ホーム/記事一覧/ナレッジベース/制度・法律解説/就労継続支援A型・B型の違いを図解で解説

就労継続支援A型・B型の違いを図解で解説

📖 約50✍️ 高橋 健一
就労継続支援A型・B型の違いを図解で解説
就労継続支援A型とB型は、一般企業での就労が困難な障害のある方に働く場と訓練を提供するサービスです。最大の違いは、A型が事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の「賃金」が支払われるのに対し、B型は雇用契約を結ばず、作業量に応じた「工賃」が支払われる点です。A型は安定した就労能力が求められ、B型は体調に合わせて無理なく訓練できる柔軟性があります。どちらも利用期間の制限はなく、利用者の目標や状態に応じて、A型・B型・就労移行支援間で移行することが可能です。利用開始には市町村への申請が必要です。

「働きたいけれど、一般企業での就労はまだ難しい」「体調に合わせて無理なく働ける場所が欲しい」と感じている障害のある方や、ご家族から、就労継続支援(しゅうろうけいぞくしえん)に関するご質問を多くいただきます。 この制度は、一般企業で働くことが困難な方々に対して、働く場と訓練の機会を提供するための、非常に重要な障害福祉サービスです。

就労継続支援には、「A型」と「B型」の二種類があり、それぞれ「雇用契約の有無」「収入の形態(賃金か工賃か)」「対象者」が大きく異なります。 この違いを正しく理解しなければ、自分に合った働き方を選ぶことはできません。 このガイドでは、就労継続支援A型とB型の違いを具体的な図解を交えて徹底的に解説し、あなたの目標や状況に最適なサービスを選ぶための判断基準を分かりやすくお伝えします。


就労継続支援とは?制度の基本的な位置づけ

就労継続支援は、障害者総合支援法に基づく「訓練等給付」の一つです。 一般企業での就職が困難な方に対し、働く機会を提供するとともに、知識や能力の向上に必要な訓練を行うことを目的としています。

「一般就労」が難しい方への支援

このサービスが対象としているのは、雇用契約を結んで働く「一般就労」に挑戦したい気持ちはあるものの、体力やスキル、障害特性などの理由から現時点では困難な方々です。

  • 働く場の提供:

    障害特性に配慮された環境で、利用者ができる仕事を提供します。

  • 能力向上:

    作業活動を通じて、集中力、持続力、対人コミュニケーション能力など、働く上で必要なスキルを身につけるための訓練を行います。

  • 社会参加:

    地域社会の一員として役割を持ち、収入を得ることで、生活の安定と生きがいの創出を支援します。

就労移行支援との違い

就労継続支援と並んでよく聞かれるサービスに「就労移行支援」がありますが、この二つは目指すゴールが異なります。

サービス名 目的 利用期間
就労移行支援 一般企業への就職 原則2年間
就労継続支援(A型・B型) 事業所での就労・訓練の継続 制限なし(継続利用可能)

就労移行支援は「一般就労への準備期間」であるのに対し、就労継続支援は「働くこと自体」が目的であり、長期的な利用が可能です。

💡 ポイント

就労継続支援は、「一般就労を目指す訓練」だけでなく、「生涯にわたる働く場」としての役割も担っています。 どちらのサービスを選ぶかは、ご自身の目標によって変わります。


A型とB型の決定的な違い:雇用契約と収入

就労継続支援A型とB型を分ける最も決定的な違いは、「事業所と雇用契約を結ぶかどうか」、そして「もらえるお金の性質(賃金か工賃か)」です。

就労継続支援A型:雇用契約を結ぶ「労働者」

就労継続支援A型事業所は、利用者と「雇用契約」を結びます。 これにより、利用者は法的に「労働者」としての権利と義務を持つことになります。

  • 雇用契約:

    事業所と利用者(従業員)の間で雇用契約が成立し、労働基準法などの法律が適用されます。

  • 賃金と最低賃金:

    A型事業所から支払われるのは「賃金(給与)」であり、地域の最低賃金以上であることが義務付けられています。 そのため、B型よりも安定した収入が得られます。

  • 社会保険:

    労働時間などの要件を満たせば、雇用保険や社会保険(厚生年金、健康保険)への加入対象となります。

就労継続支援B型:契約を結ばない「訓練」

就労継続支援B型事業所は、利用者と雇用契約を結びません。 利用者は「訓練を受ける利用者」という位置づけになります。

  • 雇用契約なし:

    雇用契約を結ばないため、労働基準法などの適用は原則ありません。 利用者は、自分の体調や障害特性に合わせて、無理なく作業を行うことができます。

  • 工賃:

    B型事業所から支払われるのは「工賃(こうちん)」であり、賃金ではありません。 工賃は、作業の成果や事業所の売上に応じて支払われるため、最低賃金の適用はなく、一般的にA型よりも低くなります。

  • 平均工賃(参考データ):

    厚生労働省の統計によると、令和3年度のB型事業所の平均工賃は月額約16,500円程度です。 これはあくまで全国平均であり、事業所や地域によって大きく異なります。


A型・B型の対象者と求められる能力

雇用契約の有無は、そのままサービスが求める「能力」や「安定性」の違いにつながります。

就労継続支援A型の対象者と能力

A型は雇用契約を結ぶため、一定の働く能力と安定性が求められます。

  • 対象要件:

    以下のいずれかの要件を満たす方が対象です。

    • 就労移行支援事業を利用したが、一般就労に至らなかった方。
    • 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、一般就労に至らなかった方。
    • 就労経験があり、年齢や体力から一般就労が難しいと判断された方。
  • 求められる能力:

    事業所が定める労働時間や日数(週20時間以上など)を、安定して通所し、作業をこなす体力と集中力が求められます。 選考(面接や体験)を通じて、この能力があるかどうかが判断されます。

就労継続支援B型の対象者と能力

B型は雇用契約を結ばず、訓練の位置づけが強いため、より幅広い方が利用できます。

  • 対象要件:

    以下のいずれかの要件を満たす方が対象です。

    • 就労経験があり、年齢や体力から一般就労が難しいと判断された方。
    • 50歳に達している方、または障害基礎年金1級受給者。
    • 就労移行支援事業を利用したが、B型の利用が適切と判断された方。
  • 求められる能力:

    A型のような厳しい通所日数や労働時間の基準はありません。 体調に波がある方、長時間働くことが難しい方など、自分のペースで働きたい方が多く利用しています。 極端な話、週に1回、数時間の作業から始めることも可能です。

⚠️ 注意

A型・B型共に、利用には障害支援区分の認定は原則不要ですが、「就労の意欲」や「就労に必要な訓練の必要性」がお住まいの市町村に認められる必要があります。


サービス内容と利用開始までの流れ

A型とB型は、提供される支援や活動内容にも違いがあります。 また、利用開始までの手続きは共通していますが、A型の場合は「採用選考」がある点に注意が必要です。

A型・B型共通のサービス内容

どちらの事業所でも、主に以下のサービスが提供されます。

  • 作業活動:

    軽作業(部品の組み立て、箱折りなど)、農作業、清掃、データ入力、製品の製造・販売など、事業所によって多様な仕事内容があります。

  • 生活支援・相談支援:

    利用者の体調や精神面の安定を図るための相談支援、生活習慣のアドバイスなどが行われます。 特にB型では、生活支援の側面が強く求められます。

  • 一般就労に向けた支援:

    一般企業への就職を希望する方に対して、就労移行支援に近い訓練や、就職活動のサポートが行われることもあります。

A型利用の特殊なステップ:採用選考

B型は、基本的に市町村の支給決定を受ければ利用が可能ですが、A型は雇用契約を結ぶため、「採用選考」という特殊なステップを経ます。

  1. 事業所見学・体験:

    複数のA型事業所を見学し、仕事内容や雰囲気が合うか確認します。

  2. 市町村に利用申請・支給決定:

    市町村に申請し、A型の利用が適切と認められ、「受給者証」が交付されます。

  3. 事業所の採用選考:

    受給者証を持って事業所に応募し、面接や数日間の体験実習などを経て、事業所から「採用(内定)」をもらいます。

  4. 雇用契約締結・利用開始:

    雇用契約を結び、利用(就労)が開始されます。

A型は採用選考があるため、不採用となる可能性があることを理解しておく必要があります。


A型・B型を有効活用する選び方と移行の戦略

ご自身の今の状態と将来の目標を踏まえて、A型とB型のどちらを選ぶべきか、また将来的なサービス移行をどう考えるべきか、戦略を立てましょう。

選択の判断基準

以下の質問を自問自答することで、より適切なサービスが見えてきます。

  • 経済的安定を重視するか:

    安定した収入(最低賃金以上)が生活に不可欠であれば、A型を選びます。

  • 体調の安定性を重視するか:

    まだ体調に波があり、休んだり短時間だけ働きたいという希望が強いなら、B型を選びます。

  • 一般就労への移行を重視するか:

    いずれは一般企業で働きたいという目標が明確なら、就労移行支援を経由するか、またはB型で体力・スキルを上げてからA型への移行を検討します。

A型とB型、就労移行支援のステップアップ

就労継続支援は、一度選んだら終わりではありません。 体調や能力の向上に応じて、サービスを移行することができます。

  1. B型からスタート:

    体調が不安定な方は、まずB型で作業習慣と体力の基礎を作ります。

  2. A型へ移行:

    B型で安定して通所できるようになったら、より安定した収入と雇用契約のあるA型へ移行します。

  3. 一般就労へ移行:

    A型で十分なスキルと自信がつき、一般企業で働きたいという目標が明確になったら、就労移行支援を経て一般就労を目指します。

「最初は体調が不安定で週に数回しか通えなかったのでB型を選びました。工賃は少ないですが、仲間と作業する達成感が大きいです。来年からはA型に挑戦したいと考えています。」

— B型事業所利用者の声

✅ 成功のコツ

サービスを選ぶ際は、「今の自分に無理がないか」を最優先に考えましょう。 無理をしてA型を選んで体調を崩すよりも、B型で確実に体力をつけ、ステップアップを目指す方が、最終的な就労成功につながります。


よくある質問とサービスに関する相談窓口

就労継続支援の利用に関して、利用者やご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

Q&A:サービス利用のギモン解消

Q1. A型・B型の利用期間に制限はありますか?

A. A型、B型ともに、原則として利用期間に制限はありません。 就労移行支援のような「2年間まで」という期限がないため、長期にわたり安定して利用し続けることが可能です。 ただし、定期的に利用計画の見直しは行われます。

Q2. B型の工賃はなぜ低いのですか?

A. B型の工賃が低いのは、雇用契約を結ばない「訓練」という位置づけであるため、最低賃金法の適用外となるからです。 工賃は、事業所が受注した仕事の売上から、運営経費を差し引いた残りが原資となります。 しかし、工賃アップに向けた努力をしている事業所も多くありますので、事業所選びの際には平均工賃を確認しましょう。

Q3. サービス利用料はかかりますか?

A. 就労継続支援は、他の障害福祉サービスと同様に、原則1割の自己負担ですが、世帯所得に応じた月額上限額が設定されています。 多くの場合、市町村民税非課税世帯は自己負担0円で利用できます。 ただし、作業中の食事代や交通費など、実費となる費用は利用者負担です。

相談窓口の活用

就労継続支援の利用を検討する際は、専門家である「相談支援専門員」がいる事業所への相談が不可欠です。

  • 相談支援専門員の役割:

    A型とB型、そして就労移行支援のどれが最適かを、利用者の状況や目標を深く聞き取った上で判断し、「サービス等利用計画」の作成や、市町村への手続きをサポートしてくれます。

  • 事業所の見学:

    サービス内容や雰囲気を確かめるため、必ず複数のA型・B型事業所の見学や体験利用をしましょう。 仕事内容だけでなく、職員の支援体制や、利用者の雰囲気も重要な判断材料です。


まとめ

  • 就労継続支援には、雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」があり、どちらも長期的な利用が可能です。
  • A型は、最低賃金以上の「賃金」が支払われ、安定した収入が得られますが、安定した通所と一定の作業能力が求められます。
  • B型は、「工賃」が支払われますが、体調や自分のペースに合わせて無理なく働く訓練ができます。
  • どちらを選ぶかは、現在の体調の安定性と、経済的安定をどちらを優先するかで判断し、将来的にはA型や一般就労へのステップアップを目指すことも可能です。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

📢 この記事をシェア

関連記事