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支援の現場で感じた「家族の想い」の重み

📖 約50✍️ 鈴木 美咲
支援の現場で感じた「家族の想い」の重み
障害福祉の現場に携わる支援者の視点から、障害児・者を持つ家族が抱える葛藤や不安、そして愛情の「重み」について綴った体験談・コラムです。家族が一人で責任を背負い込む「密室育児」の危険性を指摘し、外部サービスや地域ネットワークを頼ることの重要性を説いています。また、支援現場で目にする具体的なエピソードを交えながら、親が自分自身の頑張りを認め、リフレッシュすることでお子さんとの良好な関係を再構築できることを示唆。支援者と家族が「共創者」として共に歩むための心得や、よくある悩みへの回答をまとめた温かいメッセージです。

支援の現場で見つめる絆——家族が抱える「想い」の深さに寄り添うために

障害福祉の現場に身を置いていると、日々多くのご家族とお会いします。そこには、言葉では言い尽くせないほどの葛藤、深い愛情、そして時には将来への言いようのない不安が渦巻いています。「支援者にどこまで本音を話していいのだろう」「家族だけで頑張らなければいけないのではないか」と、一人で夜を徹して悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

支援者である私たちは、単にサービスを提供するだけの存在ではありません。ご家族が歩んできた道のりを尊重し、その心の重みを分かち合うパートナーでありたいと考えています。この記事では、支援の現場で私たちが目にするご家族の真実の姿や、信頼関係を築くためのヒントを綴ります。この記事を読むことで、抱え込んでいる想いを少しだけ外に開く勇気を持っていただければ幸いです。


相談の裏側に隠された「覚悟」を知る

言葉にならない願いを汲み取る

初めて相談支援事業所を訪れるご家族の多くは、非常に緊張されています。手元の資料を握りしめ、お子さんのこれまでの経過を淡々と話される姿の裏には、実は膨大な「諦め」と「希望」が同居しています。「普通ならこうなのに」という周囲の視線にさらされ、傷つきながらも今日までお子さんを守り抜いてきた揺るぎない覚悟が、その佇まいから伝わってきます。

私たち支援者が最初に行うべきは、制度の説明ではありません。まずは、そのご家族が今日この場所に来るまでにどれほどの葛藤を乗り越えてきたのかを想像することです。一見、事務的な「週に〇回デイサービスを利用したい」という要望の奥には、「少しでいいから自分の時間が欲しい」「あの子に友達を作ってあげたい」という切実な願いが隠されています。その声なき声に耳を傾けることから、本当の支援が始まります。

「親亡き後」という一生続く問い

知的障害や難病を抱えるご家族にとって、共通して最も重いテーマは「親亡き後の生活」です。これは一時的な悩みではなく、診断を受けたその日からずっと心の片隅に居座り続ける、非常に重たい問いです。支援の現場では、この不安を口に出すまでに数年かかることも珍しくありません。

私たちは、その不安を「大丈夫ですよ」と安易な言葉で片付けることはしません。代わりに、今から作れる地域のネットワークを具体的に提示します。家族だけで背負うのではなく、社会全体でその子を支える仕組みを一つずつ構築していく。そのプロセスを共有することで、少しずつご家族の表情が柔らかくなっていく瞬間を、私たちは何度も目撃してきました。

💡 ポイント

将来の不安を一人で抱えるのは限界があります。相談員や支援スタッフは、その重みを「分散」させるための窓口だと考えてください。

家族それぞれの「愛のかたち」を肯定する

支援の現場では、時として家族間でも意見が分かれることがあります。熱心に療育に取り組もうとするお母様と、現実を直視できず距離を置いてしまうお父様。あるいは、障害のある兄弟のために自分を抑えてしまう「きょうだい児」の存在。これら全ての葛藤は、誰かが悪いのではなく、全員が自分なりの方法で家族を愛しているがゆえの衝突です。

私たちは、特定の誰かの味方をするのではなく、家族というチーム全体のウェルビーイング(幸福)を考えます。時には、親御さんがお子さんに対して抱く「もう疲れた」「逃げ出したい」という感情さえも、大切な本音として受け止めます。そうした負の感情を否定せず、共有できたときに初めて、家族の中に新しい風が吹き始めるのです。


サービス利用の先にある「家族の再生」

「頼ること」への罪悪感を取り除く

日本には「家族のことは家族で」という自助努力を尊ぶ文化が根強く残っています。そのため、ショートステイ(短期入所)やヘルパーの利用を提案した際、「私が楽をするために子供を預けるなんて」と罪悪感を持たれる親御さんが非常に多いのが現状です。しかし、支援の現場から見れば、外部サービスを利用することは家族の持続可能性を高めるための賢明な戦略です。

2024年の統計でも、障害児を持つ保護者の約7割が慢性的な睡眠不足や疲労を感じているというデータがあります。親が倒れてしまえば、一番困るのはお子さん自身です。私たちは、「お母さんが笑顔でいることが、お子さんにとって最大の療育です」と繰り返し伝えます。サービスを利用して生まれた「心の余白」で、またお子さんと笑い合える。その循環を作ることが支援の真の目的です。

実例:デイサービスが変えた夕食の風景

以前、重度の知的障害があるお子さんを持つAさんというお母様がいらっしゃいました。彼女は「他人に迷惑をかけたくない」と、一切のサービスを使わずに24時間体制でケアを続けていました。しかし、ある時限界を迎え、私たちのデイサービスを週2回利用することになったのです。数ヶ月後、Aさんはこう仰いました。

「あの子がデイに行っている間、ゆっくりコーヒーを飲めるようになりました。そうしたら、夕方帰ってきたあの子に『おかえり』って心から笑顔で言えたんです。以前は、帰ってくる足音が恐怖だったのに。」

— 当事者家族 Aさん

この言葉にこそ、支援の本質があります。サービスは単なる「預かり」ではなく、家族が健やかな関係性を取り戻すための「魔法の杖」になり得るのです。物理的な距離を置くことで、心理的な距離が近くなる。そんな逆説的な幸せが、福祉の現場には溢れています。

✅ 成功のコツ

まずは「お試し利用」から始めてみましょう。最初の一歩は勇気がいりますが、一度その良さを実感すれば、心に余裕が生まれます。

支援者との「共創」の関係性

ご家族は支援の「客」ではありません。共にお子さんの成長を見守り、将来をデザインしていく共同クリエイター(共創者)です。支援の現場では、ご家族からの「家ではこんな風に笑うんです」「これが好きなんです」という情報が、何よりも貴重なヒントになります。専門家の知識と、ご家族の愛情深い観察眼が合わさったとき、最強の支援プランが完成します。

私たちは、ご家族が「この支援員さんなら、私たちの想いを分かってくれる」と確信できるまで、対話を重ねます。信頼関係は一朝一夕には築けませんが、困難な壁にぶつかったときに一緒に悩み、一緒に喜べる関係。そんな「顔の見える繋がり」こそが、制度の枠を超えた本当のセーフティネットになると信じています。


見えない努力を可視化し、肯定する

当たり前の日常が「偉業」であること

朝、決まった時間に起こす。栄養を考えた食事を食べさせる。パニックにならないよう周囲に気を配る。障害児・者を持つご家族が毎日当たり前に行っていることは、実は驚くべきエネルギーを必要とする「偉業」です。しかし、多くのご家族はそれを「当たり前」「親として当然」と考えてしまい、自分を褒めることを忘れています。

支援現場での私たちの役割の一つは、その「見えない努力」に光を当て、最大限の敬意を表することです。「今日、無事に通所できたのは、お母さんが朝から調整してくださったおかげですね」。そんな一言が、乾いた砂に水が染み込むようにご家族の心に届くことがあります。自分の頑張りを誰かが認めてくれている。その実感が、明日を生きる活力になります。

情報の格差を埋める「橋渡し」の役割

障害福祉制度は非常に複雑です。手帳の等級、受給者証、加算、控除……。これらを全て把握し、適切なタイミングで申請するのは至難の業です。支援の現場で感じるのは、情報の有無がご家族の負担を大きく左右するということです。私たちは、ご家族が損をしたり、不利な状況に置かれたりしないよう、常に最新の情報を分かりやすく翻訳して伝えるコンシェルジュでありたいと考えています。

例えば、難病の方であれば、医療費助成だけでなく、税金の控除や公共料金の割引、さらには地域の独自の給付金など、活用できる制度は多岐にわたります。こうした事務的なサポートを支援者が引き受けることで、ご家族がお子さんの「想い」に向き合う時間を1分でも長く確保できるように努めています。

支援の種類 具体的な内容 家族が得られるメリット
情緒的支援 相談、傾聴、親の会の紹介 孤独感の解消、心の安定
実務的支援 書類作成補助、制度説明 手続きの負担軽減、経済的安心
直接的支援 ヘルパー派遣、通所サービス 身体的休息、本人の社会性向上
環境的支援 住宅改修のアドバイス 家庭内の事故防止、介護負担軽減

「できないこと」ではなく「できること」を語り合う

多くの医療機関や学校では、どうしても「平均からどれくらい遅れているか」「何ができないか」という欠如の視点で語られがちです。しかし、福祉の現場、特に私たちが大切にしているのはストレングス(強み)の視点です。どんなに重い障害があっても、その子には必ず輝く瞬間があります。

「今日は〇〇さんと目が合って、ニコッとしてくれましたよ」。支援現場から報告されるこうしたポジティブなニュースは、ご家族にとって何よりの特効薬です。マイナスの差を埋める教育ではなく、プラスをさらに伸ばし、共に喜び合う。そんな前向きな会話が積み重なることで、ご家族の心の中に、お子さんへの誇りが再燃していくのです。


孤独な夜を終わらせる地域のネットワーク

「親の会」やピアサポートの力

支援者である私たちはプロとして寄り添いますが、それでも埋められない溝があります。それは「同じ境遇にいる当事者同士」にしか分からない、魂の共鳴です。支援現場では、必要に応じて「親の会」やピアサポーター(経験者による支援)を紹介することがあります。同じ難病、同じ障害を持つ子供を育てる先輩ママの「うちはこう乗り越えたよ」という一言は、時に100人の専門家の言葉より重く響きます。

孤独は、障害そのものよりも人を苦しめます。地域の中に、自分たちのことを分かってくれる仲間がいる。そう思えるだけで、夜の暗闇は少しずつ和らいでいきます。私たちは、ご家族が地域という大きな家族の一員として迎え入れられるよう、コミュニティの結び目を作る役割も担っています。

「支援のプロ」から「人生の伴走者」へ

支援の現場で長くお付き合いをしていると、お子さんの成長と共にご家族のライフステージも変化していきます。小学校、中学校、そして就労へ。それぞれの節目で直面する困難は異なりますが、その時々に寄り添う「伴走者」がいることは、大きな安心材料です。私たちは、単なる「施設の職員」ではなく、ご家族の人生の一部を共に歩む戦友のような存在でありたいと願っています。

時には厳しい現実をお伝えしなければならないこともあります。しかし、そこに信頼関係があれば、共に泣き、共に次の一策を練ることができます。ご家族が抱える「想いの重み」は、私たちが半分持つことで、少しだけ軽くできるはずです。そうして軽くなった分だけ、ご家族とお子さんが手をつないで歩く足取りが軽やかになる。それこそが、私たちの理想とする支援の姿です。

⚠️ 注意

特定の支援者に依存しすぎるのは危険です。複数の支援機関や窓口を持つことで、多角的な視点から家族を守ることができます。

福祉サービスの「質」は「対話」で決まる

どれほど豪華な施設や高価な器具があっても、そこに心の通った対話がなければ、良い支援とは言えません。家族の想いを尊重するとは、ご家族の「違和感」を大切にすることでもあります。「このサービスのやり方は、うちの子には合わない気がする」。そんな小さな違和感も、遠慮なく伝えてください。その声こそが、サービスの質を磨き、より良い支援を生み出す原動力になります。

ご家族が遠慮して口を閉ざしてしまう現場は、成長が止まった現場です。私たちは、ご家族が「NO」と言える関係、疑問をぶつけられる関係を大切にします。想いをぶつけ合い、試行錯誤を繰り返す中で磨き上げられた支援プランこそが、お子さんの未来を真に支える力強い指針となります。


よくある質問(FAQ)

Q. 支援者の方に、家庭内の悩み(夫婦喧嘩など)を話してもいいのでしょうか?

もちろんです。むしろ、家庭内の環境はお子さんの情緒に直結するため、非常に重要な情報です。私たちには守秘義務があり、話された内容が外部に漏れることはありません。家庭のストレスを吐き出すことで、親御さんの心が安定し、お子さんへの接し方が変わるケースは多々あります。プライベートなことだと思わず、遠慮なくご相談ください。

Q. 担当の支援員さんと相性が合わない場合、交代をお願いしてもいいですか?

はい、全く問題ありません。福祉も人と人との関わりですから、相性は必ずあります。相性が合わないまま無理に利用を続けると、お互いにとってストレスになり、良い結果を生みません。事業所の責任者や、相談支援専門員に「もう少し違ったタイプの方にお願いしたい」と伝えてみてください。これは利用者の正当な権利であり、気まずく思う必要はありません。

Q. 難病で将来が見通せず、絶望的な気持ちになります。支援現場では何をしてもらえますか?

まずは、そのお気持ちを丸ごと受け止めさせていただきます。具体的なサポートとしては、同じ病気を持つ方の事例を紹介したり、活用できる公的な経済支援を整理したりして、生活の「足元」を固めるお手伝いをします。先が見えないのは、暗闇に立っているからです。私たちは小さな懐中電灯を持って、一歩先を照らしながら一緒に歩きます。絶望を希望に変えるのではなく、絶望の中でも「今日はこれができた」と笑える時間を積み重ねるお手伝いをします。


まとめ

支援の現場で私たちが日々感じているのは、ご家族の「想い」は決して「負担」ではなく、支援を動かす最大のエネルギーであるということです。その想いが重く、苦しく感じられるときは、どうか私たちにその一部を預けてください。

  • 想いを分かち合う:支援者は、ご家族の覚悟や葛藤を理解し、共に歩むパートナーです。
  • 孤立を避ける:外部サービスや親の会を活用し、家族を「開かれたチーム」にしていきましょう。
  • 自分を褒める:日々の当たり前のケアは、誰にでもできることではない「偉業」であることを忘れないでください。

お子さんの未来は、ご家族の笑顔の先にあります。明日が今日より少しだけ穏やかな日になるよう、私たちはこれからも現場で、皆さんの想いの重さに真摯に向き合い続けていきます。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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