特別児童扶養手当とは?対象・金額・申請方法

障害や長期にわたる慢性疾患を持つお子様を養育されているご家族にとって、経済的な負担は計り知れません。日常生活における特別なケアや医療費、療育費用など、一般的な子育てにはない費用が必要となるからです。このようなご家族の経済的支援を目的とした公的制度が、「特別児童扶養手当(とくべつじどうふようてあて)」です。
特別児童扶養手当は、「障害年金」や「児童手当」とは異なる、障害を持つお子様を養育する保護者へ支給される独自の手当です。しかし、その「支給対象となる障害の範囲」「等級の判断基準」「所得制限の有無」など、制度の全容は複雑で、支援を必要としているご家庭でも、その存在や申請方法を知らないために、適切な支援を受けられていないケースも少なくありません。
このガイド記事では、特別児童扶養手当について、「対象となる障害と等級」「気になる支給金額と所得制限」「具体的な申請方法と必要書類」という3つの柱から、制度のすべてを徹底的にわかりやすく解説します。
この情報が、障害を持つお子様を養育されているご家族の経済的な不安を解消し、安心して子育てに専念できる環境を整えるための一助となることを願っています。
パート1:特別児童扶養手当の基本と目的
1.特別児童扶養手当とは?
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害を有する20歳未満の児童を家庭で養育している父母などに対して支給される手当です。国(厚生労働省)が定める制度ですが、申請窓口はお住まいの市区町村の役所となります。
- 対象:20歳未満で、精神または身体に障害を持つ児童。
- 受給資格者:その児童の父母、または養育者(祖父母など)。
- 目的:障害を持つ児童を養育する保護者の経済的負担を軽減し、児童の福祉の増進を図ること。
2.支給対象となる障害の範囲
特別児童扶養手当の対象となるのは、政令で定められた程度の障害です。身体障害、知的障害、精神障害、重複障害など、幅広い障害が対象となりますが、その障害の重さ(等級)によって、1級と2級のいずれかに認定されます。
- 身体障害:視覚、聴覚、平衡機能、音声機能、言語機能、そしゃく機能、肢体不自由、内部障害(心臓、腎臓、呼吸器など)など。
- 精神障害:知的障害(精神遅滞)、自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害、その他の精神疾患。
- 重複障害:複数の障害が重複している場合。
3.障害等級の目安(特別児童扶養手当の1級と2級)
手当の等級は、障害年金や身体障害者手帳の等級とは基準が異なるため、注意が必要です。審査は、提出された診断書に基づき行われます。
- 特別児童扶養手当1級:
- 状態:日常生活において、常時の介護を必要とする程度の障害(重度の知的障害、両眼の視力 0.03以下など)。
- **イメージ:**最も重い状態であり、常に特別の手当てや介護が必要な状態。
- 特別児童扶養手当2級:
- 状態:日常生活において、常時の介護までは不要だが、著しい制限を受けるか、または一部の介護を必要とする程度の障害(中度の知的障害、肢体の機能の著しい制限など)。
✅ 診断書がすべてを決める
認定の可否と等級は、提出する医師の診断書の内容(特に日常生活における援助の必要性の記述)によって決まります。手当のための診断書は、障害年金と同様に、お子様の困難さを具体的に記述してもらうことが重要です。
パート2:気になる支給金額と所得制限
1.手当の支給金額(令和6年度の例)
手当額は等級によって異なり、物価変動に合わせて毎年見直されます。
- 特別児童扶養手当1級:児童1人につき月額 55,350円
- 特別児童扶養手当2級:児童1人につき月額 36,860円
※手当は、4月、8月、12月の年3回、前月分までがまとめて受給資格者の口座に振り込まれます。
2.最も重要な要件—所得制限
特別児童扶養手当には、受給資格者(申請する保護者)だけでなく、配偶者や扶養義務者にも所得制限が設けられています。所得がこの限度額を超えると、手当の一部または全額が支給停止となります。
- 所得制限の対象:請求者本人、配偶者、扶養義務者(同居している父母、祖父母、兄弟姉妹など)。
- 所得の計算:前年の所得(源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」など)から、諸控除(医療費控除、障害者控除など)を差し引いた額が基準となります。
- 所得制限限度額の目安(抜粋):(扶養親族等がいない場合)
- 請求者本人(扶養義務者): 4,596,000円(全額支給の場合)
- 配偶者・扶養義務者: 6,287,000円(支給停止ライン)
💡 所得制限の確認ポイント
特に注意すべきは「扶養義務者」の所得です。世帯分離をしていても、同居している親族は扶養義務者とみなされ、その所得が基準を超えると請求者本人の所得が低くても支給停止となる場合があります。必ず事前に確認が必要です。
パート3:特別児童扶養手当の申請方法と必要書類
1.申請窓口と申請のタイミング
- 窓口:お住まいの市区町村役場の福祉担当課(障害福祉課など)。
- タイミング:手当は申請した月の翌月分から支給対象となります。対象となる障害と分かった時点で、遅滞なく申請することが重要です。
2.申請に必要な基本的な書類
申請書類は多岐にわたりますが、主に以下のものが必要です。
- 特別児童扶養手当認定請求書:窓口で受け取ります。
- 戸籍謄本:請求者と対象児童の戸籍上の関係を証明するため。
- 住民票謄本:請求者と対象児童が生計を同じくしていることを証明するため。
- 所定の診断書:請求書に添付されている手当専用の診断書様式。医師に作成を依頼します。
- 請求者・配偶者・扶養義務者の所得証明書:前年の所得額を証明するため。(自治体によっては公簿確認で省略可能な場合あり)
- 障害者手帳の写し(お持ちの場合):身体障害者手帳、療育手帳(愛の手帳など)の写し。
3.診断書作成依頼時の重要ポイント
特別児童扶養手当の認定は、この診断書の内容がすべてと言っても過言ではありません。以下の点を医師に正確に伝えましょう。
- 日常生活の援助の必要性:「食事、排泄、入浴、着替え、安全管理、対人交流」など、具体的な場面で、誰が、どれくらいの頻度で援助しているかを詳細に記述してもらう。
- 行動障害の具体例:発達障害などによる自傷行為、他害行為、多動性、パニックなど、常時の見守りが必要な具体的なエピソードを盛り込んでもらう。
- 手帳の等級との違い:手帳の等級と手当の等級は基準が違うため、手帳の等級に捉われず、現在の日常生活の困難さを最大限に記述してもらう。
パート4:特別児童扶養手当と他の制度との併給調整
特別児童扶養手当は、他の公的年金・手当との兼ね合いで、支給が停止されたり、調整されたりすることがあります。
1.障害年金との調整
対象児童が障害年金(障害基礎年金など)を受給できる場合、特別児童扶養手当は支給停止となります。
- なぜ停止されるのか:両制度とも「障害による経済的負担の軽減」を目的としているため、重複受給はできないとされています。
- 例外:特別児童扶養手当の支給額の方が、障害年金の額よりも高い場合、差額分が支給されることはありません。全額が支給停止となります。そのため、原則として、障害年金を受給できる場合は、障害年金が優先されます。
2.公的施設入所との関係
対象児童が障害者入所施設や児童入所施設など、公的な施設に入所している場合、手当は支給停止となります。
- 理由:公的な施設に入所している場合、すでに国や自治体による経済的な支援を受けていると見なされるためです。(ただし、通所施設や、医療機関への入院は支給停止の対象とはなりません。)
3.その他の手当・年金との関係
- 児童手当:児童手当は特別児童扶養手当とは全く別の制度であり、併給が可能です。
- 特別障害者手当:20歳以上の方を対象とする制度であり、特別児童扶養手当(20歳未満対象)との併給は制度上ありえません。(20歳以降に特別障害者手当の申請を行うことになります。)
⚠️ 20歳以降の手続き
特別児童扶養手当は20歳で支給が終了します。20歳以降も障害の状態が続く場合は、「障害年金」や「特別障害者手当」など、別の制度への切り替え手続きが必要となります。20歳になる約3ヶ月前から、これらの申請準備を始めることが重要です。
パート5:受給後の義務と届出
手当の受給が決定した後も、以下の義務と届出を怠ると、手当が停止されたり、不正受給とみなされたりする可能性があるため、注意が必要です。
1.有期認定と「再認定手続き」
特別児童扶養手当は、障害年金と同様に有期認定が原則であり、1年~2年ごとに再認定手続き(障害状態確認届の提出)が必要です。これは、お子様の障害の状態が引き続き基準を満たしているかを確認するためです。
- 通知:支給期限が近づくと、役所から「再認定のための診断書提出の案内」が送られてきます。
- 提出:期限内に新たな診断書を提出します。この診断書でも、障害の重さが維持されていることを正確に記述してもらう必要があります。
2.各種「届出義務」
以下のような事由が発生した場合、速やかに市区町村役場に届け出なければなりません。
- 所得状況届:毎年1回、8月に提出が必要です。これを怠ると、手当が一時停止されます。
- 住所変更届:住所が変わったとき。
- 支給対象児童数の変更届:扶養する児童数が増減したとき。
- 受給資格の喪失:お子様が20歳になった、公的施設に入所した、障害年金を受給し始めたときなど。
まとめ:特別児童扶養手当を子育ての支えに
特別児童扶養手当は、障害を持つお子様を養育するご家庭にとって、家計を支える重要な福祉制度です。
- 対象:20歳未満の障害のある児童。
- 等級:1級(常時介護が必要)と2級(著しい制限がある)の2種類。
- 要件:受給者本人、配偶者、扶養義務者の前年所得による制限がある。
- **申請:**お住まいの市区町村役場の福祉担当課に、専用の診断書とともに申請する。
この手当を有効活用し、経済的な不安を軽減することで、ご家族が療育や福祉サービスをより安心して利用できる環境を作りましょう。申請の際は、所得制限と診断書の内容を特に重視し、漏れのない手続きを行うことが成功への鍵です。
✅ 次のアクション
ご家庭の前年所得(請求者、配偶者、同居の扶養義務者全員)が、この記事に記載されている所得制限限度額を超えていないかを確認しましょう。所得制限をクリアしていれば、お住まいの役所の福祉担当課へ電話し、申請書類(特に専用診断書様式)の取得方法を確認しましょう。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
🎨 趣味・特技
資格勉強、温泉巡り
🔍 最近気になっているテーマ
障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





