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一般就労と障害者雇用、どちらを目指すべき?それぞれの特徴

📖 約39✍️ 伊藤 真由美
一般就労と障害者雇用、どちらを目指すべき?それぞれの特徴
障害者雇用と一般就労は、障害のある方の働き方の主要な選択肢です。一般就労は配慮がない分、キャリアの幅と給与水準が高い傾向にありますが、安定性が自己責任となります。一方、障害者雇用は合理的配慮が法的に義務付けられており、体調に不安がある方も安定して働きやすい点が最大のメリットです。この記事では、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較し、どちらを選ぶべきかを判断するための「体調の安定性」「求めるキャリア」といった具体的なチェックリストを提示しています。また、障害者雇用から一般就労へのステップアップという段階的なキャリアパスや、就労移行支援の活用法についても解説し、読者が最適な働き方を見つけるための具体的な指針を提供します。

「就職を目指したいけれど、一般就労(オープン)と障害者雇用(クローズ)のどちらを選べばいいのだろうか?」と悩んでいる方は少なくありません。

この選択は、今後のキャリアや生活の安定に大きく影響するため、慎重に判断したいと考えるのは当然のことです。特に、障害の特性や体調の安定度によって、最適な働き方は人それぞれ異なります。

この記事では、一般就労と障害者雇用のそれぞれの特徴を深く掘り下げ、メリット・デメリットを徹底的に比較します。そして、ご自身やご家族がどちらの働き方を目指すべきか、判断するための具体的なチェックポイントを提示します。

この記事を最後まで読んで、不安を自信に変え、あなたらしい働き方を見つけるための明確な道筋を描きましょう。


働き方の選択肢:一般就労と障害者雇用の基本

一般就労(オープン就労)とは

一般就労とは、障害の有無に関係なく、すべての人に開かれた採用枠で企業に就職し、働くことを指します。この働き方では、企業に対して自身の障害について開示する義務はなく、「クローズ就労」とも呼ばれることがあります。

一般の社員と同じ採用基準、同じ労働条件で働くことが前提となるため、基本的に障害特性に対する特別な配慮を企業に求めることは難しいのが特徴です。その分、仕事内容や職種の選択肢が非常に広く、キャリアアップや昇給の機会も豊富にあります。

高い給与水準や、目指せる職種の幅広さを重視したい方や、障害による業務上の支障がほとんどなく、特別な配慮を必要としない方に適した働き方と言えます。

障害者雇用(オープン就労)とは

一方、障害者雇用は、障害者手帳を持つ方を対象とした採用枠です。この枠で働く場合、企業に障害について開示すること(オープン)が前提となります。

この働き方の最大のポイントは、企業が「合理的配慮」を提供する義務を負うことです。通院のための休暇、残業の制限、業務内容の調整など、個々の障害特性に応じたサポートを前提として働くことができます。

障害者雇用促進法という法律に基づき、企業には一定の割合(法定雇用率)で障害者を雇用する義務があるため、一般就労よりも安定した求人需要があります。体調の波があり、継続的なサポートが必要な方にとって、安心して長く働き続けやすい環境が整っています。

「合理的配慮」の有無が最大の相違点

この二つの働き方を分ける最も重要なポイントは、企業による「合理的配慮」の提供が法的に義務付けられているかどうかです。

障害者雇用では、配慮は「義務」であるため、企業は障害者が能力を発揮するために必要な環境を整える努力をしなければなりません。これに対し、一般就労では配慮の義務はなく、仮に配慮を求めても、それは企業の「任意」に委ねられることになります。

この違いから、「体調の安定や、業務遂行上のサポートが不可欠かどうか」が、選択の第一歩となる判断基準と言えるでしょう。


各働き方のメリット・デメリットを深掘り比較

【一般就労】のメリットと潜在的なリスク

一般就労の最大のメリットは、仕事の選択肢と収入の可能性が広がることです。求人数が障害者雇用枠に比べて圧倒的に多く、ご自身のスキルや経験を活かせる職種を自由に選ぶことができます。また、昇給や昇進の機会も公平に開かれているため、高い年収を目指すことが可能です。

しかし、潜在的なリスクもあります。一つは、体調を崩した際のリスクです。障害を伏せて働いている場合、病状の悪化や通院が必要になった際に、上司や同僚に相談しにくく、理解を得られずに早期離職につながる危険性があります。

もう一つは、高いパフォーマンスを継続的に求められるというプレッシャーです。配慮がないため、一般の社員と同等の成果を出し続ける必要があり、障害特性による疲労やストレスが蓄積しやすい環境と言えます。

⚠️ 一般就労の注意点

障害を隠して就職した後、体調が悪化して配慮を求めても、企業は対応する義務がないため、自己責任で乗り切る必要があることを覚悟しておく必要があります。

【障害者雇用】のメリットと知っておくべき点

障害者雇用の最大のメリットは、何といっても精神的な安心感と雇用の安定性です。体調を崩しても、企業側は配慮を前提に雇用しているため、相談しやすく、休職制度なども柔軟に利用できることが多いです。職場全体が障害に対する理解を持っている点も大きな強みです。

知っておくべき点としては、給与水準が一般就労より低い傾向にあることです。これは、多くの場合、業務内容や責任範囲が一般社員より限定的になるためです。ただし、近年は専門性の高い業務を任されるケースも増えており、一概には言えません。

また、希望する職種やポジションの選択肢が限られることもあります。企業が配慮しやすい事務職やサポート業務に集中する傾向があり、例えば営業職や専門職などの求人が少ない場合があります。

比較表:それぞれの特徴を整理する

両者の特徴をより明確にするために、以下の比較表をご覧ください。

項目 一般就労(クローズ) 障害者雇用(オープン)
障害の開示 しない(任意) する(必須)
合理的配慮 原則なし(企業の任意) あり(法的な義務)
仕事の選択肢 非常に広い 限定的になる傾向あり
給与水準 高い傾向 一般に低い傾向
雇用の安定性 自己管理次第 配慮のもと安定しやすい
主な目的 能力と成果の発揮 能力発揮と安定的な定着


どちらを目指すべきか?判断するためのチェックリスト

チェック1:現在の体調と安定性はどうか?

働き方を判断する上で最も重要な基準は、「現在の体調が安定しているか」、そして「特別な配慮なしで、フルタイム勤務を継続できる見込みがあるか」という点です。

主治医から「就労可能」と診断が出ていても、体調の波が頻繁にあったり、通院頻度が高かったりする場合は、まずは障害者雇用枠からスタートし、安定したリズムを確立することを強く推奨します。

逆に、長期間にわたり症状が安定しており、服薬も落ち着いている、または生活リズムにほとんど影響がないという場合は、一般就労を目指すことも十分に可能です。

  • 障害者雇用向き:体調の波があり、定期的な通院や休憩、残業制限などの配慮が不可欠。
  • 一般就労向き:体調が安定しており、特別な配慮なしで一般社員と同じペースで業務遂行が可能。

チェック2:求めるキャリアと給与水準はどうか?

次に、「仕事に何を求めるか」という価値観に基づいた判断が必要です。

もし、将来的に専門性の高いキャリアを追求したい、または高い給与水準を最優先したいのであれば、一般就労の方がチャンスは広がるでしょう。一般就労は、能力と成果がそのまま報酬に結びつきやすい環境です。

一方で、給与は一般就労より低くても、「ストレスなく、長く働き続けられること」を最優先したい場合は、障害者雇用が適しています。安定した生活基盤を確立することを重視する方には、障害者雇用枠が大きな安心材料となります。

「私は多少お給料が低くても、週に一度の通院を理解してもらい、定時で帰れる環境が絶対に必要でした。障害者雇用のおかげで、今は無理なく働けています。」

— 30代・精神障害のある方の声

チェック3:利用できる支援体制はどうか?

就職活動や入社後の定着をサポートしてくれる「支援体制」の有無も、判断基準の一つです。

障害者雇用を目指す場合、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、ハローワークなどの専門的な支援を無料で利用できます。これらの機関は、自己理解の深化、応募書類の作成指導、面接対策、そして入社後の職場定着支援(ジョブコーチ)までを一貫してサポートしてくれます。

一般就労を目指す場合は、これらの専門支援を受けることができません。自力で情報収集や準備を行い、入社後の問題も自身で解決していく能力が求められます。支援を受けながら着実に進めたい方は、障害者雇用から始めるのが賢明です。

💡 ポイント

「まずは障害者雇用で体調やスキルを安定させ、数年後に一般就労にステップアップする」という段階的なキャリアプランも、非常に有効な選択肢です。


段階的なキャリアパスを考える

ステップアップとしての障害者雇用

障害者雇用は、決してキャリアの終着点ではありません。むしろ、長期的なキャリア形成のための「準備期間」と捉えることができます。

特にブランクがある方や、自身の障害特性を理解しきれていない方は、障害者雇用で必要な配慮を受けながら、まずは「安定して働く経験」を積むことが重要です。この経験を通じて、ビジネスマナー、PCスキル、そして体調のセルフコントロール能力を身につけることができます。

数年間の勤務実績と安定した体調が確立できれば、「この人は配慮がなくても安定して働ける」という信頼を企業に与えることができます。その実績を持って、改めて一般就労への転職にチャレンジすることは、非常に現実的で成功率の高い方法です。

「フルオープン」と「フルクローズ」の間にある選択肢

働き方には、「障害者雇用(フルオープン)」と「一般就労(フルクローズ)」の二択しかないわけではありません。企業によっては、障害者手帳を持たないけれど、体調や通院の配慮を一部求めるという「セミオープン」な働き方を容認してくれるケースもあります。

しかし、これはあくまで企業の裁量であり、法的な義務がないため、企業の理解度や人事制度に大きく左右されます。求職者側からすると不安定な選択肢であるため、まずは「フルオープン(障害者雇用)」か「フルクローズ(一般就労)」のどちらかを明確に定める方が、就職活動は進めやすいでしょう。

就職活動を進める中で、ご自身の状態と企業の求めるレベルのギャップを理解することが、最終的な選択の精度を高めることになります。

✅ 成功のコツ

体調が安定しないうちは、年収やキャリアを追うことよりも、「安定して働ける環境」を確保することを最優先にしましょう。安定した生活基盤があってこそ、次のキャリアステップが見えてきます。

選択を変える時の再検討の重要性

一度、障害者雇用で就職した後、一般就労への転職を考える場合は、以下の要素を改めて厳しくチェックすることが重要です。

  • 現在の勤務先で、配慮なしでも問題なく業務を遂行できているか
  • 過去1年間、体調を崩して欠勤した回数は極めて少ないか。
  • 現在の給与と、一般就労で得られる給与・待遇差が、リスクに見合うか。

一般就労への移行は、「リスクを背負ってでも、より高いステージを目指したい」という強い意志と、それを裏付ける実績と安定性が求められます。主治医や支援機関とも相談し、客観的な意見を取り入れることが不可欠です。


選択をサポートする支援機関の活用法

就労移行支援事業所での適性見極め

就労移行支援事業所は、一般就労と障害者雇用のどちらを目指すべきか、客観的なデータと専門家の視点から判断するための最適な場所です。

事業所での職業訓練や模擬就労を通じて、「どの程度の業務量までなら集中力が続くか」「どのような環境でストレスを感じやすいか」などを細かく分析し、ご自身の「働く適性」を明確にできます。この自己理解こそが、最適な選択をするための基盤となります。

また、事業所から直接、一般企業での職場実習に参加することも可能です。実際に配慮のない環境や、配慮のある環境で働いてみることで、自分にとって必要な配慮の度合いを肌で感じることができます。

ハローワークと転職エージェントの使い分け

就職活動における求人探しの段階でも、それぞれの特徴を理解して使い分けることが大切です。

  • ハローワーク(専門援助部門)公的な安心感と幅広い求人が魅力。地域密着型の求人や、障害者雇用の基礎的な情報収集に適しています。
  • 障害者専門転職エージェント非公開求人や企業の詳細な情報を提供。企業との条件交渉や入社後の細かな調整を代行してくれるため、負担が軽減されます。

一般就労を目指す場合は、一般的な転職エージェントや求人サイトを利用することになりますが、障害者雇用を目指す場合は、必ず専門のサービスを利用しましょう。専門の支援を受けることで、選考通過率が格段に向上します。

最終的な判断は「チーム」で行う

一般就労か障害者雇用かの選択は、ご本人やご家族だけで決める必要はありません。主治医、支援機関の担当者、そしてご家族を交えた「チーム」で判断を下すことが、最も安全で確実な方法です。

主治医は医学的な観点から、支援機関は職業的な観点から、そしてご家族は日常的な観点から、ご本人の状態を客観的に判断できます。それぞれの意見を総合的に考慮し、「今の自分にとって、最も安定した生活を送れる選択肢は何か」という視点を大切にしましょう。


まとめ

一般就労と障害者雇用は、どちらが優れているということではなく、ご自身の現在の心身の状態と、将来のキャリア目標によって、最適な選択が異なるものです。

体調の安定や、必要な配慮の有無を慎重に見極め、もし少しでも不安があるなら、まずは障害者雇用からスタートし、安定的な働き方を確立することをおすすめします。そして、就労移行支援などの支援サービスを最大限に活用し、専門家の客観的な意見を取り入れながら、あなたにとって最適な働き方を見つけ出してください。

  • 一般就労と障害者雇用の最大の相違点は、「合理的配慮の提供義務の有無」にある。
  • 判断基準は、主に体調の安定性と、求めるキャリア・給与水準の2点である。
  • 体調に不安がある場合は、まずは障害者雇用で安定した生活基盤を築くことを最優先する。
  • 判断に迷う場合は、主治医、支援機関、ご家族という「チーム」で話し合い、客観的な意見を取り入れることが重要である。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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