「スモールスタート」の原則
保護者が完璧だと思う理想の支援策でも、最初から学校に全面的に導入してもらうのは難しい場合があります。そこで活用したいのが、「スモールスタート」の原則です。これは、小さな範囲や短い期間で試行し、効果を検証しながら、徐々に導入範囲を広げていく方法です。
例えば、「全教科の試験時間を延長してほしい」という要求ではなく、「まずは来月の数学の小テスト(15分間)で、5分間の延長を試させていただけませんか?」と提案します。成功したら、「次に主要4教科の定期試験で試したい」と段階的に広げます。
この方法のメリットは二つあります。
- 学校側の心理的なハードルが下がる: 「とりあえず一度だけなら試してみよう」と思ってもらいやすくなります。
- 効果の検証ができる: 実際に効果があったかどうかを客観的に評価し、その後の本格導入の根拠とすることができます。(「小テストの結果、延長したことで得点が平均15点向上しました」など)
小さな成功体験を積み重ねることで、学校側も「この配慮は効果がある」と納得し、積極的にお子さんの支援に取り組む意欲を高めることができます。
「代替案」と「譲歩できる点」を事前に用意する
提案型のコミュニケーションをさらにスムーズにするために、学校側が難色を示した場合に備えて、代替案と譲歩できる点を事前に用意しておきましょう。
学校側が「過度な負担」を理由に要求を断ることがあります。その際、すぐに引き下がるのではなく、「そのご事情は理解しました。では、費用や手間が半減する代替案として、こちらはいかがでしょうか?」と次の提案をすることが大切です。
| 当初の提案(理想) | 学校が難色を示した理由(例) | 代替案(譲歩できる点) |
|---|---|---|
| 専門の介助員を配置してほしい | 人件費の予算がない | 授業間の移動時のみ、学級支援員やボランティアの先生に10分間見守ってもらう |
| 全ての授業でPCの使用を認めてほしい | 教室内での操作音が他の生徒の妨げになる | 板書を写す時のみ使用許可、または、筆記用具として使用可能な静音キーボードを利用する |
| 学級会での発言を免除してほしい | 集団参加の機会を奪いたくない | 発言は求めず、事前に書いたメモを先生経由で読み上げる、または、「挙手制」の時のみ参加を認める |
このように、最初から完璧を求めず、学校の状況を考慮して代替案を提示することで、「この保護者は学校のことも考えてくれている」という協力的な印象を与え、学校との信頼関係を深めることができます。最終目標は、お子さんの支援の実現であり、提案が一つ実現すれば、それは大きな進歩です。
伝達効果を高める「表現」と「フォーマット」の工夫
ネガティブ表現をポジティブな言葉に置き換える
困りごとを伝える際、お子さん自身や学校を責めるようなネガティブな表現は避けるべきです。ネガティブな言葉は、相手に防御的な姿勢を取らせ、対話の妨げになります。常に、未来志向でポジティブな言葉に置き換えて伝える工夫が必要です。
| ネガティブな表現(避けるべき) | ポジティブな表現(推奨) |
|---|---|
| 「理解力がないので、授業についていけていません。」 | 「視覚的な情報で説明すると、より理解が深まる特性があります。」 |
| 「いつも忘れ物をして、先生の手を煩わせています。」 | 「日々の準備は苦手ですが、チェックリストがあれば自分で準備できる可能性が高まります。」 |
| 「何度注意しても聞かないので困っています。」 | 「声かけのトーンを下げると、落ち着いて話を聞ける傾向があります。」 |
特に、先生の行動に対してネガティブなフィードバックをする場合(例:「先生の注意の仕方が強すぎる」)、そのまま伝えると角が立つため、「〇〇という方法(家庭で成功している方法)で声かけをしていただくと、よりスムーズにお子さんが行動できるようです」と、具体的な行動提案に変換して伝えるのが効果的です。
ポジティブな言葉遣いは、先生方が「この子には可能性がある」「この支援策を試せばうまくいく」という期待感を持って支援に取り組むきっかけにもなります。
専門用語は避け、分かりやすい「行動語」を使う
専門用語を多用することも、先生に情報が伝わりにくい原因の一つです。「感覚統合がうまくいっておらず、実行機能の面で問題があります」などと伝えても、特別支援教育の専門家ではない先生にはすぐに理解できません。
大切なのは、専門用語ではなく、誰でも理解できる「行動語」で伝えることです。「感覚統合がうまくいっていない」という代わりに、「特定の服の素材を嫌がり、ざらざらした触感のものを触ると手を強く払いのけます」といった具体的な行動を伝えることで、先生は「じゃあ、この子には肌触りの良い服を推奨しよう」「理科の実験で特定の素材を触らせるのは避けよう」という具体的な支援に結びつけることができます。
もし、専門機関からの所見や診断名(例:自閉スペクトラム症)を伝える必要がある場合は、必ずその特性が学校生活で「具体的にどのような行動」として現れるのかの「翻訳」を添えるようにしましょう。
「診断名はASDですが、具体的には、急な予定変更に強い不安を感じ、朝のスケジュール変更は必ず前日の夜までに伝えていただけると安心します。」
— 専門用語に行動語を添えた伝え方
視覚的なフォーマットと一覧性の確保
先生方は日々、多くの文書を処理しているため、視覚的に整理された文書は非常に喜ばれます。文章の塊(壁)ではなく、リストや表を積極的に使用することで、一目で情報全体を把握できるようになります。
特に有効なフォーマットは以下の通りです。
- 対比表: 「困っている行動」と「家庭で効果があった対応」を左右に対比させて提示する。
- チェックリスト: 朝の支度や授業中に先生が確認すべき行動を、チェックボックス付きでリスト化する。
- 色分け: 緊急性の高い情報(例:アレルギー、パニックのトリガー)を赤や黄色でハイライトし、視認性を高める。
- 図やイラスト: 言葉で説明しにくい感覚的な過敏さや、パニック時の状態などを、簡単な図やイラストで視覚的に表現する。
✅ 成功のコツ
文書の最終ページに、「この書類で先生に覚えておいてほしい最重要ポイント3つ」をまとめ、リストにしておくことで、忙しい先生でも核心的な情報を確実に把握できます。
情報を整理し、視覚的に分かりやすいフォーマットで提供することは、「先生の時間」を尊重しているというメッセージにも繋がります。この配慮こそが、先生方の協力を引き出すための重要な要素となります。
学校との対話を深める面談技術と連携の継続
面談の事前準備:アジェンダ(議題)と時間配分
学校との面談を実りあるものにするためには、徹底した事前準備が不可欠です。限られた時間を有効に使うためにも、面談の前に必ずアジェンダ(議題)と時間配分を決めておきましょう。
アジェンダは、事前に先生に伝えておくのが理想的です。「今回の面談では、以下の3点を重点的に話し合いたいと考えています」と伝えておくことで、先生側も事前に必要な情報を準備でき、効率的な話し合いが可能になります。
- アジェンダの例: (1) 体育の授業中の行動について、(2) 次学期からの配慮の試行について、(3) 宿題の量と内容の調整について。
- 時間配分の例: (1) 15分、(2) 15分、(3) 5分、その他質疑応答5分、合計40分。
また、面談の冒頭で、「本日はお忙しい中ありがとうございます。本日の面談の目的は、〇〇の困りごとに対する具体的な支援策を、先生と一緒に考えることです」と目的を明確に伝えましょう。これにより、話し合いの方向性が逸れるのを防ぐことができます。
面談中の記録:「議事録」を作成し認識のズレを防ぐ
面談中、口頭でのやり取りだけでは、お互いの認識にズレが生じたり、合意したはずの具体的な支援策が実施されなかったりするリスクがあります。これを防ぐために、必ず面談の記録(議事録)を作成することが重要です。
議事録には、以下の要素を明確に記録します。
- 決定事項(合意した配慮): 誰が、いつから、何を、どのように行うか。(例:担任が来週月曜から、朝の会の前に視覚的スケジュールを提示する。)
- 保留事項と次回のアクション: 今回決定しなかった点と、次回までに誰が(先生側か保護者側か)何を調べてくるか。
- 次回面談予定: いつ、どの先生と、どの議題について話し合うか。
面談の最後に、作成した議事録を先生に軽く確認してもらい、「本日の決定事項はこれでよろしいでしょうか?」と相互確認を行うことで、認識のズレを最小限に抑えられます。可能であれば、後日文書として清書し、学校側にも共有しておくとさらに確実です。
「本日の合意事項は、『来週水曜日から、算数の授業中のみ、教室後方の自習スペースでの学習を試行する』で間違いないでしょうか。来月の面談で効果を検証させてください。」
— 面談終了時の確認例
支援の継続と評価:フィードバックと感謝のサイクル
合理的配慮や支援は、一度開始したら終わりではありません。その支援がお子さんに効果をもたらしているかを定期的に評価し、必要に応じて内容を修正していくことが重要です。
支援の継続のためには、先生方への継続的なフィードバックが欠かせません。ただし、そのフィードバックは、ネガティブな指摘だけでなく、ポジティブな評価を優先して伝えるようにしましょう。
- ポジティブなフィードバック: 「先週から座席を窓側から変えていただいたところ、立ち歩く回数が平均で半分以下になりました。本当にありがとうございます。」
- 建設的なフィードバック: 「〇〇先生の支援で授業への参加は改善しましたが、まだ給食の時間が苦手なようです。給食の時間はどうしたら良いか、改めてご相談させてください。」
先生方も、自分たちの努力が効果を生んでいることを実感できると、次への意欲が湧いてきます。小さな変化も見逃さず、「先生のおかげです」「ありがとうございました」という感謝の言葉を伝えることで、学校との信頼関係はより強固なものとなり、長期的な支援体制の維持に繋がります。
よくある質問(FAQ)と具体的な対話のヒント
Q1: 先生が「他の子にも同じ配慮をしないと不公平だ」と言ってきたら?
A: 合理的配慮の目的を説明し、個別性を強調します。
「不公平」という懸念は、合理的配慮を理解していない先生からよく聞かれる言葉です。その場合は、「合理的配慮は、スタートラインを揃えるための個別的な工夫である」という本質を丁寧に伝えます。
対話のヒント:
- 「他の生徒さんが走れるように、うちの子には車椅子が必要です。この配慮は、他の生徒さんと平等に学ぶ機会を得るためのものであり、特別扱いではありません。」
- 「すべての子に同じ支援をする必要はなく、その子に必要な支援を個別に行うことこそが、インクルーシブ教育の考え方だと認識しています。」
この考え方は、障害者差別解消法の趣旨に基づいていることを、落ち着いて伝えてみましょう。それでも理解が得られない場合は、特別支援教育コーディネーターや教育委員会への相談も視野に入れます。
Q2: 過去の失敗体験(うまくいかなかった支援)は伝えた方がいいですか?
A: 成功体験とセットで伝えることで、非常に有効な情報になります。
過去にうまくいかなかった支援も、なぜ失敗したのかの原因分析をセットで伝えることで、先生方にとっては「避けるべき対応」として非常に有用な情報となります。単なる失敗談ではなく、「この方法は効果がなかった」という客観的なデータとして提供しましょう。
対話のヒント:
- 「以前、パニック時に大声で話しかけたことがありましたが、逆効果でパニックが悪化してしまいました。静かに背中をさするのが一番効果的でしたので、その情報も共有させてください。」
- 「去年の担任の先生は、宿題の量を減らしてくれましたが、本人は『みんなと同じでないと嫌だ』と逆にストレスを感じたようです。宿題の調整より、提出期限を遅らせる方が合っているようです。」
「こういう時はうまくいかない」という情報も、大切な特性の一つであり、新しい先生が試行錯誤する手間と時間を大きく減らすことにつながります。
Q3: 担任の先生に限界を感じたら、誰に相談すべきですか?
A: 特別支援教育コーディネーターや管理職に相談ルートを変更しましょう。
担任の先生との相性や、先生自身の経験・知識の限界から、連携が難しくなることは十分に考えられます。その場合は、担任の先生を飛び越えて、学校組織全体で支援体制を考えるためのルートに切り替えるべきです。
- 特別支援教育コーディネーター: まずは学校内の特別支援教育の責任者に、これまでの経緯と困りごとを改めて相談し、仲介役をお願いします。
- 教頭先生・校長先生: 学校の管理職は、組織運営と職員の指導の責任を持っています。支援体制が整わないこと自体が学校運営上の課題であるため、客観的な事実(記録)を基に相談します。
- 教育委員会: 学校内での解決が困難な場合、学校を所管する教育委員会(特別支援教育担当課)に相談します。教育委員会は、学校への指導や助言を行う権限を持っています。
⚠️ 注意
担任の先生を抜きにして管理職に相談する際は、感情的な不満ではなく、「お子さんの安全と学習の機会確保のため、学校全体での組織的な支援をお願いしたい」という冷静な姿勢で臨むことが重要です。
より深い連携を目指して:次へのアクションプラン
学校への感謝と信頼を示す具体的な行動
効果的なコミュニケーション技術を身につけることは大切ですが、それ以上に学校への感謝と信頼を示すことは、長期的な支援体制を築く上で最も強力な武器となります。
具体的には、
- 手書きのメッセージ: 小さなことでも、先生の努力が見えたら、手書きの短いメッセージカードなどで感謝を伝えてみましょう。
- 家庭でのポジティブな言葉がけ: お子さんに対して、「先生がこんな風に工夫してくれたよ」「先生は君のために頑張ってくれているね」と話すことで、お子さんの学校への安心感も高まります。
- 学校行事への協力: 先生の多忙さを理解し、学校行事などで手伝えることがあれば、積極的に協力の姿勢を示す。
こうした日々の積み重ねが、先生方に「この保護者とは一緒に頑張りたい」と感じさせ、協力的なパートナーシップへと発展していきます。信頼関係は、最も困難な状況下で、大きな支援を引き出す土台となるのです。
今後の学校連携に役立つ参考情報
合理的配慮の要求や、先生との連携についてさらに深く学びたい方のために、以下の機関や資料が役立ちます。
- https://www.mext.go.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">文部科学省「合理的配慮」関連資料:国の基本的な考え方を知るための根拠資料です。
- 各自治体の発達障害者支援センター: 地域ごとの具体的な学校連携事例や、コーディネーターの役割についての相談に乗ってくれます。
- 地域のペアレント・サポートグループ: 他の保護者の生の声や、地域で成功している先生とのコミュニケーション事例を聞くことができます。
情報は力です。常に新しい情報を学び、それを「先生に伝わりやすい形」に変換して提供し続けることで、お子さんの学校生活はより豊かで実り多いものになっていくでしょう。
実践への第一歩:3つの具体的なアクション
さあ、この記事で学んだことを実践に移すための、具体的な次の一歩を踏み出しましょう。まずは以下の3つのアクションから始めてみてください。
- 「ABC分析」を1週間試行: お子さんの最も困っている行動を一つ選び、発生した日時、直前の状況(A)、行動(B)、直後の結果(C)をメモに記録する。
- 「困りごとと提案の対比表」を作成: 記録した困りごとを解決するための、学校側の負担が少ない「具体的な行動提案」を2〜3個リストアップする。
- 担任の先生に短時間の面談を依頼: 「〇〇について、ご相談したい具体的な提案があります」と伝え、5〜10分程度の短い時間でアジェンダを伝えて相談する。
小さな一歩が、大きな変化の始まりです。あなたの冷静で建設的な姿勢は、必ず先生方に届き、お子さんの未来を明るく照らす力となります。
まとめ
- 📊 客観的な記録: 感情的な訴えではなく、ABC分析や具体的な頻度といった客観的な事実(記録)を基に、困りごとを伝えることが最も重要です。
- 🤝 提案型の姿勢: 単なる「要求」ではなく、「困りごと」と「学校側の負担を考慮した具体的な支援の提案」をセットで提示し、パートナーシップを築きましょう。
- 📝 視覚化と感謝: サポートブックや表など視覚的に分かりやすいフォーマットを活用し、先生の努力には感謝を伝えることで、長期的な支援体制を維持できます。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





