履歴書の書き方|障害の伝え方と配慮事項の整理

障害者雇用での就職活動において、履歴書は単なる職務経歴書ではありません。それは、あなたが「必要な配慮を受ければ、企業に貢献できる戦力である」ことを論理的に伝える、最初の、そして最も重要なプレゼンテーションツールです。
「障害名をどこまで書けばいい?」「体調の波を正直に書いたら不利にならないか?」「配慮事項は遠慮せずに求めてもいいのか?」といった、履歴書作成に関する疑問は尽きません。
この記事では、採用担当者が最も重視するポイントに焦点を当て、履歴書・職務経歴書の各項目における具体的な書き方を徹底解説します。特に、障害の状況をポジティブに伝え、必要な合理的配慮を明確にするための具体的な技術を、専門支援機関の視点からご紹介します。
この記事を読むことで、不安を自信に変え、あなたの能力と意欲が採用担当者に正しく伝わる、完璧な履歴書を作成するためのロードマップを手に入れられるでしょう。
採用担当者が履歴書で重視する3つのポイント
ポイント1:体調の「安定度」と「業務遂行能力」
企業が障害者雇用で最も重視するのは、「この人は、体調の波が少なく、継続して安定的に出勤・業務遂行できるか」という点です。どんなに優秀なスキルを持っていても、欠勤が多ければ企業にとって「過重な負担」となるからです。
履歴書や職務経歴書では、体調が安定していることを裏付ける事実を具体的に示しましょう。例えば、直近の就労移行支援事業所への通所率や、前職での勤務期間、現在の主治医の診断などを活用し、「現在は治療が安定し、週5日フルタイム勤務が可能である」という点を明確にアピールすることが不可欠です。
病歴や療養期間を記載する際は、過去のネガティブな事実ではなく、「現在は克服し、安定している」という「現在の事実」に焦点を当てた伝え方を心がけましょう。
ポイント2:必要な「合理的配慮」の具体性と実現可能性
企業は、応募者が求める配慮事項を見て、「自社でその配慮を提供できるか(実現可能性)」と「その配慮が過重な負担とならないか」を判断します。
抽象的な要求(例:「ストレスがかからないようにしてほしい」)ではなく、具体的な行動や環境調整に落とし込んだ配慮事項を記載することが、採用担当者への信頼を高めます。また、配慮を求めるだけでなく、その配慮が「業務の効率化」や「生産性の向上」にどう繋がるか、という「貢献の側面」もセットで伝えましょう。
ポイント3:ブランク期間に対する「納得性のある説明」
障害者雇用の場合、療養期間などによるブランク(職歴の空白期間)があることは珍しくありませんが、企業はその理由と期間を必ず気にします。履歴書や職務経歴書で、ブランクの理由を明確かつ前向きに説明することが重要です。
- NG例:「体調を崩して休んでいた」
- OK例:「精神疾患の治療のため療養していたが、現在は安定し、就労移行支援事業所で訓練を積み、復職への準備を完了した」
療養期間を単なる「空白」とせず、「スキルアップや体調回復のための『準備期間』であった」というポジティブな印象に変換することが、書類選考突破の鍵となります。
【項目別】履歴書への障害・配慮事項の具体的な記載方法
(1)「本人希望記入欄」:配慮事項を具体的かつ簡潔に
最も重要な項目の一つが、履歴書の「本人希望記入欄」です。この欄には、必ず必要な合理的配慮を、簡潔かつ具体的に記載します。
記載例(精神・発達障害の場合)
貴社への貢献と安定就労のため、以下の合理的配慮をお願いいたします。
- 勤務時間:残業は原則免除をお願いします。また、始業時刻は混雑を避けるため9:30を希望します。
- 業務内容・環境:対人業務(電話対応、クレーム対応)は免除をお願いします。感覚過敏があるため、業務中はパーティション付きのデスクを希望します。
- 報告・連絡・相談(報連相):業務指示は口頭でなく、メールまたは文書にて、タスクを箇条書きで明確にお願いします。
※詳細は面接時にお渡しする「障害版トリセツ」にてご説明いたします。
このように、必要な配慮に加えて、「障害版トリセツ」の存在を予告しておくことで、企業は「この応募者は自己理解が深まっている」という印象を受け、面接での対話の土台ができます。
(2)「学歴・職歴欄」:ブランクと支援機関の活用を記載
ブランク期間が生じた場合、職歴欄の最後に「備考」として、その期間に行った活動を明記しましょう。特に、就労移行支援事業所や職業訓練の利用は、就職への意欲と準備が整っていることを示す強力な証拠になります。
記載例(療養後の場合)
20XX年4月~20XX年3月:精神疾患の治療のため療養(現在は安定し、就労に問題なし)
20XX年4月~20XX年10月:〇〇就労移行支援事業所にて職業訓練を履修(PCスキル、ビジネスマナー、体調管理を習得)
20XX年11月:現在に至る
このように記載することで、企業はあなたの職歴をネガティブに捉えることなく、「今は就労に向けて準備が完了した状態」だと理解できます。
(3)「備考欄」または「添付書類」:障害の状況を説明
障害の状況の詳細については、履歴書の備考欄または「別紙添付」として職務経歴書や自己PR欄に記載します。障害名や等級だけでなく、「現在の状況」と「配慮の根拠」を具体的に説明します。
- 記載内容:障害種別、障害者手帳の種類と等級、通院頻度、現在の服薬状況、直近の主治医の意見(就労可能であること)。
- 強調すべき点:症状が最も重かった時期と比べて、現在どれだけ安定しているかを具体的に伝える。
情報を整理しきれない場合は、「障害の状況に関する詳細は、添付の職務経歴書または、面接時提出のトリセツをご参照ください」と記載し、履歴書自体は読みやすく簡潔に保つようにしましょう。
採用を遠ざける履歴書のNG表現と対処法
NG表現1:障害や体調に関する「抽象的でネガティブな表現」
「疲れやすい」「ストレスに弱い」「時々体調を崩すことがある」といった抽象的なネガティブ表現は、企業の不安を最大限に高めます。採用担当者は、「いつ、どの程度休むのかが予測できない」と感じ、リスクが高いと判断しがちです。
【対処法】:「具体的な数値や対策」に変換して説明する。
- 「疲れやすい」→「集中力が持続するのは90分が限界のため、90分ごとに10分の休憩を設けることで、一日を通じて安定した集中力を維持できます。」
- 「ストレスに弱い」→「対人折衝は苦手ですが、データ入力や文書作成などの一人で集中する業務では、高い生産性を発揮できます。」
NG表現2:要求ばかりで「貢献」の視点がない配慮事項
配慮事項の羅列で終わってしまうと、「負担ばかりかかる人」という印象を与えかねません。企業は、あくまであなたの能力やスキルを求めて採用するため、配慮の裏付けとして、貢献できる内容を必ず記載します。
【対処法】:「配慮の理由」と「配慮によるメリット」をセットで書く。
- 「残業免除をお願いします。」→「精神的な安定を保つため残業はできませんが、その分、勤務時間内に業務を全て完結させるよう高いタイムマネジメント能力を発揮します。」
NG表現3:企業への「丸投げ」や「依存」が感じられる言葉
「御社でどういう配慮が必要か教えてほしい」「何でも良いので、できる仕事を教えてほしい」といった、主体性や自己理解が不足している印象を与える表現は避けましょう。これは、「自分で考えて行動できない人」という評価につながります。
【対処法】:「自己理解を深め、改善努力をしている」ことを示す。
- 「自己理解の結果、私は〇〇の作業が得意だと分かりました。そのスキルを活かし、貴社の△△業務に貢献したいです。」と、意欲と主体性を伝える。
採用担当者の信頼を高めるための準備とチェックリスト
準備1:専門機関と連携して「障害版トリセツ」を作成する
履歴書で書ききれない障害の状況や、具体的な配慮事項をまとめた「障害版トリセツ」は、採用活動におけるあなたの分身です。就労移行支援事業所やジョブコーチなどの専門機関と協力し、第三者からの客観的な意見を取り入れながら作成しましょう。
トリセツは、履歴書に「詳細は別紙参照」と記載し、面接時に提出することで、企業側も採用後のシミュレーションがしやすくなります。
準備2:家族や支援者による「ダブルチェック」を行う
履歴書や職務経歴書は、完成後、必ず家族や支援機関の担当者といった第三者にチェックしてもらいましょう。特に、客観的に体調の安定度や、配慮事項の過不足がないかを確認してもらうことが重要です。
また、誤字脱字、記入漏れがないかといった基本的なビジネスマナーのチェックも、第三者の目で見てもらうことで精度が高まります。
準備3:履歴書の「空白期間」をポジティブに説明する準備
ブランク期間については、履歴書に簡潔に記載するだけでなく、面接で深く聞かれた際の具体的な説明(ストーリー)を準備しておきましょう。重要なのは、「過去」の体調不良ではなく、「現在」の安定と「未来」への意欲を強調することです。
療養期間中に取り組んだこと(資格取得、読書、体調回復への努力など)を具体的に話せるように準備しておくと、企業はあなたの成長意欲と乗り越える力を評価してくれます。
まとめ
障害者雇用の履歴書作成において、成功の鍵は、「体調の安定と貢献意欲」をセットで伝えることにあります。特に、「本人希望記入欄」を最大限に活用し、合理的配慮を具体的かつ簡潔に記載し、企業との対話の土台を作りましょう。
ネガティブな情報は「現在の安定」と「今後の貢献」というポジティブな側面に変換し、「障害版トリセツ」を駆使して、あなたの能力と意欲が正しく伝わるよう工夫してください。支援機関のサポートを得ながら、自信を持って書類選考に臨みましょう。
- 採用担当者が重視するのは、「体調の安定度」と「必要な配慮の実現可能性」である。
- 合理的配慮は、「配慮の要求」と「配慮を受けることで可能な貢献」をセットで具体的に伝える。
- ブランク期間は、「療養を経て、就労準備を完了した」というポジティブな文脈で説明する。
- 「障害版トリセツ」を作成し、履歴書で伝えきれない情報を補完することが、書類選考突破の鍵となる。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





