高校入試における配慮申請とは?手続きと注意点

高校入試で合理的配慮を実現!申請手続きと種類、成功のための7つの注意点
お子さんが高校受験に臨む際、発達障害(ADHD、ASDなど)、学習障害(LD)、または身体障害などの特性によって、試験時に特別な配慮が必要となる場合があります。「公平な競争」というイメージが強い入試で、果たしてどのような配慮を申請できるのか、手続きが複雑ではないかといった不安を感じる保護者の方は少なくありません。
しかし、ご安心ください。高校入試における「合理的配慮」の申請は、お子さんが障害のない受験生と平等なスタートラインに立つために不可欠な権利です。文部科学省も、障害者差別解消法に基づき、入学選抜における適切な配慮の提供を学校に求めています。
この配慮申請は、単に試験時間を延長するだけでなく、受験方法、解答方法、環境など、お子さんの特性と困難に合わせたオーダーメイドの支援を実現するための重要なプロセスです。また、公立高校と私立高校では申請方法や基準が大きく異なるため、適切な情報と計画的な準備が不可欠です。
この記事では、高校入試の配慮申請の全体像、公立・私立別の手続きの流れ、具体的にどのような配慮が認められているのかの事例、そして申請をスムーズに進めるための7つの注意点を詳細に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、お子さんが最大限の力を発揮できるよう、安心して入試に臨める環境を整えるための確かな道筋を見つけることができます。
配慮申請の全体像:合理的配慮とは何か?
高校入試における配慮申請は、「合理的配慮」の考え方に基づいています。障害者差別解消法により、学校等の事業主は、障害者に対し、過度な負担にならない範囲で必要な配慮を提供することが義務づけられています。
1. 入試における「合理的配慮」の定義
入試における合理的配慮とは、障害のある受験生が試験の形式や環境によって不利になることがないよう、個別のニーズに応じて調整や変更を行うことです。
- 目的:学力や能力を正しく測ること。障害による困難を理由に不合格となるのを防ぐこと。
- 配慮の対象:身体障害、発達障害(ADHD、ASD)、学習障害(LD)など、心身の機能に障害があり、教育上の支援を必要とするすべての子どもたちです。診断名がない場合でも、中学校での支援実績があれば申請可能なケースがあります。
配慮は、「優遇」ではなく、「障害によるハンディキャップを解消」するための「環境調整」であることを理解しておきましょう。
2. 公立高校と私立高校の申請ルールの違い
高校入試の配慮申請は、公立高校と私立高校で手続きの窓口と基準が大きく異なります。
- 公立高校:都道府県の教育委員会が一括して配慮の可否を決定する方式が一般的です。締め切りが非常に早いため、中学3年生の夏頃には中学校の進路指導を通じて申請準備を始める必要があります。
- 私立高校:各高校が個別に配慮の可否を判断します。公立よりも柔軟な対応が期待できる場合がありますが、学校の支援体制によって対応できる配慮が異なります。事前に高校に直接相談することが不可欠です。
志望校の特性に合わせて、申請先と締め切りを早急に確認することが成功の鍵となります。
3. 必要な書類と申請のタイミング
配慮申請には、「配慮が必要であること」と「中学校で実際にどのような支援を受けていたか」を客観的に証明する書類が必要です。
- 配慮申請書:(教育委員会または高校所定の様式)希望する配慮とその理由を記載。
- 医師の診断書・意見書:障害名、特性、必要な配慮について医学的根拠を示す。
- 中学校での支援記録:個別の教育支援計画(IIP)や通級指導教室の指導記録、定期テストでの配慮実績など。
申請は、受験学年の夏から秋にかけて、中学校の進路指導を通じて行うことが一般的です。締め切りは自治体や学校によって厳密に定められています。
💡 ポイント
高校入試の配慮申請は、お子さんの通う中学校が窓口となることがほとんどです。受験学年の春(4月~5月)には、必ず中学校の担任や進路指導担当の先生に、配慮申請の意向を伝え、協力体制を築き始めましょう。
特性別事例:どのような配慮が認められるのか?
配慮の内容は、障害の種類や程度、個別の困難に応じて多岐にわたります。ここでは、主な特性別に認められやすい配慮の事例を紹介します。
1. 学習障害(LD)や視覚特性への配慮
読み書きの困難や視覚的な情報の処理に困難がある場合、試験時間の延長や解答方法の変更が主な配慮となります。
- 試験時間の延長:読字困難により問題を読むのに時間がかかる場合、1.3倍~1.5倍程度の時間延長が認められることが多いです。
- 解答方法の変更:書字困難がある場合、記述式をマークシート式に変更、またはパソコンやタブレットによる解答が認められることがあります。
- 問題用紙の調整:文字を大きくする、行間を広げる、コントラスト(明暗の差)を強くする、または読み間違いを防ぐために問題文を短く区切るなどの対応。
2. ADHD(注意欠如・多動症)への配慮
不注意、多動、衝動性といった特性により、集中力の維持や環境に困難がある場合の配慮です。
- 別室受験:他の受験生の動きや音が強い刺激となり集中できない場合、個別の静かな部屋での受験が認められます。
- 休憩時間の確保:集中力の持続が難しいため、途中に短い休憩(気分転換の動き)を設けることが認められる場合があります。
- 座席の工夫:衝動性により立ち歩きの可能性がある場合、出入口に近い席や他の受験生に影響を与えにくい席への配慮。
3. ASD(自閉症スペクトラム障害)や身体障害への配慮
感覚過敏、コミュニケーションの困難、身体的な制約などへの配慮です。
- 感覚過敏への対応:教室の照明や騒音に過敏な場合、別室受験に加え、耳栓やノイズキャンセリングヘッドホンの着用が認められる場合があります。
- 体調不良時の対応:体調の波がある場合、途中で休憩や体調回復の時間を確保できるよう、専任の監督者を配置してもらう。
- 解答補助者の配置:肢体不自由などで自力での記述が難しい場合、口頭で解答を伝え、補助者が代筆する配慮。
⚠️ 注意
配慮の内容は、試験の公平性を担保するため、教育委員会や学校の判断により認められない場合もあります。「中学校で認められていたから、必ず入試でも認められる」わけではないため、代替案も準備しておくことが重要です。
公立高校の配慮申請:教育委員会との交渉戦略
公立高校の入試配慮は、公平性を重視する観点から、手続きが厳格で、基準も明確に定められています。教育委員会と中学校が連携して進めるため、綿密な準備が求められます。
1. 中学校の進路指導体制の活用
公立高校の配慮申請は、原則として中学校が保護者と教育委員会の間に入って手続きを進めます。保護者だけで直接、教育委員会に申し込むことは稀です。
- 役割分担の確認:担任、進路指導担当、特別支援教育コーディネーターの中で、誰が配慮申請の責任者となるのかを明確にしておきましょう。
- 情報共有の徹底:医師の診断書や検査結果など、重要な書類は早めに中学校に渡し、学校の先生方が申請書を作成する時間的余裕を確保します。
中学校の先生方は、これまでの配慮実績を最も客観的に把握しているため、協力関係を築くことが成功の鍵です。
2. 申請書に記載すべき「根拠」の強化
教育委員会が配慮を認めるかどうかの判断基準は、「中学校の教育活動において、継続的に同様の配慮を受けており、それが有効であった」という実績です。
- IIPと指導記録:「中学校3年間、定期テストで一貫して1.3倍の試験時間延長を受けていた」「通級指導教室で週に1回、読み書きの支援を受けていた」といった記録を申請書に添付します。
- 配慮がなかった場合の困難さ:「配慮がない場合、読み書きの困難により、正答率は30%以上低下する」といった、配慮の必要性を具体的に数値で示せるよう、中学校の先生と協力してデータを集めましょう。
曖昧な表現ではなく、客観的なデータを提示することで、申請の説得力が高まります。
3. 事前相談と意見具申の場
公立高校入試では、教育委員会が配慮の可否を判断する前に、保護者や中学校が意見を具申できる事前相談の機会が設けられることがあります。
- 面談の準備:この機会に、なぜその配慮が必要なのか、配慮がなかった場合のリスクを、冷静かつ具体的に伝えます。
- 代替案の提案:「別室受験は難しい」と言われた場合、「では、教卓の前の席で、パーテーション(衝立)の設置はどうでしょうか」といった代替案を複数用意しておくと、交渉がスムーズになります。
教育委員会との建設的な対話を通じて、お子さんのニーズを正確に伝えることが重要です。
私立高校の配慮申請:直接交渉と情報収集
私立高校の入試配慮は、公立とは異なり、各学校の教育方針や支援体制に大きく左右されます。受験前に高校と直接連携し、情報収集と調整を行うことが極めて重要です。
1. 早期の学校訪問と個別相談の予約
私立高校への配慮申請は、中学3年生の夏~秋の早い時期に、志望校を訪問し、個別相談を行うことが必須です。
- 相談窓口の確認:「入試担当」だけでなく、「特別支援教育担当」や「生徒指導部」など、配慮に関する窓口がどこになるのかを事前に確認します。
- 相談内容:お子さんの特性と中学校での配慮実績を伝え、「入学試験で同様の配慮が可能か」、そして「入学後の支援体制」について尋ねます。
私立高校は、「入学後の支援ができるか」を重視するため、入試の配慮だけでなく、入学後のフォローについても具体的に質問しましょう。
2. 配慮可能な高校の「見極め」
私立高校の中には、発達障害に対する支援体制が整っている学校と、そうではない学校があります。配慮の可否で志望校を見極めることが必要です。
- 具体的な実績の確認:「過去に、LDで読み上げ配慮を行った実績はありますか?」など、具体的な配慮の実績を尋ねる。
- 支援体制:「通級指導教室のような専門的な相談室はありますか?」「支援員(加配)の配置はありますか?」といった、入学後の体制を確認します。
配慮の申請がスムーズに進む学校は、入学後も支援が受けやすい可能性が高く、安心して受験できます。
3. 診断書・意見書は「入試配慮の要請」を明記
私立高校に提出する医師の診断書や意見書には、「高校入試において〇〇(具体的な配慮内容)が必要である」ことを明記してもらうと、配慮の説得力が増します。
- 医師への依頼:中学校での配慮実績の記録を医師に見せ、「入試での配慮の必要性」を具体的に記述してもらうよう依頼しましょう。
- 期限の厳守:私立高校の出願期間は公立より早いことが多いため、診断書の取得期限も前倒しで計画を立てる必要があります。
私立高校への個別相談は、入試の合否だけでなく、入学後の3年間を左右する重要なステップです。
配慮申請を成功させるための7つの注意点
高校入試の配慮申請は、多大な労力と時間を要しますが、以下の7つの注意点を守ることで、手続きを円滑に進め、お子さんにとって最善の結果を得ることができます。
1. 申請期限の厳守は絶対
公立、私立を問わず、配慮申請の期限は厳格です。期限を過ぎると原則として受け付けてもらえないため、中学校の先生と協力して、スケジュール管理を徹底しましょう。
2. 配慮は「代償」が原則、「優遇」は不可
配慮は、障害による困難を「代償」するためのものであり、「優遇」ではありません。「この配慮がなければ実力が測れない」という論理的な説明を心がけましょう。「問題を解かなくても良い」といった学力に関わる配慮は認められません。
3. 中学校での支援実績が最大の根拠
入試配慮の採否は、診断名よりも中学校での「支援実績」に大きく依存します。中学時代に通級指導教室や定期テストで一貫した配慮を受けていた記録があることが、最も強力な説得材料となります。
4. 子どもの意見を必ず反映させる
配慮の内容は、保護者や医師が一方的に決めるのではなく、お子さん自身が「どの配慮があれば、最も力が発揮できるか」という意見を反映させましょう。本人の納得感が、試験当日の安心感に繋がります。
5. 求める配慮の「代替案」を用意する
学校や教育委員会から特定の配慮(例:パソコンでの解答)について「過度な負担」を理由に拒否された場合に備え、「では、タブレットの音声入力機能の利用はどうでしょうか」といった代替案を複数用意しておくと、交渉が前進しやすくなります。
6. 志望校の先生との信頼関係を築く
私立高校では、事前の個別相談での保護者の態度や学校との連携姿勢が、配慮の可否や入学後の支援に影響を与えることがあります。学校への感謝と建設的な協力姿勢を忘れずに示しましょう。
7. 配慮の決定は必ず「文書」で確認する
口頭での「大丈夫です」という返事だけでなく、決定した配慮の内容を「配慮決定通知書」などの公的な文書で必ず確認し、証拠として保管しましょう。これは入試当日のトラブルを防ぐために不可欠です。
よくある質問(FAQ)と相談窓口
高校入試の配慮申請に関して、保護者から寄せられることの多い質問に答えます。
Q1. 診断名がない場合、配慮申請はできますか?
A. 診断名がない場合でも、配慮申請が可能なケースはあります。特にグレーゾーンや軽度の学習障害で診断基準に満たなくても、中学校で個別の教育支援計画(IIP)が作成され、通級指導教室や定期テストで継続的な配慮を受けていた実績があれば、それを根拠として申請できます。中学校の先生や教育委員会に相談してみましょう。
Q2. 配慮申請をすることで、合否に影響はありますか?
A. 原則として、配慮申請を理由に合否が不利になることはありません。配慮は「ハンディキャップの解消」が目的であり、学力評価には影響を与えないからです。ただし、私立高校の面接等で、入学後の支援が学校の体制にとって過度な負担になると判断された場合、間接的に影響が出る可能性はゼロではありません。事前の相談で正直に状況を伝え、学校側の体制と合致するかを確認することが重要です。
Q3. 配慮が認められた場合、入試当日の流れは?
A. 配慮の内容によって異なりますが、別室受験の場合、集合場所や集合時間が他の受験生と異なることがあります。試験時間延長の場合は、他の受験生が退室した後も残り、延長時間分だけ別室で受験する形式が一般的です。入試前に中学校の先生や受験校から当日の流れについて十分な説明を受け、お子さん自身も不安なく試験に臨めるよう、事前にシミュレーションしておきましょう。
相談窓口・参考リンク
高校入試の配慮申請に関する専門的な相談は、以下の窓口を活用してください。
- 中学校の進路指導担当の先生:配慮申請の窓口であり、最も具体的な支援を受けられる場所です。まずここに相談しましょう。
- 都道府県の教育委員会(特別支援教育担当):公立高校の配慮申請のルールや手続きに関する公的な情報を提供しています。
- 発達障害者支援センター:配慮申請に必要な書類(意見書など)について、専門的な立場から助言を受けることができます。
まとめ
高校入試における配慮申請は、お子さんが公平な条件で試験に臨むための重要な権利です。公立高校の場合は教育委員会、私立高校の場合は各高校への早期かつ計画的な申請が求められます。
申請を成功させるには、医師の診断書や中学校での継続的な支援実績という客観的な根拠を揃え、試験時間の延長、別室受験、解答方法の変更など、個別の困難に合わせた具体的な配慮を求めることが重要です。中学校の先生と連携し、申請期限を厳守しながら、お子さんの未来を切り開くためのサポートを進めていきましょう。
まとめ
- 高校入試の配慮申請は、公立は教育委員会、私立は各高校に中学3年生の夏~秋に早期に申請する必要がある。
- 申請には、医師の診断書と中学校での継続的な支援実績(IIP、テスト配慮記録など)という客観的根拠が不可欠である。
- 配慮の種類は試験時間の延長、別室受験、解答方法の変更など多岐にわたり、志望校の体制を事前に確認し、代替案も用意することが成功の鍵となる。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
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特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
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