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生活費が急に増えたときのリスク管理と対処法

📖 約35✍️ 鈴木 美咲
生活費が急に増えたときのリスク管理と対処法
障害を持つ方の生活において、急な医療費や福祉用具の買い替えなどで生活費が急増するリスクは深刻です。本記事では、このリスクに備えるための具体的な対処法を解説します。まず、生活費3~6ヶ月分を目安に緊急予備費を確保し、医療費は高額療養費制度や自立支援医療で対応します。急な補装具の費用は、補装具費支給制度の適用を急ぎましょう。予備費が尽きた場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付や、自立相談支援機関による家計見直し支援を優先的に活用すべきです。一人で抱え込まず、公的な窓口を頼ることが、経済的な危機を乗り越える鍵となります。

生活費が急に増えたときのリスク管理と対処法

予期せぬ出費から生活を守る

障害を持つ方やそのご家族にとって、日々の生活は慎重な家計管理の上に成り立っています。しかし、人生には予期せぬ事態がつきものです。急な体調の悪化による入院費、補装具の故障による買い替え、あるいは家電の故障や災害など、突発的な出費(一時費用)は、せっかく安定させた生活を脅かす大きなリスクとなります。

特に収入が限られている場合、数万円、数十万円といった急な出費は、一気に生活を困窮させてしまう可能性があります。不安を抱える中で、「もしも」の時にどう対処すれば良いか、具体的な方法を知っておくことは非常に重要です。

この記事では、障害家庭に起こりやすい急な出費の例を挙げ、それに備えるためのリスク管理の考え方と、実際に危機に直面した際に利用できる公的な支援制度や資金援助を具体的に解説します。経済的な安心感を高め、予期せぬ事態に冷静に対処できる力を身につけましょう。


リスク管理の基本:備えと保険の活用

緊急時の資金(予備費)の確保

急な出費に備えるための最も基本的な対策は、「予備費」として生活費とは別に資金を確保しておくことです。障害の有無にかかわらず、一般的に生活費の3ヶ月分〜6ヶ月分程度を緊急時の資金として確保することが推奨されます。

収入が少ない場合、この目標額を貯めるのは難しいかもしれませんが、まずは「最低でも10万円」など、達成可能な目標を設定し、毎月少額でも貯蓄に回す習慣をつけましょう。貯蓄専用の口座を設け、自動積立を利用すると、意識せずに資金を貯めることができます。

優先度の高い「予備費」の使途

確保した予備費は、以下の緊急性の高い出費に備えておく必要があります。

  • 医療費:入院や手術、新しい治療法による高額な自己負担分。
  • 福祉用具関連:車椅子や補装具の修理・買い替え費用、住宅改修の自己負担分。
  • 生活の維持:家賃の支払いが間に合わない、ライフラインが停止しそうな場合の費用。

✅ 成功のコツ

予備費は、決して生活費と混ぜないことが重要です。普通預金口座ではなく、ネット銀行の定期預金や、すぐに引き出せない「積立専用口座」など、心理的に引き出しにくい場所で管理しましょう。

公的・民間の保険の見直しと活用

急な出費リスクに備えるもう一つの方法は、保険の活用です。特に、障害を持つ方にとって重要なのが、医療費や福祉用具に関する保険や制度です。

  • 高額療養費制度:医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。特に高額な手術や入院には必須の制度であり、必ず限度額適用認定証を医療機関に提出しましょう。
  • 特定疾病療養費制度:人工透析を必要とする慢性腎不全など、特定の疾病の医療費自己負担が月額1万円または2万円に抑えられます。
  • 民間保険:民間の医療保険や生命保険は、障害の程度によっては加入が難しい場合がありますが、引受基準緩和型など、加入しやすい商品もあります。加入前に、公的制度でカバーできないリスク(入院時の差額ベッド代など)を明確にして検討しましょう。

⚠️ 注意

障害を持つ方の民間保険加入には制限があるため、まずは自立支援医療や高額療養費制度といった公的制度を最大限に活用しているかを確認することが先決です。


予期せぬ高額出費が発生した時の対処法

医療費・介護費の急増への対応

病状の悪化や新たな病気の発見、介護サービスの利用増などにより、医療費や介護費が急増することは、障害家庭にとって最も多いリスクの一つです。

もし医療費が急増した場合は、冷静に以下の制度を適用しているか確認しましょう。

  • 自立支援医療制度:適用外の病気の医療費ではないか、自己負担上限額が正しく適用されているか確認します。
  • 高額介護サービス費:介護保険サービス費の自己負担額が上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。介護保険サービス費が急増した場合は、必ずこの制度の適用を受けましょう。
  • 公的医療費助成の申請:重度心身障害者医療費助成など、お住まいの自治体独自の医療費助成制度をまだ申請していなかった場合は、すぐに福祉担当課に相談し、申請手続きを行いましょう。

福祉サービスの自己負担の確認と見直し

障害福祉サービス利用料の自己負担が増えた場合も、所得に応じた「月額負担上限額」が正しく適用されているかを確認してください。所得区分に変更があった場合は、役場に届け出る必要があります。また、サービス内容が過剰になっていないか、ケアマネジャーや相談支援専門員に相談し、サービス利用計画を見直すことも重要です。

補装具・日常生活用具の費用発生時の対処

車椅子、義肢、補聴器などの補装具や、特殊寝台、入浴補助用具などの日常生活用具は、故障や身体の変化による買い替えで急な出費となります。

これらの費用は、障害者総合支援法に基づく「補装具費支給制度」「日常生活用具給付等事業」で賄うことが原則です。これらの制度では、原則1割の自己負担で、費用のほとんどが公費で賄われます。

  • 補装具費支給制度:車椅子、補聴器、義肢など。原則、耐用年数が定められており、その期間内の再支給には医師の意見書などが必要となります。
  • 日常生活用具給付:入浴補助具、特殊寝台など。自治体によって対象品目や上限額が異なります。

急な故障の場合は、まずは福祉担当課に相談し、制度の対象となるかを確認しましょう。全額自己負担となるケースは稀です。

「多くの方が急な医療費で慌ててしまいますが、まず高額療養費の申請をすべきです。また、補装具や用具は制度が適用されるので、勝手に修理・購入する前に必ず相談してください。全額自己負担になるのを避けるためです。」

— 相談支援専門員 M氏


資金が不足した場合の公的資金援助

生活福祉資金貸付制度の活用

予備費が尽きてしまった、あるいは想定外の出費で生活費が不足してしまった場合は、公的な資金援助制度を頼りましょう。その筆頭が、社会福祉協議会(社協)が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」です。

この制度は、低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯向けに、生活再建に必要な費用を低利子または無利子で貸し付ける制度です。急な出費で生活が困窮した場合は、以下の資金が活用できます。

  • 緊急小口資金:緊急かつ一時的に生活費が必要となった際に、少額(原則10万円以内)を無利子で貸し付けます。急な医療費の立て替えなどに利用可能です。
  • 総合支援資金:失業や病気で収入が途絶え、生活再建までの間に必要な生活費を貸し付けます。
  • 福祉資金:療養や介護に必要な費用、住宅改修費用など、福祉目的の費用を貸し付けます。

貸付制度のメリットと相談先

この制度の最大のメリットは、無利子または低利子で借りられる点と、生活保護よりも手続きが比較的容易である点です。まずは、お住まいの地域の社会福祉協議会に連絡を取り、状況を正直に話して相談に乗ってもらいましょう。

自立相談支援事業による家計の緊急見直し

急な出費で家計が破綻しそうな場合は、地域の「自立相談支援機関」に相談し、家計の緊急見直しを行うべきです。これは、生活困窮者自立支援法に基づく支援で、生活保護に至る前のセーフティネットの役割を果たします。

自立相談支援機関の支援員は、収入と支出を徹底的に洗い出し、家賃や光熱費などの固定費削減の提案や、利用していない公的制度の申請支援を行います。また、債務整理が必要な場合は、弁護士や司法書士といった専門家への橋渡し役も担ってくれます。

💡 ポイント

緊急時には、まず自立相談支援機関社会福祉協議会に相談してください。闇雲に消費者金融などに頼る前に、公的な支援を受けられる可能性を最大限に探りましょう。


リスクを未然に防ぐための予防策

定期的な資産・負債・制度のチェック

リスク管理は、急な事態が起こる前に定期的に行うことが重要です。年に一度は以下のチェックリストに基づいて、ご自身の家計と制度の状況を確認しましょう。

  • 貯蓄目標の達成度:緊急予備費として設定した金額が貯まっているか。
  • 公的制度の更新状況:障害年金の等級見直し(額改定請求)や、自立支援医療の更新手続きは済んでいるか。
  • 補装具の耐用年数:車椅子や補聴器などの耐用年数(制度で定める使用期間)を確認し、近々買い替えが必要かどうか予測する。
  • 保険料と契約内容:民間保険の保険料が家計を圧迫していないか、契約内容が最新のニーズに合っているか確認する。

福祉サービスによる「リスクの分散」

急な出費リスクを減らすためには、福祉サービスをうまく活用してリスクを分散することも有効です。

  • グループホームの活用:一人暮らしの場合、住居の設備が故障した際の修理費用は全額自己負担になりますが、グループホームであれば、家賃に含まれることが多く、自己負担のリスクを軽減できます。
  • 居宅介護(ヘルパー)の利用:体調が悪化した際に、すぐにヘルパーを利用できる体制を整えておくことで、病状の悪化や長期入院を未然に防ぎ、結果的に高額な医療費発生リスクを低く抑えることができます。

「数年前に車椅子のバッテリーが急に壊れ、10万円の出費となりました。予備費がなくて困りましたが、すぐに相談支援専門員に連絡し、補装具費支給制度の再申請を手伝ってもらい、自己負担1万円で済みました。制度の知識を持つ専門家がいることが、最大の安心だと実感しました。」

— 身体障害を持つTさん(50代)


よくある質問と相談窓口

Q1. 急に高額な医療費の請求が来ました。支払いを待ってもらうことはできますか?

A. はい、可能です。高額療養費制度の申請中や、自立支援医療の申請中など、公的制度の適用が見込まれる場合は、病院の会計窓口や医療ソーシャルワーカーに相談し、支払いの延期や分割払いを相談することができます。公的制度で全額が賄われる見込みがあることを伝えれば、柔軟に対応してもらえるケースが多いです。

Q2. 借金で生活費が苦しい場合、どこに相談すべきですか?

A. 借金問題で生活が苦しい場合は、以下の窓口に相談しましょう。

  • 弁護士・司法書士:債務整理(任意整理、自己破産など)に関する専門的な法的アドバイスと手続きを依頼できます。
  • 法テラス(日本司法支援センター):経済的に余裕がない方のために、無料の法律相談や、費用立替制度を提供しています。
  • 自立相談支援機関(社会福祉協議会):家計改善支援事業として、債務整理が必要な場合の専門家への橋渡しや、生活再建のための総合的な相談に乗ってくれます。

借金は放置せず、早めに専門家に相談することが、生活再建への第一歩です。

Q3. 緊急予備費がない場合、福祉サービスを減らすべきですか?

A. 福祉サービスの利用を減らすことは、生活の質(QOL)の低下や体調悪化のリスクにつながるため、最終手段として考えるべきです。まず、通信費や光熱費などの固定費削減、公的支援制度の利用漏れ確認、そして生活福祉資金貸付制度などの公的資金援助を優先しましょう。

福祉サービスの削減が必要な場合は、必ず相談支援専門員と相談し、生活に不可欠なサービスは維持できるよう、計画を見直してください。


まとめ

生活費が急に増えるリスクは、障害を持つ方の生活に常に付きまといます。しかし、そのリスクは事前の備えと、公的制度の知識で大きく軽減できます。まずは生活予備費の確保を目標にし、高額療養費制度や自立支援医療などの医療費助成、そして補装具費支給制度といった福祉制度の申請を確実に行うことが大切です。

もし予期せぬ出費に見舞われた場合は、決して一人で抱え込まず、社会福祉協議会や自立相談支援機関などの公的窓口をすぐに頼ってください。適切な支援を受けることで、経済的な危機を乗り越え、安心した生活を取り戻すことができます。

まとめ

  • 生活費の3ヶ月~6ヶ月分を目安に、緊急予備費を生活費と分離して貯蓄する。
  • 高額療養費制度、自立支援医療、重度心身障害者医療費助成の適用を確実にする。
  • 補装具や用具の急な出費には、制度の適用を急ぎ、全額自己負担を避ける。
  • 資金が不足した場合は、生活福祉資金貸付や自立相談支援機関を優先的に利用する。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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