日中活動と就労継続支援の違いとは?目的別の選び方

障害福祉サービスには様々な種類があり、「就労継続支援」の他に「生活介護」や「自立訓練」といったサービスがあります。特に、「日中活動系サービス」と総称されるこれらと、就労継続支援との違いについて、「どのサービスが自分(または家族)に一番合っているのだろうか?」「目的によって選び方はどう変わるの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
サービス選択は、ご本人の日々の生活の質(QOL)や、将来の目標に直結する重要な決断です。特に、働くことを目指す就労継続支援と、生活の維持・向上を目的とする日中活動サービスの違いを理解することは、適切な支援を受けるための第一歩となります。
この記事では、就労継続支援(A型・B型)と、主な日中活動サービスである生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)の目的、活動内容、対象者、そして収入の違いを徹底的に比較解説します。この記事を読むことで、ご自身の目的や現在の状況に合わせた最適なサービス選びの道筋が見えてくるはずです。
日中活動と就労継続支援の基本定義と目的
日中活動サービスとは?その主な目的
「日中活動サービス」とは、主に障害者総合支援法に基づいて提供されるサービス群の中で、日中の時間帯(朝から夕方にかけて)に利用者が活動を行う場所を提供するサービスの総称です。これには、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、そして就労継続支援などが含まれますが、特に「生活の支援」に重点を置くサービスを指すことが多いです。
日中活動サービスの最も大きな目的は、利用者の心身の安定、生活能力の維持・向上、社会参加の促進、そしてご家族の介護負担の軽減(レスパイト)です。働くこと(就労)自体が目的ではなく、日常生活や地域社会での活動を豊かにすることに主眼が置かれています。
例えば、生活介護では食事や排泄などの介助が中心となり、自立訓練ではスキル習得のための訓練が中心となります。
就労継続支援の特異性:「働くこと」を重視
就労継続支援も広義には日中活動サービスに含まれますが、その目的は他のサービスとは明確に異なります。就労継続支援は、「働く機会の提供」と「就労に必要な知識・能力の向上訓練」を主目的としています。
A型(雇用型)は、雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を得て経済的自立と一般就労を目指します。B型(非雇用型)は、雇用契約を結ばずに、体調に合わせて無理なく作業を行い、社会参加とリハビリテーションを重視します。就労継続支援は、活動の結果として報酬(給与や工賃)が発生するという点で、他の日中活動サービスと大きく異なる点です。
💡 ポイント
就労継続支援は「収入と就労スキルの向上」が目標。生活介護や自立訓練は「生活能力や心身の維持・向上」が目標と、目的が大きく異なります。
主要な日中活動サービスの種類
就労継続支援と比較検討されることが多い主要な日中活動サービスは、以下の通りです。
- 生活介護:常時介護が必要な方に対して、入浴、排せつ、食事の介助などを行うとともに、創作的活動や生産活動の機会を提供します。
- 自立訓練(生活訓練):地域生活を営む上で必要な能力(金銭管理、健康管理、コミュニケーションなど)の向上を目的とした訓練を行います。
- 自立訓練(機能訓練):身体機能の維持・回復を目的として、理学療法、作業療法などの訓練を行います。
これらのサービスは、働くことが難しい、または、働く前にまず生活基盤を整える必要がある方にとって、欠かせない支援となります。
生活介護と就労継続支援:対象者と提供内容の違い
生活介護:常時介護が必要な重度の方へ
生活介護は、常に介護が必要な比較的重度の障害を持つ方が主な対象となります。具体的には、障害支援区分が区分3以上(50歳以上は区分2以上)で、入浴、排せつ、食事などの日常生活における支援が欠かせない方が該当します。
提供されるサービス内容は、日常生活のサポートが中心です。日中の活動としては、創作活動(絵画、工芸など)、機能訓練、レクリエーション、そして簡単な生産活動などが組み合わされます。これらの活動は、心身機能の維持と、社会交流の促進を目的としています。
生活介護の利用者も生産活動に参加することはありますが、その目的はあくまで活動の一環であり、工賃は非常に少なく、収入を得ることは主目的ではありません。
就労継続支援B型:働く意欲と生産活動
就労継続支援B型は、生活介護の対象者ほど重度の介護は必要としないが、一般企業やA型での雇用契約が困難な方が対象です。B型の活動は、明確に「生産活動」(仕事)に焦点が当てられています。作業内容としては、部品の組み立て、農作業、パン・菓子の製造、データ入力など、事業所によって多岐にわたります。
B型は、作業を通じて工賃(収入)を得ることを目標としており、活動の対価が支払われるという点で、生活介護とは大きく異なります。また、B型は働くことを通じたリハビリテーションやスキルアップを目指す場でもあります。
「生活介護は利用者さんの『生活』を守る場所、B型は利用者さんの『働く意欲と社会との繋がり』を支える場所として役割を分けています。ご本人のニーズを第一に考えます。」
— 障害者支援施設 サービス管理責任者 S氏
収入と利用時間における決定的な差
生活介護と就労継続支援の利用を比較する際、収入と利用時間の違いは最も重要な判断材料となります。
| 項目 | 生活介護 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 常時介護、心身機能の維持 | 働く機会の提供、社会参加 |
| 収入(報酬) | 極めて少ない(お小遣い程度) | 工賃(月額平均1.6万円程度) |
| 必要とされる能力 | 常時介護が必要(区分3以上目安) | 自立した活動が可能だが雇用は困難 |
| 利用時間 | 1日の大部分を施設で過ごす | 体調に合わせて柔軟に設定可能 |
就労継続支援B型は、生活介護の利用が適切と判断されるほど重度ではないが、働く喜びや収入を得ることに価値を見出している方にとって最適な選択肢となります。
⚠️ 注意
原則として、生活介護と就労継続支援(A型・B型)は同時に利用することはできません。午前中に生活介護、午後に就労継続支援といった使い分けはできないため、どちらのサービスを主とするか、慎重に選ぶ必要があります。
自立訓練(生活訓練・機能訓練)との役割分担
自立訓練:就労・生活に向けた準備期間
自立訓練(生活訓練・機能訓練)は、地域社会で自立した生活を送るための能力を習得・維持することを目的としたサービスです。就労継続支援とは異なり、訓練を通じて収入を得ることは目的としていません。
生活訓練は、服薬管理、金銭管理、調理、公共交通機関の利用、対人コミュニケーションなど、日常生活に必要なスキルを身につけるための訓練が中心です。主に精神障害や知的障害のある方が利用し、安定した地域生活を目指します。
機能訓練は、身体機能の維持・向上を目指し、理学療法士などによるリハビリテーションが中心です。主に身体障害のある方が利用します。
就労継続支援:訓練後に能力を発揮する場
自立訓練が「就労・生活に向けた準備期間」であるのに対し、就労継続支援は「訓練を経て身につけた能力を、実際の就労活動の中で発揮する場」と位置づけられます。特に、生活訓練で安定した生活リズムや基礎的な社会スキルを身につけた後に、B型やA型に移行するケースが多く見られます。
例えば、生活訓練で規則正しい通所習慣を身につけた利用者が、次のステップとして、より生産活動に特化したB型に移り、そこで工賃を得ながら本格的な就労スキルを身につけていく、という流れは非常に理想的です。
✅ 成功のコツ
自立訓練の期間は原則2年間と定められています。この期間を最大限に活用し、生活の土台を固めてから就労継続支援へ移行することで、よりスムーズに就労活動へ入ることができます。
目的に合わせたサービスの選択順序
障害を持つ方が「働くこと」を目指す場合、一般的に以下のような順序でサービスを選択・移行することが推奨されます。ただし、これはあくまで一例であり、ご本人の状態に応じて最適解は異なります。
- 体調・生活基盤の確立:自立訓練(生活訓練・機能訓練)、あるいは療養生活。
- 社会参加とリハビリ:就労継続支援B型(無理のないペースで活動)。
- 安定した収入と雇用:就労継続支援A型(雇用契約に基づき、最低賃金以上を獲得)。
- 一般企業への就職:就労移行支援、あるいはA型から直接移行。
この順序の中で、就労継続支援A型・B型は、生活基盤が整い、働く意欲が明確になった段階で利用することが最も効果的だと言えるでしょう。相談支援専門員と、長期的な計画を立てることが重要です。
目的別:最適なサービスを選ぶための判断基準
基準①:「収入」の必要性と期待値
サービス選びで最もわかりやすい判断基準の一つが「収入」です。あなたが収入をどの程度重視するかによって、選ぶべきサービスは明確に分かれます。
- 安定した収入(最低賃金以上)を求める場合:就労継続支援A型が最適です。雇用契約を結ぶため、安定性が確保されます。
- 収入は少なくても良いが、お小遣い程度は欲しい場合:就労継続支援B型が適切です。工賃は得られますが、体調優先で無理なく活動できます。
- 収入は一切求めず、日中の居場所と介護・訓練を求める場合:生活介護または自立訓練が適切です。
特にB型は、生活介護や自立訓練と比べると工賃という形で収入が得られるため、「社会に貢献している実感」を得やすいという心理的なメリットもあります。
基準②:心身の状態と必要な「支援度」
ご本人の心身の状態や、日々の活動でどの程度の支援(介助)が必要かという「支援度」も、重要な判断基準となります。
- 常に食事や排泄の介助が必要な場合:生活介護が優先されます。医療的ケアが必要な場合も、医療連携体制のある生活介護を選ぶ必要があります。
- 自力で通所・作業が可能だが、体調の波が大きい、または長時間集中できない場合:就労継続支援B型が適しています。体調に応じた柔軟な対応が期待できます。
- 生活スキルに課題があり、通所や作業よりも訓練が必要な場合:自立訓練(生活訓練)が先決です。
障害支援区分(区分1~6)も一つの目安となりますが、最終的には個別支援計画に基づいて、ご本人にとって最も安全で効果的なサービスが選ばれます。
基準③:将来の「目標」設定と期間
最終的にどこを目指したいかという「目標」と、その目標達成に必要な「期間」も、サービス選びに大きく関わります。
- 目標が「一般企業への就職」で、2年程度の集中訓練で達成したい場合:就労移行支援が最も適切です。
- 目標が「一般就労」だが、まずは体力・自信をつけ、安定した環境で働きたい場合:就労継続支援A型を経由することが有効です。
- 目標が「地域の社会参加と生活の安定」であり、長期的に支援を受けたい場合:就労継続支援B型や生活介護が適切です。これらのサービスは、原則として利用期間の制限がありません。
目標は途中で変わっても問題ありません。大切なのは、相談支援専門員と定期的に目標を見直し、サービスを柔軟に移行していく姿勢です。
よくある質問とサービス移行の具体例
Q. B型から生活介護に移行することはできますか?
はい、移行は可能です。B型事業所に通っているうちに、病状の悪化や加齢に伴い、体力が低下し、常時介護が必要な状態になった場合、生活介護への移行を検討します。この移行には、改めて障害支援区分の見直しや、サービス等利用計画の変更手続きが必要となります。
手続きは、担当の相談支援専門員と市区町村の窓口を通して行います。ご本人の心身の状態が変化したと感じたら、無理せずすぐに支援員に相談することが大切です。
Q. 就労継続支援と他の日中サービスを併用できますか?
先に述べた通り、就労継続支援と生活介護、または就労継続支援と自立訓練といった、複数の日中活動サービスを同時に利用することは原則できません。これは、日中活動サービスは一日の大部分を占める活動であり、重複して利用する前提ではないからです。
ただし、日中活動サービスではない「居宅介護」や「移動支援」といったサービスは、就労継続支援と併用できる場合があります。例えば、通所のための移動支援や、帰宅後の生活を支える居宅介護は、就労継続支援の利用を支えるために利用されることがあります。
具体的なサービス移行の成功事例
サービスの移行は、利用者の成長と変化を反映したものです。ここでは、サービス移行の具体的な成功事例を紹介します。
- 事例1:生活訓練からA型へ:精神障害を持つAさんは、まず自立訓練(生活訓練)で2年間、生活リズムの安定と社会復帰への自信を養い、その後に就労継続支援A型へ移行。安定した給与を得ることで、経済的な自立も達成しました。
- 事例2:B型から生活介護へ:知的障害を持つBさんは、長年B型で楽しく作業を続けていましたが、60歳を過ぎて体力と認知機能が低下。支援員と相談し、より手厚い介護を受けられる生活介護へ移行し、安心した老後を過ごしています。
これらの事例からも、ご自身の状態とニーズに柔軟にサービスを合わせていくことが、生活の質を保つための鍵であることがわかります。
まとめ
就労継続支援とその他の日中活動サービスは、それぞれ異なる目的を持っています。就労継続支援(A型・B型)は「働くこと」に重点を置き、生活介護は「常時介護と生活維持」に、自立訓練は「地域生活に向けた能力向上」に主眼が置かれています。どのサービスが最適かは、「収入の必要性」「必要な支援度」「将来の目標」という三つの基準で判断し、ご自身の現在のニーズに最も合ったものを選ぶことが重要です。
サービスの選択や移行で迷った際は、必ず相談支援専門員や市区町村の窓口に相談してください。専門家と共に、あなたの人生の目標を実現するための最適な道筋を見つけましょう。
まとめ
- 就労継続支援は「収入と就労」が目的、生活介護・自立訓練は「生活維持と能力向上」が目的です。
- 重度の障害や常時介護が必要な場合は生活介護が優先され、収入を最優先するなら就労継続支援A型が最適です。
- 原則として日中活動サービスは同時に利用できません。目標に応じて適切な順序で移行することが重要です。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





