治療を続けて感じた「良くなる日は必ず来る」実感

「一生このまま」と思っていた暗闇の中で
「もう良くならないのではないか」「この苦しみは一生続くのではないか」——うつ病と診断された当初、私はそう思っていました。毎日が同じ苦しみの繰り返しで、希望が見えませんでした。
でも今、あの頃を振り返ると言えます。「良くなる日は必ず来る」と。それは突然訪れる奇跡ではなく、治療を続けた先に少しずつ、確実に訪れる変化でした。小さな「良くなった」の積み重ねが、やがて大きな回復につながったのです。
この記事では、治療を続ける中で感じた変化、絶望から希望への心の移り変わり、そして今だから言える「回復は可能だ」というメッセージをお伝えします。同じように苦しんでいる方に、少しでも希望を届けられれば幸いです。
治療開始——変化が見えない日々
最初の1ヶ月——何も変わらない焦り
治療を始めて最初の1ヶ月は、何も変わりませんでした。
抗うつ薬を飲み始めても、朝起きるのは相変わらず辛い。カウンセリングに通っても、気分が晴れることはない。「治療をしているのに、なぜ良くならないのか」——そんな焦りと失望がありました。
主治医は「薬の効果が出るまで2〜4週間かかります」と説明してくれました。でも当時の私には、その「待つ」ということが耐え難く感じられました。
治療開始直後の私の状態は、以下のようなものでした。
- 朝起きられず、午後まで寝ている
- 食事は一日一食程度
- シャワーを浴びるのも週に2回ほど
- 外出は通院のみ
- 何をしても楽しくない
- 「良くなる」という実感が全くない
「本当に治るのだろうか」——その疑問が、常に頭にありました。
⚠️ 注意
抗うつ薬の効果が現れるまでには時間がかかります。多くの場合、2〜4週間後から効果を感じ始めますが、十分な効果を得るには2〜3ヶ月かかることもあります。焦らず継続することが大切です。
「変わらない」ことへの絶望
治療開始から2ヶ月が経っても、劇的な変化は感じられませんでした。確かに最悪の状態からは少し抜け出せた気もするけれど、「良くなった」という実感はありませんでした。
周りからは「薬を飲んでいるんだから、そろそろ良くなるでしょう」と言われることもありました。でもそのプレッシャーが、さらに私を苦しめました。
「期待されているのに、応えられない」「治療しているのに、治らない」——その焦燥感は、症状をさらに悪化させました。
主治医の言葉——「焦らなくていい」
そんな私に、主治医は繰り返し言いました——「焦らなくていい。回復は、階段を上るようなものです」と。
「今日と昨日を比べても、変化は見えないかもしれない。でも1ヶ月前、2ヶ月前と比べてみてください。少しずつでも、変わっているはずです」
その言葉を信じて、私は治療を続けることにしました。信じるしか、他に選択肢はありませんでした。
「回復は、グラフで言えば右肩上がりの直線ではありません。波を描きながら、でもトータルで見れば上昇していく。そういうものなんです」
— 主治医の言葉
小さな変化に気づき始めた頃
最初の「良くなった」サイン
治療開始から3ヶ月ほど経ったある朝、小さな変化に気づきました。
いつものように目が覚めた時、「今日は、少し起きてもいいかな」と思えたのです。それまでは「起きたくない」「動きたくない」という気持ちしかなかったのに。
その日、私は午前中に起きることができました。そしてカーテンを開けて、外の景色を見ました。「久しぶりに、朝の光がきれいだな」と思いました。
これが、私が感じた最初の「良くなった」サインでした。本当に小さな変化でしたが、確かな変化でした。
💡 ポイント
回復の兆しは、小さな変化として現れることが多いです。「朝起きられた」「少し食欲が出た」「久しぶりに笑った」——こうした小さな変化に気づき、記録することが、希望につながります。
「できること」が増えていく
その後、少しずつ「できること」が増えていきました。
4ヶ月目には、週に2回シャワーを浴びられるようになりました。5ヶ月目には、近所のコンビニに一人で行けるようになりました。6ヶ月目には、友人と短時間なら会えるようになりました。
回復の記録を振り返ると、以下のような変化がありました。
| 時期 | できるようになったこと | 心の状態 |
|---|---|---|
| 3ヶ月目 | 午前中に起きられる日が増えた | 「少し楽かも」と感じる瞬間がある |
| 4ヶ月目 | 毎日シャワーを浴びられる | 身だしなみを気にする余裕が出てきた |
| 5ヶ月目 | 近所を散歩できる | 外の空気が心地よく感じる |
| 6ヶ月目 | 友人と1時間ほど会話できる | 久しぶりに笑った |
| 7ヶ月目 | 本を少しずつ読める | 集中力が戻ってきた |
| 8ヶ月目 | リワークに週2日通える | 「社会復帰できるかも」と思えた |
これらは、以前の私なら当たり前だったことばかりです。でも病気になってからは、どれも大きな達成でした。
カウンセラーの提案——「回復日記」
カウンセラーから、「回復日記」をつけることを勧められました。毎日、どんな小さなことでもいいから、「できたこと」を記録するのです。
最初の日記には、「ベッドから出られた」とだけ書きました。次の日は、「水を飲めた」。その次は、「窓を開けた」——本当に些細なことばかりでした。
でも1ヶ月後にその日記を読み返すと、確実に変化している自分に気づけました。「1ヶ月前はベッドから出るのがやっとだったのに、今は散歩に行けている」と。
この日記が、私に希望を与えてくれました。
✅ 成功のコツ
回復日記は、自分の進歩を「見える化」する有効なツールです。悪い日には過去の記録を読み返すことで、「確実に前進している」ことを実感できます。継続することが大切です。
「波」を理解する——良い日と悪い日
良くなったと思ったら、また落ちる
回復の過程で、私は何度も経験しました——「良くなった」と思ったら、また悪化するということを。
ある週は調子が良く、「もう治ったかも」と思えました。でも次の週は、またベッドから起き上がれない日が続きました。
この「波」に、私は何度も絶望しました。「やっぱり治らないのではないか」「また元に戻ってしまった」——そう思いました。
主治医の説明——「波は自然なこと」
でも主治医は説明してくれました——「波があるのは、回復の自然なプロセスです」と。
「良い日と悪い日が交互に来る。でも、悪い日の『悪さ』は、徐々に軽くなっていく。良い日の『良さ』は、徐々に長く続くようになる。それが回復なんです」
この説明を聞いて、私は波を恐れなくなりました。悪い日が来ても、「また良い日が来る」と信じられるようになりました。
「後退」ではなく「揺らぎ」
カウンセラーは、別の表現を使いました——「それは『後退』ではなく、『揺らぎ』です」と。
回復は一直線ではない。前進したり、少し戻ったり、また前進したり——その繰り返し。でもトータルで見れば、確実に前に進んでいるのだと。
この考え方を知ってから、悪い日が来ても自分を責めなくなりました。「これは揺らぎだ。また良くなる」と思えるようになりました。
「良くなっている」実感が確信に変わる
半年前の自分と比べて
治療開始から9ヶ月が経った頃、カウンセラーが言いました——「半年前の自分と、今の自分を比べてみてください」。
半年前の日記を読み返しました。そこには、「一日中ベッドにいた」「何も食べられなかった」「死にたいと思った」——そんな記録がありました。
そして今の自分を見ました。週3日リワークに通い、友人と会い、趣味の読書を楽しめている——。
その瞬間、「確実に良くなっている」という実感が、確信に変わりました。
他人からの言葉
久しぶりに会った友人が言いました——「表情が全然違う。明るくなったね」。
母親も言いました——「最近、笑顔が増えた。安心した」。
こうした他人からの言葉も、自分の回復を実感させてくれました。自分では気づかない変化を、周りは見ていてくれたのです。
「希望」が見えてきた
そして何より、「希望」が見えてきました。
「もう一生このまま」ではない。「いつか良くなる」のではなく、「今、良くなっている」——その実感が、私に力を与えてくれました。
未来が怖くなくなりました。むしろ、「これからどんな自分になれるだろう」と、楽しみになってきました。
「回復の最も確かなサインは、『未来を考えられるようになること』です。絶望していた人が、希望を持てるようになる。それが、最大の変化なんです」
— カウンセラーの言葉
復職——新しい挑戦
「働ける」と思えた日
治療開始から1年後、私は初めて「働けるかもしれない」と思えました。
リワークプログラムで週5日、6時間通えるようになっていました。作業にも集中できる。人との会話も楽しめる。「これなら、仕事に戻れるかもしれない」——そう感じました。
主治医や産業医と相談し、段階的な復職プランを立てました。最初は週3日、1日4時間から。様子を見ながら、徐々に時間を増やしていく計画でした。
復職初日——緊張と期待
復職初日は、緊張で前日眠れませんでした。でも同時に、期待もありました。「久しぶりの職場、どんな感じだろう」と。
職場では、同僚たちが温かく迎えてくれました。「おかえり」「無理しないでね」——その言葉に、涙が出そうになりました。
最初の4時間は、あっという間に過ぎました。疲れはしましたが、「働けた」という達成感がありました。
働きながらの治療継続
復職後も、治療は続けました。月に一度の通院、服薬の継続、定期的なカウンセリング——これらは、健康を維持するための大切な習慣でした。
「治ったから薬をやめる」のではなく、「良い状態を保つために薬を続ける」——この考え方を、ようやく理解できるようになりました。
今では週5日、ほぼフルタイムで働いています。時々調子の悪い日もありますが、以前のような絶望はありません。「また良くなる」と信じられるからです。
今——「良くなる」を伝える側として
ピアサポーターという役割
回復してから、私はピアサポーターとして活動を始めました。同じように精神障害で苦しむ人たちをサポートする役割です。
診断されたばかりで絶望している人、治療を続けても変化を感じられない人、何度も再発を繰り返している人——そうした人たちに、私は伝えています。
「良くなる日は、必ず来ます。私がその証拠です」と。
回復は可能だと確信している
今の私は、回復は可能だと確信しています。
それは、自分が回復したからだけではありません。リワークやサポートグループで、たくさんの人の回復を見てきたからです。
重度のうつ病だった人が、今は元気に働いている。何年も引きこもっていた人が、今は社会復帰している。何度も入院を繰り返していた人が、今は安定した生活を送っている——。
こうした例を、数え切れないほど見てきました。回復は、例外ではなく、むしろ普通のことなのです。
治療を続けることの大切さ
そして私が最も強調したいのは、治療を続けることの大切さです。
すぐに変化が見えなくても、諦めないでください。波があっても、治療を中断しないでください。焦らず、自分のペースで、ただ続けてください。
私も、何度も「もうやめたい」と思いました。でも続けました。その結果、今があります。
あなたにも、必ず「良くなる日」が来ます。それを信じて、一歩ずつ進んでください。
苦しんでいる人へ——私からのメッセージ
今は信じられなくてもいい
もし今、「良くなるなんて信じられない」と思っているなら、それでいいのです。私もそうでした。
今は信じられなくても、ただ治療を続けてください。薬を飲み、カウンセリングに通い、医師の指示に従ってください。
いつか、「あれ、良くなってる」と気づく日が来ます。その日まで、ただ続けてください。
小さな変化を大切に
回復は、劇的な変化ではありません。小さな変化の積み重ねです。
「今日は少し起きられた」「久しぶりに笑った」「外の空気が心地よかった」——そんな小さな「良くなった」を、大切にしてください。
それらを記録してください。振り返った時、確実に前進している自分に気づけるはずです。
一人じゃない
最後に、これだけは知ってほしいです——あなたは一人じゃありません。
同じように苦しんでいる人が、たくさんいます。そして、回復した人も、たくさんいます。
専門家、家族、友人、ピアサポーター——あなたを支えたい人は、必ずいます。一人で抱え込まず、助けを求めてください。
そして信じてください。良くなる日は、必ず来ます。
「回復は、奇跡ではありません。適切な治療を続けた先に、自然に訪れるものです。だから、諦めないでください。続けてください。必ず、光が見えてきます」
— 今の私が伝えたい言葉
よくある質問
Q1: どのくらいで「良くなった」と実感できますか?
個人差が大きいですが、小さな変化は治療開始から2〜3ヶ月で感じ始めることが多いです。「確実に良くなっている」という実感は、半年〜1年後に得られることが一般的です。焦らず、小さな変化を見逃さないことが大切です。
Q2: 良くなったり悪くなったりの繰り返しは、いつまで続きますか?
波は回復の自然なプロセスです。ただし、時間とともに波は小さくなり、良い状態が長く続くようになります。完全に波がなくなることは少ないですが、波があっても対処できるようになります。
Q3: 薬をやめたら、また悪くなりますか?
急に薬をやめると、離脱症状や再発のリスクがあります。しかし、医師の指導のもとで段階的に減薬すれば、多くの人が薬なしでも安定した状態を保てます。自己判断で中止せず、必ず主治医と相談してください。
Q4: 完全に「元通り」になれますか?
「元通り」というより、「新しい自分として健康に生きる」イメージを持つことをお勧めします。病気を経験したことで、自分を大切にする方法や、ストレス対処法を学べます。結果として、以前より充実した人生を送れることも多いのです。
Q5: 治療を続けるモチベーションが保てません
モチベーションに頼らず、「習慣」にすることが大切です。毎日同じ時間に薬を飲む、決まった曜日に通院する——こうしたルーティンを作りましょう。また、回復日記で進歩を確認することも、継続の助けになります。
まとめ
この記事では、治療を続ける中で感じた変化と、「良くなる日は必ず来る」という実感についてお話ししました。
- 回復は段階的で、小さな変化の積み重ねとして現れます
- 良い日と悪い日の「波」は自然なプロセスであり、恐れる必要はありません
- 治療を継続することで、確実に前進していることを実感できます
- 回復は可能であり、多くの人が社会復帰し充実した生活を送っています
もし今、暗闇の中にいるなら、どうか諦めないでください。治療を続けてください。小さな変化を大切にしてください。良くなる日は、必ず来ます。それを信じて、一歩ずつ進んでください。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
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