リワーク支援で取り戻した「働く力」

「もう働けない」と思っていた私
休職して半年が経った頃、私は絶望していました。「もう働けないのではないか」「社会に戻れないのではないか」——そんな不安が、頭から離れませんでした。家でゆっくり休んでいるはずなのに、焦りばかりが募っていました。
そんな私に、主治医が勧めてくれたのがリワークプログラムでした。「復職に向けたリハビリテーション」と聞いても、最初はピンときませんでした。でもこのプログラムが、私に「働く力」を取り戻させてくれたのです。
この記事では、6ヶ月間のリワークプログラムを経験して、私がどう変わったか、何を学んだか、そしてどうやって職場に戻れたかについてお話しします。復職を目指している方、リワークに興味がある方の参考になれば幸いです。
リワークと出会う前——焦りと不安の日々
休職中の「何もできない」焦り
うつ病で休職してから半年。症状は少し落ち着いていましたが、働くイメージが全く湧きませんでした。
朝起きることはできるようになった。外出もできるようになった。でも「仕事をする」ということが、遠い世界のことのように感じられました。
休職中の私の状態は、以下のようなものでした。
- 生活リズムは不安定(遅寝遅起き)
- 集中力が続かない(本を読んでも頭に入らない)
- 人と話すのが疲れる
- パソコンに向かう気力がない
- 「働く」というイメージができない
- 復職への不安と焦りが強い
主治医は「焦らなくていい」と言ってくれましたが、焦らずにはいられませんでした。
⚠️ 注意
休職中の焦りは自然な感情ですが、焦って早期に復職すると再発のリスクが高まります。適切なリハビリテーション期間を経て、段階的に復職することが、長期的な安定につながります。
主治医からの提案——リワークプログラム
そんな私に、主治医がリワークプログラムを勧めてくれました。
「リワークは、復職に向けたリハビリテーションプログラムです。生活リズムを整え、働く力を取り戻し、再発予防のスキルを学べます。一度、見学に行ってみませんか?」
正直、最初は抵抗がありました。「リハビリが必要なほど、自分は悪いのか」「そんなところに行ったら、本当に病人になってしまう」——そんな思いがありました。
でも主治医は続けて言いました——「リワークに参加した人は、復職成功率が高く、再休職率も低いというデータがあります。あなたが安全に復職するために、とても有効な選択肢だと思います」。
その言葉に背中を押されて、私は見学に行くことにしました。
初めての見学——「ここなら」と思えた
見学当日、私は緊張していました。「どんな人がいるのだろう」「変な目で見られないだろうか」——そんな不安がありました。
でも実際に訪れてみると、想像とは全く違いました。
明るく清潔な施設。スタッフの温かい笑顔。そして何より、そこにいる利用者たちが、普通の人たちでした。年齢も職業も様々な人たちが、真剣にプログラムに取り組んでいました。
スタッフから説明を受けながら、私は思いました——「ここなら、安心して通えるかもしれない」と。
「リワークは、『働けない人』が行く場所ではありません。『また働きたい人』が、その準備をする場所です。ここでは、焦らず自分のペースで、力を取り戻していけますよ」
— 見学時にスタッフが言ってくれた言葉
リワーク開始——小さな一歩から
週2日、午前中だけから
リワークへの参加を決め、最初は週2日、午前中だけから始めました。
初日は緊張で、前日眠れませんでした。「ちゃんとできるだろうか」「迷惑をかけないだろうか」——そんな不安がありました。
でも実際に参加してみると、スタッフも他の利用者も温かく、「無理せず、できることから」という雰囲気でした。
最初のプログラムは、軽い作業療法でした。折り紙、塗り絵、簡単な手作業——「こんなことで意味があるのか」と最初は思いました。
でも実際にやってみると、集中すること自体が、リハビリなのだとわかりました。30分間、一つのことに集中する。それだけでも、当時の私には大きな挑戦でした。
💡 ポイント
リワークプログラムは、個人の状態に応じて段階的に進みます。最初は週1〜2日、短時間から始め、徐々に日数や時間を増やしていきます。焦らず、自分のペースで進めることが重要です。
生活リズムを整える
リワークで最初に取り組んだのは、生活リズムの安定化でした。
毎週決まった曜日、決まった時間に通う。それだけで、生活にリズムが生まれました。リワークに行くために、前日は早く寝る。朝は決まった時間に起きる——こうした習慣が、自然と身についていきました。
| 時期 | 通所頻度 | プログラム時間 |
|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 週2日 | 9:30-12:00(2.5時間) |
| 2ヶ月目 | 週3日 | 9:30-14:00(4.5時間、昼食含む) |
| 3ヶ月目 | 週4日 | 9:30-15:30(6時間) |
| 4ヶ月目以降 | 週5日 | 9:00-17:00(フルタイム) |
段階的に時間を増やしていくことで、無理なく体を慣らすことができました。
仲間との出会い
リワークで予想外に大きかったのは、仲間との出会いでした。
同じように休職している人たち。年齢も職業も違うけれど、「また働きたい」という思いは共通していました。
最初は他の人と話すのも緊張しましたが、徐々に打ち解けていきました。お互いの経験を話したり、不安を分かち合ったり——その時間が、大きな支えになりました。
「自分だけじゃない」——その実感が、孤独から救ってくれました。
様々なプログラム——多角的な学び
認知行動療法のグループワーク
リワークでは、認知行動療法のグループワークがありました。
自分の思考パターンを振り返り、ストレスにつながる考え方を見直していく作業。私の場合、「完璧でなければならない」「期待を裏切ってはいけない」——こうした思い込みが強いことに気づきました。
グループのメンバーと一緒に、これらの思考を検証していきました。「本当にそうなのか?」「別の見方はできないか?」——そうした対話を通じて、柔軟な思考を学んでいきました。
ストレスマネジメント
具体的なストレス対処法も学びました。
- リラクゼーション法(腹式呼吸、筋弛緩法)
- アサーション(自分の気持ちを適切に伝える方法)
- タイムマネジメント
- 問題解決スキル
- セルフモニタリング(自分の状態に気づく方法)
これらは座学だけでなく、ロールプレイなどを通じて実践的に学びました。「知っている」から「できる」へ——このステップが大切でした。
✅ 成功のコツ
リワークで学んだスキルは、復職後も継続的に使うことが重要です。日常的に実践することで、ストレスへの対処力が向上し、再発予防につながります。
模擬オフィスプログラム
リワークの後半では、模擬オフィスというプログラムがありました。
実際のオフィスを想定した環境で、仕事に近い作業をするものです。パソコンでの資料作成、データ入力、グループでのプロジェクト——職場に近い経験ができました。
最初は緊張しました。「ちゃんとできるだろうか」「迷惑をかけないだろうか」——休職前の不安が蘇ってきました。
でもスタッフは言いました——「ここは失敗してもいい場所です。むしろ、ここで失敗して、対処法を学んでください」。
その言葉に救われました。安全に失敗できる環境があることが、どれほど貴重か。
「働く力」が戻ってくる実感
集中力の回復
リワークを続けるうちに、少しずつ変化を感じました。まず、集中力が戻ってきました。
最初は30分も集中できなかったのが、1時間、2時間と伸びていきました。資料を読んでも頭に入るようになりました。パソコン作業も、以前ほど疲れなくなりました。
この変化を実感した時、「あ、働く力が戻ってきている」と感じました。
コミュニケーション力の回復
次に変わったのは、人と話すことへの抵抗が減ったことでした。
休職中は、人と会うこと自体が疲れました。でもリワークで毎日仲間やスタッフと話すうちに、徐々にコミュニケーションが苦ではなくなっていきました。
グループワークでの発表、意見交換、雑談——こうした日常的なやり取りが、自然にできるようになっていました。
自信の回復
そして何より、自信が戻ってきました。
「できた」という小さな成功体験の積み重ね。プログラムをこなせた、資料を作成できた、プレゼンができた——一つひとつが、自信につながりました。
「もう働けないのでは」という不安が、「また働けるかもしれない」という希望に変わっていきました。
復職に向けて——具体的な準備
復職プランの作成
リワーク4ヶ月目から、復職プランを作り始めました。
スタッフと一緒に、以下のようなことを検討しました。
- 復職のタイミング
- 段階的復職のスケジュール(週3日から始めるか、時短から始めるか)
- 業務内容の調整(最初は負担の少ない業務から)
- 通勤練習(リワークに通う時と同じルート・時間で)
- ストレスサイン(再発の兆候)の確認
- 再発予防策
この計画を、産業医や人事部とも共有しました。リワークのスタッフが、会社との調整も支援してくれました。
試し出勤
復職前の最終段階として、試し出勤を行いました。
週1日、午前中だけ職場に行く。実際の職場環境に少しずつ慣れていくプログラムです。
初めて職場に戻った日は、緊張で手が震えました。でも同僚たちは温かく迎えてくれました。「おかえり」「無理しないでね」——その言葉に、涙が出そうになりました。
数回の試し出勤を経て、私は「戻れる」という確信を持てました。
再発予防計画
復職前に、再発予防計画も立てました。
どんな時にストレスを感じやすいか。どんなサインが出たら要注意か。その時、どう対処するか——具体的に書き出しました。
- ストレスサイン:睡眠の質の低下、食欲減退、イライラ、集中力低下
- 対処法:早めに休む、上司に相談、リワークに相談、主治医に相談
- 予防策:十分な睡眠、規則正しい生活、定期的な運動、月1回の通院
この計画があることで、安心して復職できました。
復職——新しいスタート
段階的な復職
リワーク開始から6ヶ月後、私は職場に復帰しました。でもいきなりフルタイムではなく、段階的な復職でした。
- 1ヶ月目:週3日、1日5時間
- 2ヶ月目:週4日、1日6時間
- 3ヶ月目:週5日、1日7時間
- 4ヶ月目:週5日、フルタイム
この段階的なアプローチが、無理なく職場に適応できた理由だと思います。
リワークで学んだことを実践
復職後、私はリワークで学んだことを日々実践しました。
ストレスを感じた時は、深呼吸。無理な仕事は、適切に断る。疲れたら、無理せず休む。自分の状態をモニタリングする——これらのスキルが、私を支えてくれました。
また、月に1回はリワークのフォローアップに参加しました。復職した仲間たちと情報交換し、スタッフに相談できる——この継続的なサポートが、安心感を与えてくれました。
1年後——安定した勤務
復職から1年が経った今、私はフルタイムで安定して働いています。
時々調子の悪い日もありますが、以前のように崩れることはありません。リワークで学んだ対処法を使い、早めにケアすることで、大きな問題になる前に対応できています。
何より、「働ける」という自信が戻ったことが、大きいです。
リワークで得たもの
具体的なスキル
リワークで得た最も具体的なものは、実践的なスキルでした。
ストレス対処法、コミュニケーションスキル、時間管理、問題解決能力——これらは、今でも日々活用しています。
特にストレス対処法は、復職後の大きな支えです。以前は「ストレスに耐える」しかできませんでしたが、今は「ストレスに対処する」ことができます。
仲間とのつながり
もう一つ大きかったのは、仲間とのつながりでした。
リワークで出会った仲間とは、今でも連絡を取り合っています。困った時に相談し合ったり、励まし合ったり——同じ経験を持つ仲間の存在が、心強いです。
「一人じゃない」——その実感が、何よりの財産です。
自分への理解
そして何より、自分への理解が深まりました。
自分の強みと弱み。ストレスを感じやすい状況。回復に必要なこと——こうしたことを、リワークを通じて深く理解できました。
この自己理解があるからこそ、無理なく働き続けることができています。
リワークを迷っている人へ
「恥ずかしい」と思わないで
もしリワークに参加することを迷っているなら、「恥ずかしい」と思わないでください。
リワークは、「病人」が行く場所ではありません。「また働きたい人」が、その準備をする場所です。
スポーツ選手が怪我からの復帰にリハビリが必要なように、私たちも復職にリハビリが必要です。それは当然のことです。
復職成功率が高い理由
リワークに参加した人の復職成功率が高い理由は、以下のようなものです。
- 段階的に負荷を上げることで、無理なく慣れられる
- 実践的なスキルを習得できる
- 安全に失敗して学べる環境がある
- 専門家のサポートを受けられる
- 仲間と励まし合える
- 自己理解が深まる
- 再発予防策を学べる
焦って早期に復職するより、リワークを経てから復職する方が、長期的には安定して働き続けられるのです。
利用できる制度
リワークプログラムは、以下のような場所で実施されています。
- 医療機関(精神科・心療内科)
- 地域障害者職業センター(無料)
- 就労移行支援事業所
- 企業内リワーク(一部の企業)
費用は、医療機関の場合は健康保険が適用されます。自立支援医療制度を使えば、さらに負担を軽減できます。
まずは、主治医に相談してみてください。あなたに合ったプログラムを紹介してくれるはずです。
「リワークは、『働く力』を取り戻すための大切な時間です。焦らず、この時間を自分への投資だと思って、じっくり取り組んでください。その先に、安定した復職が待っています」
— リワークのスタッフの言葉
よくある質問
Q1: リワークプログラムの期間はどのくらいですか?
個人の状態や目標によって異なりますが、一般的には3ヶ月〜6ヶ月程度です。医療機関のリワークは比較的短期間(3ヶ月程度)、地域障害者職業センターは長期間(6ヶ月程度)の傾向があります。焦らず、十分に準備が整ってから復職することが大切です。
Q2: リワークに通いながら傷病手当金は受給できますか?
はい、受給できます。リワークへの通所は「療養」の一環とみなされるため、傷病手当金の受給要件である「療養のため労務に服することができない」状態に該当します。ただし、会社によって扱いが異なる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。
Q3: リワークに通っていることを会社に知られますか?
基本的には、あなたの同意なく会社に知らされることはありません。ただし、復職の際には、リワークでの訓練内容や状態を産業医や人事部と共有することが、スムーズな復職につながります。どこまで共有するかは、相談しながら決められます。
Q4: リワークに参加すれば、必ず復職できますか?
リワークは復職成功率を高めますが、100%の保証はありません。重要なのは、焦らず十分に回復してから復職することです。リワーク中に「まだ準備が必要」と判断されれば、期間を延長することもあります。無理な復職は再発リスクを高めるため、慎重に判断します。
Q5: 人間関係が苦手なのですが、グループワークは必須ですか?
多くのリワークにはグループワークがありますが、最初から無理に参加する必要はありません。個別プログラムから始めて、徐々にグループに参加することもできます。また、人間関係の苦手さを克服することも、リワークの目的の一つです。スタッフと相談しながら、無理のないペースで進められます。
まとめ
この記事では、6ヶ月間のリワークプログラムを通じて「働く力」を取り戻した経験についてお話ししました。
- リワークは、復職に向けた段階的なリハビリテーションです
- 生活リズム、集中力、コミュニケーション力を段階的に回復できます
- 実践的なスキルと再発予防策を学べます
- 仲間との出会いが、大きな支えになります
もし今、復職への不安を感じているなら、リワークプログラムを検討してみてください。焦って復職するより、しっかり準備をしてから復職する方が、長期的には安定して働き続けられます。あなたのペースで、一歩ずつ進んでください。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
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