高校卒業後の進路ガイド|進学・就職・福祉サービスの違い

大学・専門学校への進学は可能?必要な準備と支援制度「合理的配慮」の活用ガイド
高校を卒業し、大学や専門学校に進学して、さらに専門的な学びを深めたいという夢は、障害のある方にとっても十分に叶えられるものです。「うちの子は進学できるのだろうか?」「特別な試験対策が必要?」「進学後のサポート体制はどうなっているの?」といった不安や疑問を抱えるご家族や支援者の方も多いのではないでしょうか。
近年、日本では「障害者差別解消法」の施行により、大学や専門学校などの高等教育機関における支援体制が大きく進展しており、適切な準備と支援制度の活用によって、障害の有無に関わらず、学びの機会が広がっています。
この記事では、進学を成功させるための高校在学中からの具体的な準備から、進学先の学校で利用できる「合理的配慮」の具体的な内容、そして学費の不安を解消する経済的な支援制度までを、体系的に分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、お子さんの進学の夢を実現するための明確なロードマップと、安心して進学準備を進めるための具体的なアクションプランが得られます。一緒に、希望に満ちた未来への一歩を踏み出しましょう。
進学を実現するための第一歩:自己理解と目標設定
大学や専門学校への進学は、高校までと比べて「自立」がより強く求められる環境への移行を意味します。進学を成功させるためには、「自分の障害特性を正確に理解し、必要な支援を自ら要求できる能力」が不可欠です。これが、進学準備の最も重要な第一歩となります。
「自己理解」を深める:特性と必要な配慮の明確化
高校までの手厚い支援体制から一転し、大学等では「待ちの姿勢」ではなく「自己開示と要求」が求められます。進学を希望する学生本人が、以下の3点を明確に言語化できるようになることが、支援を受ける上での前提となります。
- 自分の障害特性:自分の障害名(発達障害、肢体不自由など)や診断名、それによって「具体的に何に困難を感じるのか」を理解していること。
- 学習上の困難:例えば、「聴覚過敏で大教室の講義に集中できない」「板書を写すのに時間がかかる」「試験の時に解答欄を間違えやすい」など、具体的な学修上の課題。
- 必要な支援:上記の困難を解消するために、「ノートテイクが必要」「試験時間の延長が必要」「座席の配慮が必要」など、具体的な要求。
高校の先生やスクールカウンセラーと連携し、「個別の教育支援計画」や「支援経過報告書」を通じて、これらの情報を整理しておきましょう。
進学先を選ぶ:目標に合った学校の種類と学科
大学、短期大学、専門学校、特別支援学校の専攻科など、高等教育機関にも多様な種類があります。選ぶ際の基準は、「卒業後の目標」と「学校の支援体制」です。
- 大学(4年制):学術的な探求を深めたい、専門職(教員、研究者など)を目指したい場合に適しています。
- 専門学校:美容師、ITエンジニア、調理師など、特定の職業に必要な技能や資格を短期間で習得したい場合に適しています。
- 特別支援学校専攻科:高校高等部で身につけた職業・生活スキルをさらに発展させたい場合に適しています。
専門学校は実習が多く、実習環境での配慮が重要になります。大学は研究活動や講義での情報保障が中心になるなど、学校の種類によって求められる配慮の内容が大きく異なります。
進学を成功に導くための「非認知能力」の向上
大学等での学びは、知識だけでなく、時間管理、健康管理、人間関係の構築といった「非認知能力」が非常に重要になります。特に発達障害のある学生にとって、これらの能力の不足が中途退学の原因となることがあります。
高校在学中から、以下のスキルを意識して訓練しましょう。
- タスク管理:授業の課題や提出物の期限を自分で管理し、計画的に取り組む練習。
- 生活リズム:自分で起床・就寝時間を守り、体調不良時に適切に休養や受診ができること。
- 対人スキル:教職員や支援スタッフに、困りごとや必要な配慮を適切に伝えられるコミュニケーション能力。
💡 ポイント
高校での「個別の教育支援計画」は、進学先の大学等での「合理的配慮」を決定する上で重要な証拠となります。計画には、高校3年間で受けた具体的な支援内容とその効果を詳細に記録してもらいましょう。
進学の鍵「合理的配慮」の全容と申請手続き
大学や専門学校への進学を可能にした最大の要因は、「合理的配慮」の提供が義務化されたことです。この制度を最大限に活用することが、進学後の学習を継続する上で不可欠です。
合理的配慮とは何か?法的な根拠と提供の実際
合理的配慮は、2016年施行の「障害者差別解消法」に基づき、大学や専門学校を含むすべての事業者が、障害のある学生の権利を侵害しないように個別に行う調整や変更のことです。これは、「障害のない学生と同じスタートラインに立つこと」を目的としています。
ただし、合理的配慮は「過度の負担」にならない範囲で提供されるという限界もあります。例えば、「すべての授業でマンツーマンの個別指導を要求する」といった、学校の運営上、著しく負担が大きい要求は認められないことがあります。
配慮の可否は、学生のニーズと、学校の教育目標、リソースを総合的に考慮した上で、個別の話し合いを通じて決定されます。
受験時と入学後の合理的配慮の具体例
合理的配慮は、入学試験の受験時と入学後の学習時の二段階で申請が必要です。
1. 入学試験での配慮(共通テスト・個別試験)
- 時間延長:試験時間を1.3倍または1.5倍に延長。
- 別室受験:聴覚過敏や集中困難がある場合の静かな別室の利用。
- 情報提供:問題冊子の拡大、点字による出題、マークシートの塗りつぶし免除。
- 代筆・代読:肢体不自由や読み書き困難(LD)がある場合、支援者による代筆・代読。
2. 入学後の学習・環境での配慮
- 情報保障:ノートテイク(講義内容の代筆)、手話通訳、講義資料の事前提供。
- 授業内:座席位置の配慮、授業中の離席や休憩の許可、録音・録画の許可。
- 施設:バリアフリー対応、車椅子での移動サポート、休養室の利用。
合理的配慮を申請する手続きの流れ
配慮を確実に受けるための手続きは、以下の流れで高校在学中にスタートします。
- 情報収集:志望校の障がい学生支援室の存在と、過去の支援実績を調査。
- 個別相談:高校を通じて、または直接、支援室に連絡を取り、入学前の個別相談を実施。
- 申請書類提出:医師の診断書、高校の意見書、配慮願など、必要書類を提出。
- 支援計画策定:支援室の担当者と面談し、個別の支援計画を策定・合意。
- 配慮の実行:支援室が教員や関係部署と調整し、配慮を実行。
⚠️ 注意
受験時の配慮と入学後の配慮は、それぞれ個別に申請が必要です。また、配慮の申請には診断書や高校の先生の意見書など、多くの時間と労力がかかるため、高校3年生の早い時期から準備を始めましょう。
進学を支える経済的支援:奨学金と授業料減免
進学を考える上で、学費や生活費といった経済的な不安は大きな問題です。障害のある学生やその家族を対象とした、あるいは経済状況に応じた支援制度を漏れなく活用することで、不安を解消することができます。
高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金と授業料減免)
この制度は、経済的に困難な学生が安心して学べるように、「給付型奨学金」と「授業料・入学金の減免」をセットで提供するものです。これは返済が不要であるため、最も優先的に申請を検討すべき制度です。
- 対象者:住民税非課税世帯など、経済的な要件を満たす学生。
- 支援額:世帯収入や進学先の学校の種類(国公立・私立、自宅通学・自宅外通学)に応じて、支援額が変わります。
障害の有無に関わらず利用できますが、特に経済的に困難な状況にある場合は、高校の進路指導室を通じて、高校3年生の春に始まる「予約採用」を必ず申請しましょう。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度
JASSOの奨学金には、返済が必要な「貸与型」と、修学支援新制度の一環である「給付型」があります。
- 第一種奨学金(無利子):特に優れた学生に対して貸与されます。障害のある学生(身体障害者手帳などの所持者)は、学力基準が緩和される場合があります。
- 第二種奨学金(有利子):学力基準は第一種より緩やかですが、卒業後に利子をつけて返済します。
修学支援新制度の対象外となる学生でも、貸与型奨学金を利用することで、学費や生活費の負担を軽減することができます。
大学・自治体独自の支援制度と特別支援学校専攻科の学費
上記の国の制度のほかに、大学独自の奨学金制度や、地方自治体による給付金・貸付金制度が存在することがあります。また、民間団体が実施する「障害者向け奨学金」もあり、これらは他の奨学金と併用できる場合があります。
また、特別支援学校高等部の専攻科の学費については、多くの場合、自治体独自の授業料減免や支援の対象となります。専攻科を検討する場合は、必ず在籍する高校や教育委員会に確認してください。
✅ 成功のコツ
経済的な支援制度は、高校3年生の4月〜6月頃に「予約採用」の申請が始まります。この時期を逃すと、入学後の支援開始が遅れる可能性があるため、高校の進路指導室からの案内を最優先で確認し、必要な書類を準備しましょう。
卒業まで見据えた進学先の選び方と支援体制の比較
進学先を選ぶことは、単に学問を学ぶ場所を選ぶだけでなく、「卒業後にどのようなキャリアを歩むか」という将来設計に直結します。学校選びにおいては、支援体制の充実度を最重要視することが、中途退学のリスクを避ける鍵となります。
充実した支援体制を持つ学校を見極める
大学や専門学校は、法律で合理的配慮の提供が義務付けられていますが、支援体制の質や規模は学校によって大きな差があります。以下の点をチェックし、支援体制が整っている学校を選びましょう。
- 専門部署の有無:障がい学生支援室が独立した部署として存在し、専任のコーディネーター(障害を持つ学生を専門にサポートする職員)がいるか。
- 支援学生(ボランティア)の体制:ノートテイクや移動支援などを行う支援学生の育成・手配が組織的に行われているか。
- 教員への理解促進:全教員に対して、障害理解のための研修を定期的に実施しているか。
- 過去の支援実績:過去にお子さんと似た特性の学生が在籍し、卒業した具体的な実績があるか。
中途退学を防ぐための卒業後のキャリア支援
進学の最終目標は、卒業して社会に出ることです。そのため、大学等における「卒業後のキャリア支援」の体制も重要です。
- キャリアセンターとの連携:障がい学生支援室とキャリアセンター(就職支援部門)が連携し、障害者雇用枠の就職活動に関する情報提供や、面接指導を行っているか。
- 外部機関との連携:地域の障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)やハローワークと連携し、就職後の定着支援までを見据えているか。
支援室が充実している大学は、中途退学率が低い傾向にあり、安心して学ぶことができます。
特別な教育課程を持つ学校の選択肢
一部の大学や専門学校では、発達障害などの特定の障害を持つ学生を対象とした独自の支援コースや定員外での入学制度を設けている場合があります。これらのコースは、一般の学生とは別のカリキュラムや、より手厚いサポート(SST、個別指導など)を提供していることがあります。
これらの学校は、学費が高くなる傾向がありますが、その分、質の高い専門的な支援が期待できます。情報を集める際は、一般の入試情報だけでなく、特別な支援プログラムについても詳しく確認しましょう。
よくある質問(FAQ)と進学後の生活・福祉サービス
進学後の学習や生活、そして福祉サービスの利用について、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1. 大学での支援は、福祉サービスと併用できますか?
A. はい、大学での合理的配慮と地域の福祉サービスは併用可能です。大学の支援は「学習上の困難」を解消することが主目的ですが、福祉サービスは「地域での生活上の困難」を解消することを目的とします。
- 福祉サービスの例:自立訓練(生活訓練)(家事や金銭管理の訓練)、共同生活援助(グループホーム)(夜間休日の生活サポート)。
特に、一人暮らしを始める学生や、発達障害があり生活スキルの向上が必要な学生にとって、福祉サービスとの併用は、学業を安定して継続するためのセーフティネットとなります。進学先の地域の市町村の障害福祉窓口で相談し、サービス等利用計画を作成してもらいましょう。
Q2. 高校まで支援を受けていなかったのですが、今からでも支援を受けられますか?
A. はい、可能です。高校まで支援を受けていなかった学生でも、大学等に入学後、初めて診断書を提出し、支援を申請することは可能です。特に、高校までは周囲のサポートで乗り越えられたが、大学の専門的な授業や広いキャンパスで困難を感じ始めるケースは少なくありません。
ただし、支援を申請する際には、医師による診断書とともに、「なぜ大学で支援が必要なのか」という具体的な理由を、学生本人が支援室に説明することが求められます。支援室のコーディネーターに相談し、必要な書類や手続きを確認してください。
「入学前は支援を受けるか迷いましたが、講義の板書を写すスピードについていけず、支援室に相談しました。ノートテイクの支援を受けることで、授業に集中できるようになり、成績も安定しました。もっと早く相談すればよかったです。」
— 当事者の声
Q3. 大学進学に必要な学力以外に、最も重視される能力は何ですか?
A. 大学進学で最も重視されるのは、「自己管理能力」と「自己決定能力」です。大学は、高校のように教員が常に課題の提出を促したり、生活面を指導したりする場ではありません。
具体的には、授業やアルバイト、プライベートの時間を自分で計画し、体調を管理し、困ったときに自ら支援を求める能力が求められます。これらの能力が不足していると、どんなに学力があっても、課題を溜め込んだり、精神的に疲弊したりして、学習を継続することが難しくなります。
相談窓口・参考リンク
進学に関する具体的な相談は、以下の専門窓口を活用してください。
- 高校の進路指導室:受験時の配慮申請、奨学金の予約採用、支援経過報告書の作成の中心となります。
- 日本学生支援機構(JASSO):奨学金制度の最新情報や手続きについて相談できます。
- 進学希望の大学・専門学校の障がい学生支援室:入学後の合理的配慮の実際と、学校の支援体制について最も詳しく聞ける窓口です。
- 発達障害者支援センター:進学に向けた自己理解や対人スキルの訓練について、専門的なアドバイスが得られます。
まとめ
障害がある方の大学・専門学校への進学は、「合理的配慮」と「経済的支援制度」という二つの大きな柱によって、かつてないほど開かれています。進学を成功させるためには、高校在学中の「自己理解」と「必要な配慮の言語化」という準備が最も重要です。
また、進学先の「障がい学生支援室」の充実度を徹底的に調査し、入学前から合理的配慮の調整を行うことが、学習の継続と、その後の就職までを見据えたキャリア形成の鍵となります。この記事を参考に、お子さんの夢を叶えるための計画を具体的に進めてください。
まとめ
- 進学成功の鍵は、学生本人の「自己理解」と「必要な配慮を言語化する能力」の向上にある。
- 入学試験および入学後の学習継続のために、合理的配慮の申請と障がい学生支援室との入念な調整が不可欠である。
- 経済的な不安は、高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)やJASSO奨学金の予約採用で解消する。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
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