定時制・通信制高校は障害のある子に向いている?

全日制が合わないと感じたら?障害のある子どもにとって定時制・通信制高校は選択肢になり得るか
中学時代、集団生活や一斉授業のスピード、朝決まった時間に登校することに大きな困難を感じていたお子さんにとって、高校進学は新たな不安を伴う大きな壁かもしれません。「全日制高校に進むべきか」「高校卒業資格は諦めるべきか」といった悩みを抱える中で、定時制高校や通信制高校という選択肢が頭に浮かぶ保護者の方も多いのではないでしょうか。
実際、多様な学習スタイルを持つ定時制・通信制高校は、発達障害(ADHD、ASDなど)や心身の特性により全日制が合わないと感じる子どもたちにとって、学び直しや自己肯定感の回復の場として非常に有効な選択肢となり得ます。しかし、その自由度の高さゆえに、全ての子どもに向いているわけではありません。
この記事では、定時制と通信制の仕組みの違いや障害のある子どもにとってのメリット・デメリットを徹底的に比較します。さらに、学校選びの際にチェックすべき支援体制や、卒業後の進路を見据えた長期的な視点での選択基準について、具体的な事例を交えて詳細に解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、お子さんの特性とニーズに合わせた最適な高校選びの基準を明確にし、高校卒業という目標を達成し、将来の自立へと繋げるための確かな道筋を見つけることができます。
定時制・通信制高校の基本的な違いと特徴
定時制高校と通信制高校は、どちらも全日制とは異なる学びのスタイルを提供しますが、その仕組みや日々の学習方法には大きな違いがあります。お子さんの特性と学習ペースに合わせて、どちらが合っているかを理解することが大切です。
1. 定時制高校の仕組みとメリット・デメリット
定時制高校は、全日制と同様に毎日登校し、対面授業を受けますが、授業の時間帯が夜間(夜間定時制が最も多い)や昼間に設定されています。多くの学校が単位制を導入しており、卒業までに4年間を要することが一般的ですが、3年間で卒業できる定時制(三修制)もあります。
- メリット:毎日登校するため、生活リズムを維持しやすい。クラス担任や友人ができやすく、集団での所属感を得やすい。先生の目が届きやすいため、学習の遅れをフォローしてもらいやすい。
- デメリット:毎日決まった時間に登校する必要があるため、朝起きるのが苦手な子どもには負担が大きい。授業や活動の時間が夕方から夜になる場合、疲労がたまりやすい。
ASDの特性で見通しがないと不安になる子どもや、ADHDで構造化された環境が必要な子どもには、毎日決まったルーティンがある定時制が合っている場合があります。
2. 通信制高校の仕組みとメリット・デメリット
通信制高校は、主に自宅での自学自習(レポート作成)が中心で、登校(スクーリング)は年に数回から週に数回と、学校によって幅があります。卒業に必要な単位をレポート、スクーリング、単位認定試験で取得します。
- メリット:登校頻度が低く、自分のペースで学習できる。体調不良や起立性調節障害などで登校が難しい子どもにとって、大きな負担軽減となる。集団行動のストレスが少ない。
- デメリット:自己管理能力が非常に高く求められる。学習が遅れがちになりやすい。友人ができにくく、孤立感を感じやすい。スクーリング(対面授業)がないと単位が取れないため、全く登校しないわけにはいかない。
不登校の経験がある、または読み書きの困難があるがPCスキルが高いなど、特定の学習方法が得意な子どもに通信制は向いています。
3. 障害のある子どもの特性と相性
定時制・通信制の選択は、「全日制で何に困っていたのか」という特性によって相性が変わります。
| 特性/困りごと | 定時制高校 | 通信制高校 |
|---|---|---|
| 朝の登校困難 | 負担が大きい(夜間定時制なら軽減) | 負担が非常に小さい |
| 集団のストレス・感覚過敏 | 対面授業があるため、ストレスは残る | 登校頻度が低いため、ストレス軽減 |
| 学習の自己管理が苦手(ADHD特性) | 毎日登校で管理されやすい | 管理が難しい(サポート校併用推奨) |
| 不登校からの再スタート | 環境は変わるが登校は必須 | スモールステップで登校できる |
どちらの学習スタイルが、お子さんの強みを活かし、弱みを補うことができるのかを冷静に分析しましょう。
⚠️ 注意
定時制・通信制高校は、多様な生徒が在籍しており、人間関係の構築には全日制とは異なる難しさが伴う場合があります。社会人経験者や様々な背景を持つ生徒とのコミュニケーションに不安がある場合は、学校の生徒層を事前に確認しましょう。
通信制高校の「サポート校」の役割と活用戦略
通信制高校の最大のデメリットである「自己管理の難しさ」を補い、学習の定着を助けるのが「サポート校」です。特に障害のある子どもにとって、サポート校の併用は成功への鍵となります。
1. サポート校とは何か?
サポート校は、通信制高校の学習を補完するために存在する民間の教育機関です。サポート校は高校ではありませんので、高校卒業資格は提携する通信制高校から得ることになります。
- 主な役割:レポート作成の指導、単位認定試験対策、学習スケジュールの管理、進路指導、カウンセリングなど、個別の支援を提供します。
- 特徴:登校日数や時間割を生徒のニーズに合わせて柔軟に設定できる点、学習支援員などの専門スタッフが配置されている点です。
通信制高校は最低限の学習指導を行うのに対し、サポート校は「卒業させるための手厚いサポート」を提供します。
2. 障害特性に応じたサポート校の選び方
サポート校は学校によって特色が大きく異なります。障害のある子どもが選ぶ際は、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 個別指導の質:個別指導が本当に個別(マンツーマン)か、集団の中の個別(自習形式)か。発達特性を理解した専門の教員がいるか。
- 発達特性への理解:ADHD、ASD、LDといった具体的な特性に対応した支援経験があるか。構造化、視覚支援、スモールステップといった療育的なアプローチを取り入れているか。
- 進路支援:大学進学だけでなく、就労支援機関(地域障害者職業センターなど)との連携や、職業訓練につながるプログラムがあるか。
サポート校の学費は高額になる傾向があるため、複数の学校を比較検討し、見学や体験入学を通じて指導の質を確認することが重要です。
3. サポート校の費用負担と公的支援
サポート校の費用は、公立高校の授業料のように公的助成の対象外となることが原則ですが、学校独自の奨学金制度や、自治体の支援制度が利用可能な場合があります。
- 高校等就学支援金:通信制高校の授業料には就学支援金が適用されますが、サポート校の費用は対象外です。
- 奨学金・教育ローン:サポート校が提携する教育ローンや、民間の奨学金の利用を検討します。
サポート校の費用は、個別の手厚いサポートに対する投資と捉えることができますが、長期的な負担となるため、経済的な計画も綿密に立てる必要があります。
✅ 成功のコツ
定時制・通信制高校を検討する際は、必ず中学校の担任や進路指導担当の先生に相談しましょう。先生方は地域の高校の特性や過去の卒業生の実績を把握しており、お子さんに合う高校を客観的な視点から推薦してくれます。
定時制・通信制高校でチェックすべき支援体制
定時制・通信制高校は、全日制と比べると「多様な生徒」を受け入れているため、特別支援教育への意識が高い学校も多くあります。しかし、その支援体制は学校によって雲泥の差があります。具体的な支援体制を見極めることが、高校選びの最重要ポイントです。
1. 「個別の教育支援計画」(IIP)の継続
中学時代にIIP(個別の教育支援計画)や個別の指導計画を作成していた場合、高校でもその支援を継続できるかを確認しましょう。
- 支援計画の引継ぎ:中学校で作成されたIIPを高校側が確認し、高校のカリキュラムに合わせた個別の支援計画を作成してくれるか。
- 合理的配慮の提供:定期テストでの試験時間延長、別室受験、レポート作成における読み上げツールの利用など、具体的な合理的配慮を提供できるか。
入学前の個別相談で、IIPの写しや発達検査の結果を学校に提示し、どこまで対応可能かを文書で確認することが望ましいです。
2. 専任の「特別支援教育コーディネーター」の有無
学校内に特別支援教育コーディネーターや生徒のメンタルヘルスを担当するカウンセラーが専任でいるかどうかも、重要なチェックポイントです。
- 専門性:その教員が特別支援教育に関する専門的な研修を受けているか、具体的な支援経験があるか。
- 相談体制:生徒がいつでも気軽に相談できる独立した場所(支援室など)が確保されているか。
- 外部連携:地域の福祉機関(発達障害者支援センターなど)や医療機関と定期的に連携しているか。
定時制・通信制高校は生徒と教員の距離が近いことが多いため、支援の窓口が明確になっていると、入学後の安心感に繋がります。
3. 就労・進路支援の体制
高校卒業後、大学進学だけでなく就労を目指す場合、キャリア教育や就労支援に力を入れている学校を選びましょう。
- キャリア教育:自己理解を深めるためのプログラムや、社会で求められるスキル(ビジネスマナー、コミュニケーション)を学べる授業があるか。
- インターンシップ:企業での就業体験(インターンシップ)の機会を提供しているか。
- 福祉サービスとの連携:就労移行支援事業所や地域障害者職業センターといった卒業後の福祉サービスへスムーズに移行するための仕組みがあるか。
高校での学びが、将来の自立に直結するような実践的な支援を提供しているか、という視点で学校を見極めることが重要です。
定時制・通信制高校を成功させるための長期戦略
定時制・通信制高校は、全日制に比べて自由度が高いため、「自分で何をしたいか」という目標意識が重要になります。高校卒業をゴールとするのではなく、その先の自立を見据えた長期戦略を立てましょう。
1. 「成功体験の積み重ね」による自己肯定感の回復
中学時代に不登校や学習の遅れで自己肯定感を低下させてしまった子どもにとって、定時制・通信制高校は「成功体験を積み直す」ための最適な環境です。
- スモールステップ:最初は週に1回の登校や、1日1時間の学習など、実現可能な小さな目標から始め、クリアするたびに具体的に褒めて、自信に繋げる。
- 得意科目の重視:苦手な科目の遅れを過度に気にせず、得意な科目や興味のある専門分野の学習に時間を割き、「自分はできる」という感覚を回復させる。
学習ペースが緩やかな環境で、「勉強=嫌なもの」というイメージを払拭し、前向きな気持ちを取り戻すことが、進路達成の土台となります。
2. 資格取得や専門性の獲得
全日制高校よりも時間に余裕が生まれる定時制・通信制高校のメリットを活かし、将来の就労に役立つ資格や専門スキルの習得に注力することができます。
- ITスキル:パソコンスキル、プログラミング、デザインなど、将来性の高いIT分野の資格(MOSなど)を取得する。
- 興味のある分野:特定のこだわりや興味を資格に繋げる(簿記、医療事務、ペット関連など)。
資格は、就職活動において「自分はこれができます」と客観的に証明できる強力なツールであり、特性を活かした就労への道を開きます。
3. 卒業後の進路を視野に入れた「居場所」作り
高校を居場所と感じられない場合、卒業と同時に居場所を失うことになりかねません。学校以外にも社会との接点を持つことが、将来の自立に向けて重要です。
- 福祉サービスの活用:放課後等デイサービスの利用を高校卒業まで延長したり、地域活動支援センターなどの福祉サービスを活用して社会的なつながりを維持する。
- アルバイト・ボランティア:定時制・通信制で時間に余裕があれば、少なからず社会経験を積むためにアルバイトやボランティア活動に参加する。
高校を卒業した後の「次の一歩」を見据え、地域社会とのつながりを高校在学中から意識的に構築しましょう。
事例とよくある質問(FAQ)
定時制・通信制高校の選択に際し、保護者の方々が抱える疑問や、実際の成功事例をご紹介します。
Q1. 通信制高校から大学進学は可能ですか?
A. 通信制高校から大学進学は十分に可能です。多くの大学は通信制高校の卒業資格を全日制と同等に扱っています。しかし、大学入試は受験科目の準備が重要になるため、サポート校や外部の予備校を併用して専門的な受験対策を行うことが必須となります。
- 進学実績の確認:志望する通信制高校がどの程度大学進学に力を入れているか、過去の進学実績を個別相談で確認しましょう。
通信制高校は自分で時間を管理できるため、受験勉強に集中したい子どもにはむしろ有利に働くことがあります。
Q2. 定時制高校でも合理的配慮は受けられますか?
A. 定時制高校も学校教育法に基づく正規の学校であり、障害のある生徒に対し合理的配慮を提供することが義務づけられています。全日制と同様に、試験時間の延長、別室受験、授業での視覚支援などの配慮を申請できます。
- 申請方法:入学前の個別相談で中学校のIIPを提示し、入学後に正式に配慮を申請しましょう。
先生と生徒の距離が近い定時制の特性を活かし、日々の小さな困りごとについても細かく相談しやすい環境にあると言えます。
Q3. 不登校経験がある場合、定時制と通信制どちらが安心ですか?
A. 不登校の原因や現在の状態によって異なります。
- 通信制:環境変化への強い不安や体調不良で登校自体が困難な場合は、登校頻度の低い通信制が心理的な安心感をもたらします。
- 定時制:規則正しい生活に戻したいが、朝の全日制の雰囲気が苦手な場合は、午後の定時制が生活リズムを変えるのに役立ちます。
最も重要なのは、「失敗を恐れずに、再チャレンジできる環境」を選ぶことです。まずは学校見学や体験入学を通じて、校風を肌で感じることが大切です。
「全日制で失敗続きだった息子が、通信制で自分のペースを取り戻し、初めて『楽しい』と言って卒業できました。高校卒業資格だけでなく、生きていくための自信を再構築できたのが一番の収穫です。」
— 40代 保護者からの声
相談窓口・参考リンク
定時制・通信制高校の選択や支援に関する専門的な相談は、以下の窓口を活用してください。
- 中学校の進路指導担当の先生:地域の高校の情報を最も多く持つため、まず相談しましょう。
- 発達障害者支援センター:お子さんの特性と高校の支援体制が合致するかについて、専門的な視点から助言を受けられます。
- 各都道府県の教育委員会(高校教育課):公立の定時制・通信制高校の情報や入学制度について確認できます。
まとめ
定時制・通信制高校は、障害や不登校経験のある子どもにとって、自分のペースで高校卒業資格を取得し、自己肯定感を回復させるための非常に有効な選択肢です。定時制は規則正しい生活、通信制は自由度の高い学習という特性を理解し、お子さんのニーズに合う方を選びましょう。
特に通信制の場合は、学習管理と専門的な支援を提供するサポート校の併用も視野に入れ、入学前にIIPの継続や専任のコーディネーターの有無など、学校の支援体制を徹底的にチェックすることが、高校生活を成功させるための鍵となります。
まとめ
- 定時制・通信制高校は、全日制が合わない子どもにとって高校卒業と自己肯定感の回復を目指す有効な選択肢である。
- 通信制の自己管理の難しさは、サポート校の専門的な個別支援によって補完することが成功の鍵となる。
- 学校選びでは、IIP(個別の教育支援計画)の継続性、特別支援教育コーディネーターの有無、就労を見据えたキャリア支援を徹底的に確認する必要がある。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
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作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
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「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
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