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体調を崩したときの働き方と復帰のステップ

📖 約54✍️ 菅原 聡
体調を崩したときの働き方と復帰のステップ
就労中に体調を崩してしまった障害のある方やそのご家族に向けて、無理のない休み方と職場復帰(リワーク)への正しいステップを詳しく解説します。休職中の過ごし方や主治医・職場との連携方法、再発を防ぐための環境調整のコツなど、支援現場の視点から具体的にアドバイス。焦りや罪悪感を軽減し、自分らしいペースで再び働き出すための道筋を提示します。この記事を通じて、長期的な視点で健康と仕事を両立させるための「安心感」と「具体的なアクション」を得ることができます。

体調の変化を感じたときの向き合い方

毎日一生懸命に働いていると、不意に訪れる「体調の波」に戸惑うことがあります。朝、体が鉛のように重くて動かなかったり、仕事中の集中力が以前より著しく落ちていたり。そんなとき、障害のある方の多くは「自分の努力が足りないせいだ」「会社に迷惑をかけてはいけない」と自分を責めてしまいがちです。

しかし、体調を崩すことは決して挫折ではありません。それは、今のあなたの働き方や環境が、今のあなたの心身の状態と少しズレてしまっていることを知らせる「サイン」です。このサインを無視して走り続けるのではなく、正しく立ち止まり、整え直すことが、結果として長く働き続けるための鍵となります。

本記事では、体調が悪化した際の初期対応から、休職中の過ごし方、そして職場復帰を成功させるための具体的なプロセスを丁寧に解説します。ご本人も、それを見守るご家族も、少しでも心が軽くなるような復帰のロードマップを一緒に見ていきましょう。


初期対応:悪化を防ぐための勇気ある決断

不調のサインを見逃さないために

体調が本格的に崩れる前には、必ずと言っていいほど予兆があります。例えば、睡眠の質が落ちて夜中に何度も目が覚める、食欲がなくなる、あるいは逆に過食気味になる。また、イライラしやすくなったり、普段なら流せるような指摘に強く落ち込んだりするのも重要なサインです。

このような変化に気づいたとき、まず行ってほしいのは「記録」です。いつ、どのような症状が出たのかを簡単にメモしておきましょう。これにより、主治医や支援員に現状を正確に伝えることができ、客観的な判断を仰ぎやすくなります。自分の主観だけで「まだいける」と判断するのは、時として非常に危険です。

もし可能であれば、厚生労働省が推奨する「5分でできる職場のストレスチェック」などの簡易ツールを定期的に活用するのも一つの方法です。自分の状態を「数値」や「色」で可視化することで、早期にセルフケアが必要な段階だと認識できるようになります。

主治医や産業医への相談タイミング

「病院に行くほどではないかもしれない」と迷っている間に、症状が深刻化してしまうケースは非常に多いです。不調が1週間以上続く場合は、早めに主治医の診察を受けてください。特に精神障害や発達障害のある方の場合は、環境の変化や疲れがダイレクトに症状に影響しやすいため、専門的な判断が不可欠です。

診察の際は、仕事内容や労働時間、最近の職場の人間関係なども併せて伝えましょう。主治医はあなたの生活全体を見て、薬の調整が必要なのか、それとも「一定期間の休息(療養)」が必要なのかを判断します。もし、産業医がいる職場であれば、産業医面談を希望することも有力な選択肢です。

産業医は職場の実態を把握しているため、業務内容の軽減や配置転換といった「職場環境の調整」について、会社側に直接的な助言をしてくれる強力な味方になります。自分一人で会社と交渉しようとせず、医学的な知見を持つ専門家を間に入れることが、早期回復への第一歩です。

💡 ポイント

「病院に行く=休職しなければならない」ではありません。薬の微調整や、少しの配慮変更だけで、仕事を続けながら回復できるケースもたくさんあります。まずは予防のつもりで相談しましょう。

職場への伝え方と「部分的な休息」の活用

体調不良を職場に伝える際、「すべてを包み隠さず話さなければ」とプレッシャーを感じる必要はありません。障害者雇用で働いている場合は、窓口となっている上司や人事担当者に「最近、体調の波が不安定になっており、業務に影響が出る可能性があるので相談したい」と切り出してみましょう。

いきなり長期休職を考える前に、まずは「部分的な休息」ができないか相談するのも一つの知恵です。例えば、1週間だけ定時退社を徹底する、残業を免除してもらう、あるいは週の半分を在宅勤務に切り替えるなどです。これにより、完全に現場を離れることなく、エネルギーを回復させることが可能になる場合もあります。

職場の担当者も、急に辞められたり長期間いなくなったりするよりは、早い段階で相談を受けて調整する方が助かると考えていることが多いです。会社との信頼関係を維持するためにも、「早めの相談」はビジネススキルの一つであると捉えてください。


休職期間:心と体をリセットする過ごし方

「何もしない」ことへの罪悪感を手放す

休職が始まると、多くの人が「同僚が忙しく働いているのに自分だけ休んでいる」という罪悪感に苛まれます。しかし、休職期間の最大のミッションは「しっかりと休むこと」です。罪悪感を抱えたままでは心が休まらず、かえって回復が遅れてしまうという皮肉な結果を招きます。

休職は、あなたがこれからも長く働き続けるための「先行投資」だと考えてください。スポーツ選手が怪我を治すために試合を欠場するのと全く同じです。今は戦線を離脱して治療に専念することが、会社に対する最大の誠実さであると割り切りましょう。

最初のうちは、一日中寝ていても構いません。食事がおろそかになっても、掃除ができなくても、自分を責めないでください。まずは枯渇したエネルギーを充電すること。それ以外のことは、元気が出てきてから考えれば十分間に合います。

生活リズムを「仕事モード」から切り離さない

休職初期はひたすら休むことが大切ですが、体調が少し落ち着いてきたら、意識してほしいのが「生活リズム」です。仕事を休んでいるからといって昼夜逆転してしまうと、復帰の際のハードルが非常に高くなってしまいます。「朝決まった時間に起き、太陽の光を浴びる」という習慣だけは死守しましょう。

復帰を急ぐ必要はありませんが、復帰する「土台」は壊さないようにする。これが療養中のコツです。3食決まった時間に食べる、着替える、といった基本的なルーチンを維持することで、脳と体が「いつかは社会に戻る」という感覚を忘れないようにしてくれます。

元気が出てきたら、散歩をしたり、図書館に行ったりして、少しずつ「外の空気」に触れる時間を増やしていきましょう。家の中という閉ざされた空間から一歩踏み出すことが、社会復帰へのリハビリテーションになります。

⚠️ 注意

SNSで同僚や友人の活躍を見るのは、休職中は控えめにすることをお勧めします。知らず知らずのうちに自分と比較してしまい、焦りや落ち込みを誘発する原因になるからです。

公的な経済支援を活用して安心を得る

休職中の大きな不安要素は「お金」のことではないでしょうか。しかし、日本には働く人を支える公的な制度が整っています。健康保険に加入していれば、病気や怪我で働けなくなった期間、給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」を受け取ることができます。

支給期間は最長で1年6ヶ月と長く、この制度があることで、経済的な不安を最小限に抑えながら療養に専念できます。申請には主治医の証明が必要ですので、受診時に相談してみましょう。また、自立支援医療(精神通院医療)を活用することで、診察代や薬代の自己負担を軽減することも可能です。

制度名 内容 相談窓口
傷病手当金 給与の約3分の2を支給(最長1年6ヶ月) 健康保険組合・協会けんぽ
自立支援医療 通院・薬代の自己負担が原則1割に軽減 お住まいの市区町村窓口
障害年金 障害の状態に応じて支給される年金 年金事務所・年金相談センター


復帰へのステップ:焦らず着実に段階を追う

主治医による「復職可能」の診断

復帰を検討し始めるタイミングは、あなたが「働きたい」と思ったときではなく、医学的に「再発のリスクが低く、安定して働ける状態にある」と主治医が判断したときです。休職中は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復していくため、一時的な「元気な気分」だけで復帰を決めるのは避けましょう。

主治医から「復職可能」という診断書が出ることが、復帰プロセスの正式なスタート地点となります。この診断書が出る前には、1日の活動量を記録した「生活記録表」などを医師に見せ、睡眠や体調が一定期間(目安として1ヶ月程度)安定していることを確認し合うプロセスが一般的です。

医師は、復帰後の労働時間や配慮すべき事項(残業禁止、負荷の低い業務への配置など)についても意見を書いてくれます。これは会社側と交渉するための非常に強力なエビデンスになります。自分の希望と医師の見解をすり合わせておきましょう。

リワーク(復職支援)プログラムの活用

休職からいきなりフルタイムの職場に戻るのは、想像以上に負荷がかかります。そこでお勧めしたいのが、「リワークプログラム」の活用です。これは、病院や地域障害者職業センター、就労移行支援事業所などで行われている、復職のためのリハビリテーションです。

リワークでは、同じように復職を目指す仲間と共に、オフィスワークに近い作業を行ったり、自分のストレスの対処法(コーピング)を学んだりします。朝から夕方まで決まった場所へ通うことで、体力と生活リズムを取り戻し、職場で起こり得るトラブルへのシミュレーションを行うことができます。

実際にリワークを経て復帰した人の定着率は、そうでない人に比べて有意に高いというデータ(地域障害者職業センターの調査など)もあります。急がば回れ。この準備期間を持つことが、結果として「再休職」を防ぐ最大の防御策となります。

✅ 成功のコツ

リワークを利用する際は、単に通うだけでなく「自分の不調のサイン」を言語化する練習をしましょう。これが復帰後の上司への相談に役立ちます。

職場との復職面談と条件交渉

診断書を手に、いよいよ会社との面談に臨みます。この面談の目的は、会社に戻ることを「許可してもらう」ことだけではなく、「どのような条件なら働き続けられるか」を合意することにあります。遠慮して無理な条件を受け入れてしまうと、すぐに再発してしまうリスクがあります。

復帰直後の理想的な形は「段階的な復帰(ステップアップ復帰)」です。例えば最初の2週間は午前中のみ、次の2週間は週3日の勤務、といったように、少しずつ体と心を慣らしていく方法です。これを「試し出勤制度」として整えている企業もあります。

また、休職前と同じ業務に戻るのが不安な場合は、一時的な部署異動や担当業務の変更、あるいは支援員やジョブコーチの導入を提案してみましょう。会社側も、あなたが再び活躍できることを望んでいます。建設的な提案をすることは、わがままではなく「責任ある態度」です。


再発を防ぐための環境調整とセルフケア

「前と同じ」を目指さない勇気

復職した際、多くの人が「休んでいた分を取り返そう」と、休職前と同じ、あるいはそれ以上の成果を出そうと張り切ってしまいます。しかし、これが再発の最も多い原因です。「休職前とは別の新しい自分としてスタートする」という意識を持ってください。

以前は100の力で働いていたとしても、復帰直後は50〜60の力でちょうど良いのです。少し余裕を持たせておかないと、急なトラブルや環境の変化に対応できず、すぐにパンクしてしまいます。「余力を残して帰宅する」ことが、復職1年目の最優先目標です。

周囲への感謝を伝えることは大切ですが、過度に低姿勢になる必要もありません。「おかげさまで体調が整いました。今は主治医の指導で制限をかけながらですが、できることから貢献します」と、堂々とした態度で接することで、周囲もあなたへの接し方が分かりやすくなります。

ストレス管理の「見える化」

復帰後は、自分の体調を以前よりも細かくモニタリングしましょう。おすすめは、毎日1分で終わる「体調日記(ログ)」をつけることです。例えば、以下の3項目を3段階や5段階で記録するだけで十分です。

  • 睡眠時間と質の満足度
  • その日の気分のアップダウン
  • 仕事での疲労感(1〜10の数値)

これを続けていると、「水曜日になると疲れが溜まりやすい」「特定の業務の後は気分が沈みやすい」といった傾向が見えてきます。不調の予兆を早期にキャッチできれば、週末にしっかり休む、早めに相談する、といった先手のアクションが取れるようになります。

自分のケアだけでは限界がある場合は、職場以外の「逃げ場(相談先)」を確保しておきましょう。家族、友人、支援員、あるいはSNSの仲間。職場での自分を忘れられる場所があることが、精神的なレジリエンス(回復力)を高めてくれます。

⚠️ 注意

「もう薬を飲まなくても大丈夫」と自己判断で中断してしまうことは、復帰後の再発リスクを劇的に高めます。薬の増減は、必ず主治医の指導の下で行ってください。

周囲のサポート体制を再構築する

休職を経て、以前の環境の何が自分を苦しめていたのかが明確になったはずです。それを踏まえて、配慮の「質」を見直しましょう。例えば、以前は「指示が曖昧だった」ことがストレスだったのであれば、復帰後は「必ずテキストで指示をもらう」というルールを徹底してもらうといった調整です。

また、ジョブコーチなどの外部支援を導入することも検討してください。ジョブコーチは職場に直接入り、あなたと職場の橋渡しをしてくれます。本人が言いにくいことを代弁してくれたり、作業の工夫を提案してくれたりすることで、環境的なストレスは格段に減ります。

家族の役割も変わります。休職中は「療養のサポーター」でしたが、復職後は「モニタリングのパートナー」になります。本人が無理をしていないか、表情や態度の変化を一番近くで見ていてあげてください。ただし、干渉しすぎず、本人がリラックスできる家庭環境を維持することに注力しましょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. 復職しても、またすぐに倒れてしまうのではないかと怖いです。

A. その不安は非常に正常なものです。多くの復職者が同じ恐怖を抱えています。だからこそ「段階的な復帰」が重要なのです。「まずは1ヶ月、午前中だけ通えたら合格」と、目標を極限まで低く設定しましょう。スモールステップを積み重ねることで、「今日も大丈夫だった」という自信が少しずつ恐怖を上書きしていきます。また、不安を一人で抱えず、支援員や主治医と共有し続けてください。

Q2. 会社から「治るまで戻ってこなくていい」と言われ、突き放された気分です。

A. 会社の言葉が冷たく聞こえるかもしれませんが、これは「中途半端な状態で戻ってきて再び倒れるのが一番本人にとって良くない」という配慮であることも多いです。会社側は、あなたが「万全の状態で長く働いてくれること」を望んでいます。今は会社の期待に応えるためにも、しっかりと療養に専念する時期だと捉え直しましょう。どうしても会社の対応に不信感がある場合は、労働基準監督署や障害者就業・生活支援センターなどの公的機関に相談することも可能です。

Q3. 休職期間中に転職活動をしてもいいですか?

A. 法的には禁止されていませんが、お勧めはしません。転職活動は非常に大きなエネルギーを必要とするため、療養中の身には負荷が強すぎます。また、今の職場で何が合わなかったのかが整理されないまま転職すると、新しい職場でも同じ理由で体調を崩すリスクがあります。まずは今の職場で復職し、体調を安定させてから、改めてキャリアの選択肢を考えるのが最も安全なルートです。

Q4. 家族が「早く復帰しなさい」と急かしてきます。どう対応すべきですか?

A. ご家族も不安からくる言葉かもしれませんが、本人の回復を妨げる「毒」になってしまうことがあります。主治医から直接家族に説明してもらうか、本記事のような解説記事を一緒に読んでもらい、「今は休むことが治療である」という医学的な事実を理解してもらうことが大切です。家族には「焦らせることが再発率を高める」という情報を共有しましょう。


まとめ

体調を崩したときの働き方において、最も大切なのは「自分を責めないこと」と「時間を味方につけること」です。休職やリハビリの期間は、決して無駄な時間ではありません。自分の限界を知り、対処法を学び、より自分に合った環境を整え直すための、一生モノのスキルを身につける貴重な機会です。

  • 不調の予兆を早期にキャッチし、主治医や支援員に「早めに」相談する。
  • 休職中は罪悪感を手放して療養に専念し、生活リズムという「土台」だけを維持する。
  • 復帰はスモールステップを意識し、リワークプログラムや公的支援をフル活用する。

まずは今日、自分が少しでもリラックスできる時間を意識的に作ってみてください。温かい飲み物を飲む、好きな音楽を聴く。そんな小さな「自分を労る行動」の積み重ねが、再び社会へと歩み出すための大きな力に変わります。焦らなくても大丈夫。あなたのペースで、また一歩ずつ進んでいきましょう。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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