学校で配慮をしてもらうための相談方法と伝え方

学校での配慮をスムーズに実現!担任や先生に伝える相談の準備と成功の伝え方
お子さんが学校で直面する困難について、「先生に相談してもなかなか理解してもらえない」「どんな配慮をお願いしたら良いのかわからない」「こちらの要求ばかりになってしまうのではないか」といった不安や悩みを抱えている保護者の方は少なくありません。学校の先生方も多忙な中、クラス全員に目を行き届かせるのは大変なことです。
しかし、ご安心ください。学校で必要な配慮(合理的配慮)をスムーズに実現するためには、「事前の準備」と「具体的な伝え方」にいくつかのコツがあります。配慮を求めることは、特別な要求ではなく、お子さんが平等に学ぶ権利を行使するための当然のプロセスです。国も「障害者差別解消法」に基づき、学校に対して合理的配慮の提供を義務づけています。
この記事では、学校で配慮を実現するためのロードマップとして、相談前の具体的な準備(困りごとの客観的データ収集)から、誰に・いつ・どのように相談すべきかといった具体的なステップを詳細に解説します。さらに、感情的にならずに建設的に伝える話し方の技術や、配慮が実現した後も継続的に効果を評価していくための連携戦略についても掘り下げます。
この記事を最後までお読みいただくことで、学校との信頼関係を築きながら、お子さんに最適な支援を受けさせるための具体的で実践的な方法を理解し、不安を解消して次の行動へ移すことができます。一緒に、お子さんが自信を持って学校生活を送れる環境を整えていきましょう。
配慮を実現するためのロードマップ:相談前の3つの準備
学校に配慮を相談する際、最も重要なのは、「感情」ではなく「客観的な事実(データ)」に基づいて話を進めることです。事前の準備をしっかり行うことで、学校側の理解と協力体制を得やすくなります。
1. 困りごとの「見える化」と客観的な記録
「うちの子は授業中、集中力がなくて困る」といった抽象的な表現ではなく、「いつ、どこで、どんな時に、どんな困りごとが起こっているのか」を具体的に記録し、「見える化」することが重要です。
- 具体的な行動の記録:例:「朝の会で、先生が3つ以上の指示を出すと、必ず1つは忘れる」「漢字の書き取りで、10分で2文字しか書けない」「給食の時間が騒がしいと、耳を塞いでいる」など、日時と状況を併せて記録します。
- 頻度の記録:「週に3回以上、忘れ物をする」など、困りごとの頻度を数値で示せるようにします。
- 子どもの声:お子さん自身が「何に困っているか」「どうなるとやりやすいか」という声も記録に含めます。
これらの客観的な記録は、「この子にはこの配慮が必要だ」と学校側に説得力を持って伝えるための強力な根拠資料となります。
2. 専門家の診断書・検査結果の準備
発達障害(ADHD、ASDなど)や学習障害(LD)の診断名、または「グレーゾーン」であっても認知特性の凸凹を示す発達検査の結果(WISCなど)は、配慮の必要性を裏付ける客観的な証拠となります。
- 診断書の役割:医学的な根拠として、「この困りごとは努力不足ではなく、脳の特性によるものだ」と学校に理解してもらえます。
- 検査結果の役割:「聴覚認知が低い」「ワーキングメモリが弱い」など、具体的な認知の偏りを示すことで、どんな配慮が効果的かを学校側が判断するのに役立ちます。
診断名がない場合でも、通級指導教室や地域の支援センターでアセスメント(評価)を受けることで、配慮の根拠となる支援記録を得られる場合があります。
3. 求める配慮の具体的なリスト作成
相談に行く前に、漠然とした要望ではなく、「具体的に何を、どうしてほしいのか」をリスト化しておきましょう。
| 困りごとの内容 | 求める配慮(例) | 根拠・理由(例) |
|---|---|---|
| 口頭指示をすぐ忘れる | 指示は必ずメモまたは視覚的なチェックリストで提示してほしい。 | ADHDの不注意特性があり、視覚情報の方が定着しやすいため。(WISCの結果より) |
| 漢字の書き取りに極端に時間がかかる | 宿題の書き取り量を減らしてほしい。またはタブレットでの入力を許可してほしい。 | LD(書字表出困難)の特性があり、疲労が溜まると学習意欲全体が低下するため。 |
| ざわついていると集中できない | 自習時間に耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンの着用を許可してほしい。 | 聴覚過敏があり、感覚的な刺激によって集中が妨げられるため。 |
配慮のリストは「今すぐできる簡単な配慮」から「時間や手間がかかる大きな配慮」まで、優先順位をつけておくと、学校側が検討しやすいです。
💡 ポイント
配慮のリストは、学校側が「ノー」と言いやすいものから、「イエス」と言いやすいものまで用意しておきましょう。最初は「席替えを教卓の前にする」など、担任の裁量でできる小さな配慮から始めると、協力体制を築きやすいです。
誰に、いつ、どう相談すべきか?アプローチの基本
配慮の相談は、相談相手やタイミングを間違うと、円滑なコミュニケーションが難しくなることがあります。学校の組織体制を理解した上で、最適なアプローチを選びましょう。
1. 最初の相談相手は「担任の先生」と「コーディネーター」
配慮の相談の窓口となるのは、日々の様子を最もよく知る担任の先生と、学校全体の特別支援教育を担う「特別支援教育コーディネーター」です。
- 担任の先生:日々の困りごとの共有と、教室での具体的な配慮(席順の変更、宿題量の調整など)について相談します。
- 特別支援教育コーディネーター:学校全体の特別支援教育の推進役であり、担任への助言、通級指導教室との連携、個別の教育支援計画(IIP)の策定など、組織的な支援について相談します。
まずは担任に相談し、「担任の裁量を超える配慮」が必要だと判断されたら、コーディネーターとの面談を依頼しましょう。
2. 相談の「タイミング」と「時間の確保」
登下校時の立ち話や授業参観の前後など、先生が忙しい時間に込み入った相談をするのは避けましょう。事前にアポイントメントを取り、十分な時間を確保することが重要です。
- 時期:年度初め(4月)や学期初めなど、新しい環境や担任になる時期に、支援の継続や新たな配慮について相談する。
- 時間の確保:「30分ほどお時間をいただきたいのですが」などと明確に伝え、相談の概要(例:子どもの特性と今後の支援について)も伝えておくと、先生も準備ができます。
面談の前に、今日の面談で話したいことの要点をまとめた文書(相談シート)を提出しておくと、相談がスムーズに進みます。
3. 相談の場での「建設的な伝え方」の技術
相談の場では、お子さんの困りごとを感情的に訴えるのではなく、学校と協力して解決策を探るという建設的な姿勢を示すことが大切です。
- 感謝と共感から入る:「いつもありがとうございます」「先生も大変な中、ご配慮いただき感謝しています」といった感謝の言葉から始め、先生との信頼関係を構築しましょう。
- I(私)メッセージで伝える:「先生が〇〇してくれないから困る」(Youメッセージ)ではなく、「〇〇という状況なので、子どもが困っているようです」「私は〇〇という配慮があれば助かるのではないかと考えています」(Iメッセージ)と伝える。
- 選択肢を提案する:「〜してください」と一方的に要求するのではなく、「A案、B案、C案を考えてみたのですが、先生でしたらどれがやりやすいでしょうか」と選択肢を提示し、一緒に考える姿勢を示します。
学校側にも人的・時間的リソースの限界があることを理解し、実現可能な支援を一緒に探すパートナーとなることが重要です。
⚠️ 注意
相談の場で、過去の不満や失敗を責めるような表現は避けましょう。学校の先生はプロですが、感情的にならず、前向きな解決策に焦点を当てて話すことで、円滑な協力関係を築くことができます。
配慮実現後のフォローアップと記録の重要性
配慮が実現したら終わりではありません。「その配慮が本当に効果を発揮しているのか」を継続的に評価し、子どもの成長や環境の変化に合わせて柔軟に見直していくことが、支援の質を高めます。
1. 「個別の教育支援計画」(IIP)の活用
IIP(Individualized Education Program)は、学校での配慮や指導内容、目標を文書化したものです。担任の先生が変わっても支援が継続するための公的な記録として非常に重要です。
- 目標設定:IIPには、「3ヶ月後までに、課題の提出率を50%から80%に向上させる」など、具体的で測定可能な目標を定めます。
- 評価と見直し:定期的に(学期ごとなど)、目標が達成されているかを担任やコーディネーターと一緒に評価します。効果が薄ければ、次の配慮内容を見直します。
グレーゾーンなどで診断名がない場合でも、困りごとが明確であればIIPの作成を学校に依頼することができます。
2. 配慮の効果を「記録」する重要性
学校側が行っている配慮が本当に効果的かどうかを判断するために、保護者側でも効果を記録し、学校と共有しましょう。
- 記録の視点:「今日は席を窓側から教卓前に変えた日だったが、以前より30分長く集中できたようだ」「宿題の量を減らしたら、笑顔で取り組めるようになった」など、配慮と子どもの変化を対比させて記録します。
- 成功事例の共有:成功した事例を学校に伝えることで、先生方も「この配慮は効果があった」と実感でき、前向きな気持ちで支援を継続しやすくなります。
配慮の内容は子どもの成長に合わせて変化していく必要があります。継続的な記録は、支援の進化を促します。
3. 連携のための「相談シート」の活用
学校との連携を効率的かつ漏れなく行うために、「相談シート」を定期的(学期に一度など)に作成して渡すことをおすすめします。
- 相談シートに含める内容:前回相談後の子どもの様子、家庭での成功事例、現在学校に提供してもらっている配慮のリスト、次の学期に提案したい配慮などを簡潔にまとめます。
- 目的:先生方が忙しい中でも短時間で情報を把握でき、相談を建設的に進めることができます。
このシートは、保護者が支援の主体者であり、学校と協力するパートナーであることを示すツールにもなります。
✅ 成功のコツ
配慮が上手く機能しなかった場合でも、先生を責めず、「この方法は合わなかったみたいですね。次はA案を試してみてはいかがでしょうか?」と提案しましょう。ネガティブな結果も「合わない方法がわかった」というポジティブな情報として共有することが、長期的な信頼関係を築く上で非常に重要です。
配慮が難しいと言われたら?次のアクションプラン
学校の体制や先生の経験不足など、様々な理由で求める配慮が難しいと学校から言われることもあります。しかし、そこで諦める必要はありません。次のステップに進み、学校全体、あるいは地域全体を巻き込んだ支援を目指しましょう。
1. 組織的な支援の確認と要求
担任の先生の裁量では難しい配慮(例:加配の先生の配置、特定のICT機器の導入など)は、学校の組織全体で検討される必要があります。
- 管理職への相談:担任やコーディネーターとの相談が難航する場合は、教頭先生や校長先生といった管理職との面談を依頼します。配慮は学校の義務であることを丁寧に伝えます。
- 校内委員会での検討:学校には、特別支援教育に関する校内委員会が設置されていることが一般的です。「校内委員会で正式に検討してほしい」と依頼し、組織として配慮を決定してもらうプロセスを踏みます。
重要なのは、「一人の先生の問題」ではなく、「学校全体の課題」として配慮を位置づけることです。
2. 教育委員会への相談(外部の力)
学校内での議論が進まない、あるいは適切な配慮が得られないと感じた場合は、学校の指導・監督機関である教育委員会に相談します。
- 就学相談窓口の活用:教育委員会の就学相談窓口や特別支援教育担当部署に、具体的な困りごとの内容と学校での経緯を伝えます。
- 巡回相談の依頼:教育委員会の専門家が学校へ出向き、子どもの様子を観察し、学校への指導や助言を行う「巡回相談」を依頼できる場合があります。
教育委員会からの助言や指導は、学校側の姿勢を前向きに変える大きな力となります。
3. 地域の専門機関との連携
学校の支援に加えて、外部の専門家の意見を取り入れることも有効です。
- 意見書の作成依頼:発達障害者支援センターや療育機関、主治医などに、「この子に必要な配慮は何か」を記した意見書を作成してもらい、学校に提出します。
- 福祉サービスとの連携:放課後等デイサービスなどで専門的な指導(SSTなど)を受けている場合、指導内容を学校と共有し、学校生活と一貫した支援を行うことで、相乗効果を高めます。
外部の専門家の客観的な視点は、学校側が配慮の必要性を理解する上で大きな助けとなります。
💡 ポイント
「合理的配慮」は、学校に対して「過度な負担」を伴わない範囲で提供が義務付けられています。学校側が「過度な負担」を理由に断る場合、「過度な負担にならない代替案」を具体的に提案することが交渉の鍵となります。
よくある質問(FAQ)と配慮実現のための心構え
学校への配慮相談に関して、保護者が抱きがちな疑問と、支援を円滑に進めるための心構えについてお答えします。
Q1. 相談は年に何回くらいするのが適切ですか?
A. 年度初めの体制構築の相談と、学期末や学期初めのIIP(個別の教育支援計画)の評価と見直しで最低でも年3回は正式な面談を持つことが理想的です。
- 日常の連携:日常の些細な連絡は、連絡帳やメールで簡潔に行い、「困りごとが深刻になった時」や「大きな環境変化の前」など、必要な時に臨時の面談を設けるのが良いでしょう。
「相談しすぎではないか」と心配になるかもしれませんが、学校と子どもの情報を共有することは、支援の質を高める上で必要不可欠なプロセスです。
Q2. 配慮をお願いしたら、特別扱いだと周りから思われませんか?
A. 「特別扱い」ではなく、「平等に学ぶための必要な支援(合理的配慮)」であるという認識を持ちましょう。学校にも、すべての子どもが等しく学びの機会を得られるようにするインクルーシブ教育の役割があります。
- 他の子への説明:お子さんが高学年の場合は、「〇〇が苦手だから、この道具を使っているよ」と子ども自身が周りの友達に簡単に説明できる練習をすることも有効です。
他の保護者や子どもに対して配慮の内容を積極的に説明する必要はありませんが、学校が子どものプライバシーに最大限配慮するよう依頼しましょう。
Q3. 配慮が実現した後、子どもにどう伝えたら良いですか?
A. 「先生が特別に許可してくれた」といった受け身の表現ではなく、「あなたが〇〇という工夫をすることで、もっと学びやすくなるように、先生とママが一緒に相談して決めたよ」と、子ども自身が支援の主体者であることを伝えることが大切です。
- 自己決定権の尊重:配慮の内容を子ども自身が理解し、「この配慮をいつ、どう使うか」を自分で決められるように促しましょう。
配慮は「治すこと」ではなく、「特性を活かし、社会で生きていくためのスキル」であることを伝え、自信に繋げましょう。
相談窓口・参考リンク
学校との連携や配慮の実現に関する専門的な相談は、以下の窓口を活用してください。
- お住まいの地域の教育委員会(特別支援教育担当):学校への指導や巡回相談、通級指導教室の利用に関する公的な情報を得られます。
- 発達障害者支援センター:特性に関する専門的な相談や、学校への意見書作成に関する助言を受けられます。
- 特別支援教育コーディネーター(学校):学校内の特別支援教育に関する支援体制の構築の中心となります。
まとめ
学校での配慮をスムーズに実現するためには、まず「困りごとの客観的なデータ(記録や診断書)」を準備し、「何を、どうしてほしいのか」を具体的なリストにしておくことが不可欠です。相談の場では、担任の先生やコーディネーターに対し、感謝と共感から入り、一方的な要求ではなく、一緒に解決策を探る建設的な姿勢を示すことが、信頼関係構築の鍵となります。
配慮が実現した後も、IIP(個別の教育支援計画)を活用し、配慮の効果を継続的に評価・記録し、必要に応じて見直していきましょう。配慮は子どもの権利であり、学校と協力して、お子さんが自信を持って学び続けられる環境を整えるための積極的なアクションが必要です。
まとめ
- 学校への配慮相談前には、子どもの困りごとの客観的な記録(日時、頻度)と専門家の診断書・検査結果を必ず準備する。
- 相談は担任または特別支援教育コーディネーターに事前にアポイントを取り、建設的なI(私)メッセージで具体的な配慮リストを提示する。
- 配慮実現後はIIP(個別の教育支援計画)に基づき、効果を継続的に記録・評価し、学校と連携して支援を柔軟に見直すことが重要である。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
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実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
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